今さら聞けないアセットマネジメントサービスの全体像と最新トレンド解説

はじめに

本記事の目的と想定読者

本記事では、アセットマネジメントサービスの全体像を解説し、特に金融資産、不動産、IT資産、再生可能エネルギーといった分野を中心に深掘りしていきます。読者としては、投資を検討している個人や法人、アセットマネジメントの基礎を学びたい初心者、そして専門知識をさらに深めたいプロフェッショナルまで、幅広い層を想定しています。

アセットマネジメントサービスの具体的な例として、資産運用の代行、管理のみ、リスク管理、コンサルティング、デジタル資産管理などを取り上げ、最新トレンドとして不動産の証券化・デジタル運用、再生可能エネルギー特化型マネジメント、IT資産管理の自動化・DX化にも焦点を当てます。

アセットマネジメントの重要性とは

アセットマネジメントは、資産を効率的かつ効果的に活用し、その価値を最大化する活動や手法を指します。個人や企業が持つ資産を長期的に安定運用するための基盤を構築する上で欠かせないものであり、特に将来の予測が難しい現代社会においては、リスク管理と効率的な資産運用の必要性がますます高まっています。

専門的な知識と経験に基づく資産運用が可能になる点、分散投資による効率的なリスク管理ができる点、そして大規模な資産を運用することで取引コストを低減できる点などが、アセットマネジメントの重要な理由として挙げられます。

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アセットマネジメントの基礎知識

アセットマネジメント(AM)とは

アセットマネジメント(AM)とは、「アセット(資産)」と「マネジメント(管理・運用)」を組み合わせた言葉で、投資用資産を所有者に代わって管理・運用する業務を指します。その目的は、適切なリスク管理のもとで顧客の資産価値を最大化することです。個人や企業・団体などの金融資産や不動産を管理することを主としてきましたが、近年では道路や下水道、橋などの公共資産も対象となっています。

対象となる資産の種類(金融資産・不動産・IT・再エネなど)

アセットマネジメントの対象となる「アセット(資産)」は非常に広範です。

  • 金融資産
  • 株式、債券、投資信託など
  • 不動産
  • 土地、オフィスビル、商業施設、マンション、物流施設など
  • 公共施設・インフラ
  • 道路、橋、上下水道、公共ホール、図書館、空港、発電所など
  • IT資産
  • ハードウェア(PC、サーバー、ネットワーク機器、モバイル端末など)、ソフトウェア(OS、アプリケーション、基幹システムなど)、各種ライセンスなど
  • デジタルアセット
  • 画像、動画、音声、ドキュメントなどのデジタルコンテンツ素材
  • 再生可能エネルギー
  • 太陽光発電施設、風力発電、バイオマスなど

プロパティマネジメント(PM)やファシリティマネジメント(FM)との違い

アセットマネジメントと混同されやすい言葉に、プロパティマネジメント(PM)やファシリティマネジメント(FM)があります。

  • アセットマネジメント(AM)
  • 投資の視点から資産全体(金融資産、不動産、インフラなど)の価値を最大化することを目的とし、運用計画の策定や売買の意思決定など戦略的な管理を行います。
  • プロパティマネジメント(PM)
  • 不動産に関する資産価値の維持や、家賃収入を得るための運営管理を意味します。入居者募集、契約締結、家賃回収、建物清掃、点検、修繕工事など、不動産の現場運営に重点を置いた業務が中心です。
  • ファシリティマネジメント(FM)
  • 企業や団体が経営活動のために使用する施設を対象とし、その管理や活用を考える役割があります。施設の維持・保全だけでなく、施設を通しての経営戦略や環境などのマネジメントも対象とし、効率化を目的としています。

ビルマネジメント(BM)はビルメンテナンスとも呼ばれ、建物そのものを管理する業務を指し、清掃や景観整備、設備の点検・メンテナンス、警備、防災対策などが含まれます。

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分野別アセットマネジメントサービスの特徴

金融資産におけるアセットマネジメント

金融資産におけるアセットマネジメントは、主に株式や債券、投資信託などの資産運用を通じて利益を得ることを目的とします。

  • 投資信託
  • 多数の投資家から資金を集めて一つの大きな資金プール(ファンド)を作り、専門家が株式や債券など複数の資産に分散投資します。個人でも少額から分散投資を可能にするサービスです。
  • 投資顧問
  • 年金基金や金融機関などの機関投資家向けに、顧客固有のニーズや運用方針に合わせてオーダーメイドの運用ソリューションを提供・助言します。

アセットマネジメント会社は、顧客から預かった資産(AUM: Assets Under Management)に対して、一定率の手数料(信託報酬)を得ることで収益を上げています。

不動産アセットマネジメントの役割と流れ

不動産アセットマネジメントは、投資家に代わって不動産資産の価値を最大化する専門職です。

  • 役割
  • 資産価値の最大化と安定的な収益確保
  • 市場リスクへの対応と長期的な視点での運用
  • 投資家やオーナーへの透明性の高い情報共有
  • 業務の流れ
  • 物件買付:投資家ニーズに合わせた物件探し、調査、査定、交渉、ファンド開発。
  • 運用業務:買付した不動産の価値維持・向上のための改修、賃料適正化、PM会社への指示・監督、資金計画、決算、配当、運用レポート作成。
  • 物件売却:出口戦略の策定、売却先との交渉、利益の還元、契約書・資料作成、最終決算。

IT資産およびデジタルアセットマネジメント(DAM)の概要

IT資産管理(ITAM)は、企業や組織が保有するPCやソフトウェア、ライセンスなどのIT資産を効率的に管理する体系的な取り組みです。

  • 目的
  • セキュリティの強化、コンプライアンス違反の防止、資産の有効活用による経費削減、適切なIT投資の実施。
  • 対象となるIT資産
  • 物理的なIT資産:PC、サーバー、ネットワーク機器、モバイル端末など。
  • 情報的なIT資産(デジタルアセット):OS、アプリケーション、基幹システム、画像、音声、動画素材など。
  • ライセンスにまつわるIT資産:ソフトウェア使用許諾、クラウドサービスの利用契約、メンテナンス・保守契約など。

デジタルアセットマネジメント(DAM)は、特に画像、動画、音声、ドキュメントなどのデジタルデータを一元的に保存、管理、共有するためのシステムで、コンテンツの効率的な活用と管理に貢献します。

再生可能エネルギー領域のアセットマネジメント

再生可能エネルギー(再エネ)領域におけるアセットマネジメントは、太陽光発電施設や風力発電など、再生可能エネルギー資産の運用・管理を専門的に行います。政府のGX(グリーントランスフォーメーション)投資推進とも連動し、今後の成長が期待される分野です。投資対象は現在、FIT(固定価格買取制度)に基づく太陽光発電施設が中心ですが、今後は風力やバイオマスなどの多様化が進むと見られています。

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アセットマネジメントサービスの最新トレンド

不動産の証券化やデジタル運用

不動産アセットマネジメント業界では、不動産証券化が活発であり、J-REIT(不動産投資信託)や私募ファンドが市場を牽引しています。特に近年注目されるのは、不動産STO(セキュリティトークン・オファリング)です。

  • 不動産STO
  • 不動産ファンドへの投資持分をブロックチェーン技術でデジタル証券化する手法。
  • 少額からの優良不動産投資が可能になり、流動性の向上が期待されます。
  • 発行体は事務プロセスの自動化・効率化により資金調達コストを削減できます。

日本でも三井物産デジタル・アセットマネジメントの「ALTERNA(オルタナ)」や、SMFLグループ傘下のケネディクスなどが先進事例として挙げられます。

IT資産管理の自動化・DX化

IT資産管理の分野では、テクノロジーの進化により自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいます。

  • AIやビッグデータの活用
  • IT資産の状態を正確に把握し、利用状況のモニタリングやメンテナンス計画の策定を効率化。
  • ソフトウェアのバージョンや脆弱性を管理し、セキュリティリスクを軽減。

IT資産管理ツールは、ハードウェア管理、ソフトウェア管理、ライセンス管理、セキュリティ管理など多岐にわたる機能を持ち、コスト削減、セキュリティ強化、コンプライアンス遵守に貢献します。

再生可能エネルギー特化型マネジメント

再生可能エネルギー分野では、持続可能な投資(ESG投資)の拡大とともに、特化型のアセットマネジメントが成長しています。

  • 特徴
  • 太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー施設の運用に特化。
  • 政府の支援制度や金利動向が市場に影響を与えるため、専門的な知識とリスク管理能力が求められます。
  • ESG投資の普及により、環境負荷の低減や社会的貢献を重視した運用が拡大しています。

リスク管理とESG投資への対応

アセットマネジメント業界全体で、リスク管理の高度化とESG(環境・社会・ガバナンス)投資への対応が重要視されています。

  • リスク管理
  • 市場、信用、運用など多様なリスクを特定・分析し、潜在的損失を最小限に抑える対策を講じます。
  • AIやビッグデータを活用したポートフォリオ運用やリスク管理の精度向上が期待されます。
  • ESG投資
  • 収益性だけでなく、環境、社会、ガバナンス要素を考慮した投資が主流となりつつあります。
  • 企業のESG要素を評価し、投資戦略に反映させるスキルがアセットマネージャーに求められます。
  • 政府も「資産運用立国」構想の中でサステナブルファイナンスの推進を掲げています。

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アセットマネジメントサービスを選ぶポイントと注意点

サービス提供会社ごとの違い(個社名は明記しない)

アセットマネジメントサービスを提供する会社は、それぞれ強みや特化領域が異なります。

  • 大手運用会社
  • 幅広い商品ラインナップと安定した運用実績を持つ傾向があります。国内外にネットワークを持ち、多様なニーズに対応可能です。
  • 専門特化型企業
  • 特定の資産クラス(例:不動産、再生可能エネルギー)や運用手法(例:ヘッジファンド)に強みを持ち、高度な専門性と知見を提供します。
  • 独立系ファンド
  • 柔軟な運用戦略や独自の投資機会を提供する場合があります。

サービス選定の際は、自身の投資目的やリスク許容度、運用したい資産の種類に合致するかを検討することが重要です。

サービス選定時の比較ポイント

サービス選定時には、以下の点を比較検討すると良いでしょう。

  • 運用実績と信頼性
  • 長期的なパフォーマンス、運用資産残高(AUM)、リスク管理体制などを確認。
  • サービス内容と提案の柔軟性
  • 投資対象の選択肢、カスタマイズの可否、報告頻度や透明性。
  • 手数料体系
  • 信託報酬、成功報酬、その他の費用が明確であるか。
  • 専門性と対応力
  • 運用担当者の専門知識、市場分析能力、顧客対応の質。
  • テクノロジー活用度
  • データ分析ツール、オンラインプラットフォームなどの有無。

必要なスキル・資格

アセットマネジメント業界で活躍するためには、専門的なスキルと知識が不可欠です。

  • 共通して求められるスキル
  • 分析能力、金融市場への知的好奇心、論理的なコミュニケーション能力、問題解決能力、デジタルツールの活用力。
  • 専門職に役立つ資格
  • 金融アセットマネジメント向け:証券アナリスト(CMA)、CFA(米国証券アナリスト)、公認会計士。
  • 不動産アセットマネジメント向け:宅地建物取引士(宅建士)、不動産証券化協会認定マスター、不動産鑑定士。
  • 全般:高い英語力(TOEIC 800点以上が目安)。

コンサルティング・管理・運用代行等のサービス例

アセットマネジメントサービスは、クライアントのニーズに応じて多岐にわたります。

  • 資産運用の代行
  • ファンドマネジャーが投資家の資金を預かり、株式、債券、不動産などの様々な資産に投資し、運用を代行します。
  • 資産管理のみ
  • 資産の保管、残高管理、取引の照合・決済といった事務的な管理業務を提供します。
  • リスク管理
  • ポートフォリオのリスク特性を分析し、適切なリスク水準の維持を支援します。
  • コンサルティング
  • 投資家に対し、投資目標の設定、最適なポートフォリオの提案、市場見通しなどのアドバイスを提供します。
  • デジタル資産管理
  • IT資産やデジタルコンテンツの一元管理システムを提供し、運用効率化やセキュリティ強化を支援します。

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実際の運用事例と実践Tips

不動産アセットマネジメントのケーススタディ

不動産アセットマネジメントでは、物件の価値を最大化するための戦略が重要です。

  • 事例
  • 老朽化した商業ビルを安価で取得し、大規模なリノベーションを実施。
  • テナント構成を見直し、魅力的な店舗を誘致するリーシング戦略を再構築。
  • 環境性能の高い設備を導入し、DBJ Green Building認証などの外部評価を取得することで物件価値を向上。
  • 結果として、賃料収入の増加と売却価格の上昇を実現し、高リターンを達成。

金融資産ポートフォリオの成功例

金融資産の運用では、市場動向の分析と分散投資が成功の鍵となります。

  • 事例
  • 個人投資家が少額の資金で複数の投資信託に分散投資。
  • 新NISA制度を活用し、成長投資枠とつみたて投資枠を組み合わせることで非課税メリットを最大化。
  • 定期的なポートフォリオの見直しと市場環境の変化に応じた資産配分の調整を実施。
  • 長期的な視点での積み立てを継続し、市場の変動リスクを吸収しながら安定的な資産形成に成功。

IT資産・再エネ分野の運用例

IT資産や再生可能エネルギー分野でも、アセットマネジメントは重要な役割を果たします。

  • IT資産の運用例
  • 企業の全IT資産(ハードウェア、ソフトウェア、ライセンス)をIT資産管理ツールで一元管理。
  • 使用状況を可視化し、不要なライセンスの解約や機器の再配置によりコストを削減。
  • セキュリティパッチの適用状況を自動監視し、脆弱性を迅速に解消することで情報漏洩リスクを低減。
  • 再エネ分野の運用例
  • 太陽光発電所の出力データをリアルタイムで監視し、発電効率の低下要因を早期に特定・改善。
  • メンテナンス計画を最適化し、故障による稼働停止時間を最小限に抑える。
  • FIT制度の変更や電力市場の動向を分析し、最適な売電戦略を策定。

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まとめとこれからのアセットマネジメント

将来性・今後の展望

アセットマネジメント業界は、今後も大きな成長と変革が期待されます。

  • 「資産運用立国」と新NISAのインパクト
  • 日本政府が推進する「資産運用立国」構想と新NISA制度により、「貯蓄から投資へ」の流れが加速し、市場規模はさらに拡大すると予測されます。
  • テクノロジーによる変革
  • AIやビッグデータを活用した投資分析、ロボアドバイザーによる自動資産管理など、FinTechの進展がサービス提供方法を大きく変えるでしょう。
  • 持続可能な投資(ESG投資)の拡大
  • 環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資は主流化し、アセットマネジメント会社は社会的責任を果たすとともに、新たな投資機会を創出します。
  • 業界再編と新規ビジネス分野の模索
  • コスト圧力や新たな専門性の獲得を目的としたM&Aが続き、不動産STOやインフラ投資、ヘルスケア不動産など、多様なアセットクラスへの注力やソリューション提供が進むでしょう。

この記事の活用方法と学びのポイント

この記事を通じて、アセットマネジメントの基礎知識から分野別の特徴、最新トレンド、サービス選定のポイント、そして将来性まで、幅広い情報を提供しました。

  • 活用方法
  • 自身の資産運用を考える際の参考にしてください。
  • アセットマネジメント業界でのキャリアを検討する際の業界研究に役立ててください。
  • 企業のIT資産や不動産、再エネ設備などの管理・運用を見直すきっかけにしてください。
  • 学びのポイント
  • アセットマネジメントは単なる資産管理ではなく、価値を最大化する戦略的な活動であること。
  • 金融、不動産、IT、再エネなど多様な資産が対象となり、それぞれに専門知識が求められること。
  • テクノロジーの進化とESG投資の拡大が、今後の業界を大きく牽引すること。
  • 専門性と倫理観、そして継続的な学習意欲が、この分野で成功するための鍵となること。

この情報が、皆様のアセットマネジメントに関する理解を深め、より良い意思決定の一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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