徹底解説!信託銀行の基本と普通銀行との違い

金融機関には多様な種類がありますが、その中でも信託銀行は、一般的な銀行とは一線を画す専門性の高いサービスを提供しています。預金や貸付といったおなじみの銀行業務に加え、「信じて託す」という独特の仕組みである信託を通じて、個人や企業の多様なニーズに応える金融機関です。

現代社会において、相続対策や資産運用、事業承継など、お金に関する悩みは複雑化しています。このような状況で、信託銀行は単なる金融取引の場ではなく、資産の管理・運用・承継を専門的にサポートするパートナーとして、その存在意義を増しています。

この記事では、信託銀行がどのような金融機関なのか、そして普通銀行と何が違うのかを徹底的に解説します。信託業務の具体的な内容から、利用するメリット・デメリット、そして今後の展望まで、信託銀行の全体像を深く掘り下げていきます。

信託銀行とは何か?

信託銀行の定義と役割

信託銀行とは、銀行業務に加えて信託業務および併営業務(信託兼営業務として認められた、信託業務に関連する業務)を行うことができる特殊な銀行です。その主な役割は、顧客の資産を管理・運用し、多様なニーズに応えることにあります。具体的には、個人や企業が保有する金銭、不動産、有価証券などの財産を信託の形で管理し、受益者の利益を最大化することを目指します。また、相続や遺言執行、企業年金運用、株主名簿の管理といった専門的なサービスを提供することも特徴的です。

信託銀行の魅力は、幅広い業務内容それぞれで深い専門性を追求できる点にあります。また、皆さんが何気なく利用している制度やサービスの裏側にも信託銀行があり、裏方として社会に大きく貢献している点も、その存在意義を高めています。

普通銀行との大きな違い

信託銀行と普通銀行では、業務範囲に大きな違いがあります。普通銀行は主に預金、貸付、為替業務といった基本的な金融サービスを提供するのに対し、信託銀行はこれに加えて信託業務や関連する併営業務を手掛けます。

例えば、信託銀行では財産の信託や不動産の管理業務、企業年金運用など、専門的な範囲でのサポートが可能です。普通銀行が個人や企業の「日常的なお金のやりくり」を支える一方、信託銀行は資産運用や相続対策、事業承継といった、より高度な専門知識を活かしたサービスに重点を置いています。個人の資産形成から、企業のガバナンス強化まで、多様なニーズに対応する柔軟性を備えています。

信託業務とは?具体的な事例

信託業務とは、財産の委託者が信頼できる信託銀行に財産を託し、その財産を受益者のために管理・運用してもらう仕組みを指します。信託された財産は、信託銀行の固有財産とは区別されて分別管理されるため、万が一信託銀行が破綻しても受益者の財産は守られます。

具体例としては、相続の際に遺産を円滑に分配するための遺言信託や、資産の運用を目的とする金銭信託、企業が従業員持株会へ株式を交付する際に用いられる株式交付信託が挙げられます。また、不動産信託では、土地や建物といった不動産を信託銀行に託して効率的な管理や運用を行います。さらに、証券代行業務では企業の株主名簿を管理し、株主総会の運営も支援します。これらの業務によって、信託銀行は資産を有効活用するためのパートナーとして社会に貢献しています。

>無料キャリア相談会はこちら

信託銀行の歴史と背景

信託銀行の歴史は、日本の近代金融制度の発展とともに歩んできました。日本では20世紀初頭に信託業務が本格化し、専門の信託銀行が設立されました。

特に戦後の経済復興期には、信託銀行は重厚長大産業への資金供給において重要な役割を担いました。個人向けには「貸付信託」という商品を提供し、そこから集められた資金は、日本の高度経済成長を支える企業の設備投資に充てられました。これにより、信託銀行は単なる資産管理の専門家にとどまらず、日本の産業発展に大きく貢献しました。

その後、不動産投資や証券代行業務などの併営業務が追加され、信託銀行の業務内容はますます多様化しています。近年では、少子高齢化や相続紛争の増加を背景に、さらに専門性の高い信託商品の開発やデジタル化への対応が求められています。

信託銀行の主な業務内容

信託銀行は、従来の普通銀行業務に加え、特化した信託業務や併営業務を提供することで、多様な資産管理や運用ニーズに応える金融機関です。ここでは主に、信託銀行が行う銀行業務と信託業務、さらに不動産や証券代行といった特徴的な業務内容について詳しく解説します。

銀行業務(預金・貸付・為替)

信託銀行は、普通銀行と同様に預金、貸付、為替業務を行っています。個人や法人からの預金を引き受けたり、企業への融資を提供したり、振込や送金などの資金移動サービスを通じて日常的な資金管理支援を行います。これら銀行業務は、信託業務と併せて総合的なサービスを提供するための基盤となっています。

信託業務の種類(財産管理・運用)

信託業務は、信託銀行ならではの特徴的な業務であり、個人や法人の財産を管理・運用するためのサービスを含みます。例えば、金銭信託や株式交付信託、不動産信託などがあります。これらの業務を通して、顧客が自身の資産をより効率的に活用できるよう支援します。また、相続や事業承継に関する相談を取り扱う遺言信託や事業承継信託など、幅広い専門的サービスも提供しています。

不動産関連業務の役割と事例

信託銀行は不動産に関わる業務も得意分野の一つです。不動産仲介や鑑定を通じて、顧客の不動産資産の取引や価格評価に貢献します。また、不動産信託では、土地や建物の管理、収益の分配に至るまでの広範なサポートを提供します。例えば、大型商業施設の管理運営を目的とした不動産信託契約を活用することで、収益の最大化を図る事例があります。

証券代行業務の具体的内容

信託銀行が提供する証券代行業務は、企業の株主名簿の管理や、株主総会における運営サポートなどを行う重要な業務です。このサービスにより、企業は効率的な株主管理が可能となり、同時に法的な手続きを確実に進められるようになります。また、配当金の支払い代行や株式に関する情報提供などを通じて、株主の満足度向上にも寄与しています。

>無料キャリア相談会はこちら

普通銀行と信託銀行の具体的な違い

普通銀行と信託銀行は、同じ「銀行」という名称を持ちながらも、その業務内容や役割には明確な違いがあります。

お金を預ける仕組みと目的の違い

普通銀行は、主に預金者から集めた資金をもとに貸し出しを行い、利息収入を得る仕組みで成り立っています。預けられたお金は、銀行の判断で運用され、預金者は元本保証と利息を受け取ります。

一方、信託銀行では、銀行業務に加えて、金銭信託や有価証券信託、不動産信託など多様な信託業務を通じ、預けられた資産を管理・運用することが特徴です。信託された財産は、信託銀行の固有財産とは分別管理され、受益者の利益のために運用されます。このように、信託銀行は単なる預金の保管だけでなく、資産の運用や管理を担う重要な役割を果たしています。特に、企業年金の運用は信託銀行の運用業務において特徴的な項目の一つであり、「信託銀行=運用」というイメージの所以でもあります。

利用対象となる顧客層の違い

普通銀行の主な顧客層は、個人から法人まで幅広く、日常的な金融サービスが必要なすべての人々です。住宅ローンや消費者ローン、預金口座などを提供する一般的な銀行として、地域密着型のサービスを展開することが多いです。

一方、信託銀行はその専門性から、高額資産を持つ個人や企業、さらには相続対策・資産運用・事業承継を必要とする顧客が中心です。個人向けの資産形成や相続対策はもちろんのこと、法人向けの企業年金運用や事業承継支援など、大規模な運用や複雑な課題解決を必要とする顧客に選ばれることが多いです。

提供されるサービスの幅広さ

普通銀行は、預金業務、貸付業務、為替業務を中心とした基本的な金融サービスを提供します。その一方で、信託銀行は銀行業務だけでなく、信託業務や併営業務を行うことができます。

具体的には、不動産の信託・仲介、証券代行、相続に関するコンサルティング、企業年金運用、公益信託の運用、事業承継に関するコンサルティングなど、顧客の多様なニーズに応える幅広いサービスを提供しています。信託銀行は、通常の銀行よりも多岐にわたる業務内容を特徴とし、資産の長期的な活用や管理をサポートする役割を担っています。

>無料キャリア相談会はこちら

信託銀行のメリット・デメリット

信託銀行を利用するメリット

信託銀行を利用する大きなメリットとして、資産管理や運用における専門的なサポートが挙げられます。信託銀行は普通銀行が提供する預金や融資サービスに加えて、信託業務や併営業務を行えることから、非常に幅広いサービスを提供できる点が特徴です。例えば、資産の将来的な移転を見据えた遺言信託や、土地や建物など不動産の運用をサポートする不動産信託、そして企業年金の運用など、個別のニーズに即した高度なサービスが魅力です。

さらに、相続や事業承継、M&Aといった複雑な手続きにおいても、信託銀行の専門家がサポートしてくれるため、顧客が手間を省きつつ適切に資産を管理・承継することができます。また、信託商品を活用することで、税制面での優遇を受けられるケースもあるため、幅広い資産運用ニーズに応えられる点は大きな魅力です。

信託銀行の制約・デメリット

一方で、信託銀行にはいくつかの制約やデメリットも存在します。まず、普通銀行に比べて店舗数が限られているため、特に地方では利用が難しい場合があります。信託銀行は多くの場合、大都市に集中しており、そのアクセスのしづらさが利用者にとってのハードルとなることがあります。

また、信託業務や不動産関連業務などの専門的なサービスを利用する際には、比較的高い手数料が発生することが一般的です。そのため、信託銀行のサービスは、ある程度まとまった資産を持つ個人や、複雑な課題を抱える法人に向いており、小規模な資産管理を希望する顧客にとってコストパフォーマンスが悪いと感じられる可能性があります。

加えて、信託業務には高度な専門性が求められる分、通常の銀行業務と比べて契約手続きや審査が複雑になる場合があります。これらの点から、信託銀行のサービスを利用するかどうかは、コストや必要なサポート内容を十分に検討することが重要です。

普通銀行との選択基準とは

信託銀行と普通銀行を選ぶ際の基準は、その利用目的や必要とするサービス内容によるところが大きいです。

一般的に、預金や貸出、為替業務などの日常的な金融サービスを主に利用したい場合は、普通銀行が適しているといえます。

一方で、資産管理や運用といったより高度で専門的なニーズがある場合には、信託銀行が強みを発揮します。例えば、将来的な資産の移転を見越した相続対策をしたい場合、不動産の運用に特化した支援が欲しい場合、または企業年金の運用や事業承継など法人としての複雑な課題を解決したい場合には、信託銀行の利用が有効です。また、公益信託など社会貢献を視野に入れた運用を考えている場合も、信託銀行が適切な選択肢となります。

信託銀行と普通銀行の違いを理解し、自身のニーズに合った最適な選択を行うことが大切です。信託銀行の業務内容を正しく把握することで、資産管理や運用の選択肢が大きく広がるでしょう。

>無料キャリア相談会はこちら

信託銀行の今後の展望

現代における信託銀行の存在意義

信託銀行は、銀行業務と信託業務を通じて、顧客の資産管理や運用を包括的に支援する存在として重要な役割を果たしています。現代では、高齢化の進展や事業承継問題、個人の資産運用ニーズの多様化が進む中で、これら専門的なニーズを的確にサポートする信託銀行の存在意義がより一層高まっています。

特に、遺言信託や教育資金贈与信託など、個人の生活課題を解決するサービスは、一般的な銀行では提供できない付加価値の高いものです。また、法人向けには証券代行業務や企業年金運用、資産運用に関する顧問機能が強みとなり、企業戦略を支える重要なパートナーとしての役割も期待されています。信託銀行は、「幅広い業務内容でそれぞれ深い専門性を追求できる場」であり、「皆さんが何気なく利用している制度やサービスの裏側にいて、裏方としての存在意義が大きい金融機関」と言えるでしょう。

信託銀行を取り巻く市場の変化

近年、信託銀行を取り巻く市場環境は大きく変化しています。一つは、日本を含む多くの国で人口構造が変化し、資産の移転や相続に対するニーズが増加していることです。また、経済のグローバル化に伴い、個人や企業が保有する資産の形態がより複雑化し、信託銀行が提供する専門的なサポートの重要性が増しています。その一方で、低金利環境や金融規制の強化により、信託銀行の収益モデルにも挑戦が求められています。このような市場の変化に対応するため、信託銀行は資産運用や不動産関連業務の強化、新たな信託商品の開発に努めています。

デジタル化が信託銀行に与える影響

デジタル化は、金融業界全体に大きな影響を与えています。信託銀行も例外ではなく、オンラインサービスの充実やデータ分析技術の活用が求められる時代となっています。具体的には、リモートでの資産相談サービスやAIを活用した資産運用の提案プラットフォームの構築が進んでいます。また、ブロックチェーン技術を用いた透明性の高い信託サービスの提供など、新技術を取り入れることで顧客体験の向上を図っています。これにより、従来の対面型サービスと並行し、より利便性の高いツールを提供できるようになり、幅広い顧客層にアプローチすることが可能となっています。

将来的な信託業務の可能性

将来的に信託銀行が担う役割は、さらに広がることが予想されます。従来の財産管理や相続支援に加え、環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮を取り入れた信託商品や公益信託の提供が注目されています。例えば、再生可能エネルギーや社会貢献を目的とした信託スキームは、個人投資家や法人からの関心が高まっています。また、少子高齢化やデジタル社会の進展に伴い、デジタル遺産やデジタル資産の管理を視野に入れた新たな信託業務の必要性も議論されています。信託銀行が持つ専門性と柔軟性を活かし、時代のニーズに適応することで、さらなる成長が期待されます。

>無料キャリア相談会はこちら

信託銀行に関する求人ポジション

コトラでは、オルタナ投資に関する求人ポジションを取り揃えております。

信託銀行での審査業務_不動産担当の求人

【ポジション概要】
不動産に関する専門性を軸に、富裕層個人向け融資の案件審査関連業務
・不動産担保評価業務全般(外部委託業者の窓口対応を含む)
・富裕層個人向け融資の案件審査(個別案件相談、社内会議体付議用の審査資料作成・説明)
・既存案件にかかる期中管理業務(案件モニタリング、自己査定、当局検査等の対応)

を担当していただきます。

大手日系信託銀行での年金営業の求人

【ポジション概要】
・企業年金制度の設計から資産運用・管理に至るまで、様々な情報提供やコンサルティングの実施
・中長期にわたってお客様の企業年金を制度運営・資産運用の両面から支えていく業務
・制度・事務・運用など領域ごとにある社内専門部署の知見を活用してお客様にサービスの提供

を担当していただきます。

大手日系信託銀行でのプライベートデットファンドの運用の求人

【ポジション概要】
当社が組成・運用するプライベートデットファンドの企画・組成・運用業務を担当していただきます。

日系大手信託銀行でのクレジット投資の求人

【ポジション概要】
銀行の自己勘定取引として、国内外のクレジット商品を対象にグローバルな投資業務を行っています。

国内外クレジット投資業務において、AFS/HTM投資を中心に担っていただきます。また、海外出張もしていただき、海外の発行体や証券化オリジネーターとのリレーションを作っていただきます。

主な投資対象は、コーポレートボンド、証券化商品(RMBS、ABS等)、各種リパッケージ商品(アセットバックローン、ストラクチャードノート)、世界銀行・ECA(Export Credit Agency)および国際機関の保証付案件等、地域・資産クラスともに多岐にわたります。

信託銀行での富裕層担当営業の求人

【ポジション概要】
・富裕層(お預入れ資産1千万円相当以上)に対し、外貨を軸とした決済・資産運用・相続承継サービスを提供していただきます。
・プロファイリングに基づいたトータルコンサルティングの提供を通じ、顧客満足度の高い、誠実で信頼のおける長期リレーションの維持構築にあたっていただきます。
・グループ各社と連携、グループの富裕層顧客にもソリューションを提供していただきます。

信託銀行での不動産受託業務担当者の求人

【ポジション概要】
顧客営業や交渉、不動産のデューデリジェンス業務、契約書作成業務等の、クロージングに至る一連の信託引受営業を担当いただきます。

コトラでは、上記以外にも非公開求人を含む多数の求人をご案内可能です。

ご興味ございましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。