弁護士から金融コンプライアンス担当へ──リーガルマインドを活かすキャリア転換のステップ

金融業界では、金融商品取引法、銀行法、個人情報保護法など多岐にわたる規制への対応が求められており、コンプライアンス部門の重要性が一段と高まっています。その中で、法的知識とリスク感度を兼ね備えた弁護士出身者は、金融コンプライアンス担当として高く評価される存在です。本記事では、弁護士が金融コンプライアンス担当に転職するためのステップ、活かせるスキル、選考対策、志望動機・職務経歴書の記載例まで、実践的に解説します。

1. 弁護士と金融コンプライアンス担当の業務の違い

まずは両者の業務領域と視点の違いを整理しておきましょう。

項目弁護士金融コンプライアンス担当
主な目的個別案件の法的問題解決・紛争対応組織の法令遵守体制の構築・維持
業務内容訴訟、契約書作成・レビュー、法律相談規程整備、社内教育、モニタリング、当局対応
視座案件単位でのリスク回避組織全体のリスク予防・ガバナンス強化
関与部門依頼企業・個人、裁判所、他の法律事務所営業部門、管理部門、経営層、監督当局

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2. 弁護士経験で活かせるスキル

弁護士として培った以下のスキルは、金融コンプライアンス担当においても大きな武器となります。

  • 法律リスク分析力と法的助言能力
  • 契約書レビュー・ドラフティングスキル
  • 法令・規制対応に関する調査・解釈力
  • 監督当局との対応経験(許認可、届出等)
  • 社内教育・リスク意識向上施策の企画・実行力

特に、難解な法規制をわかりやすく社内に落とし込む力は、コンプライアンス担当に必須のスキルです。

3. 転職成功のための5ステップ

  1. 金融コンプライアンス業務の理解:金融業界特有の規制構造やコンプライアンス体制を学習
  2. 自身の強みの棚卸し:リーガルリスク対応経験、規制対応経験を具体化
  3. 金融知識の習得:金融商品取引、AML/CFT、リスク管理等の基礎知識を習得
  4. 内部統制・ガバナンスの視点を養う:組織全体最適を意識した施策立案演習
  5. 面接対策:なぜ弁護士からコンプライアンス担当へ転身するのかを論理的に説明できるよう準備

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4. 資格・知識面の補強ポイント

必須ではありませんが、以下の知識・資格があると転職活動で優位になります。

  • 金融商品取引法、銀行法、保険業法の知識
  • AML/CFT関連知識(公認AMLスペシャリスト資格など)
  • 企業内コンプライアンス実務に関する理解
  • 英語力(外資系金融機関を志望する場合)

また、金融庁、証券業協会、日弁連などの発信するガイドラインや資料を日常的にチェックする習慣も評価されます。

5. 職務経歴書の書き方

下記のように、規制対応・社内リスク管理・社内教育の実績を強調して記載すると効果的です。

  • 金融商品取引法・個人情報保護法に関する助言・対応実績
  • 社内規程整備プロジェクト参画経験
  • 監督当局への届出・報告書作成サポート
  • コンプライアンス研修の企画・講師経験

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6. 志望動機の例文

リーガルマインドを軸に、組織全体のリスク管理に貢献したい想いを中心に構成します。

【志望動機例】

私はこれまで、弁護士として企業法務、金融規制対応、個人情報保護対応などに携わってまいりました。こうした経験を通じて、単発的な法的支援に留まらず、組織全体のリスク抑制・コンプライアンス文化の醸成に関わりたいという志向が強まり、金融コンプライアンス担当職を志望いたしました。これまで培ったリーガルリスク感度と社内調整力を活かし、貴社のコンプライアンス体制強化に貢献していきたいと考えております。

7. まとめ

弁護士出身者は、リーガルリスク分析力、規制対応力、社内教育力を武器に、金融コンプライアンス領域で活躍できる素地を十分に備えています。単なる法解釈にとどまらず、ビジネス推進とのバランスを意識したコンプライアンス推進を目指すことで、キャリア転換の成功を実現しましょう。


【職務経歴書(サンプル)】

氏名:田中 遥
生年:1988年生まれ

■職務要約:
都内法律事務所にて約8年間、企業法務案件を中心に担当。金融商品取引法、個人情報保護法、労働法分野に強みを持ち、訴訟対応、契約書作成・レビュー、社内規程整備、コンプライアンス研修講師など幅広い実務経験を積む。今後は、組織内部からリスクマネジメント・ガバナンス強化に貢献すべく、金融コンプライアンス領域へのキャリア転換を志向。

■職務経歴:
〇〇法律事務所(2015年4月~現在)
・金融商品取引法・個人情報保護法に関するリーガルアドバイス提供
・上場企業向け社内規程(コンプライアンス規程、情報管理規程等)整備支援
・監督当局への届出・報告支援(行政対応)
・社内向けコンプライアンス研修の企画・講師実施(年2回)

■保有資格:
・日本国弁護士(第一東京弁護士会所属)
・公認AMLスペシャリスト(ACAMS)取得予定
・TOEIC 870点

■学歴:
東京大学 法学部卒(2011年3月)

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)