コトラ（広報チーム） 
はじめに
記事の目的と対象読者
本記事は、アセットマネジメント簡易ツールの導入を検討している企業担当者や個人投資家、自治体などを対象としています。アセットマネジメントの基本的な概念から、活用分野、求められる機能、そして具体的なツールの比較を通じて、読者が最適なツールを選定し、効果的な資産管理を実現できるよう支援することを目的としています。
アセットマネジメント簡易ツールとは
アセットマネジメント（資産管理）とは、企業や個人が保有する多種多様な資産を効率的かつ効果的に活用し、その価値を最大化する活動全般を指します。ここでいう「資産（アセット）」には、不動産、IT機器、インフラ設備、金融商品、デジタルデータなど、組織や個人にとって価値を持つあらゆるものが含まれます。
アセットマネジメント簡易ツールは、これらの資産の管理を支援するためのソフトウェアやサービスです。特に、導入や運用が比較的容易で、特定の機能に特化しているものが多く、手軽に資産管理を始めたい場合に適しています。
アセットマネジメントツールの活用分野・業種
アセットマネジメントツールは、その対象となる資産の種類や目的によって、さまざまな分野や業種で活用されています。
ツールが用いられる主な業界（不動産、IT、インフラ、金融等）
- 不動産業界: 投資用不動産の価値最大化を目指し、賃料設定、テナント管理、修繕計画などの運用・保全業務に活用されます。
- IT業界: PC、サーバー、ソフトウェア、ライセンスといったIT資産の管理（ITAM）に利用され、セキュリティ強化、コンプライアンス遵守、コスト削減に貢献します。
- インフラ業界: 上下水道、道路、橋などの公共インフラ設備の維持管理に用いられ、長期的な施設の健全性維持と効率的な運営を目指します。
- 金融業界: 株式、債券、投資信託などの金融商品の運用・管理を代行し、リスクとリターンの最適化を図ります。
管理される資産の種類（設備、インフラ、デジタルデータ、証券など）
アセットマネジメントツールで管理される資産は多岐にわたります。
- 設備: 工場設備、オフィス機器、車両など
- インフラ: 上下水道施設、道路、橋、ダムなど
- デジタルデータ: 画像、動画、音声、ドキュメント、ソフトウェア、ライセンスなど
- 証券: 株式、債券、投資信託など
主要な対象ユーザー（企業担当者、個人投資家、自治体など）
- 企業の資産管理担当者: IT部門、総務部門、経理部門などで、PCやソフトウェア、オフィス備品などの管理を行います。
- 個人投資家: 自身の金融資産（株式、投資信託など）の状況を把握し、効率的な資産運用を目指します。
- 自治体: 公共施設やインフラ（上下水道、道路など）の長期的な維持管理計画を策定・実行します。
アセットマネジメント簡易ツールに求められる主な機能
アセットマネジメント簡易ツールに求められる機能は、管理対象や目的によって異なりますが、ここでは主な機能をいくつか紹介します。
資産の一覧・ライフサイクル管理
- 資産情報の自動収集: ネットワークに接続されたPCやサーバー、ソフトウェアなどの情報を自動的に検出し、一覧化します。
- 資産台帳管理: 各資産の基本情報（メーカー、シリアル番号、導入年月日など）を一元的に管理します。
- ライフサイクル管理: 資産の購入から導入、運用、保守、廃棄までの各プロセスを追跡し、最適化を支援します。
データの可視化・共有機能
- レポート・ダッシュボード: 資産の利用状況、稼働状況、セキュリティ状態などをグラフや表でわかりやすく可視化します。
- 共有機能: 必要なデータを社内外の関係者とスムーズに共有するための機能を提供します。
操作性・無料/有料の違い
- 直感的なUI/UX: 専門知識がなくても容易に操作できる、シンプルでわかりやすいユーザーインターフェースが求められます。
- 無料ツール: オープンソースソフトウェアや機能制限のある無料クラウドサービスなどがあり、導入コストを抑えたい場合に適しています。
- 有料ツール: 高度な機能、手厚いサポート、高いセキュリティレベルを求める場合に選択されます。
Excel連携・簡易運用性
- Excelインポート・エクスポート: 既存のExcel資産台帳からのデータ移行や、ツールで管理しているデータのExcel形式での出力が可能です。
- カスタマイズ性: 企業の運用に合わせて、管理項目やカテゴリを自由に設定できる柔軟性があると便利です。
- 自動化機能: 定期的なデータ収集やレポート作成、アラート通知などを自動化することで、運用の手間を削減します。
ツールのタイプ別比較
アセットマネジメント簡易ツールは、その提供形態や費用によっていくつかのタイプに分けられます。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合ったタイプを選びましょう。
オープンソース型
- 特徴: 無償で利用できるソフトウェアが多く、ソースコードが公開されているため、自社でカスタマイズが可能です。
- メリット: 導入コストを大幅に抑えられ、高度なカスタマイズ性があります。
- デメリット: 導入や運用には専門的な知識が必要で、サポートが限定的である場合があります。
- 例: Snipe-IT、GLPI、Ralph、Pimcore、Phraseanet、Nuxeoなど
無料クラウドサービス型
- 特徴: インターネット経由で利用できるクラウドサービスで、無料で提供されるプランがあります。
- メリット: 初期費用がかからず、手軽に導入できます。ウェブブラウザからアクセスできるため、場所を選ばずに利用可能です。
- デメリット: 機能やストレージ容量に制限があることが多く、広告が表示される場合もあります。
- 例: 一部のIT資産管理ツールやデジタルアセット管理ツールで、無料プランや無料トライアルが提供されているもの
有料クラウドサービス型
- 特徴: クラウド上で提供されるサービスで、月額料金や年額料金を支払って利用します。
- メリット: 高度な機能、手厚いサポート、強固なセキュリティが提供されることが多く、導入や運用の手間を削減できます。
- デメリット: 継続的な費用が発生します。
- 例: CIERTO、IMAGE WORKS、OpenText Media Management、Adobe Experience Manager Assets、Assetment Neo、System Support best1など
その他（ダウンロードツール等）
- 特徴: ソフトウェアをダウンロードしてPCにインストールして利用するタイプです。
- メリット: オフライン環境での利用が可能で、データが自社環境に保存されるため、セキュリティ面での安心感があります。
- デメリット: 初期費用やメンテナンス費用がかかることがあり、運用にはPCリソースが必要です。
- 例: アセットマネジメント「簡易支援ツール」（国土交通省の水道事業向け）など
代表的なアセットマネジメント簡易ツール3選
ここでは、幅広いニーズに対応できる代表的なアセットマネジメント簡易ツールを3つ紹介します。
ツールA：IT資産管理に特化した統合型ツール
- 特徴: PC、サーバー、ソフトウェア、ライセンスといったIT資産の一元管理に強みを持つ統合型ツールです。インベントリ収集、ソフトウェア配布、セキュリティパッチ適用、操作ログ管理など、IT資産管理に必要な機能を網羅しています。
- メリット: 企業全体のIT資産の状況をリアルタイムで可視化し、セキュリティ強化、コンプライアンス遵守、運用コスト削減に大きく貢献します。リモートワーク環境下でも端末の管理が可能です。
- デメリット: IT資産以外の物品管理には不向きな場合があります。導入や運用には専門的な知識が必要となることがあります。
ツールB：デジタルアセット管理（DAM）に特化したクラウドサービス
- 特徴: 画像、動画、音声、ドキュメントなどのデジタルデータを一元的に管理し、共有・活用を効率化するクラウドベースのシステムです。メタデータ管理、バージョン管理、プレビュー機能、共有URL発行などが充実しています。
- メリット: 販促コンテンツやマーケティング素材などのデジタルデータを効率的に管理でき、制作工程の短縮、ブランドイメージの統一、著作権管理の強化に役立ちます。複数チャネルでのコンテンツ活用が容易になります。
- デメリット: 物理的な資産管理には対応していません。大容量のデータを扱う場合、ストレージ費用が高くなる可能性があります。
ツールC：公共インフラのアセットマネジメント支援ツール
- 特徴: 水道施設や下水道施設など、公共インフラの設備台帳管理、更新計画策定支援、維持管理情報の一元管理に特化したツールです。地理情報システム（GIS）との連携や、タブレット端末での点検機能などを備えています。
- メリット: 大規模なインフラ資産の長期的な健全性維持と効率的な運用に貢献します。計画的な修繕・更新を支援し、財源確保やコスト削減をサポートします。
- デメリット: 特定の業種に特化しているため、一般的な企業や個人の資産管理には適していません。導入には業務フローに合わせたカスタマイズが必要となる場合があります。
選び方ガイドと導入時の注意点
最適なアセットマネジメント簡易ツールを選ぶためには、自社の状況を正確に把握し、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
業種・資産タイプに合わせた選定ポイント
- IT資産の場合: PC、ソフトウェア、ライセンスなどの管理が中心であれば、IT資産管理に特化したツールを選びましょう。セキュリティ対策やコンプライアンス遵守の機能が充実しているかを確認します。
- デジタルコンテンツの場合: 画像、動画などのマーケティング素材やコンテンツ管理が目的であれば、デジタルアセット管理（DAM）システムが適しています。検索性、共有機能、編集機能などを比較検討します。
- インフラ設備の場合: 公共性の高いインフラ設備の管理には、ライフサイクル管理や保全計画、GIS連携などが可能な専門ツールが必要です。
利用シーンに適した機能の見極め方
- 目的の明確化: 「何のためにツールを導入するのか」「どのような課題を解決したいのか」を明確にすることで、必要な機能が絞り込めます。
- 必須機能の洗い出し: 資産の一覧管理、ライフサイクル管理、データの可視化、レポート機能、セキュリティ機能など、自社にとって不可欠な機能をリストアップします。
- 拡張性・柔軟性: 将来的な資産の増加や事業の変化に対応できる拡張性があるか、また自社の運用に合わせてカスタマイズできる柔軟性があるかを確認します。
コスト・保守・運用体制の確認事項
- トータルコスト（TCO）: 初期費用だけでなく、ライセンス費用、保守費用、運用にかかる人件費など、長期的な視点での総コストを評価します。
- サポート体制: 導入時の設定支援、操作トレーニング、トラブル発生時のサポートなど、ベンダーのサポート体制を確認しましょう。特にITに不慣れな担当者が多い場合は重要です。
- 運用の定着化: ツールを導入しても、従業員が使いこなせなければ効果は半減します。直感的な操作性か、マニュアルや教育資料が充実しているかなどを事前に確認し、スムーズな定着を促す計画を立てましょう。
まとめ
適切なツール選定で失敗しないために
アセットマネジメント簡易ツールの選定は、企業の資産価値最大化、業務効率化、リスク軽減に直結する重要な経営判断です。まずは自社が「何を」「なぜ」「どのように」管理したいのかを明確にし、本記事で紹介した活用分野、機能、ツールのタイプ、選び方のポイントを参考に、最適なツールを選びましょう。
無料トライアルやデモを活用し、実際の操作性を確認することも重要です。適切なツールを選定し、導入後の運用計画までしっかりと立てることで、アセットマネジメントを成功に導くことができるでしょう。
今後のアセットマネジメントツールの展望
アセットマネジメントの分野は、デジタル化の加速、AIやビッグデータ分析技術の進化、ESG（環境・社会・ガバナンス）投資の拡大などを背景に、今後も大きく発展していくと予想されます。より高度な分析機能や自動化機能、他システムとの連携が強化され、多様な資産を一元的に管理できる統合型プラットフォームが主流となるでしょう。
このような変化に対応するため、アセットマネジメントツールも常に進化を続けています。最新のトレンドを把握し、自社のニーズに合わせて柔軟にツールを活用していくことが、持続可能な資産管理の鍵となります。
