病院での個人情報、どこまで守られている?知らないと困る基本知識

医療機関で取り扱われる個人情報とは

個人情報の定義とその範囲

医療機関における「個人情報」とは、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるものを指します。具体的には、患者の氏名、住所、生年月日、病歴や診断結果、さらには手術動画や音声なども該当します。これらの情報は診療録や手術記録と照合可能であるため、重要なプライバシー情報として扱われます。医療情報は多岐にわたり、患者の医療行為に紐づくデータすべてが含まれるため、その範囲は広範です。そして、特定の用途以外に利用されることがないよう慎重に管理されるべきものです。

医療データの特徴と管理上の課題

医療データには、患者の健康状態や治療歴など、非常にセンシティブな情報が多く含まれています。そのため、漏洩や不適切な取り扱いが発生した場合、患者のプライバシー侵害に直結するだけでなく、社会的信頼の失墜にもつながります。また、電子カルテや遠隔診療などのデジタル技術の進歩により、データが膨大化し、ネットワーク越しで取り扱うことが増えたことで、サイバー攻撃など新たなリスクも生じています。このため、技術的な対策と徹底した教育・管理が欠かせません。

個人情報保護法と医療分野の関係

医療分野で個人情報を取り扱う医療機関は、個人情報保護法によってその管理・運用が規定されています。同法は2005年に施行され、2015年の改正により、取り扱う個人情報の規模に関わらずすべての事業者が対象となりました。2023年の改正では、「要配慮個人情報」や「個人識別符号」など新しい用語や取り扱い基準も追加されています。医療機関ではこれらの法規制に従い、個人情報の適正な利用や患者への同意取得を実施することが義務付けられています。

個人情報の具体的な利用例

病院では個人情報がさまざまな場面で利用されます。たとえば、診察や治療に使用される診療録の作成、健康保険請求の手続き、院内教育や医療研究のためのデータ分析などです。これらの用途では、患者にとって適切な医療を提供するため、必要不可欠な利用が含まれます。ただし、利用目的を超える活用を行う場合には、患者の同意取得が必須です。また、過去には手術動画が医療機器メーカーに提供され、プライバシー保護の問題が指摘された事例もありました。このようなケースにおいても適切な手続きが求められます。

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病院での個人情報保護の取り組み

院内規定とガイドラインの概要

病院では、患者の個人情報を適切に取り扱うために院内規定やガイドラインを整備しています。これらは、患者情報を不正に利用したり漏洩することがないよう、具体的な対策を規定するものです。主に、患者の氏名、住所、病歴などの個人情報を適法かつ公正な手段で取得し、利用目的を明示し、必要に応じて患者の同意を得ることが求められます。また、院内で情報の取扱いに注意を要する部門や業務に基づいて、取り扱いルールを細分化することで、不必要な情報へのアクセスを最小限に抑える仕組みが重要となります。

職員教育と意識向上の取り組み

職員の意識を高めるため、定期的な個人情報保護に関する教育が必要です。病院では、新入職員向けの研修や、全職員を対象とした更新研修を実施しています。研修では個人情報保護法の解説や、実際に発生した医療機関での情報漏えい事案の紹介などで、具体的なリスクとその影響について学びます。また、日常業務における注意点を共有することで、職員が個人情報を保護する意識を日々の業務に浸透させる取り組みを続けています。これにより、患者情報漏えいのリスクを低減させることが期待されています。

電子カルテやデータ管理システムのセキュリティ

近年、病院では電子カルテやクラウド型のデータ管理システムが主流になっています。これに伴い、サイバーセキュリティ対策の重要性が増しています。不正アクセスやデータ改ざんを防ぐため、強固な認証システムやデータ暗号化技術を採用するケースが増えています。また、職員ごとのアクセス権限を設定し、必要最小限の情報にだけアクセスできる仕組みを構築しています。さらに、情報漏洩時に迅速に対応できるよう監視システムの導入や定期的なシステムチェックを行い、安全性を確保しています。

患者への説明と同意取得の重要性

患者の個人情報を取り扱う際には、その利用目的を事前に説明し、患者から同意を取得することが必要です。例えば、診療記録を研究目的で使用する場合や、外部業者にデータ管理を委託する場合は、患者に対し十分な説明を行い、同意を得ることが法令で義務づけられています。同時に、患者が自分の情報がどのように使用されているかを容易に確認できる仕組みも重要です。このような取り組みを通じて、患者の信頼を得ると同時に、個人情報の保護を徹底することができます。

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個人情報漏えいのリスクとその対策

個人情報漏えいの主な原因

病院における個人情報漏えいの主な原因には、人的ミスや技術的な不備、外部攻撃などが挙げられます。例えば、職員の不注意による書類の紛失や誤送信、電子カルテへの不正アクセス、ウイルス感染といった事例が見受けられます。また、医療機関内での未許可の動画撮影や録音が原因となることもあります。これらのリスクは、個人情報保護法や院内規定を遵守しなかった場合に顕著となり、患者のプライバシー侵害や信用失墜につながる恐れがあります。

過去の事例から学ぶ教訓

過去には、医療機関が手術動画を医療機器メーカーに提供していた事例が明らかになっています。このケースでは、手術動画が診療録や手術記録と照合され得たため、これが個人情報に該当するかどうかが問題視されました。この事例から、個人情報が何に該当するかを明確化し、外部提供前に適切な同意と管理体制を整えることの重要性が示されました。また情報の取り扱い方法について、患者への十分な説明や適切な運用体制が求められる教訓となりました。

迅速な違反対応とその手順

個人情報漏えいが発生した場合、迅速かつ適切な対応が重要です。まず、漏えいの事実確認を行い、対象となる情報の範囲や影響の程度を特定します。その後、関係する患者や関係機関に速やかに報告し、再発防止策を講じる必要があります。また、法的責任を明確にし副次的な影響を最小化するため、専門家チームによる対応や監査の実施が推奨されます。情報漏えいが拡大しないよう、技術的制御や緊急対応のための体制整備も欠かせません。

技術的防御策と物理的防御策

医療機関は個人情報保護の観点から、技術的防御策と物理的防御策の両方を講じる必要があります。技術的防御策には、データの暗号化やアクセス権限の厳格な管理、システムの脆弱性検証、不正アクセスを防ぐファイアウォールやセキュリティソフトの導入が含まれます。一方、物理的防御策としては、患者情報を管理するエリアへのアクセス制限、書類保管庫の施錠、監視カメラの設置などが挙げられます。これらの対策を適切に実施することで、個人情報の漏えいリスクを大幅に軽減することができます。

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患者が知っておくべき基本知識と権利

情報開示請求の手順

病院では、患者が自身の医療情報を確認できる権利があります。これは「情報開示請求」と呼ばれ、多くの病院で対応可能です。具体的な手順としては、まず病院窓口や担当部署に問い合わせ、所定の申請書に必要事項を記入します。その後、本人確認書類と共に提出し、審査を経て開示が行われます。情報開示の対象には、診療録や検査結果、処方情報などの個人情報が含まれます。開示請求の際には、手数料が発生する場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。

情報修正や削除の権利

患者は、自身の個人情報が病院で適切に管理されているかを確認し、誤りがあれば修正を求めることができます。例えば、誤った氏名や生年月日が記録されている場合や、診療情報に誤解を生む記載がある場合には、修正を求めることが可能です。また、不要となった個人情報の削除を依頼できることもあります。ただし、医療情報の削除は診療記録の法的保存義務があるため、限られたケースに適用されます。具体的な手続きについては、各医療機関の個人情報保護方針を確認しましょう。

匿名加工情報の扱いと提供のルール

病院は、個人情報を特定されないよう処理した「匿名加工情報」を研究や統計データ作成のために使用する場合があります。この匿名加工情報は、特定の個人を識別できない形式に加工されており、個人情報保護法に基づき管理されます。提供先や利用目的の透明性が確保されていることが重要です。患者は、自分のデータがどのように取り扱われるかを病院から説明を受ける権利があります。多くの病院は匿名加工を行う際、患者にお知らせし、同意を得る仕組みを整えています。

第三者提供とその可否の判断基準

患者の個人情報を第三者に提供するには、原則として患者本人の同意が必要です。ただし、法令で定められた場合や、緊急時など正当な理由がある場合には同意が不要とされることもあります。医療機関が第三者提供を行う際は、具体的な提供先や利用目的を患者に明示する義務があります。例えば、医療研究や高度な専門的治療を実施するために情報が共有される場合があり、その際も適切な管理が求められます。患者は自身の情報がどのように扱われるのか質問し、必要に応じて異議を申し立てる権利を持っています。

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個人情報保護と医療の未来

ビッグデータ時代における医療とプライバシー

医療の分野では、ビッグデータの活用が進んでいます。患者の診療記録や画像データ、治療経過などがデジタル化され、分析することで医療の質の向上に役立てられています。しかし、このデータには患者の個人情報が含まれているため、十分なプライバシー保護が求められます。例えば、匿名加工情報を用いることで特定の人物を識別できない形式に改変し、プライバシーを守りつつも研究や治療に貢献しています。一方で、改ざんや不正アクセスのリスクもあるため、セキュリティ対策が不可欠です。

AIやIoTの活用による影響

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の技術が医療機関で活用されることで、診断の迅速化や精度向上、遠隔医療サービスの提供が可能になりました。病院では電子カルテや健康管理アプリが経過観察を効率化しますが、これらの技術の利用にも個人情報保護の視点が必要です。AIがデータ解析を行う際、その学習データに患者情報が含まれる場合には適切な管理が求められます。また、IoT機器がネットワークに接続されることで、サイバー攻撃の標的になる恐れがある点も課題です。

国際的なデータ連携とその課題

医療分野における研究の進展や国を超えた医療サービスの提供のためには、国際的なデータ連携が必要とされています。しかし、各国の個人情報保護法の違いや患者の権利の捉え方の差が、スムーズなデータ共有を阻む要因となっています。例えば、EUではGDPR(一般データ保護規則)が厳格な基準を設けており、日本の医療機関がデータを提供する際にはその基準を満たす必要があります。また、共有データの範囲や何をもって同意とするかといった議論も続いています。これらを解決するには国際的な基準作りが急務です。

個人情報保護の進化と新たな倫理

医療と個人情報保護の関係は、技術の進歩や社会の変化に伴って進化し続けています。例えば、2023年5月から施行された新しい個人情報保護法では、取り扱いの範囲や定義が見直されています。このような法律の整備に加え、人権やプライバシーを尊重する新たな倫理観も求められています。また、法律や規則だけでなく、病院や医療従事者が率先して患者との信頼関係を構築することも重要です。今後は、技術や法律だけではなく、透明性や患者との対話を中心とした新たなアプローチも必要となるでしょう。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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