女性役員比率、なぜ日本は世界に遅れを取っているのか?背景と課題を徹底解説

1. 日本の女性役員比率に関する現状

1.1 現在の女性役員比率とその推移

日本の女性役員比率は近年着実に上昇傾向を見せています。2022年には11.4%だった割合は、2023年に13.4%にまで増加しました。しかし、依然として女性取締役の割合は諸外国に比べて低い水準にあります。過去10年間で見ると、女性役員数は5.8倍に増加するなど改善の兆しが見られますが、プライム市場上場企業の約10%にはまだ女性役員がいないという現状も指摘されています。

1.2 比率の上昇要因と主体的な取り組み

女性役員比率の上昇には、法規制や政府方針、そして社会的な意識の変化が影響しています。例えば、プライム市場上場企業へのガイドラインが改正され、最低1人の女性役員を設置するように促す方針が打ち出されました。また、一部企業では「男女共同参画」という視点から自主的に多様性戦略を進めており、女性候補の育成プログラムが導入されるなどの動きが活発化しています。

1.3 世界各国と比較して見える差

日本の女性役員比率は他国に比べて遅れています。例えば、欧米諸国では政策や規制を通じて女性役員の割合を一定割合以上にする取り組みが進んでおり、ノルウェーやフランスでは40%近い比率を実現しています。一方で日本の13.4%という数字は、アジアの中でも下位に位置し、国際競争力や多様性の観点から課題が浮き彫りになっています。

1.4 業種ごとの女性役員比率の違い

女性役員比率は業種ごとに大きな差があります。例えば、金融・保険業やサービス業などでは女性役員の割合が相対的に高い一方で、製造業や建設業ではまだ男性中心の構造が残っている傾向があります。この差は女性が進出しやすい業界とそうでない業界の特徴や、働き方改革の進捗状況の違いを反映していると考えられます。

1.5 政府が設定する目標値と現実のギャップ

日本政府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」において、2030年までに女性役員比率を30%以上にするという目標を掲げています。しかし、2023年時点でのプライム市場全体の平均が13.4%という現状を踏まえると、目標達成のハードルは決して低くありません。中間目標として設定された2025年の19%達成を見据え、さらなる制度改革や企業の意識変革が求められています。

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2. 日本で女性役員比率が低い背景

2.1 日本の伝統的な企業文化と男性中心の組織構造

日本企業の多くは、歴史的に男性が中心となった組織構造を形成してきました。長年にわたる経営層の選出プロセスが限られた人脈や既存の社内文化に基づいて行われた結果、男性が主要な役職を占める傾向が強まっています。また、「終身雇用」や「年功序列」といった日本の企業文化も、年齢層や性別による格差を助長してきた要因の一つです。そのため、女性が役員ポジションに登用される機会は限られ、女性取締役の割合を大幅に引き上げるには、このような構造的な課題の見直しが必要とされています。

2.2 女性のキャリア継続を阻む社会的要因

日本では依然として、結婚や出産を機に女性が一度キャリアを中断する状況が多く見られます。特に正規雇用から非正規雇用への転換や、完全に職場を離れるケースも少なくありません。その背景には育児や家事を女性が中心に担うべきという社会的圧力が存在しており、仕事と家庭を両立するために必要なサポートが十分に提供されていないという問題があります。これに伴い、女性が長期的なキャリアを歩み、役員クラスに到達するための道が閉ざされがちです。

2.3 役員登用プロセスの透明性不足と偏見

役員の選出プロセスに関する透明性の欠如も、女性取締役の割合が低い要因として挙げられます。多くの企業では、役員候補が内部の限られたネットワークの中から選ばれる傾向が強く、女性はそのネットワークに入る機会が少ないのが現状です。また、能力よりも性別に基づいた偏見や慣習が、女性が経営層に進出する障壁を生んでいます。このような環境では、明確な評価基準に基づき性別にとらわれず登用を進める企業文化の構築が求められています。

2.4 勤続年数とキャリアパスのジェンダーギャップ

日本社会では、勤続年数がキャリアパスに大きく影響するケースが多く見受けられます。しかし、育休や介護などの理由で女性がキャリアを一時中断することが多く、これが結果的に役員ポジションに到達するまでの道のりを遠ざけています。男性がキャリアを途切れさせることなく勤続する一方で、働きながら継続的にスキルを積み重ねることが難しい状況がジェンダーギャップを助長しています。

2.5 家事・育児負担の偏在と企業の支援不足

家庭内における家事や育児の負担が女性に集中している現状も、女性が役員ポジションに登用される妨げになっています。日本では、男性の家事・育児参加率が国際的に見て低水準にとどまっており、女性が家庭内で担う役割が過剰になりがちです。このような状況を改善するためには、企業による柔軟な働き方の導入や、女性だけでなく男性も育休を取得しやすい制度の整備が必要です。特に女性取締役を増やすためには、ライフステージに応じた支援体制の強化が重要です。

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3. 女性役員比率向上への日本政府と企業の取り組み

3.1 政府が策定した目標と施策:2030年を視野に

日本政府は、女性役員の割合を向上させるべく具体的な目標と施策を打ち出しています。「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」においては、2030年までに女性役員比率を30%以上に引き上げる目標を掲げました。さらに、中間目標として2025年には女性役員比率を19%にすることを目指しています。この目標を達成するために、政府は取引所規則の変更などの政策的な後押しを行っており、2025年までにすべてのプライム市場上場企業に最低1名の女性役員の設置を促す方針も定めています。

3.2 東証プライム上場企業の具体的な動き

東京証券取引所のプライム市場に上場する企業では、女性役員比率の向上に向けた具体的な取り組みが進んでいます。2023年には女性役員がいない企業が約10%に減少したほか、女性役員比率30%以上を達成した企業は約138社に上ります。特に、社内役員の女性比率は3.4%と低いものの、社外役員の女性比率が24.1%に達しており、企業の多様性推進が徐々に進展していることが分かります。この背景には、社外から女性役員を採用する動きが活発化していることが挙げられます。

3.3 女性候補育成プログラムとリーダーシップ支援

女性役員比率を高めるためには、役員候補者の育成が欠かせません。政府や企業はリーダーシップ育成プログラムを実施し、次世代の女性リーダーを支援しています。キャリア形成に資する機会を提供するほか、女性のリーダーシップ能力を発揮できる環境を整備することが重要視されています。具体例として、企業内外でのトレーニングやメンタリング制度を導入することで、女性社員が管理職や取締役としての役割を担うためのスキルを習得できるよう支援しています。

3.4 男女平等の視点からの人的資本経営の推進

日本企業では、女性取締役割合を向上させるために人的資本経営への注力が始まっています。男女平等の視点を取り入れた経営戦略を採用し、多様性を企業価値として確立しようとする動きが進んでいます。また、国内外の投資家は多様性を判断基準として重視する傾向が高まっており、これに対応するため、多くの企業が積極的に女性役員を登用する方針を打ち出しています。このような取り組みは、持続的成長につながると期待されています。

3.5 外国企業の成功事例から学ぶべきポイント

日本企業が女性役員比率を向上させるにあたり、外国企業の成功事例から学ぶべきことは多いと言えます。たとえば、女性の活躍が進む欧州諸国では、取締役会に女性を一定の割合で登用するクオータ制を導入している企業が多く見られます。また、柔軟な働き方の導入やキャリア継続のための充実した育児休暇制度などが、女性が管理職や役員ポジションに昇進しやすい環境を作り出しています。日本企業もこうした事例を参考にしながら、自社の文化や制度に適した対策を講じる必要があるでしょう。

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4. 女性役員比率向上に向けた課題と展望

4.1 目標達成に向けた障壁の現状整理

日本の女性役員比率は過去10年間で確実に上昇しているものの、未だ13.4%(2023年)にとどまっており、多くの課題が残されています。特にプライム市場上場企業でも約10%が女性取締役を1人も擁していない現状があります。また、政府は2030年までに女性役員比率30%という目標を掲げていますが、この目標を達成するための具体的な取り組みがすべての企業で浸透しているわけではありません。伝統的な企業文化やジェンダーバイアスなどの障壁が依然として影響を与えており、これらが改革への足かせとなっています。

4.2 キャリアパイプラインの透明性を高める方法

女性役員比率向上には女性が管理職やリーダー職に就きやすいキャリアパスの構築が鍵となります。そのためには、役員登用プロセスの透明性を高めることが必要です。企業は評価基準や昇進プロセスを明確化し、ジェンダーバイアスが介入しない環境を整えることが求められます。さらに、女性候補者を育成するプログラムやメンターシップ制度を導入し、優秀な女性社員がキャリア成長を実現できるよう支援する企業文化の推進が必要です。

4.3 企業文化改革とジェンダー意識の醸成

男性中心の組織構造を変革するため、企業文化そのものを再構築する必要があります。ジェンダー平等の価値観が企業全体に浸透すれば、女性役員比率の向上につながるだけでなく、多様な視点を活かした経営戦略の実現にも役立ちます。具体的には、従業員教育プログラムや意識改革キャンペーンの実施を通じて、ジェンダーバイアスを取り除く努力が重要です。また、リーダーシップを発揮するロールモデルを積極的に紹介することが、若手女性社員のモチベーションを高めるきっかけにもなります。

4.4 男性育児取得率向上など社会基盤の整備

女性が役員として活躍するためには、育児や家事といった責任を家庭内で平等に分担できる環境が不可欠です。そのため、男性の育児休業取得率を高めるための取り組みが必要です。企業は男性社員の休業取得を推奨する制度を構築し、育休利用がキャリアに影響を与えないよう意識を改める必要があります。また、保育所や育児支援サービスの充実、柔軟な働き方(テレワークやフレックス勤務など)といった社会基盤の整備が、女性が役員を目指す上での重要な土台となります。

4.5 数値目標超えと持続的多様性確保の方法

2030年までに女性役員比率30%という目標を実現するだけでなく、継続的に多様性を確保するための仕組みを構築する必要があります。これには、女性のキャリア支援を一時的な取り組みに終わらせるのではなく、企業経営の一環として長期的な戦略に組み込むことが求められます。たとえば、毎年の女性役員比率の公開や外部監査の受け入れを通じて透明性を保ち、株主やステークホルダーと進捗を共有することが効果的です。こうした継続的な努力が、多様性による持続可能な成長を実現する鍵となります。

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5. 日本の女性役員比率向上がもたらす変化と可能性

5.1 女性役員増加が企業経営にもたらす効果

女性役員の増加は、企業経営にさまざまなポジティブな効果をもたらします。多様な視点が経営層に取り入れられることで、意思決定の質が向上し、柔軟かつ創造的な戦略が生まれやすくなります。特に、日本における女性取締役の割合が低い現状を踏まえると、女性の視点を経営に反映させることは、これまで見落とされていた課題の解決や新たなビジネスチャンスの発見につながる可能性があります。また、女性役員の存在は、組織全体の従業員にとってロールモデルとなり、職場のモチベーションや働きやすさを向上させる効果も期待されます。

5.2 市場競争力と国際評価の向上

女性役員比率の向上は、日本企業の市場競争力および国際的評価の向上にも寄与します。グローバルで活躍する企業の多くがダイバーシティを経営の重要な柱として掲げており、投資家からも多様性のある組織が評価される傾向にあります。そのため、女性取締役の割合を高めることは、海外市場での信頼性を向上させるとともに、日本企業に対する投資意欲の促進にもつながります。また、こうした取り組みは、SDGsへの貢献としても認識され、国際的な競争力を強化する要因になります。

5.3 ジェンダー平等が社会全体に与える影響

企業における女性役員の増加は、ジェンダー平等への意識を高める重要なきっかけとなり、社会全体へポジティブな波及効果をもたらします。経営層における女性の活躍が定着することで、性別にかかわらずリーダーを目指すという価値観が広まり、社会全体の意識改革につながります。これにより、性別に基づく固定概念の解消が進み、労働市場における真の平等への道が開かれるでしょう。また、女性の経済活動参加率が増加することで、経済の成長にもつながると期待されています。

5.4 多文化共生の推進とイノベーション創出

女性役員比率の向上は、多文化共生の推進とイノベーションの創出にも寄与します。男女の多様性だけでなく、多文化的な観点や個人の背景を重視する企業文化が育まれることで、新しいアイデアや価値が生まれる土壌が作られます。特に、日本のように多様性が課題視される国において、女性取締役の割合を増やすことは、イノベーションを競争優位性とする企業づくりに直結します。異なるアイデアや視点を持つメンバーが集うことで、生産性や創造性が高まり、競争力の強化にもつながることが証明されています。

5.5 次世代への希望と意識変革

女性役員比率の向上は、次世代への希望を広げ、社会全体の意識変革を促します。経営層での女性活躍が進むことで、「女性も十分にリーダーとしての役割を果たせる」という実例が増え、それが次世代の子どもや若者に影響を与えます。特に、女性取締役の目立った成果は、若い世代にとって大いなる希望となり、女性がキャリア形成に対して積極的な姿勢を持つきっかけとなるでしょう。このような変化は、個人だけでなく、企業や社会全体にも大きな価値をもたらします。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。