NTTドコモの女性活躍推進への取り組み
歴史的な取り組み:ダイバーシティ推進活動の開始
NTTドコモは、2006年に専任のダイバーシティ推進組織を立ち上げ、積極的に女性活躍を推進してきました。この取り組みには、女性がキャリアを築きやすい環境を整えることが目的として掲げられています。当時、業界全体で女性役員や管理職の割合が低い中、ドコモは先駆的に行動を起こしました。これにより、働き方やキャリア形成の多様性を重視する企業文化の醸成が進みました。
女性キャリアの支援制度「Win-d」の役割
2006年に設立された「Win-d(Women’s innovative network in docomo group)」は、NTTドコモの女性活躍推進を象徴する取り組みの一つです。この制度は、女性社員のキャリアアップを支援することを目的に、選抜されたメンバーによるリーダーシップ向上研修やネットワーキング活動を実施しています。さらに、ロールモデルとなる女性リーダーを育成する場としても機能し、参加者同士の知見共有やスキル向上を促しています。「Win-d」は、組織全体での女性役職者比率向上の原動力として大きな成果を上げています。
重要なターゲット:出産・育児とキャリアの両立支援
多くの女性にとって、出産や育児とキャリアの両立は大きな課題です。NTTドコモでは、この重要な時期を支えるため、充実した制度を整備しています。例えば、柔軟な勤務体制や育児休業の充実、短時間勤務制度の導入は、社員が家庭と仕事を無理なく両立できる支援環境を提供しています。また、育児とキャリアを並行して進める社員の声を反映した制度改善を重ねることで、女性が安心して働き続けるための基盤を整えています。
組織と方針の変遷:専任チームの設立と目標設定
NTTドコモではダイバーシティ推進の専任チームが設立されて以来、具体的な数値目標を掲げながら女性活躍を後押ししてきました。特に、2025年度までに女性役員比率を25〜30%に引き上げるという目標は、明確なビジョンを持つ企業としての姿勢を示しています。また、新任の管理者における女性比率を30%とする目標も、下層から上層へと女性リーダーを増やすための戦略の一部となっています。こうした活動を通じて、NTTドコモは業界全体の模範となる取り組みを進めています。
女性役員比率30%の背景と目標達成への戦略
なぜ30%がカギとなるのか?業界全体の動向
NTTドコモが女性役員比率30%を目標に設定した背景には、業界全体におけるダイバーシティ推進の潮流が存在します。経済協力開発機構(OECD)のデータによると、2022年の女性役員比率は29.6%と高まりを見せていますが、日本国内では2023年の東証プライム市場上場企業での女性役員の比率が13.4%にとどまっているのが実情です。こうした業界状況において、ドコモは女性のキャリア支援や役職者増加の施策を通じて、業界リーダーシップを発揮しようとしています。
また、「30%」という目標はグローバルで広く受け入れられている転換点の数値です。意思決定層における多様性が増加することで、組織の収益性や革新性が向上するというデータもあり、ドコモとしてもこの割合達成が重要な戦略目標となっています。
役員構成の進化:過去5年間の数字と変化の軌跡
ドコモではここ数年、女性役員の増加を目指した取り組みを積極的に推進してきました。具体的には、2019年度には女性役員数がわずか11人だったのに対し、2024年度には40人にまで増加しました。この5年間で役員数は29人増え、その比率も16.6ポイント上昇して23.7%に達しました。
女性役職者数が増加した背景には、ダイバーシティ推進専任組織の設立や、女性のキャリアアップを支援する「Win-d」といった取り組みの実施が大きな役割を果たしています。これらの施策を通じて、ロールモデルとなる女性リーダーの育成が進み、役員として登用される女性も増えてきました。
意思決定プロセスへの多様性導入の重要性
意思決定層における多様性は、組織全体のパフォーマンスを向上させる重要な要素とされています。NTTドコモは、多様な視点を意思決定に取り入れることで、サービスの競争力を高めるだけでなく、より幅広い層の顧客ニーズに応えることを目指しています。
特にテクノロジー企業としてのドコモは、革新性と柔軟性が重要であり、女性役員の増加はその実現に向けた鍵の一つです。また、ダイバーシティが進むことで職場環境の改善や従業員のエンゲージメント向上といった副次的な効果も期待できます。ドコモの取り組みは、性別を問わず個々の能力を最大限に発揮できる組織づくりのモデルケースとなる可能性を秘めています。
改革を実現するための課題と解決策
立ちはだかる壁:固定観念と意識変革の必要性
固定観念は、女性の活躍推進において大きな障壁となっています。特に、日本社会では「女性は育児や家庭を優先すべき」という伝統的な価値観が根強く、キャリアを志向する女性に対する認識が追い付いていない面があります。NTTドコモでは、こうした意識を変えるために、社内外での啓発活動を推進しています。具体的には、男女問わず社員に対しダイバーシティの重要性を伝える研修やセミナーを実施し、多様性がもたらすメリットを共有する機会を設けています。
育成の課題:女性リーダーシップの強化
女性役員を増やすためには、潜在的なリーダーシップを持つ社員を適切に育成することが重要です。NTTドコモでは、2006年に設立された女性キャリア支援制度「Win-d」を中心として、女性の能力開発をサポートしています。このプログラムでは、女性社員を選抜し、リーダーシップ研修やプロジェクト型学習を通じてスキルを強化する仕組みを整えています。また、ロールモデルとなる女性役員の事例を共有し、キャリアアップへの意識を高める取り組みも行っています。
柔軟な働き方の推進とキャリア選択の自由
働き方の柔軟性を確保することは、家庭や育児とキャリアの両立を支える上で不可欠です。NTTドコモは、テレワーク制度やフレックスタイム制を導入し、社員個々のライフスタイルに合わせた働き方を実現しています。また、女性役員を含む全社員が出産や育児を経験した後もキャリアを積極的に継続できるよう、育児休業後の職場復帰支援プログラムも充実させています。これにより、社員が安心して柔軟なキャリアプランを描ける環境づくりを目指しています。
現場からのフィードバックと改善のループ
改革の鍵となるのは、現場の声を反映し続けることです。NTTドコモでは、社員アンケートや定期的なミーティングを通じて、現状の取り組みについて意見を収集しています。これらのフィードバックは、制度の見直しや新たな施策の立案に反映されています。例えば、短時間勤務制度や職場環境の改善といった取り組みは現場からの声を基に進化を遂げています。このような改善のループを継続することで、社員一人ひとりが力を発揮しやすい環境を構築しています。
成果とビジョン:未来への展望
成果としての具体例:役員数と女性管理職比率の上昇
NTTドコモでは、女性役員数や管理職比率の向上を目指す取り組みを続けてきました。その成果として、2024年度のドコモグループにおける女性役員数は19年度比で29人増加し40人に達し、女性役員の比率も23.7%となっています。この数値は、OECD加盟国での平均値や東証プライム市場上場企業での平均を大きく上回る水準です。また、女性管理職比率においても、継続的に上昇傾向にあり、2025年度には15%を目標に掲げています。これらの成果は、Win-dの活動や育成プログラムを通じて、女性社員のキャリアアップを支援した結果といえるでしょう。
次なる目標:30%達成後のビジョンと計画
女性役員比率30%という目標達成を視野に入れた中で、NTTドコモはさらに高い目標を目指しています。2025年度には新任管理者における女性比率を30%に拡大し、全体の女性役員比率を25~30%に設定しています。また、新卒採用時から女性比率30%を毎年維持する努力も続いています。これにより、会社全体における女性リーダーの増加が期待され、意思決定において多様性を取り入れる環境が進展しています。さらに、次世代を担う若年層、特に理系分野の女性の育成イベントも実施し、未来のリーダーを育てる仕組みを整えています。
業界全体のリーダーシップ:NTTドコモが与える影響
NTTドコモは、女性の活躍推進において業界全体に大きな影響を与える存在です。特に、女性役員比率や管理職比率の向上は、日本の多くの企業に良い刺激をもたらしており、女性が力を発揮できる職場環境の重要性を広く知らしめています。さらに、NTTグループ全体として、UN Womenの「女性のエンパワーメントのための7つの指針」に支持を表明するなど、国際的な枠組みと連携した活動も行っています。このようなリーダーシップは、業界全体から注目されるだけでなく、社会全体の意識変革にも寄与していると言えるでしょう。