図解でわかる!ウェルスマネジメントとは?欧米と日本の違いを徹底解説

はじめに

ウェルスマネジメントとは何か

ウェルスマネジメント(Wealth Management)は、富裕層や高所得者を対象に、多岐にわたる資産の最適化と保全を目的とした総合的な管理サービスです。単なる資産運用にとどまらず、投資、税務対策、相続・事業承継、不動産活用、資金調達など、顧客の人生設計全体に関わる包括的なサポートを専門家チームが提供します。

この記事の目的と読者層

この記事では、ウェルスマネジメントの基本的な定義や、欧米と日本におけるサービスの違い、さらにはプライベートバンキングやアセットマネジメントといった類似サービスとの相違点を詳しく解説します。富裕層の方々はもちろん、これから資産形成を目指す方、そして金融業界に関心を持つビジネス層の方々に向けて、ウェルスマネジメントの全体像を理解していただくことを目的としています。

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ウェルスマネジメントの定義と歴史

ウェルスマネジメントの基本的な意味

ウェルスマネジメントは、個人や家族が保有する「富(wealth)」を総合的に管理し、運用、保全、そして次世代への承継までをサポートする専門的なサービスです。顧客の年齢、家族構成、収入、将来の目標などを考慮し、最適な資産配分や戦略をオーダーメイドで構築します。

ウェルスマネジメントの起源と発展

ウェルスマネジメントの起源は古く、11世紀のスイスのプライベートバンクが発祥とされています。当初は秘匿性の高い資産管理が求められる王族や貴族向けに提供されていましたが、時代とともにサービス内容が拡大し、特に1990年代以降、銀行業務の枠を超えた包括的な資産管理サービスとして「ウェルスマネジメント」という言葉が使われるようになりました。

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欧米と日本におけるウェルスマネジメントの違い

欧米のウェルスマネジメントの特徴

欧米のウェルスマネジメントは、その長い歴史とグローバルなネットワークを背景に、多様な金融商品や国際的な投資機会を提供します。特にスイスのプライベートバンクに代表されるように、超富裕層を主なターゲットとし、高度な専門知識と個別カスタマイズされたサービスが特徴です。ESG投資やインパクト投資など、社会的価値を考慮した投資手法も積極的に取り入れられています。

日本のウェルスマネジメントの特徴

日本におけるウェルスマネジメントは、欧米に比べて歴史は浅いものの、近年注目度が高まっています。日本の富裕層は高齢者の割合が高く、事業オーナーが約3分の1を占めるため、事業承継や相続対策へのニーズが高いという特徴があります。また、日本の高い贈与税・相続税率を背景に、節税対策としてのウェルスマネジメントの需要も増加しています。国内金融機関は、国内の税制や法規制に精通し、グループ内の連携を強化して幅広いサービスを提供しています。

両者の比較

項目欧米のウェルスマネジメント日本のウェルスマネジメント起源・歴史11世紀のスイスのプライベートバンク発祥、歴史が長い1980年代後半に外資系金融機関が参入、近年本格化主なターゲット超富裕層中心、グローバルな視点富裕層(事業オーナー、高齢者多し)中心、国内市場に強みサービス内容国際的な投資機会、多様な金融商品、ESG投資など相続・事業承継、節税対策、国内不動産活用など課税への対応グローバルな税制を考慮した対策日本の税制(所得税、相続税等)に特化した対策

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プライベートバンキング・アセットマネジメントとの違い

プライベートバンキングとの違い

ウェルスマネジメントとプライベートバンキングは、ともに富裕層向けの資産管理サービスですが、厳密には提供範囲に違いがあります。

  • プライベートバンキング:主に銀行のプライベートバンキング部門が、自行の審査を通過した富裕層に対して個別に提供するサービスです。預金、貸付、投資管理といった銀行業務を中心とし、専任のプライベートバンカーが顧客の要望に応じた資産運用方法を提案します。
  • ウェルスマネジメント:プライベートバンキングのサービス内容に加え、資産の活用方法の相談、資金調達、税務・相続対策、事業承継、不動産コンサルティング、さらには非金融サービス(教育支援、医療施設の紹介など)まで、より幅広いニーズに対応する包括的なサービスです。

つまり、ウェルスマネジメントはプライベートバンキングよりも広範なサービスを提供し、顧客の全体的な財務戦略をサポートします。

アセットマネジメントとの違い

ウェルスマネジメントとアセットマネジメントも、資産活用に関するサービスですが、目的が異なります。

  • アセットマネジメント:資産の価値拡大や収益性拡大を主な目的とし、投資運用に特化したサービスです。投資信託や年金基金などの運用を通じて、リターンの最大化とリスク管理に重点を置きます。多くの場合、機関投資家や投資信託を通じた個人投資家向けに画一的なサービスを提供します。
  • ウェルスマネジメント:富裕層の包括的な資産管理を目的とし、資産運用だけでなく、資金調達、節税、相続、事業承継など、顧客のライフプラン全体を考慮した総合的なアドバイスを提供します。

資産を増やすことが目的ならアセットマネジメント、資金調達や節税、相続なども含めて総合的かつ長期的に資産管理をしたいならウェルスマネジメントが適していると言えるでしょう。

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提供される主なサービス内容

ウェルスマネジメントで提供されるサービスは多岐にわたり、顧客のニーズに応じてカスタマイズされます。

資産運用

  • 株式、債券、ファンド、オルタナティブ投資などを活用した資産運用戦略の設計と実行
  • 顧客のリスク許容度や投資期間に応じたオーダーメイドのポートフォリオ構築
  • 市場環境の変化に応じた定期的なリバランス(資産配分の見直し)

相続・事業承継

  • 相続税対策、贈与税対策の立案
  • 遺産分割方針の検討、遺言書の作成支援
  • 事業承継計画の策定、後継者育成支援、自社株の評価・承継方法の提案

税務・法務対策

  • 国内外の税制を考慮した資産管理、節税対策
  • 弁護士や税理士と連携した法的リスクの軽減、契約・信託の活用

不動産コンサルティング

  • 収益物件の取得・売却に関するアドバイス
  • 既存不動産の有効活用、税務対策
  • 相続対策としての不動産活用(賃貸経営、不動産信託の活用など)、海外不動産投資のサポート

そのほかのコンサルティング・サポート

  • 資金調達支援(不動産担保ローン、有価証券担保ローンなど)
  • 保険コンサルティング(生命保険、損害保険を活用した資産保全策)
  • 非金融サービス(子息の教育支援、医療施設の紹介、会員制クラブの斡旋など)

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ウェルスマネジメントが注目される背景と日本の現状

富裕層の増加・資産運用ニーズの変化

日本では2013年以降、富裕層の世帯数と純金融資産総額が増加傾向にあります。2021年時点で純金融資産1億円以上の富裕層・超富裕層は合計で148.5万世帯にのぼり、3年間で約15.8万世帯増加しています。また、富裕層の資産形成プロセスや資産内容が多様化しているため、画一的なサービスでは対応しきれない多岐にわたる資産管理ニーズが高まっています。

日本の金融機関における動き

こうした背景を受け、日本の金融機関もウェルスマネジメント事業への取り組みを強化しています。メガバンクグループは、少子高齢化や低金利政策による伝統的な収益源の減少という厳しい環境の中、「資本ライト」なビジネスである手数料収益の獲得を目指し、ウェルスマネジメントを成長戦略の柱の一つと位置づけています。グループ横断的な組織を構築し、銀行、信託、証券のノウハウを結集して、顧客の多様なニーズに応える体制を整備しています。

なぜ今、必要とされているのか

ウェルスマネジメントが今、日本で必要とされている理由は以下の通りです。

  • 多様化する富裕層のニーズ:資産内容や形成プロセスが多様化し、単なる資産運用だけでなく、相続・事業承継、M&A、不動産活用、資金調達など、包括的なサポートが求められています。
  • 富裕層への課税強化:2023年度税制改正では、超富裕層への税負担強化や相続税の生前贈与加算期間の延長など、富裕層への課税が強化されており、節税対策としてのウェルスマネジメントのニーズが増加しています。
  • 経営者の高齢化と事業承継問題:経営者の高齢化が進む日本において、事業を次世代に円滑に承継するための専門的な支援が強く求められています。

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主要金融機関や事例の紹介

国内外の金融機関によるサービスの特徴

ウェルスマネジメントサービスは、国内外の様々な金融機関で提供されており、それぞれに特徴があります。

  • UBS(スイス系):世界有数の総合金融サービスグループであり、富裕層向けのプライベートバンクとして有名です。三井住友トラスト・ホールディングスと協業し、「UBS SuMi TRUST」ブランドで日本でもサービスを提供しています。
  • 野村證券:ウェルスマネジメント部門を設け、資産運用に強みを持っています。野村信託銀行と協働することで、相続や不動産に関する提案も行っています。
  • 三井住友銀行:ウェルスマネジメントグループを組織し、総合コンサルティングに強みがあります。日興証券やSMBC信託銀行と協働し、全国の支店でサービスを提供しています。
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG):グループ横断的なウェルスマネジメントユニットを新設し、「MUFGウェルスマネジメントデジタルプラットフォーム」を開発するなど、デジタル技術を活用した包括的なサービス提供を推進しています。
  • オリックス銀行:不動産ファイナンシャルサービスをメインに、不動産投資やローン、税理士紹介など、不動産に特化したウェルスマネジメントサービスを提供しています。

成功事例・課題と今後の展望

ウェルスマネジメントの成功事例としては、顧客の多様なニーズに合わせたオーダーメイドのソリューションを提供し、長期的な信頼関係を築いているケースが挙げられます。例えば、三菱UFJ銀行は、顧客の資産を「まもり・つなぎ・ふやす」ことを重視し、グループ一体で包括的なサービスを提供することで成約単価の向上を実現しています。

一方で、日本のウェルスマネジメント業界にはいくつかの課題も存在します。

  • 規制と文化の壁:投資助言事業における規制の多さや、アドバイスの対価としてフィーを払う文化が根付いていない点などが、サービス発展のボトルネックとなっています。
  • 金融機関の組織体制:定期的な異動が行われる人事制度や、役員交代による方針変更などが、顧客との長期的な関係構築や一貫したサービス提供を妨げる要因となることがあります。
  • 既存システムの制約:既存システムが柔軟性に欠け、新たなソリューションや商品の導入コストが高いこと、部門ごとにシステムが異なりデータ連携が進まないことなども課題です。

今後の展望としては、金融機関の壁を超えたコミュニティ形成や、デジタル技術のさらなる活用が重要となります。顧客のニーズに合わせた柔軟なシステム構築や、金融リテラシー向上への取り組みを通じて、日本のウェルスマネジメント市場はさらなる成長が期待されています。

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まとめ

ウェルスマネジメントの利用にあたって

ウェルスマネジメントは、富裕層の多岐にわたる資産管理ニーズに応える包括的なサービスです。資産運用だけでなく、相続・事業承継、税務・法務対策、不動産コンサルティングなど、ライフプラン全体をサポートします。サービスを利用する際は、自身のニーズと金融機関の提供するサービス内容をよく比較検討し、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。

今後の展望と選び方のヒント

日本では富裕層の増加や課税強化、経営者の高齢化などを背景に、ウェルスマネジメントへの注目が高まっています。今後は、デジタル化の推進や、金融機関間の連携強化、そして顧客中心のサービス提供がより一層進むでしょう。

ウェルスマネジメントサービスを選ぶ際のヒントとしては、以下の点が挙げられます。

  • 自身の資産内容や将来の目標に合致したサービスを提供しているか。
  • 資産運用だけでなく、相続や事業承継、税金対策など、幅広いニーズに対応できるか。
  • 担当者や専門家チームの専門性や経験は豊富か。
  • 費用体系が明確で、納得できるコストでサービスを受けられるか。
  • デジタルツールを活用した利便性の高いサービスが提供されているか。

これらの点を考慮し、最適なウェルスマネジメントパートナーを見つけることで、大切な資産を適切に管理し、豊かな未来へとつなげることができるでしょう。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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