コトラ（広報チーム） 
インシデントとアクシデントとは？基本の定義を押さえよう
インシデントの意味とその範囲
インシデントとは、一般的に「出来事」や「事件」を意味する言葉です。特にビジネスや組織の運営においては、重大な問題や事故に繋がる可能性のある出来事や状況を指します。例えば、情報セキュリティの分野ではサーバーの障害や不正アクセス、医療業界では医療行為中のエラーが患者に影響を及ぼさなかった場合などが挙げられます。
インシデントの範囲は広く、業務の進行を妨げたり、潜在的なリスクを生じさせるすべての事象を包含します。そのため、インシデント管理は問題を早期に発見して解決策を講じる重要なプロセスとなります。
アクシデントの意味とその範囲
アクシデントとは、既に発生してしまった事件や事故、損害のことを指します。例えば、交通事故や火災、製品トラブルによる人的・物的な損害などが典型的な例です。インシデントが「何かが起きるかもしれない状態」であるのに対し、アクシデントは「実際に被害が出た状態」という点で大きく異なります。
アクシデントは通常、予想外の出来事として発生し、企業や個人に重大な影響を与えます。そのため、リスク管理のプロセスではアクシデントを防ぐための取り組みが常に求められます。
インシデントとアクシデントの相違点と共通点
インシデントとアクシデントの最大の違いは、損害の有無です。インシデントは重大な事故や損害に発展する可能性がある状態を指し、アクシデントは実際に損害や被害が発生した状況を指します。
一方で、この二つには共通点もあります。それは、どちらもリスク管理や安全対策の観点から重要な指標であるという点です。インシデントの発見と管理はアクシデントの発生を防ぐために欠かせない要素であり、両者は密接に結びついています。
「ヒヤリハット」との関係性も整理しよう
「ヒヤリハット」とは、日常生活や業務中に「ヒヤリ」としたり「ハッ」と危険を感じたりするような出来事を指します。これはインシデントよりもさらに前段階の軽微な事象であり、人的ミスや思わぬ偶然が原因で発生することが多いです。
ヒヤリハットはインシデントやアクシデントに繋がる「兆候」であるため、その記録や分析が非常に重要です。例えば、工事現場で工具の落下事故が起きる前に、道具の扱いでヒヤリハット体験があった場合、それを元に安全対策を講じることでアクシデントの発生を未然に防ぐことができます。
インシデント、アクシデント、ヒヤリハットの関係性を正しく理解し、それぞれに適切な対応を行うことで、組織や個人の安全を高めることが可能です。
具体例で知る！インシデントとアクシデントの違い
医療現場でのインシデントとアクシデント事例
医療現場では、インシデントとアクシデントが特に注意深く区別されています。インシデントは、誤薬や医療器具の使用ミスが発生したものの、患者の健康状態に直接的な悪影響を及ぼさなかったケースを指します。例えば、患者の名前を間違えて薬を渡してしまったが、服用前に間違いに気づき訂正した場合、これはインシデントとなります。
一方、アクシデントは実際に損害が発生した事例を指します。たとえば、本来使用してはいけない薬を投与してしまい、患者に副作用を引き起こしてしまった場合などが該当します。明確な違いを理解することで、迅速な対応と再発防止への鍵となる情報が得られます。
製造業や工事現場におけるケーススタディ
製造業や工事現場でも、インシデントとアクシデントの区別は重要です。例えば、工場内で機械設備を操作中、停止装置が動作しなかったことに気づき、事故を防いだ場合はインシデントに該当します。このような場面での記録は、後続の安全対策や設備点検の改善に役立ちます。
一方で、機械が誤作動し作業員がケガを負った場合はアクシデントです。工事現場では、足場が不安定で作業員が転倒しそうになったが未然に防げた場合はインシデントになりますが、転倒して負傷した場合はアクシデントとなります。作業環境の管理やリスク評価を徹底することが、事故予防のカギとなります。
IT・情報セキュリティ分野での具体例
ITや情報セキュリティ分野では、インシデントとアクシデントはデータやシステムの安全性に直接関わります。たとえば、システムの脆弱性が発見され、攻撃の可能性が高まったが、実際の被害が発生していない場合はインシデントに該当します。このような報告をもとに迅速な対策を講じることが重要です。
しかし、実際にサーバーが攻撃され、顧客情報が漏洩してしまった場合はアクシデントとなります。この分野では、インシデント管理体制の構築がリスク低減における重要な役割を果たします。また、ヒヤリハットに近い状況も見過ごさないことが、重大な問題を未然に防ぐポイントです。
その他日常生活で起こり得る事例
インシデントとアクシデントは、日常生活にも大小さまざまな形で起こり得ます。例えば、自宅で水を入れすぎた鍋が吹きこぼれそうになったが、火を止めて事なきを得た場合はインシデントに分類されるでしょう。一方で、実際に吹きこぼれて火災報知器が作動したり、やけどを負った場合はアクシデントとなります。
また、交通機関や公共施設でも同様のことが言えます。駅のホームで荷物を落として痛い目にあいそうになったがすぐに拾えた場合はインシデントですが、荷物が線路上に落ちて運行を妨げる事態になった場合はアクシデントに該当します。このように、日常の中で何気なく起こる出来事も、適切な対応を取るか否かで大きな違いを生み出すことがあります。
インシデント発生時の対応と未然に防ぐためのポイント
インシデント報告の重要性と仕組み
インシデントが発生した際の最初のステップとして、迅速かつ正確な報告が求められます。インシデントはアクシデントに繋がる可能性があるため、早期に情報を共有し、適切な対策を講じることが重要です。報告の仕組みとしては、簡単で利用者が手軽にアクセスできる専用フォーマットやシステムを用意することが推奨されます。
また、インシデントの原因特定と再発防止策立案のためには、情報の記録を詳細に行う必要があります。事後分析を重視し、インシデントを「ヒヤリハット」の段階で適切に管理する仕組みを構築することで、アクシデントへの移行を防ぐことができるでしょう。
情報共有と実効的な安全管理の作り方
インシデント管理の成功要因の一つに情報共有の徹底があります。組織全体でインシデントに関する情報を適切に共有することは、個々の社員がリスクについての知識を深め、統一した対応を取るために不可欠です。
安全管理を実効的に行うためには、定期的に開催されるミーティングやデータベースを活用した情報の集約が効果的です。また、関係者同士の協力体制が強化されれば、インシデントに備えるための社内文化の醸成にもつながります。教育や研修を通じて情報の重要性を組織全体で共有していくことが大切です。
アクシデントを避けるためのリスク管理手法
インシデントが重大なアクシデントに発展しないためには、リスク管理手法を実践することが不可欠です。具体的には、リスクアセスメント（潜在的なリスクの特定と評価）や、それに基づいた予防策の導入が挙げられます。
例えば、業務プロセスの見直しや作業環境の改善、明確な手順書の整備が有効な予防策です。また、定期的にリスク評価を行い、新たな危険因子が発生していないかを確認することで、リスクを常に把握し、アクシデントを回避する体制を強化できます。
トレーニングとシミュレーションの活用
インシデントやアクシデントを未然に防ぐために有効なのが、トレーニングとシミュレーションの実施です。特に高リスクの業務や特殊な状況に対処する職場では、実践的な訓練が必要不可欠です。
シミュレーションを取り入れたトレーニングでは、実際のインシデントに近い状況を仮定し、適切な対応手順を身に付けることが可能です。これにより、従業員が迅速かつ的確に対応できるスキルを習得できるほか、予期せぬ事態に対する耐性を高めることができます。
継続的な教育プログラムを策定し、トレーニングやシミュレーションを定期的に行うことで、組織全体で安全文化を育むことができるでしょう。
まとめ：「危機一髪」を防ぐヒントと正しい理解の大切さ
インシデントとアクシデントの理解がもたらすメリット
インシデントとアクシデントの違いを正しく理解することは、リスク管理において重要なメリットをもたらします。具体的には、インシデントの段階で問題を発見し適切に対処することで、アクシデントの発生を未然に防ぐことが可能です。この段階的な対応により、企業や個人が被る損害やリスクを大幅に軽減できます。また、インシデントを管理する体制を整えることで、業務の効率化や安全性の向上につながるだけでなく、信頼性の高い環境を構築する一助となります。
日常生活や職場で取り組むべき行動
日常生活や職場で「危機一髪」を避けるためには、予防的な行動が不可欠です。たとえば、日ごろからリスクとなりうる要因を意識的に洗い出し、インシデントの発生を察知するための感覚を養うことが大切です。職場では定期的な教育や訓練を実施し、インシデントが見過ごされない仕組みを作ることが求められます。また、何か問題が発生した場合には、迅速な報告と共有を行い、チーム全体でリスク管理を徹底することが重要です。
安全文化を広げるための具体的な方法
安全文化を職場や組織、さらには日常生活に広げるためには、具体的かつ持続可能なアプローチが必要です。まず、インシデントやアクシデントに関する事例や対策について、定期的に情報を共有することで、安全意識を高める土壌を作ります。また、「ヒヤリハット」や小さな問題を軽視せず、積極的に報告・分析を行う文化を醸成することが重要です。さらに、トップダウンだけでなく、全てのメンバーが主体的にリスク管理の一端を担える環境を整えることで、安全文化をより深く根付かせることができます。継続的な教育と訓練が、安全に対する意識を長期的に維持する鍵となります。
