コトラ（広報チーム） 
1. 共連れの基本知識：その定義と背景
共連れの定義とは？
共連れ（ともづれ）とは、入退室時に承認を受けた人が扉やゲートを通過する際、その隙を利用して承認を受けていない人が同時に入退室する行為を指します。この行為は、セキュリティ上の脆弱性を突いた不正な行動として問題視されています。英語では「piggybacking」や「tailgating」とも呼ばれます。一般的な例として、マンションのオートロック解除時に住民が扉を開けた隙に、部外者が不正に侵入する状況が挙げられます。
なぜ共連れが問題視されるのか
共連れが問題視される最大の理由は、不正侵入によるセキュリティの脆弱化です。企業や施設、さらにはマンションのような居住環境において、共連れを許すことで機密情報の漏洩や、物理的な資産の盗難、不法侵入などのリスクが急増します。また、適切な対応が取られない場合、関係者のセキュリティ意識が低下し、結果的にさらに大きな脅威を引き起こす可能性があります。
共連れが発生しやすいシチュエーション
共連れは、以下のような状況で特に発生しやすいとされています。
- 人が多く行き来するビルやオフィスビルのエントランスで、複数人が同時に通過する場合
- マンションのオートロック扉を住人が解除した瞬間に、後ろから部外者がついてくる場合
- 企業内の管理区域において、従業員がゲートを通過するタイミングで他人が一緒に入る場合
- イベントや展示会などで、入場者管理を行う際、混雑を理由に厳格なチェックができていない場合
これらの場面では、人的なエラーや管理体制の甘さが共連れを許してしまう原因となっています。
過去に起きた共連れによる典型的なセキュリティ事例
過去には、共連れが原因で深刻なセキュリティ事故が発生した事例がいくつも報告されています。例えば、特定の業界では以下のような事例が見られました。
- 大手IT企業で、承認を受けていない外部業者が従業員に紛れて入室し、内部ネットワークに不正アクセスを試みたケース。
- マンションで部外者が居住者に紛れて共連れを行い、その後盗難事件が発生した事例。
- 物流倉庫において、共連れにより侵入者が入り込み、盗難された製品が市場に流通したケース。
これらの事例からわかるように、共連れは単なる一時的な不注意では済まされない重大なセキュリティリスクとなる可能性があります。そのため、防止策を徹底することが必要です。
2. 共連れが引き起こすリスク：企業と個人への影響
情報漏えいのリスク
共連れは、企業内外の機密情報に対する深刻なセキュリティリスクとなります。承認を受けていない第三者が物理的に組織内に侵入した場合、個人情報や業務上重要なデータが盗まれる危険性が高まります。特にITシステムの端末や紙媒体で保管されている情報は、認可されていない人間のアクセスに弱く、共連れの結果、大規模な情報漏えい事件につながることもあります。
こうした漏えいが発生すると、企業は顧客との信頼を失うだけでなく、場合によっては法的責任を追及され、甚大な損害賠償やブランド価値の低下を招きます。そのため、共連れの防止がセキュリティ対策の重要なポイントとなります。
違法侵入や犯罪活動への悪用
共連れによる不正侵入は、単純な情報漏えいだけでなく、犯罪行為の温床にもなり得ます。部外者が物理的に敷地内へ侵入すると、盗難や破壊行為などの犯罪が発生するリスクが高まります。また、場合によっては、内部ネットワークへの不正アクセスを試みたり、組織の動きを監視するなど、計画的な犯罪活動にも利用されることがあります。
これを未然に防ぐためには、権限のない人物の無断侵入が難しい物理的およびデジタル的なセキュリティ体制を整えることが不可欠です。セキュリティゲートや顔認証技術の導入など、進化するツールを活用することが効果的です。
防犯不足による信頼の低下
企業や施設で共連れが頻発すると、セキュリティの甘さが露呈し、関係者や利用者からの信頼が失墜します。例えば、マンションでの共連れが続けば、住人の安全意識が低下し、防犯対策への不満が募ります。同様に、企業の施設で共連れによるインシデントが発生した場合、顧客や従業員は安全性に疑問を抱き、最悪の場合、取引や契約のキャンセルにつながる可能性があります。
このような信頼低下を防ぐためには、共連れを未然に防ぐだけでなく、定期的なセキュリティ強化の実施や問題が発生した際の迅速な対応も重要です。高度なセキュリティ対策に加え、組織内での意識向上や適切な教育も欠かせません。
3. 共連れ防止のための効果的な対策
セキュリティゲートの設置
セキュリティゲートは、共連れを防ぐための最も物理的かつ直接的な対策として注目されています。セキュリティゲートとは、入退室時に1人ずつしか通過できない構造を持つゲートを指します。代表的なタイプとして、フラッパー式や回転式アームのものがあり、一度の認証で確実に1人のみが通過できるよう設計されています。これにより、入室権限者が他者を同伴させる状況や不審者が後から侵入するリスクを大幅に低減できます。
ただし、セキュリティゲートにはメリットだけでなくデメリットも存在します。例えば、初期設置費用が高額になる点や、停電時に機能しなくなるリスクなどが挙げられます。そのため、施設のセキュリティ要件に合わせて適切な種類を選ぶことが重要です。
アンチパスバック機能の活用
アンチパスバック機能は、入退室履歴を基に不正な侵入を防ぐ仕組みです。この機能は、入室記録がない状態で退室することを制限するため、共連れやパスの貸し借りを効果的に抑止します。特に、グローバルアンチパスバックと呼ばれる高度なシステムでは、施設内エリアのどこからでも一貫した記録管理が可能です。
この技術は不正の発見と追跡に優れる一方、適切に管理されていない場合には一時的な混乱を招きかねません。そのため、導入後の管理体制とユーザー教育が鍵となります。
監視カメラ・AI顔認証の導入
監視カメラとAI顔認証は、共連れ対策として急速に普及している技術です。監視カメラは入退室エリアを記録するだけでなく、不審な行動をする人物を検知できます。一方、AI顔認証システムを連動させることで、入室権限の有無を迅速かつ正確に判断可能です。これにより、第三者が共連れで侵入するリスクを最小限に抑えられます。
しかし、混雑した時間帯や複数の人が一度に移動するシチュエーションでは、AI技術が誤認識を起こす可能性もあります。そのため、監視体制と並行して人間の目によるチェック体制を組み合わせるとより効果的です。
入退室管理システムの高度化
入退室管理システムの高度化は、共連れによるリスクを根本的に抑制する重要な対策です。現在では、カードキーや生体認証を活用したシステムが主流となっており、システム全体のリアルタイムな履歴管理や不規則な使用パターンの検知も可能となっています。
特に、クラウドベースのシステムやIoT技術を組み合わせることで、複数の拠点を一元管理することもできます。一方で、データの保護やシステムの定期的な更新など、運用面での継続的な投資が必要になる点も念頭に置く必要があります。高度な技術を活用しつつ、現場に合わせて柔軟な運用を行うことで、より強固なセキュリティ環境が構築可能です。
4. 従業員教育と組織的なセキュリティ意識の向上
共連れ発生を未然に防ぐための意識教育
共連れによるセキュリティリスクを防ぐためには、従業員一人ひとりの意識向上が欠かせません。共連れとは、正規の権限を持つ人が扉やゲートを開けたタイミングで、権限を持たない人が無断で入退室する行為を指します。このような行為が生じることで、組織は情報漏えいや不正侵入といった大きなリスクを負う可能性があります。そのため、まずは共連れがどのように発生し、どのような影響を及ぼすのかを従業員に正しく理解させることが重要です。定期的なセキュリティ研修や勉強会を実施することで、従業員が身近なセキュリティの課題を認識し、日常業務でリスク対策を意識することが促進されます。
セキュリティ方針の策定と共有
組織全体で統一されたセキュリティ方針を明確にし、その内容を従業員全員と共有することは、共連れ防止への効果的な手立てとなります。具体的には、入退室時に誰であっても無断で同行を許可しないルールや、不審な行動を見かけた際の報告手続きなどを含む具体的なガイドラインを定めることが重要です。共有されたセキュリティ方針が周知されることで、従業員一人ひとりが組織のセキュリティを守る意識を高め、結果的に共連れ発生の防止につながります。また、セキュリティ方針が更新された場合は、速やかに伝達を行う柔軟な仕組みも重要です。
演習やシミュレーションによる実践的訓練
共連れを未然に防止するためには、知識の習得だけでなく、実践的な状況を想定した訓練が効果的です。例えば、共連れがどのように発生するのかを現場でシミュレーションし、従業員が具体的なリスクの兆候を迅速に察知できるような訓練を行います。また、ゲートやセキュリティカードの適切な使用方法を再確認する演習も役立ちます。このような実践的な取り組みを繰り返し行うことで、従業員はセキュリティへの意識を高め、共連れなどの脅威に対してより現実的かつ迅速な対処が可能となります。
5. 今後の展望：進化するセキュリティ技術と共連れへの対応
生体認証技術の進化と応用
近年、セキュリティ分野では生体認証技術が急速に進化しています。指紋認証や顔認証、虹彩認証など、一人ひとりが持つ固有の身体的特徴を用いることで、共連れの防止に効果的な対策となっています。これらの技術は、高精度な認証性能を持ちつつ、物理的な鍵を必要としないため、利便性も向上しています。また、企業やマンションにおけるセキュリティシステムに組み込まれることで、物理的な侵入だけでなく、情報漏えいのリスクを低減させることが可能です。
さらに、AIとの連携により、生体認証の精度をリアルタイムで高める仕組みも進化しています。たとえば、多人数の同時認証を行うシステムや、過去の共連れ行為をデータとして学習することにより、潜在的なリスクを事前に予測することが可能です。これにより、セキュリティ面の信頼性が大幅に向上し、共連れが発生する確率はさらなる低下が期待されます。
IoTとAIを駆使した次世代セキュリティシステム
IoT（モノのインターネット）とAI（人工知能）の技術を活用した次世代セキュリティシステムは、共連れの検出および防止において非常に有効な手段です。たとえば、IoTセンサーを入退室ゲートに設置し、人体の動きを高精度で検知することで、一人ずつの通行を確認できます。これにAIの画像認識技術を組み合わせることで、共連れ行為の可能性を瞬時に特定し、警告やアラートを発する仕組みが構築されています。
また、IoTデバイス同士がネットワークで連携することで、施設全体の入退室状況をリアルタイムで監視する統合的なセキュリティシステムが実現されています。具体的には、各ゲートやドアの利用情報を中央サーバーで管理し、不審な入退室パターンを検知した際に、施設管理者や警備チームへ通知が行われる仕組みです。共連れが依然として深刻なリスクを伴う状況において、こうした技術革新は安全性を飛躍的に向上させています。
セキュリティにおける人間と技術の協調
どれほど高度なセキュリティ技術が導入されたとしても、人間の意識と行動が適切でなければ最大限の効果を発揮することはできません。共連れの問題においても、人間と技術の協調が鍵となります。たとえば、施設内での入退室マナーや共連れ行為の危険性について従業員や住人に理解させる教育は、技術的な対策と同じくらい重要です。
その一方で、AIや自動化システムが人間の行動をサポートする場面も増えています。たとえば、入退室ゲートに設置された顔認証の結果が不確実な場合に、警備員がモニターを通じて追確認を行うといった体制です。このように、人間と技術が互いを補完し合う形で運用されることにより、共連れ行為のリスクを最大限に軽減することが可能となります。
今後、セキュリティ分野では人間の直感や意識と、AIやIoTが持つ分析能力や効率性を融合させた新しい防犯モデルが進化していくと考えられます。こうした取り組みを通じて、共連れのリスクを取り除くことができるでしょう。
