農業分野におけるAIの活用事例13選

収穫から選別まで一任せ、スペイン出身の凄技ロボット
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農業は、日照条件や降雨あるいは突発的な病気の蔓延などの自然環境に左右されやすい産業でした。その為、これまでは経験・知識・勘など人の力が介在する必要が多くありました。しかし、AIの登場と先端テクノロジーの活用によって、農業は大きく変わりつつあります。

特に海外では、アグテック(Agriculture:農業とTechnology:技術の造語)と呼ばれる分野が確立されつつあります。これまで経験・知識・勘などにより人が判断してきた事を、蓄積されたビッグデータやAIが取って代わりつつあります。それだけではなく、人が予測不可能だったデータや未然に察知できなかった異常も含め、全ての事をAIに任せようとする動きも出てきています。

本記事では、海外で進んでいる農業分野でのAI活用事例13選をご紹介します。

農業分野におけるAI活用事例13選

人工衛星で、人間の眼では捉えきれない情報を察知

satellite - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://www.restec.or.jp/satellite/landsat-8
Landsat(ランドサット)はアメリカ航空宇宙局の人工衛星です。上空から撮影した画像を受信することで、地球表面の環境データを観測して提供します。Landsatの環境データは特に発展途上国での圃場整備をする際に役立つと期待されています。というのも、例えばインドで干ばつが起こって緊急支援や融資をする必要があった場合、同じ地域内でも農家が受けた被害は異なってきます。発展途上国では融資をする際の判断材料が乏しいため、解決につながると期待されています。

同じくアメリカ航空宇宙局が人工衛星を活用したものに、PACEと呼ばれるプログラムもあります。衛星写真から微生物とプランクトン、酸素と二酸化炭素の濃度がどのような影響を及ぼしているのか収集するプロジェクトです。ここには人工知能とクラウドコンピューティングによって衛星写真を分析する技術、マクロスコープが使われています。海水温度が6℃上昇することで、酸素の70%を生産していると言われている植物プランクトンが絶滅してしまう可能性があるというデータがあり、その問題の対策を立てるために活用されることが期待されています。

アメリカの農家の3分の1以上が利用するサービス

farmlogs - 農業分野におけるAIの活用事例13選

Farm Logs社はアメリカのベンチャー企業で、気象データや衛星画像・IoTデバイスといった様々なデータを基にして作物の健康状態や成長具合、土壌の栄養状態から収穫量の予想についてまで、様々なデータを農家に提供するサービスをしています。実際に、アメリカの農家のうち3分の1以上がFarmLogs社のサービスを利用するほど人気を集めています。FarmLogs Flowは農業機械に接続することで農作業のより細かな記録が可能となっています。

収穫から選別まで一任せ、スペイン出身の凄技ロボット

agrobot - 農業分野におけるAIの活用事例13選

スペインで農業用ロボットを提供しているAGROBOTが作り出したSW6010には、光学認証技術が使われています。これまではイチゴの収穫をする際には、人間の眼で1つずつ熟れているかどうかを確認して、取らなければなりませんでした。ですが、SW6010に搭載されている光学認証技術であらゆる角度からイチゴの写真を撮ったあと、熟しているかどうかロボットが判断して、適切な実だけをカットします。さらに、大きさごとに分類してケースに詰めていきます。スペインでは数多くの賞を獲得しているほど評価の高いロボットです。

もはや人の手要らず、自走するブドウ収穫ロボット

Wall Ye - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2209975/Meet-Wall-Ye-The-French-grape-picking-robot-work-day-night–vineyard-workers-job.html
フランスのWall-Ye社が手がけたのは、ワイン用のブドウを収穫するロボットです。ブドウもやはりこれまでは1つずつ熟れているかどうかを人間の眼で確認する必要がありましたが、このロボットは自走しながら木をどんどん見て回り、実ったブドウを切り落としていくだけでなく、同時に伸びすぎた枝の剪定作業もすることができます。ロボットにはカメラが6台搭載されており、自走しながら同時にブドウの木の形状も記憶することができます。

人間には気づかない危険を察知、ハチの安全を守るアプリ

beescanning - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://www.kickstarter.com/projects/1418874888/beescanning
スウェーデンの養蜂家であるビョルン・レーヤマンが研究者たちと開発したアプリケーションがBeeScannning(ビースキャンニング)です。このアプリケーションはハチのコロニーに近づいて寄生して、命を奪ってしまう危険なダニ、ミツバチヘギイタダニのような害虫の兆候をアルゴリズムを使って見つけて、早期退治につなげることができます。また、現在害虫を処置する長期的に効き目のある化学薬品が作られていないため、同時に害虫を研究するツールとしても期待されています。

レタスの管理はお手の物、化学物質の使用を減らすスーパーマシン

LettuceBot - 農業分野におけるAIの活用事例13選

ブルーリバー・テクノロジー社が作り出したLettuceBot(レタスボット)は、一見すると普通のトラクターのように見えますが、機械学習エンジンが搭載されています。1分間に5000個ずつの花の蕾を撮影して、生育し始めたレタスの間隔や形を認識して、6mm以内の誤差で雑草を確認して除草剤を散布します。また、混み合ったところにも除草剤を散布して、栄養が行き渡らせるようにして生育を助けることもできます。LettuceBotによって、これまで人手や農薬を利用することでしていた除草作業を一任できるだけでなく、化学物質の使用を90%削減することも期待されています。

コーヒー農家の生活を保証する計量マシン

Bext360 - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】http://jp.techcrunch.com/2017/04/12/20170411bext360-is-using-robots-and-the-blockchain-to-pay-coffee-farmers-fairly/
アメリカの企業、Bext360は一見すると秤のようにしか見えないモバイルロボットを作りました。このロボットはコーヒー豆の品質を分析して計量し、良品かどうかを見極めます。そして優・良・可といったマークを付けて評価します。また、Bext360では公正価格を交渉するアプリケーションも提供しています。コーヒー栽培で生計を立てている農家の家族は1日2ドル未満以下で生活しているというデータがあるため、こうしたロボットやアプリケーションは不当な中間搾取をなくし、フェアトレードを推進する働きが期待されています。

もはや人の手要らず?!イスラエルで進む夢のプロジェクト

Prospera - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://www.businessinsider.com.au/prospera-robot-can-see-dying-plants-before-farmers-2016-7
イスラエルのベンチャー集団Prospera Technologiesは、農場の管理をすべてAIに任せてしまおうという取り組みを進めています。農場に設置されたセンサーとカメラが気温・湿度はもちろんのこと、作物の健康状態や病気、害虫などを検出してそれに応じて水分や肥料、採取時期を見極めるだけでなく、収穫量を予測するシステムの開発を進めています。イスラエルは灌漑技術によって食料自給率が95%にも上る農業大国のため、こうした全自動管理の実現は大きな期待が寄せられています。Prospera Technologiesは現段階で植物の危機を察知して対処するシステムが開発されていることから、これからも新しい技術が生み出されていくことでしょう。

牧羊犬の役目までロボットが?!

robots to dogs - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://qz.com/147359/why-farmers-and-cows-prefer-robots-to-dogs/
シドニー大学の准教授、ケンドラ・ケリスクが開発したロボットは、牛を追いかける一風変わったロボットです。オーストラリアは広大な土地があるため、牛が放し飼いされています。のびのびとした光景ですが、日が暮れると元いた柵の中に戻さなければいけません。もしかすると犬が羊を追い回しながら柵へと誘導している姿をどこかで見たことがあるかもしれませんが、それと同じ役割をロボットが担っているのです。1匹だけ抜け出そうが、ロボットは逃しません。どこまででも後ろを追いかけていきます。

まるで生き物のようなロボットアーム

softgripper - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://www.projectdesign.jp/201501/robotbiz/001793.php
アメリカのハーバード大学が開発したsoft gripperと呼ばれるロボットアーム用のグリッパーは、内部で空気圧を調整して、まるで生き物のように自由自在に動き、対象物を優しく掴み取ることができます。ロボットアームといえばこれまでは力加減が難しく、握りつぶしてしまったり、こぼれ落とすようなイメージがあったのですが、まるで人間の手のようなアームによって掴む技術は、繊細な作物の収穫など様々な場面で活躍が期待できそうです。

コンピューターが制御する野菜栽培

mit - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://www.media.mit.edu/projects/food-server/overview/
アメリカのマサチューセッツ大学のメディアラボの所長であるケイレブ・ハーパーが提案したのは、一風変わった取り組みです。野菜であれ果物であれ、植物を育てるためには土が必要ですが、それをコンピューターが制御する空間で栽培するというものなのです。ハーパー氏が言うには、植物の味を決定づける最大の要因は生育環境にあるとのことです。つまり、生育環境を全く同じように再現することができれば、どこででも美味しい野菜を作り出せるのではないかということです。これまでの農業の概念を覆すようなアイデアですが、もし実現すると農業に必要な知識や経験・勘といったものを蓄積して共有し、どこででも美味しい野菜が食べられるのではないでしょうか。

森林破壊の監視にもAIが活躍

forest - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】http://www.wri.org/blog/2017/07/global-tree-cover-loss-remains-high-emerging-patterns-reveal-shifting-contributors
WRI(世界資源研究所)は、ビッグデータを取り扱うアメリカの会社Orbital Insightと提携して、森林破壊を監視して予測する取り組みを進めています。衛星写真から撮影された膨大なデータを人口知能が分析することによって、新しく建設される道路や、森林伐採の兆候を事前に把握して、どの森が危険にさらされる可能性が高いかを予測します。その結果は当局者に提供されて、開発活動などを防ぐために利用されます。人間では察知できない動きを予測できるのもAIだからだと言えます。

病気の判断までAIにお任せ!

PlantVillage - 農業分野におけるAIの活用事例13選

【出典】https://www.crowdai.org/challenges/1
アメリカのペンシルベニア大学の物理学者と研究チームはコンピューターに学習させた5万ものイメージから、植物の健康状態を識別できるようになっています。PlantVillageは人工知能にさらに学ばせるためのアプリケーションで、世界中の農家が病気にかかった作物のデータを写真として掲載しています。それを専門家が診断することでデータとして蓄積していきます。今後の展望として、病気にかかった植物に適切かつ迅速なアプローチが取れるように人工知能が特定してくれることが期待されています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。海外で確立されてきているアグテックによって、これまで長年かけて確立・蓄積されていた知識やデータがどんどん学習されて人工知能に集約しています。その結果、人間が目で見て判断する時代から、AIがカメラで見て判断するだけにとどまらず、分析して予測を立てていく時代へと移り変わっています。

こうした流れによって、生産の効率が格段に上がるのはもちろんのこと、病気や害虫に対しての素早いアプローチ、生産物の品質の向上、はたまた人間がこれまでしていた収穫という手作業までAIが担うようになってきています。これからもアグテックによる農業分野へのAIの進歩は進んでいくことでしょう。どこまで便利になっていくのか、これからも注目が集まります。

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コトラ(広報チーム)