コトラ（広報チーム） 
サステナリティクスとは？その概要と歴史
1992年創立からの歩み
サステナリティクスとは、企業や投資家が持続可能なビジネスを構築するための支援を行う、ESG（環境、社会、ガバナンス）評価機関です。その歴史は1992年に創立されたことに始まり、長年にわたりESG分野で専門知識を深めてきました。特に、ESG調査やレーティングの提供を通じ、責任投資戦略を実践するための信頼できるパートナーとしての役割を果たしています。現在では40を超える産業に対応した専門知識を持ち、800名以上のアナリストが在籍していることが特徴です。世界16拠点を中心に、資産運用会社や年金基金に対しグローバルでサービスを提供しています。
モーニングスターとの連携と影響
サステナリティクスは2020年に米国の金融情報サービス企業モーニングスターの完全子会社となりました。この連携により、ESG評価機能がさらに強化されただけでなく、広範な投資家層にアクセスする機会が拡大しました。モーニングスターの強力なプラットフォームを活用することで、サステナリティクスは個別銘柄やポートフォリオ全体のESGリスク評価をさらに効率的かつ正確に提供できるようになりました。この統合によるシナジー効果は、投資家の意思決定において不可欠なツールとしての地位を確立する一助となっています。
ESG評価の基礎を築いた背景
サステナリティクスのESG評価の基礎が築かれた背景には、1990年代以降の投資家や規制当局からの持続可能性に対する関心の高まりがあります。この潮流を受け、同社は企業の持つ環境リスク、社会課題、ガバナンスの質を客観的に評価し、責任ある意思決定を支援するための枠組みを構築しました。特に、各業界や地域特有のESG課題に焦点を当てることで、評価結果が実務的な価値を持つよう設計されています。こうした評価方法は現在、数百社の企業や投資家にとって、リスク管理や競争優位性を強化する重要なツールとなっています。
サステナリティクスのESGリスク・レーティングの仕組み
主要評価項目：環境、社会、ガバナンス
サステナリティクスとは、ESGリスク・レーティングを通じて企業が直面する「環境（Environment）」「社会（Social）」「ガバナンス（Governance）」の各分野におけるリスクと管理状況を評価する仕組みを提供する評価機関です。環境では気候変動や資源管理、社会では人権や労働環境、ガバナンスでは企業の透明性や経営体制といった、企業価値に直結する重要な課題を多角的に評価します。
これらの主要評価項目は、サステナリティに関する包括的な視点を提供するだけではなく、企業や投資家がリスクを予測し、戦略を立案する上で重要な指標となっています。サステナリティクスが行う分析は、単なるESGデータの収集にとどまらず、具体的なリスクと機会を明確にするという点で画期的です。
産業特有の課題とリスク管理
サステナリティクスのESGリスク・レーティングは、40以上の産業を対象に、各業界特有の課題やリスクを詳細に分析しています。たとえば、エネルギー産業では炭素排出や資源利用の効率化が重視される一方で、製薬業界では倫理的課題や製品安全性が焦点となります。
これを可能にするのが「マテリアルESGイシュー（MEIs）」と呼ばれる重要課題です。これらは各産業における特有のリスクに基づいて設定され、産業ごとに3～10個程度が選定されます。これにより、企業が自ら直面するリスクを正確に把握し、それに対応する戦略を採ることで持続可能な成長を促進する支援を行っています。
さらに、リスク管理の評価では、単に課題を洗い出すだけではなく、それらにどの程度適切に対処できているかを測定する点が特徴的です。これにより、投資家や企業は未管理のリスクを明確にし、適切な対応策を検討できるようになります。
5段階格付けと絶対値スコアの意味
サステナリティクスのESGリスク・レーティングは、5段階の格付け（Negligible、Low、Medium、High、Severe）と絶対値スコアを活用して評価が行われます。これにより、企業や投資家は企業のリスク水準を一目で理解できるようになり、ESGリスクの相対的な大きさも把握しやすくなっています。
特に、スコアの「絶対値」は、発行体がリスクにどの程度エクスポージャーしているのか、またどれだけそのリスクを管理しているかを具体的に示しています。この仕組みは、企業のパフォーマンスを簡潔に伝えると同時に、より透明性の高い評価を可能にします。
また、格付けは投資家にとっての指針にもなり、資産運用における意思決定の迅速化に寄与します。このスコアリング方法は、ESGリスクが財務的にどれだけの影響を与えるかを解釈する上でも重要なツールといえるでしょう。
サステナリティクスの導入がもたらすメリット
機関投資家にとっての利点
サステナリティクスを導入することで、機関投資家はESGリスクの識別と評価をより正確に行うことができます。ESG評価機関としての信頼性の高いデータや分析を活用することで、投資先企業の環境・社会・ガバナンスに関するリスクや機会を深く理解できるようになります。これにより、投資判断を下す際の確実性が向上し、持続可能な成長を支えるポートフォリオの構築が可能になります。さらに、サステナリティクスは業界特有のESG課題にも対応しているため、多様な投資ニーズに応える柔軟性を提供しています。
企業のリスク管理と競争優位性
サステナリティクスの評価基準を用いることで、企業は自身のESG課題を可視化できるようになります。これにより、未管理のリスクや改善が必要な領域を特定し、戦略的な対応をとることが可能です。また、ESGリスクが低いと評価されることは、投資家に対する信用力を高めるだけでなく、競争優位性の向上にもつながります。さらに、この導入は企業の透明性向上やサプライチェーンのリスク管理にも役立ち、持続可能性を念頭に置いた経営戦略を推進する土台を築きます。
ポートフォリオ評価への活用事例
サステナリティクスによるESGリスク・レーティングは、ポートフォリオ評価においても重要な役割を果たしています。具体的には、各銘柄が抱えるESG関連リスクを相対的に評価し、全体的なポートフォリオのリスクプロファイルを把握するために活用されています。この評価は、リスク回避のための再調整や、ESGスコアの高い投資対象への資金移動をサポートします。最近では、機関投資家だけでなく、個人投資家の間でもこうした持続可能性を考慮したアプローチが注目されています。
直面する課題と今後の展望
ESGの透明性向上への取り組み
サステナリティクスとは、企業や投資家に対してESGデータやリスクレーティングを提供することで、ESG課題の可視化と理解を支援する評価機関です。しかし、ESG情報の開示基準や評価の透明性に関する課題は依然として大きなテーマとなっています。サステナリティクスは、評価プロセスの透明性を高めるための取り組みを継続的に行っており、2023年にはESGリスク・レーティングの大規模なバージョンアップを発表するなど、革新的な技術や方法論を導入しています。これにより、投資家のみならず企業自体が自身のESGリスクをより的確に把握できる環境を整備しています。
グローバル展開と各国の規制対応
サステナリティクスは、世界16カ国に拠点を持ち、40以上の産業で専門知識を発揮しています。一方で、グローバルに展開する中で、各国が採用するESGに関する規制や指針に対応する必要性が高まっています。特に近年、EUのサステナブルファイナンス開示規則（SFDR）や、アジア諸国におけるESG開示義務化の動きが加速しており、これらにどう適応していくかが重要な課題となっています。サステナリティクスは、各地域の特性や規制要件に対応したカスタマイズ可能なソリューションを提供し、投資家や企業のニーズに応えることを目指しています。
技術革新が変える評価の未来
ESG評価の分野では、人工知能（AI）やビッグデータ解析技術の進展が、評価の精度や効率性を飛躍的に向上させています。サステナリティクスもこれらの技術を積極的に取り入れ、1万6,000社以上の企業を対象にした詳細かつ包括的な評価を実現しています。さらに、サプライチェーンESGソリューションなどの新しいツールを提供することで、企業がサプライヤーのリスクを管理しやすくなる環境を整えています。このように技術革新はESG評価の未来を大きく変え、多様な業界や地域での裾野を広げる原動力となっています。