コトラ（広報チーム） 
近年、データセンターへの注目度が急速に高まっています。これは単にITインフラの需要が増えているからだけではありません。現代のビジネスを支える基盤として、そして新たな事業機会として、データセンターが持つ役割はより複雑かつ多岐にわたるようになっています。この記事では、データセンター投資を「事業会社が経営戦略として行う設備投資」という視点から、その本質と重要性を徹底的に解説します。
データセンター投資が注目される背景
現代社会のデジタル化の進展と、それに伴うデータ需要の急増が、データセンターへの投資を牽引する最大の要因です。インターネットやクラウドサービスの普及により、企業や個人が日々生み出すデータ量は、爆発的に増え続けています。
特に近年、この流れをさらに加速させているのが、生成AIと5Gという2つの新技術です。生成AIは膨大なデータを学習し、高度な成果を生み出すため、これを支える高性能なデータセンターが不可欠です。また、5Gの普及によって、モバイルデバイスから発生するリアルタイムデータの処理需要も大規模に増加しています。
こうした需要を実質的に創り出しているのが、Amazon Web Services、Microsoft、Google Cloudといった「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大クラウド事業者です。彼らは、自社サービスの拡張のため、自ら大規模なデータセンターを建設するだけでなく、外部のデータセンター事業者からもスペースを大規模に借り上げます。このため、データセンター事業を成功させるには、彼らが求める非常に高い水準の電力供給能力、セキュリティ、ネットワーク接続性を満たすことが、事実上の業界標準となっています。
さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、社会の働き方を大きく変え、多くの企業がテレワークを導入しました。これにより、クラウドベースの業務システムへの依存が急激に高まり、データセンターの需要が長期的に高まる結果となりました。
データセンター事業のメリットと収益構造
データセンター事業は、事業会社にとって非常に魅力的な特性を持っています。最大の魅力は、その安定した収益性です。データセンターは企業のIT基盤を支える不可欠なインフラであり、顧客との間で長期契約（一般的に10年以上）が結ばれることが多いため、安定的なキャッシュフローが見込めます。
データセンター事業の2つの主要なビジネスモデル
データセンター事業には、主に2つの収益モデルが存在し、それぞれ事業の性格が異なります。
・コロケーション（リテール）: サーバーラック単位でスペースや電力を貸し出すモデルです。多品種少量型のサービスで、多くの顧客にサービスを提供するため、収益性が高いのが特徴です。
・ホールセール: データセンターのスペースや電力を、フロア単位や建物全体といった大きな規模で一括して貸し出すモデルです。主にハイパースケーラーなど、大量のインフラを必要とする顧客向けで、安定した大規模な収益が見込めます。
また、データセンター事業は、地域の経済活性化にも貢献します。大規模な施設の建設は、建設業や関連サービスに大きな需要を生み出します。さらに、データセンターは、単なるインフラではなく、AIやIoT、5Gといった新技術が集まるイノベーションのハブとしての役割も果たします。
データセンターは社会的な基盤を支える不可欠な存在であり、その需要がなくなることは考えにくいため、長期的な事業継続性が高いアセット（資産）と言えます。
データセンター事業が直面する課題とリスク
一方で、データセンター事業には、特有の課題とリスクが存在します。
1. 高額な初期投資と建設リスク
データセンターの建設には、極めて高額な初期投資が必要です。建設費に加え、高性能なサーバーや冷却システム、セキュリティ対策など、最新技術への投資が不可欠です。特に日本国内のハイパースケール向けデータセンターの場合、1施設あたり数千億円規模の投資が必要になることもあります。
さらに、現在の日本市場では、以下のようなリアルな事業リスクが顕在化しています。
・土地不足と価格高騰: 特に電力インフラが整った首都圏近郊では、データセンター用地の獲得競争が激化し、土地価格が高騰しています。
・建設コストの上昇と工期の長期化: 資材価格の高騰や、データセンター建設に対応できる専門的な建設会社・技術者の不足により、建設コストと工期が計画を大幅に上回るリスクが高まっています。
2. 電力供給のボトルネック
データセンター事業における最大の課題は、単なる電力の「量」ではなく、電力網に接続する「権利」、すなわち「系統接続」の確保です。特に日本では、都市部近郊で大規模な電力を安定的に供給できる変電所の空き容量が枯渇しており、データセンターを建設したくても電力を確保できない事態が頻発しています。この電力インフラの制約こそが、今後のデータセンター事業の立地と実現可能性を規定する、最も重要な要因となっています。
3. セキュリティと自然災害のリスク
データセンターは膨大な機密データを扱うため、サイバーセキュリティリスクが極めて高い事業です。情報漏洩や不正アクセスが発生した場合の影響は計り知れません。このため、高度なセキュリティ管理体制の構築と、継続的なコスト・リソースの投入が不可欠です。
また、日本国内のデータセンターは、地震や洪水、台風といった自然災害のリスクに常にさらされています。災害時にも安定した運用を確保するため、物理的に離れた複数拠点での冗長化（Disaster Recovery）や、自家発電設備などへの追加投資が必要となります。
今後の展望：サステナビリティと事業の未来
データセンター市場の今後の拡大は確実視されており、関連する事業機会も広がっています。しかし、データセンターの電力消費量増加は、脱炭素社会の実現に向けた喫緊の課題です。
データセンターの脱炭素化は必須の要請ですが、それは大きなコスト負担とのトレードオフの関係にあります。例えば、24時間365日の安定稼働が求められるデータセンターにとって、天候に左右される再生可能エネルギーだけで電力を100%賄うことは極めて困難であり、高価な蓄電池やバックアップ電源への追加投資が不可欠です。この「サステナビリティ」と「経済合理性」、そして「安定供給」という3つの要素をいかに両立させるかが、現代のデータセンター事業における最も難しい経営課題です。
データセンター事業は、デジタル社会の基盤を支える重要なビジネスであり、今後も着実に拡大が見込まれます。しかし、その成功は、単に需要の増加を追いかけるだけでなく、電力供給の制約、建設コスト、そしてサステナビリティといった複雑な経営課題にどう向き合うかにかかっています。
データセンターに関する求人ポジション
コトラでは、データセンターに関する求人ポジションを取り揃えております。
大手通信事業会社でのデータセンタービジネス拡大に向けたビジネス企画・提案支援の求人
【ポジション概要】
＜ビジネス企画＞
・サービス戦略 ： DCグランドデザイン（ビル／フロア新設、DC統廃合）、運営体制の見直し、マネージドサービス等の拡充
・収支管理 ： DC販売の月次管理、収支改善に向けた検討検討・推進
・投資/費用管理 ： DC構築・運用に関する予算管理、実績管理、納期・コストコントロール
・原価管理 ： DC原価の管理、DC価格改定の検討
・グリーン対応 ： DCグリーン化方針検討、実現方式検討、実行推進
＜提案支援＞
・法人ユーザ／キャリア／ISP／ハイパースケーラーをアカウントする営業に対するDC提案支援
・大型・重要案件に対する要件定義／方式検討／仕様調整／納期調整／積算、構築・運用チームを含めたプロジェクトマネジメント
【関西】大手銀行系システム開発会社でのITサービスを担うシステム運行管理者（データセンターでのシフト勤務）の求人
【ポジション概要】
（雇入れ直後）
大手金融システムの安心・安全を支えることをミッションとし、システム運行管理業務を担って頂きます。
具体的には、
・データセンター（以下DC）でのシフト勤務（交代勤務）
・協力会社によるシステムのオペレーション業務、及び監視業務の運営管理
・障害発生時は開発担当者と協働で問題解決にあたり、影響範囲の極小化やリカバリーなど現場に於ける一次対応を担当。
・平時においては、運行管理の傍ら、オペレーションスキルの維持・向上、ヒューマンエラーを防止する様々な改善活動の企画・立案・推進を行います。
大手電気通信事業会社での法人営業＜外資系通信事業者、テック企業、インターネットプロバイダ、データセンター事業者＞の求人
【ポジション概要】
お客さまに対し、私たちが持つ国内外の通信ネットワーク、インターネット、データセンターサービスを中心とした通信インフラサービスの売上拡大を行っていただきます。
お客さまごとの個別要望に対応するため、新たなサービスの企画・立案から、案件の創出、条件面の交渉、受注から構築完了までを一貫してご担当いただきます。
また、ハイパースケーラーを担当するチャンスがあるため、大型案件に取り組んだり、IT業界の最先端を肌で感じ取ることができる環境です。
主に、大手外資系企業を担当するため、語学力（主に英語、中国語ができると尚可）を用いたコミュニケーション（会話、メール）により、グローバルなご活躍が可能です。
大手総合電機会社でのデータセンタービジネス 日本マーケットGTMリードの求人
【ポジション概要】
データセンタービジネスチームのもと、日本におけるプレのエンジニアリング提案活動をリード
グローバルデータセンター事業者（ハイパースケーラ、コ・ロケータ等）に対するプレのエンジニアリング提案活動に注力し、当社データセンターの能力を示し、顧客の技術的およびビジネス要件を理解する。
営業チーム（GM&S、BU営業）と連携した顧客対応を行う
CI、エネルギー、DSS分野の関連BUをグローバルにつなぎ、適切なソリューション/製品/サービスを顧客に提案する。
データセンター戦略を理解し、日本での実行をサポートする。
外資系不動産ＡＭ会社でのデータセンター開発におけるプロジェクトマネージャーの求人
【ポジション概要】
当社のコンストラクションチームの一員として、当社およびパートナー会社と連携し、日本各地の当社の新しいデータ センターの設計、調達、建設、竣工を円滑かつ効率的に行う。
日本におけるデータ センターのプロジェクト管理と竣工、テナントに引き渡しまでを担当する業務。
コトラでは、上記以外にも非公開求人を含む多数の求人をご案内可能です。
ご興味ございましたらお気軽にお問い合わせください。
