M&Aはこう進む!基本的な流れとステップを分かりやすく解説

M&A(Merger and Acquisition)とは、企業の合併や買収を意味し、現代の経営戦略において非常に重要な手段です。企業が成長を目指したり、新しい市場へ参入したい場合だけでなく、近年では後継者不足に悩む中小企業が、事業を存続させるためにM&Aを選択するケースが増えています。
M&Aは、単に会社が一緒になるだけでなく、売り手と買い手双方にとって新たなビジネスチャンスを拡大させる可能性を秘めています。しかし、その成功には計画的かつ効率的なプロセスが不可欠です。
この記事では、M&Aの基本的な流れと具体的なステップを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

M&Aの基本的な流れとは

M&Aの概要と重要性

M&Aは、企業が競争力を高め、持続的な成長を実現するための有力な手段です。例えば、自社でゼロから立ち上げるよりも、既存の事業を持つ会社を買収する方が、新規事業への参入や事業ポートフォリオの多角化において、時間やコストを大幅に削減できる場合があります。また、競合他社を買収することで市場シェアを拡大し、規模のメリットを享受したり、異なる技術やノウハウを持つ企業同士が組むことで、単独では生み出せない新たな価値(シナジー)を創出したりすることも可能です。さらに、中小企業の経営者にとっては、親族や社内に後継者がいない場合でも、M&Aによって事業を次世代に引き継ぎ、従業員の雇用を守るという重要な選択肢にもなり得ます。M&Aはこれらの目的を達成するための戦略的な手段であり、その成功は企業の将来に大きな影響を与えます。

M&Aのプロセスを大まかに分けると

M&Aの一連の流れは、大きく4つの段階に分けられます。まず1つ目は「検討・準備フェーズ」です。この段階では、M&Aの目的を明確にし、自社の現状を詳しく分析しながら、どのようなM&Aを目指すのか、売却や買収によって何を達成したいのかといった計画を立てます。同時に、M&Aの専門家や仲介業者を選び、概算の売却価格や適切なM&Aの形(スキーム)を検討します。

次に2つ目は「打診・交渉フェーズ」です。ここでは、候補となる企業を探し、秘密保持契約(NDA)を結んでお互いの情報を交換しながら、基本的な条件について交渉を進め、基本合意契約の締結を目指します。

3つ目は「最終契約フェーズ」です。買い手企業が対象企業の詳細な調査(デューデリジェンス)を行った上で、最終的な契約内容を決定し、最終契約書を締結します。その後、M&Aの取引が完了するクロージングが行われます。

そして4つ目が「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」です。これはM&Aの取引が完了した後に行われる統合作業を指します。買収の目的を達成し、最大の効果を生み出すために、組織やシステム、企業文化などを統合していく非常に重要なプロセスです。M&Aプロセスを成功させるためには、これらの4つのステップを一つひとつ着実に進めていくことが欠かせません。

事前知識として押さえておくべきポイント

M&Aを進めるにあたり、事前にいくつかのポイントをしっかりと理解しておくことが成功への鍵となります。まず、目的の明確化が最重要です。なぜM&Aを行うのか、具体的にどのような成果を期待するのかを事前に計画として明確にすることが最も大切で、目的が曖昧だと途中で方針がぶれてしまい、適切な判断ができなくなる可能性があります。次に、M&Aは法律、税務、財務、労務など、多岐にわたる専門知識を要するため、専門家の活用は必須です。M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士といった専門家と連携することで、適切なアドバイスを受け、潜在的なリスクを回避しながらプロセスを進めることができます。さらに、M&Aのプロセスでは企業の機密情報が多数やり取りされるため、徹底した情報管理も重要なポイントです。情報漏洩を防ぐため、初期段階で秘密保持契約(NDA)を締結し、情報の取り扱いには細心の注意を払う必要があります。これにより、安心して情報を開示し、信頼関係を築くことができます。これらの事前準備をしっかりと行うことで、M&Aのリスクを最小限に抑え、スムーズな進行がおこなえるようになります。

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M&Aの具体的なステップ

M&Aのプロセスをより具体的に見ていきましょう。

戦略の策定と目的の明確化

M&Aを成功させるためには、まず最初に「なぜM&Aを実施するのか」という明確な目的を設定することが非常に重要です。例えば、新規市場への参入や事業ポートフォリオの多角化、既存事業の強化やシナジー(相乗効果)の創出、後継者問題の解決や事業承継、あるいは企業の規模拡大による競争力強化などが考えられます。この段階で、M&Aの狙いや方向性を具体化し、自社にとって最適な戦略を策定します。同時に、自社の財務状況や経営資源を正確に把握し、現実的に実行可能なM&Aの形(スキーム)を検討することも大切です。目的を明確にすることで、一連の流れの中で判断に迷うことなく、適切な意思決定が可能となります。

対象企業の選定と市場調査

次に、M&Aの対象となる企業を選定するフェーズに進みます。対象企業の選定にあたっては、自社のM&A目的や戦略に合致しているか、そして規模や事業領域の適合性を考慮し、自社との相性や統合のしやすさも重視します。M&A仲介業者やアドバイザーは、この段階で、自社の希望に沿った潜在的な候補企業をリストアップし、絞り込む手助けをしてくれます。また、候補企業の財務状況、市場での競争ポジション、業界の動向など、詳細な市場調査も行い、戦略的に有利な取引先を見つけるための情報を収集します。

初期交渉と秘密保持契約の締結

候補企業が特定された後は、初期交渉に進みます。この段階では、多くの場合、売り手企業と買い手企業のトップ同士の面談が行われます。ここでは、お互いのM&Aに対する考え方や目的を確認し、基本的な条件について大まかに話し合います。この際、企業の機密情報が外部に漏れるのを防ぐために、「秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)」を締結することが一般的です。NDAを結ぶことで、お互いが提供する情報の管理を徹底し、その後の詳細な情報開示や交渉を安心して進めるための信頼関係を築くことができます。初期交渉で基本的な合意が形成されることは、その後の複雑な交渉をスムーズに進めるための重要な基盤となります。

デューデリジェンス(詳細調査)の実施

初期交渉が成立し、基本合意契約が締結された後、買い手企業はデューデリジェンス(DD)と呼ばれる詳細な調査の段階に移ります。このプロセスでは、対象企業の財務状況、法務リスク、事業運営、労務環境、税務など、さまざまな側面を包括的かつ専門的に調査します。具体的には、財務諸表の分析や会計処理の適切性の確認、契約内容の合法性や訴訟リスクの有無の検証、事業の将来性や市場競争力の評価、従業員の状況や労務リスクの把握、そして税務リスクの調査などが行われます。デューデリジェンスの目的は、取引成立後に潜在的な問題やリスクが発覚するのを未然に防ぎ、買収の最終決定を裏付けるための十分な情報を収集することです。この調査には高度な専門知識が必要とされるため、M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家の協力を得ることが不可欠です。調査で得た情報を基に、取引条件の見直しや契約内容の最終調整を行うことが求められます。

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M&A契約からクロージングまで

デューデリジェンスが終わると、いよいよ最終的な契約へと進みます。

最終契約の取り決め

M&Aの一連の流れの中でも「最終契約の取り決め」は最も重要な局面の一つです。この段階では、デューデリジェンスの結果をもとに、買い手と売り手が最終契約書の内容を詳細に精査し、条件を詰めていきます。事業譲渡や株式譲渡といったM&Aの形(スキーム)に基づき、譲渡価格や支払い条件、保証事項、表明保証条項(売り手企業が特定の事実が真実であることを保証する内容)などが具体的に記載されます。合意内容に曖昧な点を残さないためにも、法律顧問や税務アドバイザーといった専門家の関与は必須です。ここでの調整がスムーズに進むかどうかが、M&A成功の鍵を握ります。

正式契約の締結手順と注意点

最終契約書の内容が固まれば、いよいよ正式契約の締結に移ります。この手順では、売り手と買い手、および関係者全員が書面に署名・押印し、法的拘束力が発生します。この際、秘密保持契約の内容を再度確認し必要に応じて更新することはもちろん、M&Aが完了した後、新経営方針や従業員への周知をどのようにアナウンスするかを事前に計画しておく必要があります。また、M&A契約書には、売り手側の経営者が個人として債務を保証する「経営者保証」や、特定の事実が真実であることを表明し保証する「表明保証条項」が含まれることがあります。これらの条項は後のリスクに直結するため、専門家と慎重に確認を行うことが極めて重要です。ここで不備があると、後々法務トラブルに発展する可能性があるため、細部にわたる確認が欠かせません。

クロージングに必要な手続き

正式契約締結後に行われるクロージング(取引完了)は、M&Aの一連の流れを締めくくる最終的なプロセスです。クロージングでは、譲渡資金の送金や株式移転手続き、必要な許認可の取得といった活動が実施されます。また、売り手企業と買い手企業の間で役員の交代や権利義務の移行手続きも進められます。このプロセスでは、各種必要書類の準備漏れがないように細心の注意を払わなければなりません。さらに、クロージング後の統合作業(PMI)を見据えた体制づくりも、この段階で計画を進めておくとスムーズです。M&Aプロセスの最後を成功裡に終えるためには、正確かつ迅速な対応が求められます。

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PMI(統合作業)とその重要性

M&Aは、契約を締結して資金のやり取りが完了したら終わりではありません。むしろ、そこからが本当のスタートとも言えます。

PMIとは?M&A成功のカギとなるプロセス

PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、M&Aの一連の流れの中で、買収後に売り手と買い手の企業を統合する作業を指します。このプロセスは、M&Aの成功、ひいては企業価値の最大化に直結する非常に重要な要素とされています。PMIでは、単に組織や人材を一つにするだけでなく、経営方針や事業戦略の再構築、システムや業務プロセスの統合など、多岐にわたる調整が求められます。緻密な計画と実行がなければ、M&Aによって期待されたシナジー効果は発揮されず、かえって企業文化の衝突や従業員のモチベーション低下を招くリスクもあります。

統合計画の立案と実行の課題

PMIを効果的に進めるには、統合計画の段階で具体的なアクションプランを策定する必要があります。しかし、実際の現場では多くの課題に直面します。例えば、異なる企業文化を持つ組織が統合されることで、従業員間の摩擦が生じたり、これまでの働き方の違いがストレスになったりすることがあり、これが従業員のモチベーション低下や離職につながることも少なくありません。また、異なるシステムや会計基準、人事制度などをどのように統一するかは、技術的にも運用的にも大きな課題です。さらに、統合のプロセスにおいて従業員への情報共有が不足すると、不安や不信感が募り、PMIが円滑に進まない原因となります。これらの課題を乗り越えるためには、計画の段階で双方の課題を洗い出し、具体的な統合手順を考慮することが重要です。

PMI成功のために必要なポイント

M&Aプロセスを成功に導くためには、PMIの段階でいくつかのポイントを押さえることが求められます。まず、統合プロジェクトを推進する明確な責任者を設け、強力なリーダーシップのもとで進捗を管理することが不可欠です。適切なリーダーシップがなければ、統合作業がスムーズに進まず、結果的に想定していたシナジー効果を発揮できない可能性があります。次に、特に異なる企業文化を持つ場合、統合のビジョンや目的を共有し、オープンなコミュニケーションを促進することで、早期に信頼関係を構築し、一体感を醸成することが重要です。最後に、統合計画の実行段階でも、税務、法律、企業財務、人事戦略など、専門知識が必要な分野でプロフェッショナルのサポートを得ることが有効です。これにより、潜在的なリスクを軽減し、複雑な問題を効率的に解決できます。

M&A後の企業価値を最大化するために

M&Aは契約の締結がゴールではなく、統合作業を通じて成果を引き出すことが真の目的です。そのためには、M&A後の企業価値を最大化するための中長期的な視点が欠かせません。具体的には、統合後の企業の経営戦略を全社で共有し、統一されたビジョンを持つことで、従業員全員が同じ方向を向いて進み、組織全体のパフォーマンスが向上します。また、M&Aプロセス全体を俯瞰しながらも、現場レベルでの課題解決に注力することが重要で、経営層の視点だけでなく、現場で起こる具体的な問題にも目を向け、迅速に対応することが成功の鍵となります。さらに、データによる業績のモニタリングや定期的な見直しを行うことで、M&A後も継続してシナジー効果を高めることが可能になります。こうした取り組みを通じて、企業価値の向上だけでなく、従業員や顧客にとってもメリットを感じられる長期的な成功を目指すことが理想です。

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M&Aに関する求人ポジション

コトラでは、M&Aに関する求人ポジションを取り揃えております。

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大手総合商社の情報・金融部門での新規事業開発・M&A担当者の求人

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【ポジション概要】
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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。