コトラ（広報チーム） 
はじめに
記事の目的と想定読者
本記事は、コンサルティングファームと事業会社の間でキャリア選択を検討している方、特に転職を考えている方を主な読者層として想定しています。キャリアチェンジを成功させるための情報を提供し、自分に合った道を見つけるためのヒントを解説します。
事業会社とコンサル、どちらを選ぶべきか
コンサルティングファームと事業会社は、それぞれ異なる働き方やキャリアパスを提供します。どちらを選ぶべきかは、個人の価値観、スキルセット、将来のキャリアビジョンによって異なります。本記事では、両者の違いを明確にし、あなたのキャリア選択をサポートします。
コンサルと事業会社の違い
業務内容・キャリアパスの違い
コンサルティングファームの主な業務は、クライアント企業が抱える多様な課題に対し、客観的な視点と専門知識で解決策を提供することです。戦略立案、業務改善、ITシステム導入支援など、幅広いテーマに対応します。キャリアパスとしては、若いうちから多様な業界やテーマのプロジェクトに関わり、問題解決能力や論理的思考力といった汎用性の高いスキルを磨ける点が特徴です。一方で、あくまで外部からの支援であるため、事業を自ら動かす経験は積みにくい傾向があります。
一方、事業会社は、自社の事業を成長させるために、特定の業界や領域に深く関わります。経営企画、事業企画、DX推進などの職種があり、戦略の立案から実行、成果のモニタリングまで一貫して携わります。キャリアパスとしては、特定の領域での専門性を深め、事業の当事者として深くコミットできる点が魅力です。
年収・待遇・評価制度の比較
コンサルティングファームは、総じて年収水準が高く、特に外資系ファームでは20代で年収1,000万円を超えるケースも少なくありません。成果主義の評価制度が強く、実力次第で早期の昇進・昇給が可能です。
事業会社の場合、コンサルティングファームほど高い初任給ではないことが多いですが、安定した給与体系と福利厚生が期待できます。特に大手企業では、長期的な視点でのキャリア形成が可能です。年収や待遇は企業規模や業種、職種によって大きく異なります。
ワークライフバランスと働き方
コンサルティングファームは、プロジェクトごとに厳しく成果や納期が求められるため、長時間労働になるケースが多いです。多忙な環境で働くことにやりがいを感じる人もいますが、体力面や精神面での負担も考慮する必要があります。
事業会社は、コンサルティングファームに比べてワークライフバランスが取りやすい傾向にありますが、これも企業や職種によって大きく異なります。企業の文化や制度によって柔軟な働き方が可能な場合もあります。
コンサルタントから事業会社／事業会社からコンサルへの転職のリアル
代表的なキャリアパス・求められるスキル
コンサルタントから事業会社への転職では、経営企画、事業企画、DX推進などが一般的なキャリアパスです。コンサルで培った問題解決能力、論理的思考力、プロジェクトマネジメント能力、プレゼンテーションスキルなどが高く評価されます。特に、多様な関係者を巻き込み、課題を解決に導く「実行力」が事業会社で求められます。
事業会社からコンサルへの転職では、これまでの業界知識や実務経験が強みとなります。特にIT系コンサルではIT関連の業務経験、財務系コンサルでは財務関連の知識が有利です。論理的思考力やコミュニケーション能力は、コンサルタントとして共通して求められるスキルです。
キャリアチェンジにおけるメリット・デメリット
コンサルから事業会社への転職のメリットは、事業の当事者として深く関わり、長期的な視点で成果を見届けられる点、特定の領域で専門性を深められる点などが挙げられます。一方、デメリットとしては、知見が特定の領域に限定される可能性や、キャリアの選択肢が狭まるリスクがあります。
事業会社からコンサルへの転職のメリットは、若いうちから多様な経営課題に触れ、市場価値の高いスキルを習得できる点、高水準の年収を得られる点です。デメリットとしては、激務によるストレスや、事業会社での実務経験を積みにくい点が挙げられます。
成功・失敗しやすいポイント
キャリアチェンジを成功させるためには、自己分析を徹底し、自身の強みや価値観、将来のキャリアビジョンを明確にすることが不可欠です。転職先に求める条件を具体的に設定し、それが現職では解決できない問題であるかを深く考える必要があります。また、転職先企業の情報収集を徹底し、文化や働き方が自身に合うかを見極めることも重要です。
失敗しやすいポイントとしては、一時的な感情や年収の高さのみで転職先を決めてしまうこと、転職理由や目的が曖昧なまま活動を進めることなどが挙げられます。
タイプ別・コンサル転職・事業会社転職の成功ポイント
未経験からコンサル転職を目指す場合
未経験からコンサル転職を目指す場合、論理的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力といったポータブルスキルをアピールすることが重要です。ケース面接対策を徹底し、実務経験がなくても潜在能力を評価してもらえるよう準備を進めましょう。
コンサル経験者が事業会社へ移る場合
コンサル経験者が事業会社へ移る際は、これまでのプロジェクト推進力を「実践的な課題解決スキル」として具体的に伝えることが成功の鍵です。論理構築力や調整力を「多様な関係者を巻き込む力」として強調し、転職動機は「キャリアの一貫性と将来展望」を軸に整理しましょう。
事業会社経験者がコンサルへ挑戦する場合
事業会社経験者がコンサルへ挑戦する場合、これまでの業界知識や実務経験をどのようにコンサルティングに活かせるかを明確に説明する必要があります。特に、ITシステム導入や業務改善など、具体的な実績をアピールすることで、即戦力としての期待を高められます。
年代別（20代～40代以降）の転職戦略
- 20代：ポテンシャルや成長意欲が重視されるため、未経験分野への挑戦もしやすい時期です。多様な経験を積むことで、将来の選択肢を広げられます。
- 30代：即戦力性や専門性、マネジメント経験が強く求められます。特定の分野での実績やスキルをアピールし、管理職へのキャリアアップを目指すことが重要です。
- 40代以降：高い専門性とマネジメント実績が必須となります。経営層や顧問、フリーランスなど、これまでの豊富な経験や人脈を活かせるキャリアパスが主流です。
主要コンサルティングファーム・事業会社の特徴と事例
コンサルティングファームの主な種類と特徴
コンサルティングファームは、その専門領域によっていくつかの種類に分類されます。
- 戦略系コンサルティングファーム: 企業の経営戦略や事業戦略、M&A戦略など、経営層の課題解決に特化しています。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストンコンサルティンググループなどが代表的です。
- 総合系コンサルティングファーム: 経営戦略から業務改善、IT導入、組織設計まで、幅広い分野のコンサルティングサービスを総合的に提供します。アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティングなどが挙げられます。
- IT系コンサルティングファーム: IT戦略の立案やITシステム導入支援など、ITを活用した課題解決を専門とします。日本アイ・ビー・エム、フューチャーアーキテクトなどが代表的です。
- 監査法人系コンサルティングファーム: 監査法人を母体とし、リスク管理、内部統制、コンプライアンス対応を得意とします。Big4（デロイト、PwC、KPMG、EY）が有名です。
- シンクタンク系コンサルティングファーム: 調査研究機関を母体とし、公共政策の提言や産業構造の分析、社会問題の解決に向けた施策立案などを行います。野村総合研究所、三菱総合研究所などが代表的です。
- FAS／財務系コンサルティングファーム: M&Aや企業再生、事業承継など、財務戦略に特化したコンサルティングを提供します。
- 企業・事業再生系コンサルティングファーム: 経営不振に陥った企業の再建を専門とします。
- 組織人事系コンサルティングファーム: 人事制度設計、組織改革、タレントマネジメントなど、組織と人事に関する課題解決に特化します。マーサージャパンなどが代表的です。
- 医療系コンサルティングファーム: 医療機関や製薬会社、ヘルスケア関連企業を対象に、業務改善や経営戦略の立案を支援します。
- 製造業コンサルティングファーム: 製造業界特有の課題解決に特化し、生産性向上やコスト削減、サプライチェーンマネジメントなどを支援します。
- 中小企業向けコンサルティングファーム: 主に中小企業を対象に、経営戦略から業務見直し、IT導入支援など幅広い課題解決策を提供します。船井総合研究所、タナベ経営などが挙げられます。
事業会社（経営企画・DX推進等）で活かせるコンサルスキル
事業会社の経営企画では、中長期戦略の立案や予算策定、M&A対応などが主な役割です。コンサルで培った論理的思考力や資料作成力が活かせます。DX推進では、業務プロセス改革やシステム導入において、改善提案力やプロジェクトマネジメント経験が生かされます。事業開発では、新規事業の立ち上げや市場分析、仮説構築から実行まで一貫して担う力が求められます。
実際のキャリアチェンジ事例
コンサルから大手グローバルメーカーの人事・労務企画へ転職し、グローバル人事制度の設計・運用をリードするポジションで活躍している事例があります。また、大手製造業のITコンサルタントから外資系コンサルティングファームの戦略コンサルタントへ転職し、より上流の経営戦略・事業構想に関与している事例、総合系コンサルから大手自動車メーカーの経営・事業企画へ転職し、カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギーサービス企画・渉外・プロジェクト推進を担っている事例などがあります。
転職活動の進め方と注意点
転職準備・自己分析の重要性
転職活動を始める前に、自己分析を徹底し、自分の強み、弱み、価値観、キャリアビジョンを明確にしましょう。なぜ転職したいのか、転職を通じて何を解決したいのか、転職先に何を求めるのかを具体的に整理することが、後悔しない転職の第一歩です。
職務経歴書・面接対策（ケース面接含む）
職務経歴書では、これまでの経験や実績を具体的に記載し、転職先でどのように貢献できるかをアピールしましょう。コンサルティングファームの選考では、ケース面接が重要です。論理的思考力や問題解決能力をアピールできるよう、過去の事例を基にした対策を繰り返し行いましょう。面接では、転職動機やキャリアプランについて、一貫性を持って具体的に説明できるように準備することが重要です。
求人の探し方と情報収集
求人情報を探す際は、自分の希望条件に優先順位をつけ、譲れない条件と妥協できるラインを明確にしましょう。企業規模、従業員数、社風、経営ビジョンなど、求人票だけではわからない情報を積極的に収集することが大切です。
転職活動でよくあるQ&A
- 転職すべきか悩んでいます：転職理由を整理し、現在の会社で解決できないか考え、プロに相談することが有効です。
- 複数内定もらったらどこに内定承諾すべきですか？：勤務条件を改めて確認し、自分の転職軸と照らし合わせて判断しましょう。自己分析を再度行うことも有効です。
まとめ
自分に合ったキャリア選択の考え方
事業会社とコンサルティングファーム、どちらのキャリアを選ぶべきかは、個人の価値観、目指すキャリアビジョン、働き方の希望によって大きく異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自己分析を深めることで、自分に合った選択を見つけることができます。
後悔しない転職のために意識したいこと
後悔しない転職のためには、以下の点を意識しましょう。
- 転職理由と目的を明確にする。
- 自分の強みや価値観、市場価値を把握する。
- 転職先企業の事業内容、社風、ワークライフバランスを徹底的にリサーチする。
- 完璧な会社は存在しないと理解し、優先順位をつけて妥協点を見つける。
- 自分で決断し、その結果を受け入れ、学びとして次へ活かす姿勢を持つ。
これらのポイントを踏まえることで、あなたは後悔のないキャリア選択を実現し、次のステップへ力強く踏み出せるでしょう。
