M&A業界は異業種からでも目指せる?転職難易度と成功のポイントを解説

M&A業界とは

代表的な2つの業態

M&Aとは、企業を合併・買収することです。事業規模の拡大や新市場への参入などを目的として行われます。M&Aでは、相手企業の探索から価格交渉、契約締結まで、複雑なプロセスが伴います。そのため、専門的な知識とネットワークを持つアドバイザーが重要な役割を果たします。

M&A業界には、大きく分けて「M&A仲介」と「M&Aアドバイザリー(FA)」の2つの業態があります。M&A仲介は、主に中堅・中小企業の事業承継案件を中心に、売り手と買い手のマッチングを支援します。M&Aアドバイザリーは、企業価値評価や財務デューデリジェンス、ストラクチャリングなど、より専門性の高い助言業務を担います。同じM&A領域でも、求められるスキルやキャリアパスは大きく異なります。

M&A仲介M&Aアドバイザリー(FA)
ビジネスモデル売り手・買い手の双方を担当し、マッチングから成約までを支援。中堅・中小企業の事業承継案件が中心。売り手または買い手のどちらか一方を担当。企業価値評価や交渉支援などを行う。大型案件やクロスボーダー案件が多い。
報酬体系成約報酬型が中心。インセンティブ比率が高く、成果次第で年収が大きく伸びやすい。プロジェクトフィー型が中心。職位に応じて報酬レンジが上がる傾向があり、比較的安定した高年収を得やすい。
求められるスキル法人営業力、経営者との関係構築力、案件開拓力、交渉力など。営業実績が重視されやすい。財務・会計知識、バリュエーション、財務モデリング、デューデリジェンス、論理的思考力など。専門性が重視される。
キャリアパスM&A仲介会社内でマネージャー・部長職を目指す。独立してブティック型仲介会社を立ち上げるケースも。FAS、投資銀行、PEファンド、事業会社の経営企画・投資部門など、ファイナンス領域を軸にキャリアを広げやすい。

転職難易度

M&A業界への転職、特に未経験からの挑戦は、難易度が高いといわれています。また、M&A仲介とM&Aアドバイザリー(FA)では、求められる経験や選考基準も大きく異なります。

M&A仲介の場合

M&A仲介では、営業実績が重視されます。特に中途採用では、法人営業経験や、前職で継続的に高い成果を上げてきた実績が評価されやすく、「実績を数字で示せるか」が重要なポイントになります。

実際に、大手M&A仲介会社では、前職で上位層の成績を残していた人材を積極的に採用するケースもあります。金融業界出身者に加え、商社やメーカー、不動産など、成果主義の営業環境で実績を上げてきた人材がM&A仲介へ転職する事例も増えています。

M&Aアドバイザリー(FA)の場合

M&Aアドバイザリーでは、営業力のほか、財務・会計・コーポレートファイナンスに関する専門知識が強く求められます。FASや投資銀行では、企業価値評価(バリュエーション)や財務モデリング、デューデリジェンスなどの業務が中心となるため、銀行・証券会社、監査法人、コンサルティングファームなどの出身者が多い傾向があります。

M&A市場の将来性

日本のM&A市場は拡大が続いています。

件数を押し上げる最大の要因は、中小企業の後継者不足です。経営者の高齢化が加速する日本では、黒字経営であっても後継者が見つからない企業が増えており、M&Aは事業と雇用を守る現実的な選択肢として定着しつつあります。

こうした構造的な需要に加え、企業のグローバル展開や事業ポートフォリオの再編を目的とした大型案件も増加しており、市場全体を底上げしています。

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異業種からM&A業界への転職ルート例

ケース①営業職からM&A仲介へ

異業種からの転職ルートとして比較的多いのが、営業職からM&A仲介へのキャリアチェンジです。M&A仲介では、経営者と長期的な信頼関係を築きながら案件を前に進める力が問われます。顧客のニーズを引き出し、粘り強く交渉を重ねてきた営業経験は、そのままアドバイザーとしての武器になります。特に、法人営業で培った提案力や関係構築力、目標達成に向けた行動管理能力は、そのまま活かしやすいスキルです。

ケース②金融業界からM&A業界へ

「融資や金融商品提案だけではなく、経営課題そのものに深く関わりたい」という動機で、金融業界からM&A業界へ転じる人も少なくありません。銀行・証券会社出身者は、M&A仲介・M&Aアドバイザリーの双方でニーズが高い人材です。特に法人営業経験者は、財務諸表を読み解く力や経営者への提案経験を活かしやすく、入社後の立ち上がりが早いと評価されることがあります。

M&A仲介では、経営者とのネットワークや営業経験が重視される一方、M&Aアドバイザリー(FA)では、より高度な財務知識や企業価値評価の理解が求められます。そのため、銀行・証券出身者の中でも、法人RM経験者は仲介との親和性が高く、投資銀行部門やストラクチャードファイナンス経験者などは、M&Aアドバイザリー(FA)を選ぶケースが見られます。

ケース③会計・コンサル領域からFASへ

M&Aアドバイザリー領域、特にFASへの転職では、公認会計士や監査法人、コンサルティングファーム、経理・財務部門出身者が多く見られます。

FASでは、企業価値評価(バリュエーション)、財務デューデリジェンス、PMI支援など、専門性の高い業務を担います。そのため、会計・財務知識に加え、論理的思考力やプロジェクト推進力が重視されます。

特にBig4系FASでは、監査法人での監査経験や、事業会社での経営企画・財務経験を活かして転職するケースが一般的です。M&A仲介と比較すると、営業色よりも専門職としての色合いが強い点が特徴です。

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転職を成功させるためのポイント

求められるスキル・資格

求められるスキルや資格は、M&A仲介とM&Aアドバイザリー(FA)で大きく異なります。

M&A仲介の場合

M&A仲介では、企業の財務状況を理解したうえで提案を行う力が求められます。実際の業務では、決算書や財務三表をもとに企業の収益性や財務状況を把握し、譲渡オーナーに対して事業承継や企業価値に関する提案を行う場面もあります。そのため、簿記2級レベルの会計知識を応募要件または推奨資格としている会社も多く、未経験者でも転職前に基礎的な財務知識を身につけておくことが望ましいとされています。

また、国内案件を中心に扱うM&A仲介会社では、英語力を必須としないケースが一般的です。

M&Aアドバイザリー(FA)の場合

M&Aアドバイザリー(FA)では、財務・会計・コーポレートファイナンスに関する専門性がより強く求められます。企業価値評価(バリュエーション)、財務モデリング、デューデリジェンスなどを担うため、公認会計士やUSCPA、税理士といった資格が評価されるケースがあります。また、銀行・証券会社、監査法人、コンサルティングファームなどでの実務経験も重視される傾向があります。

さらに、クロスボーダー案件を扱うFAや外資系ファームでは、英語での会議や資料作成が発生するため、ビジネスレベルの英語力が求められることがあります。特に外資系投資銀行やグローバル案件を扱うFASでは、高い英語運用能力が選考要件となるケースもあります。

転職活動の具体的な準備と心構え

転職活動では、まずM&A仲介とM&Aアドバイザリー(FA)の違いを理解し、自分がどちらを志望するのかを明確にすることが重要です。その上で、準備を進めましょう。

転職エージェントを活用する場合、M&A仲介に強いのか、アドバイザリー領域に強いのかによって保有案件や選考対策は大きく異なります。業界特化型のエージェントを活用することで、各社の採用傾向や求める人物像を把握しやすくなるでしょう。

M&A仲介の場合

M&A仲介では、志望する会社のビジネスモデルを調べておきましょう。M&A仲介会社といっても、大手か中堅か、得意とする業種や案件規模、インセンティブ体系はそれぞれ異なります。「なぜこの仲介会社なのか」「この会社でどのような案件に携わりたいのか」を具体的に説明できると、面接での説得力が増します。

職務経歴書では、営業実績や経営者との折衝経験を数字ベースで整理しておくことが重要です。「売上目標達成率」「社内ランキング」「担当社数」など、客観的に成果を示せるよう準備しておきましょう。

また、入社後は案件発掘から成約まで半年〜1年以上かかることもあり、地道な営業活動を継続する粘り強さが求められます。華やかなイメージだけでなく、こうした実務面も理解したうえで転職活動を進めることが大切です。

M&Aアドバイザリー(FA)の場合

M&Aアドバイザリー(FA)では、専門性の高い業務を担います。同じFASでも、財務DD中心なのか、バリュエーション中心なのか、PMI支援まで行うのかによって業務内容は異なります。投資銀行についても、日系・外資系で案件規模や求められる働き方には違いがあります。そのため、「どの領域でどの業務を担いたいのか」まで整理しておくことが重要です。

職務経歴書では、財務・会計知識やプロジェクト経験、分析業務の経験などを具体的に整理しておきましょう。特に、数値分析や資料作成、関係者調整などの経験は、M&Aアドバイザリーとの親和性を示すポイントになります。

また、M&Aアドバイザリーでは、短期間で高密度なプロジェクトを進めるケースも多く、タイトなスケジュールの中で分析や資料作成を行う場面もあります。実際の働き方や業務負荷まで理解しておくと、入社後のミスマッチを防げるでしょう。

面接で押さえるべきポイント

M&A業界の面接では、「なぜM&A業界なのか」を論理的に説明できることが重要です。仲介とアドバイザリー、いずれの領域でも共通して重要なのは、「なぜ自分がその仕事に適性を持つのか」を、自身の経験と結びつけて説明できることです。これまでの経験を踏まえて、どのように価値を発揮したいのかまで整理しておきましょう。

以下では、M&A仲介とM&Aアドバイザリー(FA)それぞれの面接で重視されるポイントを解説します。

M&A仲介の場合

M&A仲介の面接では、「なぜ現職を離れるのか」「なぜM&A仲介なのか」「なぜこの会社なのか」という志望動機の一貫性が重視されます。案件発掘から成約までを担う営業色の強い仕事であるため、前職でどのような成果を出してきたかを、数字を交えて具体的に説明できることが重要です。「売上目標達成率」「社内ランキング」「担当社数」など、客観的に実績を示せるよう整理しておきましょう。

M&A仲介は、中小企業オーナーと長期的な信頼関係を築く仕事です。そのため、「経営者の意思決定支援に関わりたい」「事業承継や企業成長に貢献したい」といった志向を、自身の経験と結びつけて語れると評価につながりやすくなります。知識やスキルだけでなく、人間性や誠実さも確認される傾向があります。

M&Aアドバイザリー(FA)の場合

M&Aアドバイザリーの面接では、財務・会計・ファイナンスに関する理解が重視される傾向があります。FASや投資銀行では、企業価値評価や財務分析に関する基礎知識に加え、論理的思考力や資料作成能力などが問われることもあります。ポジションによっては、会計知識に関する質問やケース面接、英語でのコミュニケーションが行われるケースもあります。

さらに、「なぜFAなのか」「なぜFASや投資銀行なのか」といった志望理由についても、業務理解を踏まえて説明できることが重要です。自身の経験やスキルが、どの業務領域でどのように活かせるのかまで整理しておくと、面接での説得力が増します。

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この記事を書いた人

武澤諒介

[ 経歴 ]
法政大学経済学部卒業後、横浜銀行に入社。
個人向け資産運用提案から法人向け融資提案まで個人/法人営業を幅広く経験。

[ 担当業界 ]
銀行業界