【超入門】アセットマネジメント事業とは?仕組み・仕事内容・キャリアを網羅解説!

はじめに

アセットマネジメント事業の全体像

アセットマネジメント事業とは、個人投資家や機関投資家から資金を預かり、株式、債券、不動産などの多様な資産を専門的に運用・管理し、その価値を最大化する活動を指します。この事業は、資産の選定、取得、運用、そして売却までの一連のプロセスを包括し、投資家への収益還元を目指します。金融庁が推進する「貯蓄から投資へ」という政策スローガンや新NISA制度の開始に伴い、個人投資家の需要が増加しており、アセットマネジメント業界は今後さらなる発展が期待される分野です。

本記事の対象読者

本記事は、アセットマネジメント事業に関心のある方、特に業界未経験で転職を考えている方、金融知識を深めたい投資家、あるいはキャリアパスについて知りたい学生などを主な対象としています。

この記事で得られること

この記事では、アセットマネジメントの基本的な概念から、その歴史、主要な手法、ビジネスモデル、具体的な仕事内容、必要なスキルや資格、さらにはキャリアパスや業界の最新動向までを網羅的に解説します。本記事を通じて、アセットマネジメント事業の全体像を深く理解し、自身のキャリア形成や投資判断に役立つ情報を得ることができます。

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アセットマネジメントとは何か

アセット(資産)とマネジメント(管理)の基本

アセットマネジメントとは、「アセット(資産)」と「マネジメント(管理・運用)」を組み合わせた言葉で、資産を効率的かつ効果的に活用し、その価値を最大化する活動や手法を指します。ここで言う「アセット」は、株式や債券といった金融資産だけでなく、不動産、インフラ設備、IT資産など、組織や個人にとって価値を持つあらゆる対象が含まれます。

アセットマネジメントの歴史と発展

アセットマネジメントの概念は古くから存在しますが、現代的な形での発展は金融市場や不動産市場の拡大とともに進んできました。2000年代以降、ISO 55000シリーズなどの国際規格が策定され、組織的かつ体系的な資産管理手法が確立されました。また、デジタル技術の進化により、データ分析やITツールを活用した効率的な運用が可能になり、幅広い分野でアセットマネジメントが浸透しています。日本では、金融庁が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げ、新NISA制度を導入するなど、資産運用立国を目指す政策が推進されており、アセットマネジメント業界は大きな転換期を迎えています。

金融分野・不動産分野・インフラ分野の違い

アセットマネジメントの対象は多岐にわたり、主に以下の分野に分けられます。

  • 金融分野: 株式、債券、投資信託、デリバティブなどの金融商品を対象とし、資金配分や市場分析を通じて利益を得ることを目的とします。
  • 不動産分野: 土地や建物を対象とし、賃料収入の最大化や物件価値の向上を通じて収益を得ることを目的とします。プロパティマネジメント(PM)が賃貸管理や建物の維持管理といった日常業務を担うのに対し、アセットマネジメント(AM)は投資家・所有者の代理として投資戦略の立案や売却の意思決定を行います。
  • インフラ分野: 公共施設、道路、橋、上下水道などのインフラ資産を対象とし、その維持管理や効率的な運用を通じて公共の利益を最大化することを目的とします。

主要なアセットマネジメントの手法と仕組み

アセットマネジメントの運用手法は多岐にわたりますが、代表的なものとして「パッシブ運用」「アクティブ運用」「クォンツ運用」があります。

  • パッシブ運用: 日経平均株価などのベンチマーク(目標とする基準)に連動する運用成績を目指す手法です。機械的な運用が可能でコストを抑えられますが、ベンチマーク以上の収益は見込めません。
  • アクティブ運用: ベンチマークを上回る運用成績を目指す手法です。ファンドマネージャーやアナリストが綿密な調査・分析を行い、投資先銘柄の売買や入れ替えを活発に行います。市場平均を上回る収益を目指しますが、コストは高くなる傾向があります。
  • クォンツ運用: 統計などのデータに基づいた機械的な投資判断によって運用する手法です。高度な数学的手法を用いて分析し、人の主観を排除した運用を行います。

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アセットマネジメント事業の仕組みとビジネスモデル

主な事業形態(非上場ファンド、REIT、投資信託など)

アセットマネジメント事業は、その運用対象や顧客層によって多様な事業形態を持っています。

  • 投資信託業務: 主に個人投資家から資金を集め、専門家が株式や債券、不動産などに分散投資し、その収益を投資家に還元するサービスです。
  • 投資顧問業務: 主に年金基金や金融機関などの機関投資家を対象に、個別のニーズに合わせた投資助言や運用ソリューションを提供するサービスです。
  • REIT(不動産投資信託): 投資家から集めた資金で複数の不動産を購入し、賃料収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。不動産に少額から投資できるメリットがあります。
  • プライベートエクイティ(PE)ファンド: 未上場企業に投資し、経営に関与して企業価値を高め、IPOや売却によって利益を得るファンドです。
  • ヘッジファンド: 相場の上げ下げに関わらず、様々な手法を用いて絶対的な収益を追求するファンドです。

ビジネスプロセス(取得、運用、売却)

アセットマネジメントのビジネスプロセスは、主に「取得(アクイジション)」「運用計画立案と実行」「売却(ディスポジション)」の3つのフェーズに分けられます。

  • 取得: 投資戦略に合致する資産(物件)の情報を収集し、詳細な調査(デューデリジェンス)を行った上で、価格交渉や契約締結を行います。
  • 運用計画立案と実行: 取得した資産の価値を最大化するための事業計画を策定します。これには、テナント構成の最適化、リノベーション計画、予算策定などが含まれ、その計画に基づいて運用を実行します。
  • 売却: 市場環境や投資家のリターンが最大化される最適なタイミングを見極め、資産を売却します。

報酬体系や収益モデル

アセットマネジメント会社の主な収益源は、顧客から預かった資産(AUM: Assets Under Management)に対して徴収する「信託報酬(運用管理費用)」です。信託報酬はファンドの純資産総額に対して年率で定められ、運用会社、販売会社、信託銀行で分配されます。一部のファンドでは、目標収益を上回る成果が出た場合に支払われる「成功報酬(Performance Fee)」も採用されます。運用資産の規模と手数料率が収益を左右するため、運用会社は規模の拡大や高付加価値なオルタナティブ資産へのシフト、テクノロジー活用によるコスト削減などを通じて収益最大化を図ります。

信託銀行・プロパティマネジメントとの違い

アセットマネジメントと混同されやすい事業として、信託銀行やプロパティマネジメントがあります。

  • 信託銀行: 資産運用業務も行いますが、主には運用資産の保管・管理を行う「受託会社(管理会社)」としての役割を担います。アセットマネジメント会社が運用の指示を出し、信託銀行がそれに従って売買を執行する形が一般的です。また、信託銀行は信託業務や通常の銀行業務も行います。
  • プロパティマネジメント(PM): 不動産のアセットマネジメントと密接に関わりますが、その役割は異なります。PMは不動産の物理的な管理、賃料の回収、テナント対応、施設の維持管理といった日常業務に重点を置きます。一方、AMは投資家の代理として「どの物件に投資すべきか」「いつ売却すべきか」といった戦略的な意思決定を行い、PMを監督する立場にあります。

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アセットマネジメントの主な仕事内容

アセットマネジメントの仕事内容は、大きく「運用部門」「営業部門」「ミドル・バック部門」の3つに分けられます。

資産取得/物件調査・評価(ディールソーシング、デューデリジェンス)

運用部門の重要な役割の一つです。投資戦略に合致する投資機会(ディールソーシング)を探し、対象となる資産や物件の収益性、リスク、法的な問題などを詳細に調査・評価(デューデリジェンス)します。

運用計画立案と実行

取得した資産の価値を最大限に引き出すための具体的な運用計画を立案し、実行します。これには、ファンドマネージャーが中心となり、アナリストからの情報提供を受けて投資判断を行い、ポートフォリオ全体を構築・管理する業務が含まれます。

収支管理・運用報告

運用部門やミドル・バック部門が担当します。資産から得られる収益や発生する費用を管理し、キャッシュフローの最適化を図ります。また、投資家に対して定期的に運用状況やパフォーマンスを報告するレポーティング業務も重要です。

テナント管理やリーシング

不動産アセットマネジメントにおいては、プロパティマネジメント会社と連携し、テナントの募集・誘致(リーシング)や賃貸契約の更新、賃料の管理などを行います。物件の稼働率を高め、安定した賃料収入を確保することが目的です。

売却・ポートフォリオ再編

運用計画で定めた出口戦略に基づき、最適なタイミングで資産を売却します。売却によって得た資金は、新たな資産への再投資や投資家への分配に充てられ、必要に応じてポートフォリオ全体の再編を行います。

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求められるスキルとキャリアパス

必要な知識・スキル(財務、分析、語学など)

アセットマネジメント業界で活躍するためには、以下の知識・スキルが不可欠です。

  • 財務・金融知識: 企業の財務状況や市場動向を分析し、投資判断を行うための専門知識。
  • 分析力: 膨大なデータを迅速かつ正確に分析し、将来を予測する能力。
  • コミュニケーション能力: 顧客やチームメンバー、関係者と円滑に連携し、信頼関係を構築する能力。
  • 語学力: グローバルな市場で活動するため、特にビジネスレベルの英語力。
  • PCスキル: ExcelやPowerPoint、データ分析ツールを使いこなし、効率的に業務を進める能力。
  • 問題解決能力・意思決定力: 不確実性の高い市場環境で、的確な判断を下し、問題解決に導く能力。
  • 探求心: 常に新しい情報や市場動向に関心を持ち、学び続ける姿勢。

部門別の仕事内容と求められる資質

  • 運用部門: ファンドマネージャー、アナリスト、エコノミスト、ストラテジスト、トレーダーなどが所属します。市場分析、投資判断、ポートフォリオ構築などを行い、高度な分析力、判断力、プレッシャーに強い精神力が求められます。
  • 営業部門: 投資信託営業、機関投資家営業などがあります。顧客とのリレーションシップ構築、商品提案、運用報告などを行い、高いコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、金融商品の知識が求められます。
  • ミドル・バック部門: リスク管理、コンプライアンス、法務、経理、IT、ファンド計理などが含まれます。運用と営業をサポートし、正確性、専門知識、法令遵守の意識が求められます。

役立つ資格(証券アナリスト、CFA、MBAなど)

必須ではありませんが、以下の資格は転職やキャリアアップに有利に働きます。

  • 証券アナリスト(CMA): 日本国内の金融・投資に関する専門知識を証明する資格。
  • CFA(Chartered Financial Analyst): 国際的に認められた証券アナリスト資格で、グローバルなキャリアを目指す上で非常に有用です。
  • MBA(経営学修士): 経営学全般の知識を習得でき、マネジメント職へのキャリアアップに役立ちます。
  • 不動産鑑定士: 不動産の価値評価に関する国家資格。不動産AM分野で特に有利です。
  • 不動産証券化協会認定マスター: 不動産証券化に関する基礎知識と実務ノウハウを証明する資格。
  • TOEIC: 英語力を客観的に示すスコアで、特に外資系企業で重視されます(800点以上が目安)。
  • 公認会計士・税理士: 財務分析や税務計画の立案において役立ち、ミドル・バック部門で重宝されます。

キャリアパスと転職市場動向

アセットマネジメント業界でのキャリアパスは多岐にわたります。アナリストとして経験を積み、ファンドマネージャーへとステップアップするのが一般的です。部門異動を通じて幅広い経験を積むことも可能です。

転職市場においては、専門性が高く、かつポジション数が限られているため、金融業界での実務経験が重視される傾向にあります。証券会社やメガバンクでの有価証券関連業務の経験者は有利です。一方で、IT、コンサルティング、経理など異業種からの転職事例もあり、特にデータサイエンスやITスキル、ESG分析の専門知識を持つ人材への需要が高まっています。

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市場動向と最新トピック

国内外の市場トレンド

アセットマネジメント業界は、「貯蓄から投資へ」という政府の政策スローガンや新NISAの拡充により、日本国内で大きな成長期を迎えています。家計金融資産の多くが預貯金に留まっている現状から、投資へのシフトが加速することで、運用資産残高(AUM)の増加が見込まれます。この市場拡大は、業界全体の収益基盤を強化し、新たな雇用創出につながると期待されています。

ESG投資・AI活用・DX推進

  • ESG投資: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した投資が主流化しています。企業の持続的な成長と社会貢献を両立させる投資として注目されており、ESG要因を分析し、投資先企業との対話を通じて企業価値向上を促す専門家への需要が高まっています。
  • AI活用・DX推進: AIは投資判断のヒントを抽出するアルファ創出、顧客サービス、業務効率化など多岐にわたる場面で活用されています。ロボアドバイザーによる自動資産運用や、デジタル技術を活用した顧客向けプラットフォームなど、FinTechとの融合も進み、運用会社の内部ではテクノロジーを理解し活用できるIT・デジタル人材の需要が高まっています。

不動産AMにおける社会的要請と省エネ対応

不動産アセットマネジメントにおいては、環境負荷低減や省エネルギー対応といった社会的要請が高まっています。建物のエネルギー効率化や再生可能エネルギーの導入など、ESGの視点を取り入れた不動産運用が求められています。

今後のアセットマネジメント業界の展望

アセットマネジメント業界は、市場の拡大、テクノロジーの進化、ESG投資の普及といったメガトレンドによって、今後も大きく変化していくと予想されます。M&Aによる業界再編も活発化し、運用会社は規模の拡大や専門性の強化を通じて競争力を高めていくでしょう。機能の分離(アンバンドリング)により、従来の運用会社だけでなく、テクノロジーベンダーやアウトソースされたバックオフィス専門会社など、エコシステム全体にキャリアの機会が広がると考えられます。このダイナミックな変化に適応し、常に学び続けるプロフェッショナルが、業界の未来を形作っていくことになります。

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よくあるQ&A・まとめ

アセットマネジメント業界のよくある質問

  • Q: アセットマネジメントは激務ですか? A: 四半期ごとの繁忙期はあるものの、証券業界など他の金融業界と比較して残業時間は比較的少ない傾向にあります。ワークライフバランスを重視する人にとっては働きやすい環境と言えるでしょう。ただし、運用成果へのプレッシャーは大きく、責任感が求められます。
  • Q: 未経験からでも転職できますか? A: 業界未経験からの転職はハードルが高いものの、不可能ではありません。特に20代の金融業界出身者であればポテンシャル採用の可能性があります。また、現職での経験やスキルがアセットマネジメント業務にどう活かせるかを具体的にアピールすることが重要です。関連資格の取得や語学力も有利に働きます。
  • Q: 日系と外資系のアセットマネジメント会社の違いは何ですか? A: 日系企業は大手金融グループの傘下にあることが多く、幅広い業務を自社で手掛ける総合型が多いです。一方、外資系企業は特定の分野に強みを持つ専門特化型が多く、少数精鋭で成果主義の色が濃い傾向にあります。年収水準は外資系の方が高い傾向がありますが、その分、高度な専門性や英語力が強く求められます。

これから目指す人へのアドバイス

アセットマネジメント業界は、高い専門性と社会貢献性を兼ね備えた魅力的な分野です。この業界を目指すのであれば、まず金融に関する基礎知識をしっかりと身につけ、市場の動向に常にアンテナを張ることが重要です。証券アナリストやCFAなどの資格取得は、自身の専門性を証明する強力な武器となります。また、論理的思考力、分析力、コミュニケーション能力といったビジネススキルを磨くことも欠かせません。

業界への理解を深めるためには、企業説明会への参加やOB/OG訪問を通じて「生」の情報を収集することが有効です。自身の強みやキャリアビジョンを明確にし、具体的な行動を重ねることで、このダイナミックな業界で活躍する道が開けるでしょう。

まとめと参考情報

アセットマネジメント事業は、資産運用立国を目指す日本の政策やテクノロジーの進化、ESG投資の拡大など、大きな変化と成長の波に乗っています。多様な資産を対象とし、投資家の資産価値最大化を目指すこの事業は、高度な専門知識とスキルが求められる一方で、大きなやりがいと高収入が期待できる魅力的なキャリアを提供します。

本記事で解説した内容を参考に、アセットマネジメント事業への理解を深め、自身のキャリア形成や資産運用に役立てていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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