東証プライム企業の女性役員比率、世界の水準にどう追いつくか?

日本の女性役員比率の現状と国際比較

東証プライム市場における女性役員比率の推移

日本の東証プライム市場における女性役員比率は、近年徐々に増加しています。2022年には11.4%であった女性役員比率は、2023年には13.4%まで上昇しました。そして2024年には16.4%に達するとの予測も出ており、前年比で約2.8ポイントの増加が見込まれています。この10年間で見ると、2012年から2022年にかけて女性役員の数は5.8倍に増加しており、この成長は日本社会における女性活躍促進の流れを示しています。

しかし一方で、2023年時点でもプライム市場上場企業の約10%は女性役員を一人も選任していない状況となっており、依然として課題も残されています。政府が2025年までにプライム市場の全企業で女性役員を1人以上選任する目標を掲げていることから、企業のさらなる努力が求められています。

主要国との女性役員比率の比較分析

日本の女性役員比率は国際的に見ると依然として低水準に留まっています。例えば、ヨーロッパ諸国ではフランスやノルウェーなどが法律による女性役員比率のクオータ制度を導入しており、女性役員比率が40%を超える国も存在します。一方で、日本の女性役員比率は先進国の中で最も低い水準の一つにあり、アメリカやイギリスと比較しても大きく遅れを取っています。

この格差を埋めるためには、単なる数値目標の達成だけでなく、ジェンダー平等を浸透させるための文化改革や制度の導入が必要です。また、経済協力開発機構(OECD)加盟国のほとんどが積極的な女性役員登用の支援政策を実施している中、日本企業の取り組みはまだ発展途上といえるでしょう。

女性役員比率向上における現在の課題

女性役員比率向上における主な課題として、まず挙げられるのは人材育成の不足です。現在、日本では社外役員としての女性登用が進んでいる一方で、社内昇進による女性役員の割合は極めて低く、たった3.5%に留まっています。これにより、役員候補となる女性人材の裾野が限定されていることが大きな障壁となっています。

また、企業文化の問題も無視できません。日本の多くの企業では、伝統的な性別役割分担や長時間労働を前提とする働き方が依然として根強く残っています。これらの課題は、女性が管理職や役員として活躍するための壁となり、結果として女性役員比率の停滞を助長しています。

世界水準に至らない原因は何か?

日本の女性役員比率が他国に比べて低い主な原因として、文化的慣習や制度的制約が挙げられます。例えば、法的クオータ制の導入が検討されていない点が一つの要因です。ヨーロッパ諸国では法的義務による女性役員比率の上昇が成果を上げていますが、日本では企業の自主的な取り組みに依存しているため、進捗が後れがちです。

さらに、女性の職業キャリア形成における早期離脱の問題も大きく影響しています。出産・育児などライフイベントと仕事の両立支援が不十分なため、女性労働者が役員候補までキャリアを継続することが難しい状況にあります。このような要因が重なり、結果的に女性役員比率の向上が他国に比べ進みにくい構造となっています。

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政府と経済団体の目標と施策

2030年の女性役員比率30%目標の背景

政府は2030年までにプライム市場上場企業を中心に女性役員比率を30%まで引き上げるという目標を掲げています。この背景には、ジェンダー平等の実現だけでなく、多様性の向上が企業の競争力を高め、経済成長を後押しするとの考え方があります。全球的に見ても、多様性推進が企業にポジティブな影響を及ぼすことは多くの調査で明らかにされています。しかし、日本の女性役員比率は2023年時点でプライム市場においてわずか13.4%にとどまる状況にあり、世界の先進国と比較すると依然低い水準にあります。この数値を改善し、目標を達成するためには、政府や経済団体だけでなく、企業の一層の努力が求められています。

政府方針と関連する法的・政策的施策

政府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」に基づき、女性役員比率の向上を推進しています。この計画では、2030年までに30%の目標を掲げ、中間目標として2025年までにプライム市場上場企業の女性役員比率の19%達成を目指しています。また、プライム市場上場企業には2025年までに女性役員を少なくとも1人以上選任することが求められています。これに関連し、「アクションプログラム」による具体的な取り組みが2023年10月から実施されており、企業に対する数値目標の設定やその実行確保が重視されています。さらに、女性役員候補の育成を支援する施策や、企業内での昇進のハードルを削減する取り組みも並行して行われています。

経団連や企業団体の行動計画と進捗状況

経団連をはじめとする企業団体も、女性役員比率向上のための取り組みを進めています。2024年版の調査によると、経団連会員企業における女性役員比率は16.8%で、前年比2.7ポイント増加しています。これにより、日本企業の意識が少しずつ変化していることが伺えます。また、各企業団体は自主的に行動計画を発表し、女性役員候補の育成プログラムや採用方針の見直しを進めています。特に意識されているのは、社外役員だけでなく社内からの女性役員育成です。現状では、女性役員の多くが社外招聘である一方、社内役員の比率が依然として低いため、これを改善する方策が重要視されています。

中間目標としての2025年:課題と見通し

中間目標である2025年までにプライム市場の女性役員比率を19%達成するためには、現状の取り組みをさらに加速させる必要があります。特に、プライム市場上場企業の約10%が未だ女性役員を登用していない現状は大きな課題です。多くの企業は、女性役員候補の不足や意識改革の遅れが要因と考えられています。こうした課題を克服するには、企業内部でのジェンダーバランス向上に取り組むとともに、外部からの適切なリソースを活用することも必要です。ただし、2023年に比べて女性役員比率は2.8ポイント上昇する見通しであり、一定の進展も期待されています。今後、政府と経済団体の目標達成に向けた連携が一層重要になるでしょう。

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日本企業における女性役員比率向上の成功事例

先進企業における女性活躍推進の実践例

日本国内では、女性役員の比率向上に成功している企業がいくつか存在します。その多くは、性別に関係なく公平な評価やキャリア形成の機会を提供する仕組みを取り入れています。特に、東証プライム市場に上場している企業の中には、2025年および2030年の女性役員比率目標を念頭に、積極的に女性の登用を進める企業も見られます。例えば、業界大手の通信企業や製造業の一部企業では、幹部候補者の選抜プログラムに女性社員を含める取り組みを推進しています。このような制度を通じて、女性登用への具体的な成果が生み出されています。また、数値目標の設定に加え、ダイバーシティ担当役員の設置や女性の成長を支援するメンタープログラムのような具体的施策を導入する企業が増えつつあります。

組織内ジェンダー平等がもたらす経営効果

女性役員の登用が進むことで、企業経営にさまざまなプラスの効果をもたらしています。多様な視点を持つ女性役員が経営に参画することで、新しい成長戦略の策定や市場変化への迅速な対応が可能となり、競争力の向上につながる事例が挙げられます。実際に、海外の研究では、ジェンダー平等の実現が企業の収益改善や株価上昇に寄与するとのデータもあります。加えて、女性役員がいる企業は社会的イメージやブランド価値が向上しており、取引先や消費者からの支持を得やすいという傾向があります。このような経営効果は、東証プライム市場における女性役員比率向上に向けた企業努力が促進される理由の一つといえるでしょう。

女性登用プログラム成功の要因と仕組み

成功している女性登用プログラムにはいくつかの共通点が見られます。まず、経営陣が率先して多様性推進の旗振り役を担い、企業全体でジェンダーバランス向上を目指す文化を醸成していることが挙げられます。また、女性社員のキャリアパスを明確化し、リーダーシップ育成プログラムを提供することも重要な要素です。さらに、育児や介護と仕事を両立できる職場環境を整備し、ワークライフバランスを実現する制度を拡充している企業は、高い成果を上げている傾向にあります。リモートワークやフレックスタイムの導入もその一例です。特にプライム市場の企業では、女性が役員候補として成長できる仕組みが構造的に整えられつつあります。

中小企業でも参考になる取り組み事例

女性役員比率向上は大企業だけでなく、中小企業でも重要なトピックです。近年、中小企業でも女性の登用に成功した事例が増加しています。例えば、家族経営の製造業やサービス業の企業では、女性社員を経営陣に抜擢し、現場目線を経営に生かす実践が行われています。また、小規模な企業では、柔軟な働き方を積極的に導入することで、女性社員の能力を最大限に引き出す環境づくりが注目されています。さらに、地域密着型の企業では、コミュニティの多様な意見を経営に反映するため、地元女性リーダーの社外役員起用が進んでいます。これらの取り組みは、規模の大小に関係なく、女性役員比率向上のヒントとなる事例として評価されています。

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女性役員比率向上のための今後の戦略

多様性推進のための社内文化改革

女性役員比率の向上には、まず企業内の文化改革が不可欠です。多様性を重要視する企業文化を構築することで、性別に関係なく専門性やリーダーシップを発揮できる環境を作り出すことが求められます。具体的には、ジェンダー平等の意識を高める研修や、男女双方に対応可能な柔軟な勤務制度の導入が挙げられます。また、上司や同僚など周囲の理解を深めるための取り組みも重要です。こうした施策は、女性に限らず、多様な価値観を持つ人材の能力活用へとつながり、企業全体の競争力を向上させます。

女性役員候補の育成と支援システムの整備

プライム市場上場企業においては、女性役員の多くが社外からの招聘という現状を変えるためにも、社内からの女性リーダーの育成が重要とされています。女性役員候補を育てるためには、管理職向けのリーダーシップ研修や、役員登用に向けたキャリアパスの明確化が必要です。また、メンター制度やキャリア相談窓口を設置し、長期的な視点で女性社員を支援する仕組みを整えることも有効です。これにより、社内から継続的に役員候補を輩出できる土壌が整い、企業の持続的成長に寄与します。

外部からの採用の活用と社外役員の適正評価

女性役員比率向上の短期的な施策として、外部からの女性役員採用も検討されます。また、優れた視点を持つ社外役員を積極的に登用することで、組織のガバナンス向上にもつながります。ただし、採用後は適正な評価基準を設け、既存の役員と同等の責任や権限を与えることが不可欠です。中途採用の女性役員が十分に実力を発揮できる環境を整備することで、外部人材の活用がさらに効果を発揮します。

機関投資家の役割:企業における女性登用への影響

機関投資家もまた、プライム市場上場企業における女性役員比率向上を後押しする重要な存在です。投資家によるESG(環境・社会・ガバナンス)評価の観点から、多様性のある経営陣の必要性が強調されており、これが企業にとってプレッシャーとして作用しています。実際、女性役員比率の公開や目標の明示が投資家の判断材料になる傾向が強く、これに対応する企業が増加しています。機関投資家は、投資方針や株主提案を通じて企業の女性登用を促進し、経営改革を支援する役割を担っています。

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まとめ:世界水準を目指す日本のこれから

日本に求められる意識と行動の転換

日本の女性役員比率を向上させるためには、企業や社会全体での意識改革が必要です。特に、従来の性別役割分担意識や、女性がリーダーシップを担うことへの抵抗感を払拭することが重要です。プライム市場をはじめとする上場企業では、女性を管理職や役員候補とする視点を早期に持つことが求められます。また、女性活躍を阻む組織文化や無意識の偏見を改善し、「多様性の価値」を企業の成長戦略の核に据えることが肝要です。

女性役員比率向上がもたらす未来の日本経済

女性役員比率の向上は、経営効率や企業価値の向上につながる可能性を秘めています。国内外の研究でも、女性役員の増加が企業の意思決定に多様性をもたらし、新たな視点や革新を経営に取り込むことが示唆されています。特に、プライム市場における女性登用の成功が、市場全体の競争力向上や国際投資家からの高評価に直結するでしょう。さらに、女性役員比率の向上は、少子高齢化のなかで多様な人材を活用する日本社会のモデルとなり、経済成長の新たな原動力となる可能性があります。

30%目標を達成するために必要な社会的協力

2030年の女性役員比率30%目標を実現するためには、政府、企業、そして社会全体の連携が不可欠です。政府は引き続き法整備や助成制度のさらなる拡充を行うべきです。一方で、企業に求められるのは、目標に向けた具体的な数値計画と実行の徹底です。また、女性自身がキャリアを築くための教育や支援の充実も重要であり、大学や育成機関による支援システムの拡大が必要です。そして、家庭や地域社会からの理解と支援が女性の活躍を後押しします。こうした取り組みを軌道に乗せることで、日本全体が女性役員比率向上に向けた「共創」のモデルとなるでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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