コトラ（広報チーム） 
2023年度基本情報技術者試験の概要変更
通年試験化による受験形式の変更点
2023年度から基本情報技術者試験は通年試験化されました。この変更により、従来のような限られた試験日程ではなく、受験者自身が都合の良い日程を選択して受験できるようになりました。例えば、2023年4月5日以降で空きのある日時を自由に選び、全国のCBTテストセンターで受けることができます。この柔軟な形式は、働きながら資格取得を目指す社会人にとって特に好都合といえます。
CBT方式とは？メリットとデメリット
2023年度の基本情報技術者試験では、CBT（Computer-Based Testing）方式が採用されています。これは問題の回答をパソコン上で行う形式で、従来の紙試験を置き換えたものです。メリットとしては、試験結果がより短期間で出ることや、受験会場内で環境が統一されやすいことが挙げられます。一方で、デメリットとしてはパソコン操作に不慣れな受験者が緊張しやすい点が考えられます。このため、CBT環境に慣れるための練習期間を設けることが重要です。
プログラミング言語選択廃止の背景と影響
今回の試験制度変更で、午後試験におけるプログラミング言語の選択が廃止され、すべて擬似言語での出題に統一されました。この背景には、試験の公平性を高める意図があるとされています。従来は、C言語やJavaなど特定の言語が得意な受験者が有利になる一方で、他の言語しか習得していない人にとって不利な状況がありました。選択制廃止により、問題の難易度が均一化され、それぞれの受験者が同じ舞台で競うことができます。
新試験時間と出題数—午後問題のコンパクト化
2023年度の変更で、試験時間が大幅に短縮されました。午前試験は90分で出題数60問、午後試験は100分で10問となり、出題数や解答時間が顕著に削減されています。従来の試験時間が300分であったことを考えると、およそ30〜40%の時短化が図られました。これに加え、午後の問題も選択式から統一型へコンパクト化されています。このため、試験対策としては「少ない問題に対して確実に解答する」ことが従来以上に重要です。
再受験規定とスケジュールの柔軟性
再受験規定も新形式の重要なポイントです。今回からは、試験を終えた翌日から起算して30日を超えた日以降であれば、再度受験の申し込みが可能となります。つまり、試験結果に満足がいかなかった場合にも、短期間で再挑戦することができます。また、試験日程は柔軟に変更可能ですが、申し込み後のキャンセルは認められないため、スケジュールの管理が重要です。この柔軟性は、日々の学習計画と相性が良く、試験準備を効率化する大きな要素となっています。
プログラミング選択廃止の詳細と狙い
これまでのプログラミング選択制の概要
これまでの基本情報技術者試験では、午後試験で受験者がプログラミング言語を選択する形式が採用されていました。具体的には、言語C、Java、Python、アセンブラ言語など、提供されている複数のプログラミング言語から一つを選び、それに基づいた問題を解くという内容です。この選択制は受験者が自身の得意分野に応じた学習ができるという利点がありました。ただし、試験対策として特定のプログラミング言語の学習が必須となり、未経験者や初心者には試験のハードルが高いと感じられる一因でもありました。
選択制廃止が試験内容全体に与える影響
2023年度の試験改訂で、プログラミング選択制は廃止され、すべての問題が擬似言語による出題に統一されました。この変更により、特定のプログラミング言語に依存する学習の必要性がなくなりました。一方で、言語の知識に縛られず、受験者全員がアルゴリズムや情報セキュリティなどの技術的な基礎知識に重点を置く必要があります。この改訂により、問題が言語独自の仕様やクセに依存しなくなり、より公平な環境が整備されたと言えます。
対象スキルの幅を広げる理由
プログラミング選択制廃止の背景には、IT技術の進化とデジタルスキルの汎用性向上に対するニーズがあります。特定言語に特化した試験では、業界全体のニーズや変化に対応しにくくなる点が課題とされてきました。これに対し、擬似言語を用いることで、特定の技術やツールに限らず、幅広い分野で通用する基本的なスキルが測定可能になります。このように、対象スキルを多様化させることは、クラウドやAIといった新しい領域にも通用する人材の育成を後押しする狙いがあります。
「デジタル人材育成」への方向転換
基本情報技術者試験の改訂は、単なる試験制度の変更にとどまりません。これは「デジタル人材育成」を目指す日本全体の政策や社会的ニーズと密接に関連しています。多くの業界でDX（デジタルトランスフォーメーション）が進む中、ITの基礎知識を持つ人材はますます重要視されています。選択制廃止と擬似言語の導入は、プログラミング知識に偏らず、実務で役立つ本質的なスキルを育成する試験内容へとシフトし、幅広い層の学習や受験を促しています。
受験者はどう対策すべきか
選択制廃止に伴い、受験者は試験内容の全面的な変更に対応した学習が求められます。特定のプログラミング言語を深く学ぶ必要はなくなった一方で、擬似言語への理解が重要になります。擬似言語は実際のコーディングスキルではなく、論理的思考やアルゴリズムの設計、セキュリティの基礎といった基盤的スキルを試すものです。そのため、基礎技術の全体的な理解と応用力がカギとなります。また、過去の試験範囲とは異なる新しい形式問題に触れることも重要で、IPA公式サイトに公開されているサンプル問題や教材を活用するのが効果的です。
試験対策における重要なポイント
新形式に対応するための学習法
2023年度より、基本情報技術者試験は通年試験化され、CBT方式で実施されています。この試験形式の変更により、従来の試験準備方法だけでは適応が難しい場合もあります。そのため、新形式に適した効率的な学習法を取り入れることが重要です。
特に、試験時間が短縮されたことで、限られた時間内に正確な解答を導き出すスピードが必要です。具体的には、過去問やサンプル問題を用いた模擬試験を繰り返し行い、解答スピードを上げる訓練が重要です。また、2023年度から導入された擬似言語を使った問題に対応するため、アルゴリズムと情報セキュリティの基礎知識を重点的に学習することが求められます。
午前試験と午後試験の効果的な勉強方法
午前試験（科目A）は、幅広いIT知識が問われる総合問題が多く出題されます。このため、基礎知識を網羅的に学習することが不可欠です。IPAが公開しているサンプル問題や過去問を使用し、出題傾向を分析して重要分野を確認することが効果的です。
午後試験（科目B）は、特にアルゴリズムと情報セキュリティの技能が問われます。擬似言語をスムーズに読み解く練習を繰り返すことが必要であり、実際に短時間でアルゴリズムを設計・分析する能力を養うことを目指しましょう。また、「午前→午後」の学習の流れを意識し、午前試験の知識を午後問題に応用できるように関連性を意識した勉強が効果を発揮します。
参考書と教材の選び方ガイド
2023年度の変更点に対応している最新の参考書を選ぶことが重要です。特に「擬似言語問題」や「情報セキュリティ分野」に対応した教材が豊富なものを選びましょう。また、試験範囲が広範囲であるため、一冊で全範囲を網羅した総合タイプの参考書と、分野別に深く学習できる専門書を併用すると良いです。
さらに、CBT方式での試験対策としてオンライン教材や動画解説コンテンツも活用するのが有効です。これらは、いつでもどこでも学べるため、効率良く学習を進められます。
試験直前にすべき重点確認ポイント
試験直前には、基本情報技術者試験の頻出分野を重点的に確認しましょう。午前試験では「基礎的なIT知識」の復習、午後試験では「アルゴリズムと情報セキュリティ」に特化した演習が必要です。
また、時間配分のシミュレーションを行うことも重要です。試験時間は午前90分、午後100分と短縮されていますので、限られた時間内に正しい解答を導き出す練習をしましょう。公式サンプル問題を通じて、本番形式に近い状態で確認作業を行うことで、当日の緊張感にも対応できます。
科目B試験の具体的な準備手順
科目B（午後試験）は、出題がアルゴリズムと情報セキュリティに集中しているため、この分野の深い理解が求められます。まず、アルゴリズムの基本概念を学び、基本問題から応用問題へステップアップする形で学習を進めましょう。また、情報セキュリティに関しては、暗号化技術やネットワークセキュリティの基本知識だけでなく、最新の技術動向についても把握することがポイントです。
さらに、擬似言語に慣れるため、過去問やサンプル問題を使った演習を繰り返すことが大切です。問題を短時間で解くための「解法パターン」を身につけ、アウトプットの量を増やすことで精度を上げていきましょう。試験本番でスムーズな解答ができるよう、毎日の学習計画に演習時間をしっかり組み込むことをおすすめします。
2023年度変更点がもたらす今後の展望
IT業界全体への影響と人材育成の視点
2023年度から基本情報技術者試験に導入された通年試験化やCBT方式、試験内容の刷新は、IT業界全体に大きな影響を与えると考えられます。この変更により、受験者はこれまで以上に柔軟なスケジュールで試験を受けられるようになりました。この柔軟性は、働きながら資格取得を目指す社会人や、学業と両立させたい学生にとって非常にメリットがあるといえるでしょう。また、試験の内容そのものがプログラミング選択制の廃止により、特定分野に偏らず幅広いスキルセットを問う形に変わりました。これにより、次世代のIT人材がより汎用的な知識とスキルを身につけ、多様なニーズに応えられるようになる狙いがあります。
基本情報技術者試験の変化と他資格との比較
今回の基本情報技術者試験の変更により、他のIT資格との差別化が明確化されつつあります。従来の試験では選択制によって限られたスキルに特化していたため、広範なIT人材育成の観点からは課題がありました。しかし、新制度では出題範囲が広がり、アルゴリズムや情報セキュリティといったIT人材に必須のスキルが重視されています。他資格と比較すると、基本情報技術者試験は入門から中級レベルの技術者を目指すものとしての地位を確立しており、特に初学者にとって最適な検定となっています。また、CBT方式は柔軟性が高く、他の資格試験との差異として競争力を高めています。
2024年以降の試験動向と予想される改訂点
2024年以降、基本情報技術者試験はさらなる進化を遂げていくと予想されます。特に、AIやクラウドコンピューティング、さらにデータ分析分野のトピックが加わる可能性があります。これらは現在のIT市場で求められているスキル領域であり、試験内容も現代の技術トレンドを反映する方向に進化するでしょう。また、デジタル人材の不足が叫ばれる中、試験内容のさらなる実務性の向上や、企業と協調した資格取得者の活用促進政策も期待されます。
学習者と受験者に求められる心構え
2023年度の試験変更に対応するためには、学習者や受験者が自律的かつ柔軟な態度を持つことが大切です。試験時間や科目構成が変更になったことから、従来以上に計画的な学習スケジュールの管理が求められます。特に、CBT方式では受験日を自主的に設定できるため、適切なペース配分で長期的な学習を進めることが重要です。また、プログラミング言語の選択制が廃止されたことで、擬似言語や情報セキュリティといった新たな試験範囲への理解を深める必要があります。
試験改変が示唆するIT人材市場の未来
今回の基本情報技術者試験の改変は、IT人材市場の未来を見据えたものです。特に、デジタル化が進む現代社会において、特定分野に特化したスキルだけでなく、広範な基礎知識と応用力を持つ人材への需要が高まっています。この試験改変を機に、採用市場でも基本情報技術者試験が持つ信頼性がさらに向上する可能性があります。また、通年試験化や試験時間のコンパクト化により、多忙な社会人や学生が受験しやすくなったことで、資格取得者が今後増加すると予想されます。これは、全体的なITスキルレベルの底上げに寄与し、さらなるデジタル社会の進展を支える鍵となるでしょう。
