常勤と非常勤取締役の違いを知る7つのポイント

常勤取締役と非常勤取締役の基本的な定義

常勤取締役の役割と特徴

常勤取締役は、基本的に日常的に会社へ出社し、業務を執行する役割を担います。会社の経営に深く関与し、戦略策定や決定、日常業務の管理監督といった実務的な役割を担うことが特徴です。法令や社内規定に基づき、取締役会で決定された方針に従って具体的な行動を実施します。また、常勤取締役は社会保険への加入が義務付けられており、勤務形態が雇用契約者と似た側面を持ち合わせています。中小企業から大企業まで、組織形態を問わず設置される重要なポジションです。

非常勤取締役の役割と特徴

非常勤取締役は、会社から必要なときに招集され、主にアドバイザー的な役割を担うケースが多いです。常勤とは異なり、日常的な業務執行には関与せず、会社の要請に応じて会議や取締役会に参加し、重要な意思決定に携わります。特に専門性や経験が重視されるため、経営者の家族や顧問役としての立場で選任されることが一般的です。また、非常勤取締役には社会保険への加入義務がない点も特徴といえます。このように、非常勤取締役とは必要に応じて経営に貢献する柔軟な形態の取締役を指します。

法的な定義の有無と会社法の位置づけ

会社法において「取締役」としての法的定義は存在しますが、「常勤取締役」や「非常勤取締役」に関する明確な区別や定義は設けられていません。法律上では、常勤と非常勤の取締役も同等の責任および権限を持つとされています。一方で、実務的には業務内容や関与度合いが大きく異なるため、多くの企業では就業規則や内規で常勤・非常勤の役割を分けて運用しています。このように、法律上の規定がないゆえに解釈や運用は個別企業ごとに異なるケースがあります。

社外取締役との違い

非常勤取締役と社外取締役は区別されるべき存在です。社外取締役は会社法で明確に定義されており、原則としてその会社やその子会社の業務執行を行わない独立した立場の取締役を指します。一方で、非常勤取締役とは、業務執行には関与せず非常時や取締役会に参加する形態の取締役を意味します。非常勤取締役が必ずしも社外であるとは限らず、内部の関係者や経営者の家族が選任されるケースもあります。そのため、「非常勤とは社外的な業務」に限定されるわけではなく、柔軟な運用が特徴的です。

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勤務形態と関与の度合い

常勤取締役の勤務時間と業務範囲

常勤取締役は、会社に日常的に出社して業務を遂行する役割を担います。一般的に、常勤取締役はフルタイム勤務を基準として活動し、会社の経営方針の策定や重要事項の決定、実務面での経営管理に深く関与します。また、内部の従業員や経営陣とのコミュニケーションを密に取りながら、会社の成長戦略を実現するための指揮を執ることが期待されます。例えば、中小企業における常勤取締役は財務管理や営業戦略を直接的にリードすることが一般的です。

非常勤取締役の非常駐業務と活動範囲

非常勤取締役とは、日常的に出社せず、会社からの必要な要請や特定の業務に応じて関与する形態の取締役を指します。非常勤取締役は、通常、特定の専門分野における助言提供や経営課題に対するアドバイスを行うことが主な業務となります。非常勤取締役の活動範囲は会社によって異なりますが、具体的には取締役会への出席や特定プロジェクトの助言を行うケースが多いです。このため、非常勤取締役は柔軟な勤務形態で、外部の知見やスキルを会社経営に活かす重要な役割を果たします。

取締役会への参加頻度の違い

常勤取締役と非常勤取締役では、取締役会への参加頻度にも明確な違いがあります。常勤取締役はフルタイムで会社の経営に関与しているため、ほとんどすべての取締役会に出席し、重要事項の意思決定や方針策定に積極的に関わることが求められます。一方、非常勤取締役は非常駐であるため、取締役会への出席は必要に応じた頻度に留まることが多く、特に重要な議題が議論される場面や、自身の専門分野に関する審議に参加する傾向があります。そのため、非常勤取締役の参加は効率的に専門性を活かす形で行われます。

具体的な業務例と実践事例

常勤取締役では、日常的な業務として財務管理や従業員の雇用管理、営業戦略の調整など幅広い業務を行います。たとえば、特定の事業部門の管理を担当する常勤取締役は、毎日の業務進捗を監視しながら経営計画通りの進行を支援します。一方、非常勤取締役は、特定プロジェクトにおける経営戦略のアドバイスや、会社の法的問題に関する助言を行うケースが一般的です。実際に、専門知識を有する人材を非常勤取締役として招き、IPO準備などの重要プロジェクトを成功に導いた事例もあります。このように役職ごとの業務範囲や具体例を踏まえると、常勤と非常勤の違いとその活用方法が明確になります。

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報酬体系と社会保険の取り扱い

常勤取締役の報酬と社会保険加入義務

常勤取締役は、企業経営の中枢を担う役割を果たすため、報酬は比較的高い水準に設定されることが一般的です。また、常勤取締役には労働基準法上の雇用契約は適用されないものの、社会保険への加入が義務付けられています。具体的には、健康保険や厚生年金保険などが対象となります。これにより、取締役個人はもちろん、企業側としても一定の社会保険料の負担が発生します。特に非常勤取締役との比較では、この点が大きな違いとして挙げられます。

非常勤取締役の報酬相場と税務のポイント

一方で、非常勤取締役では報酬が業務実績や関与の度合いに応じて設定される場合が多く、常勤取締役と比べて低めの水準となることが一般的です。また、非常勤取締役が受け取る報酬は、給与所得ではなく役員報酬として扱われ、これにより税務処理も異なる点が特徴です。さらに、非常勤取締役は通常、社会保険への加入義務がありません。このため企業側の社会保険料負担が発生せず、運営コストの軽減が期待できます。ただし、税務調査の際に報酬の妥当性が問われるケースもあるため、役員報酬の設定には注意が必要です。

非常勤から常勤に変更する際のコスト影響

非常勤取締役を常勤取締役へ変更する場合、企業にとってはコスト面での影響が少なくありません。まず、常勤への変更に伴い社会保険の加入が義務化されるため、企業の負担する保険料が増加します。また、常勤取締役としての報酬も、非常勤時に比べて高くなる傾向にあります。このようなコスト増加を見越して事前に資金計画を立てることが重要です。更には、常勤化によって会社と取締役間の関与度合いが増加し、役割の明確化が求められるため、契約内容や業務範囲の見直しが必要となる場合もあります。

節税を目的とした非常勤活用の注意点

非常勤取締役を活用することは、節税の観点で効果的とされることがあります。たとえば、家族を非常勤取締役として登用し、報酬を適切に分散することで税負担を軽減する方法が広く知られています。しかし、このような手法を採用する場合、報酬の適正性が税務調査の際に確認されます。不自然に高い報酬を支払っている場合は、否認されるリスクが高まります。また、非常勤取締役が実質的に業務を行っていないとみなされると、不適切な役員報酬と判断される可能性もあるため、金額設定や業務実態の整合性が重要です。

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配置のメリットとデメリット

常勤取締役配置のメリットとリスク

常勤取締役を配置することで、会社運営において迅速かつ的確な判断を下す体制を整えることができます。日常的に会社に常駐しているため、社内外の業務に深く関与しやすく、社員とのコミュニケーションも密接に行うことが可能です。また、業務の遂行状況をリアルタイムで把握できることから、業務の効率化や問題発見・解決にも寄与します。一方で、常勤取締役の配置には高い報酬や社会保険の負担が伴います。特に中小企業では、財務的な負担が事業運営を圧迫するリスクがあるため、慎重な判断が必要です。

非常勤取締役活用で得られる柔軟性と専門性

非常勤取締役を活用することで、企業はその専門的な知識やスキルを効果的に活かすことができます。これにより、専門的な助言や判断を得ながらも、常勤のような高いコストを必要としない柔軟な経営体制を構築できます。また、必要なときだけ関与する形態のため、業務全体に過剰なコストを発生させずに済む点も大きなメリットです。非常勤取締役とは、特に専門分野や業界知識を持った人材を選任するケースが多く、その知識が企業の発展に大きく寄与します。ただし、その勤務状況から実務全般に関与する機会が限られ、企業の内部事情を把握するには時間がかかる場合もあります。

中小企業における非常勤取締役の重要性

中小企業において、非常勤取締役の配置は特に重要な役割を果たします。中小企業では、コスト削減や経営資源の最適な配分が課題となることが多く、非常勤取締役の柔軟な活用はその課題に対する効果的な解決策となります。また、非常勤取締役として経営者の家族を登用したり、外部の専門家を招聘することで、税務面や法務面のアドバイスを受けることができ、経営の幅を広げることが可能です。ただし、非常勤取締役が社内の詳細な業務に関与しない場合、意思決定のスピードが低下する可能性もあるため、適切な役割分担とコミュニケーション手段を整備することが求められます。

非常勤が持つ潜在的なデメリット

非常勤取締役にはその柔軟性やコスト削減効果といったメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。たとえば、非常勤取締役が日常的に業務に関与しないため、緊急対応が必要な状況では十分なサポートを得にくい場合があります。また、業務理解が常勤取締役に比べて浅くなりがちであり、経営判断の質が低下するリスクも考慮する必要があります。さらに、非常勤取締役とはいえ、法律上は取締役としての権限を有するため、法的責任も伴います。このようなデメリットを軽減するためには、非常勤取締役とのコミュニケーションを密にし、役割と期待される成果を明確にしておくことが重要です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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