取締役っていったい何者?業務執行取締役まで徹底解剖

取締役とは?基本的な役割とその重要性

取締役の定義と会社法上の規定

取締役とは、株式会社の経営を担当する役員であり、会社の意思決定や業務執行に責任を持つ重要なポジションです。会社法第2条3号では、取締役を「会社の業務を執行するもの」と定義しており、とりわけ取締役会を設置している会社では、取締役会を通じて経営戦略や重大な経営方針の決定が行われます。また、会社法第348条では、取締役が業務執行の主体であり、それに基づく業務遂行が求められていることが明示されています。取締役が二人以上いる場合には、業務の決定は取締役の過半数で行われるという規定も特徴的です。

取締役の基本的な役割と責任

取締役の基本的な役割は、会社の業務執行に関する意思決定を行い、株主の利益を最大化するために経営資源を効率的に運用することです。具体的には、事業計画の企画と実行、取締役会への報告、従業員や部門の監督管理などが挙げられます。また、取締役は法律上、忠実義務および注意義務を負っており、会社や株主の利益を損なわないよう責任を持つことが求められます。さらに業務執行においては、会社法第363条に基づき、業務執行取締役が取締役会に対して三カ月に一度以上の報告義務を負うなどの具体的な義務も存在します。

取締役に関連する役職:代表取締役・社外取締役など

取締役にはさまざまな役職が存在し、それぞれの機能と役割が異なります。代表的なものには、会社の代表権を持ち実質的に会社を対外的に代表する「代表取締役」があります。また、取締役会設置会社においては、会社の日常的な業務の執行に携わる「業務執行取締役」や、会社との利害関係が薄いことで独立性が重視される「社外取締役」が存在します。このうち特に社外取締役については、近年の企業ガバナンス強化の一環としてその重要性が高まっており、2021年には会社法の改正により、全ての上場会社において選任が義務付けられるようになりました。これらの役職は、それぞれが特定の役割を担いながら、企業経営を支える重要な存在となっています。

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業務執行取締役とは?その役割と特徴を解説

業務執行取締役の位置づけと設置目的

業務執行取締役は、会社法に基づく「業務の執行」を担う取締役です。会社における基本方針の決定やビジョンの策定は取締役会の重要な役割ですが、その決定を具体的に実行し、事業活動を軌道に乗せるのが業務執行取締役の役目です。これにより、会社の経営が円滑に進むよう設計されています。

会社法第363条において、業務執行取締役は、三箇月に一度以上、自らの職務執行状況を取締役会に報告する義務があります。この仕組みによって、取締役会とのコミュニケーションが円滑に行われ、経営の透明性が確保されます。業務執行取締役の設置目的は、現場の業務執行と経営方針との一貫性を保つことにあります。

取締役会設置会社における業務執行取締役の役割

取締役会設置会社では、業務執行取締役は、取締役会で決定された方針に基づいて業務を執行する責任を負います。具体的には、日々の経営活動や事業の具体化、資金の運用など、実務面に密接にかかわる業務を担います。取締役会が方針決定を行う一方で、業務執行取締役は実行力を発揮するポジションとして位置づけられています。

特に取締役会設置会社では、取締役が業務執行を担う場合、自動的に「業務執行取締役」として扱われると会社法に定められています。このため、会社の規模や業種に応じた実務経験やリーダーシップが特に重要視される役割です。

代表取締役との違いと協働関係

業務執行取締役と代表取締役は、しばしば混同されることがありますが、その役割には明確な違いがあります。代表取締役は、会社を対外的に代表する権限を持ち、法的な意思決定の最終責任を負います。一方、業務執行取締役は、実際の業務を執行することに重点を置いた取締役です。

しかし、これらの役職は独立して存在するのではなく、密接に協働して会社の経営を支えます。代表取締役が対外的な責任を果たしながら、業務執行取締役はそのサポートとして実務に精通し、経営戦略を具体化していきます。この分担によって、会社はバランスよく効率的な運営を実現できます。

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業務執行取締役の選任と任務

業務執行取締役の選任要件と手続き

業務執行取締役の選任には、会社法に基づく厳密な手続きが必要です。取締役会設置会社においては、業務執行は会社の重要な活動の根幹を担うため、取締役会の議決によって選任されることが通常です。また、会社法第348条では、取締役が業務執行の権限と義務を有する旨が規定されており、業務執行取締役もこれに従って職務を遂行します。

選任の際は、株主総会や取締役会の決議が必要で、定款や関係規則に準じたプロセスが求められます。また、業務執行取締役として選ばれる者は、業務執行に必要な知識やスキルを備えていることが重要です。会社法第2条15号イにより、業務執行取締役として業務に関わった場合、同時に社外取締役としての役割を果たすことができない点にも注意が必要です。

業務執行における具体的な仕事と責任

業務執行取締役の仕事は、会社の日常的な事業活動を執行し、経営方針に基づいて実務を遂行することです。具体的には、事業計画の立案から実行、予算管理、人事戦略など多岐にわたります。また、取締役会での意思決定に基づき、業務執行に関連する具体的な指示を出し、会社目標の達成を目指します。

責任としては、会社法第348条第1項に基づき、業務執行に関する職務が適正に遂行されるよう努める義務があります。また、取締役として会社や株主に対して善管注意義務を果たすことが求められます。さらに、企業のガバナンスや法令遵守の観点からも、業務執行における判断には高い責任が伴います。

会社法に基づく報告義務と監督の仕組み

会社法は、業務執行取締役に対し明確な報告義務を課しています。会社法第363条では、業務執行取締役は3カ月に1回以上、その職務の執行状況を取締役会に報告することが義務付けられています。これにより、取締役会や他の関係者が業務の進行状況を把握し、必要に応じて監督を行うことが可能となります。

さらに、会社法に基づき、監査役や社外取締役が業務執行取締役の活動をチェックする仕組みが確立されています。これにより、経営ガバナンスの透明性を保ち、不適切な業務執行が行われないよう管理されています。また、業務執行に関する報告義務を果たすことで、株主や外部ステークホルダーに対しても、会社経営の信頼性を高める役割を果たしています。

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業務執行取締役と他の役職との違い

執行役員や使用人兼務取締役との違い

業務執行取締役と他の役職、例えば執行役員や使用人兼務取締役との違いは、その法的な位置づけや職務の範囲にあります。まず、業務執行取締役は会社法上の正式な役職であり、取締役会の決議を通じて具体的な事業活動を実行する責任を負っています。会社法第363条に基づき、業務執行取締役には、三か月に一度取締役会へ自身の職務遂行状況を報告する義務も課されています。

一方、執行役員は会社法上の役員ではなく、あくまで社内の役職の一つです。執行役員は、取締役や取締役会からの委任を受けて業務を執行しますが、その法的権限は取り決めに限定されています。使用人兼務取締役は、取締役でありつつ従業員としての勤務も続ける役職を指します。会社法による直接の規制が業務執行取締役に比べて曖昧であるため、従業員としての立場と取締役としての責務の両立が求められます。

以上のように、業務執行取締役は法的な業務遂行を伴う重要なポジションであり、執行役員や使用人兼務取締役と異なり、会社のガバナンスや意思決定に直接的な法的責任を負う点が特徴的です。

取締役会が関与する意思決定プロセスとの関係

業務執行取締役は、取締役会が行う意思決定プロセスに密接な関係を持っています。取締役会は、会社全体の経営方針や重要な意思決定を担う中枢組織です。業務執行取締役はこの取締役会の一員として、具体的な業務執行の責任を負う立場にあります。

取締役会設置会社では、取締役会が経営に関わる大枠の意思決定を行い、その決定を基に業務執行取締役が具体的な業務を遂行します。会社法第348条の規定により、特定の事項を除いて業務の執行は取締役会での決議に基づき行われます。また、会社法第363条に基づき、業務執行取締役は自己の業務進捗状況を取締役会に報告する義務もあり、透明性と監督の強化が図られています。

このように、業務執行取締役の活動は取締役会と不可分の関係にあり、会社の経営方針と現場の業務遂行を繋ぐ重要な役割を担っています。

経営ガバナンスにおける役割の比較

経営ガバナンスの観点から見ると、業務執行取締役、取締役、そして社外取締役の役割はそれぞれ明確に分かれています。業務執行取締役は取締役会の方針に基づき、会社の実務的な業務遂行を指揮する役割を果たします。具体的には、日常的な業務管理やプロジェクトの推進など、企業運営の現場での活動を担います。

これに対して、取締役の中でも業務を執行しない取締役や社外取締役は、もっぱらガバナンスの視点から経営管理や助言を行います。特に社外取締役は外部からの視点を導入することで、業務執行取締役を含む経営陣の監督や提言を行い、透明性やコンプライアンスの強化を図ります。

このように、会社の健全な経営を実現するためには、業務執行取締役が業務を遂行する一方で、取締役会や社外取締役がそれを監督し支援するという仕組みが不可欠です。それぞれの役職が協働し、責任を明確にしながら機能することが、経営ガバナンスの強化に繋がります。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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