コトラ（広報チーム） 
内部監査とは？基本的な役割と仕事内容
内部監査の定義とその重要性
内部監査とは、企業内部からその業務やプロセスを客観的に評価することで、不正防止や業務効率向上を目的とした監査業務です。また、経営目標の達成を支援し、組織全体のリスク管理を強化する役割を担っています。その重要性は特に上場企業で顕著であり、法令順守やガバナンス強化の観点から欠かせない存在とされています。経営幹部に近いポジションで業務を行うことが多く、業界や企業に関する深い知識と広い視野が求められます。
業務の具体的な流れ：監査計画からフォローアップまで
内部監査の業務は、大きく「計画」「実施」「報告」「フォローアップ」の4段階に分けられます。まず監査計画を立て、重点的に確認すべきリスクや業務領域を特定します。その後、現場で必要なデータを収集し、実施した監査内容を基に報告書を作成します。そして最後に、指摘した改善点が反映されているかを確認するフォローアップを行います。この一連の流れによって、企業の業務改善やリスク軽減に直結する結果を導き出せるのです。
他部門との連携と内部監査の実際
内部監査は、他部門との連携なくして成立しません。例えば、財務部門や経営企画部門などから情報を取得し、人事部門や法務部門と連携してリスクやデータの正確性を確認します。また、内部監査が提言する改善項目を現場で実施するためには、担当部門との密なコミュニケーションが不可欠です。このような連携を通じて、組織全体の効率化やリスク低減に貢献する職務といえます。
上場企業での内部監査の重要性
上場企業における内部監査は、法令順守や株主への透明性確保が求められる中で極めて重要な役割を果たします。特に内部統制報告制度が義務付けられている企業では、内部監査部門がその仕組みの維持・検証を担います。また、経営幹部への定期的な報告を通じて、ガバナンス強化と企業価値の向上を図る一翼を担っています。近年の転職市場では、このような内部監査の重要性が認められ、求人数の増加傾向がみられる点も注目すべきポイントです。
内部監査のキャリアパス：初級から専門家への道のり
内部監査人のステップアップモデル
内部監査人としてキャリアを積み上げるためには、段階的なステップアップが重要です。新入社員や異業種からの転職者は、まず基本的な業務監査を担当し、関係部署との調整力や報告書作成スキルを磨きます。次のステップでは、プロジェクトごとのリーダーを務める中で、リスク評価や経営目標との整合性を考慮した支援業務を習得します。その後、経験を積み重ねることで内部監査室長や経営幹部へと進むことが可能です。
内部監査のキャリアでは、業務の幅広さや深さが重要となり、専門的な知識だけでなく、経営に対する理解力や他部門との交渉力が求められます。このようなステップアップモデルを描くことで、内部監査としての市場価値を高められるでしょう。
内部監査に役立つ資格：CIAやCISAの取得価値
内部監査のキャリア形成において、資格の取得は大きな武器となります。特に、CIA（公認内部監査人）やCISA（公認情報システム監査人）は、業務適性の証明として国内外で高い評価を得ています。これらの資格は業務知識を体系的に学ぶためのツールとしても優れており、取得することで高度な知見を身につけることができます。
CIAは内部監査業務全般の知識を含み、内部統制やガバナンスに重点を置いています。一方で、CISAはITシステムの監査やリスク管理に重きを置いた内容で、デジタル化の進む企業にとって非常に価値のあるスキルです。これらの資格を取得することで、自身のキャリアに深みを持たせ、内部監査人としての成長につなげられるでしょう。
リスク管理や経営企画職へのキャリアチェンジ事例
内部監査の経験は、リスク管理や経営企画といった職種へのキャリアチェンジの可能性を大きく広げてくれます。この理由として、内部監査の業務が経営に直結する視点とマネジメント力を養う場であることが挙げられます。たとえば、内部監査で培ったリスク評価能力を活かし、リスク管理部門で社内リスクの最適化を図るポジションに転じるケースが見られます。
また、経営企画職では、内部監査で得られた経営層との密接な業務経験が強みになります。企業戦略や方針策定に関与する中で、内部監査で培った問題発見力と提言能力が有効に発揮され、その後のキャリアを一層広げることが可能です。
新卒・第二新卒から内部監査を始めるメリット
新卒や第二新卒のタイミングで内部監査に挑戦することには多くのメリットがあります。まず、内部監査は経営層と近い距離で業務に携われるため、入社初期から経営全般について深く学ぶことができます。通常の業務部門では得られない視点を若いうちから持てる点は、長期的なキャリア形成において大きな利点となるでしょう。
また、新卒や第二新卒は未経験者が多いため、「柔軟な発想力」や「吸収力」が期待されます。内部監査は、企業の課題解決力が求められる業務でもあり、このようなフレッシュな視点が評価されやすいポジションです。加えて、職務経験を積むことで内部監査室長や監査役への道が開けるため、早期から専門分野に特化したキャリアを形成できるのも魅力です。
内部監査の現状と課題：今後のスキル需要と展望
求人数の少なさと市場価値の実態
内部監査の求人市場は、経理や人事などの他の管理部門に比べて求人数が圧倒的に少ないのが現状です。具体的には、経理部門の求人に比べて約8分の1程度とされ、非常に競争率が高い職種です。ただし、市場価値は年々高まっており、法令順守やガバナンス強化を重視する企業が増えているため、内部監査の需要は安定的な増加傾向にあります。特に30〜40代前半をターゲットにした求人が増えており、組織全体の若返りを目指す採用ニーズが注目されています。この希少性と専門性の高さによって、内部監査はキャリア形成の上でも大きな強みとなる職業です。
ITリテラシーの重要性：データ分析やAI活用の現状
内部監査の現場でも、データ分析やAI（人工知能）の活用が急速に進んでいます。リスクの識別や不正検知を行う際に、膨大なデータを効率的に分析できるスキルが求められるようになっています。特にデータ分析ツールの使用経験やプログラミングに関する知識を持つ内部監査人は、企業からの評価が高まる傾向にあります。また、AI技術の普及により、従来の手作業での監査から、より高度で効率的な監査手法への移行が進んでいます。このため、ITリテラシーを深めることは、内部監査キャリアの成長にとって非常に重要です。
ESG監査やコンプライアンス監査の台頭
近年、ESG（環境・社会・ガバナンス）監査やコンプライアンス監査が内部監査の重要な分野として急成長しています。企業の持続可能性や法令順守への注目度が増す中で、ESG監査は企業価値を高める要素として欠かせないものとなっています。また、法令違反を未然に防ぐためのコンプライアンス監査も、企業のリスク管理の一環として重要視されています。このように新しい監査分野への適応力が、内部監査人にとって重要なスキルとなっており、変化するビジネス環境への対応が求められています。
社内風土や経営トップとのコミュニケーションの壁
内部監査の実務においては、社内風土や経営トップとのコミュニケーションが難点となる場合があります。特に、経営陣が監査の必要性を十分に理解していない場合、内部監査の提言が受け入れられないことがあるため、効果的なコミュニケーション能力が求められます。また、社内の抵抗や部門間の利害対立が監査業務の妨げとなるケースも少なくありません。このような壁を乗り越えるためには、監査結果をわかりやすく説明するプレゼンテーションスキルや、部門間の橋渡しを行う調整力が重要です。内部監査のキャリア形成を成功させるためには、職務知識だけでなく、柔軟な対人スキルも必要不可欠です。
内部監査の未来：注目すべきトレンドと可能性
グローバル化と内部監査の役割の進化
企業のグローバル展開が進む中で、内部監査の役割も大きく変化しています。従来、内部監査は主に国内の業務監査やコンプライアンス遵守を目的とした業務が主流でしたが、国際的な取引や子会社の増加に伴い、海外拠点を含む監査の必要性が高まっています。国ごとに異なる法律や基準を理解し、それに基づいた評価が求められるため、内部監査人には国際的な視点や多文化への対応力が不可欠です。グローバル化に対応するためには、CIAやCISAなどの資格を保有し、国際的な標準フレームワークを熟知していることがキャリアの成長に繋がります。
チャレンジングな分野：サイバーセキュリティ監査
近年、企業が抱えるリスクの一つとしてサイバーセキュリティが挙げられます。企業に蓄積されるデータ量が増加し、サイバー攻撃の被害が世界的に広がる中で、内部監査においても情報システムやセキュリティ管理の監査が大きな比重を占めるようになっています。サイバーセキュリティ監査は、技術的知識とリスク評価能力の両方が求められるため、高度な専門性を持った監査人の価値が高まっています。この分野で経験を積むことにより、内部監査人としての市場価値をさらに高めることができます。
内部監査人のキャリアで年収1000万円を目指す方法
内部監査職は専門性が高い分、スキルや経験を積むことで高い報酬が期待できます。特に、CIAやCISA・CRMAなどの資格の取得は、キャリアアップと年収向上の大きな武器となります。また、内部監査の経験を活かし、経営企画やリスク管理部門など関連分野にキャリアチェンジするケースも多いです。このようなキャリアチェンジにより、経営幹部や監査役といったポジションを目指すことができれば、年収1,000万円以上に到達することも可能です。さらに、上場企業やグローバル企業での勤務経験は、競争率の高い市場でも優位性を確保する助けになります。
働き方改革で変わる内部監査の働き方
働き方改革が進む現代の社会では、内部監査職の働き方も変化しています。これまで多くの内部監査業務は本社勤務を中心としていましたが、リモートワークやデジタルツールの活用が進み、柔軟な働き方が可能となっています。また、AIやデータ分析ツールを活用することで、業務効率が向上し、ルーチン化できる業務が増えています。このような環境の変化に対応するために、ITリテラシーを高め、デジタルスキルを獲得することが重要となるでしょう。これにより、従来の業務範囲を超えた新たな価値提供が可能となり、職業としての魅力がさらに高まると考えられます。
