コトラ（広報チーム） 
はじめに
MBA（Master of Business Administration）は、経営学の大学院修士課程を修了することで得られる学位です。近年、ビジネス環境の変化に対応し、キャリアアップを目指す社会人の間でMBA取得への関心が高まっています。しかし、MBA取得には多額の費用がかかるため、具体的な費用の内訳や相場、そして費用を抑える方法について疑問を抱いている方も多いでしょう。
MBA取得費用の基本的なポイント
MBA取得にかかる費用は、大きく分けて「国内MBA」と「海外MBA」で相場が異なります。さらに、受講形態（フルタイム・パートタイム・オンライン）や、国公立・私立といった学校の種類によっても変動します。学費だけでなく、生活費、語学対策費、受験関連費なども含めた総額を把握することが重要です。
この記事の目的と想定読者
この記事では、国内MBAと海外MBAの取得にかかる費用を徹底的に比較し、最新の相場と費用の内訳を詳細に解説します。また、高額な費用を抑えるための奨学金や給付金、教育ローンなどの活用法も紹介します。
MBA取得を検討しているものの、費用面で不安を感じている方や、ご自身のキャリアプランに最適なMBAプログラムを見つけたいと考えている方に、具体的な情報を提供することを目的としています。
MBA取得費用の全体像と内訳
MBA取得には、学費だけでなく様々な費用が発生します。これらの費用は、国内で学ぶか海外で学ぶか、またプログラムの形式によって大きく異なります。
基本的な費用項目（学費・生活費・語学対策費・受験関連費など）
MBA取得にかかる主な費用項目は以下の通りです。
- 学費
- 受験関連費（予備校費用、出願料、GMAT・TOEFLなどの試験費用）
- 語学対策費（英会話スクール、教材費など）
- 教材購入費
- 生活費（居住費、食費、交通費、通信費、保険料など）
- 渡航費（海外MBAの場合）
- その他の雑費
特に海外MBAの場合、学費に加えて渡航費や現地での生活費が高額になるため、総費用は国内MBAよりも大幅に増える傾向にあります。
国内と海外で異なる費用構造
国内MBAと海外MBAでは、費用の構造が大きく異なります。
- 国内MBA：学費は100万円〜430万円程度が相場です。自宅から通学する場合、生活費は既存の支出と大きく変わらないことが多いですが、交通費などは考慮が必要です。予備校費用や教材費が別途かかります。
- 海外MBA：学費は800万円〜2,000万円以上が相場です。さらに渡航費や現地での高額な生活費が加わるため、総額で2,000万円を超えるケースも珍しくありません。
プログラム形態ごとの費用（フルタイム・パートタイム・オンライン）
MBAプログラムは、受講形態によっても費用が変動します。
- フルタイムMBA：平日の日中に授業が行われるため、多くの場合、仕事を辞めるか休職する必要があります。この期間の収入減も「機会費用」として考慮に入れる必要があります。
- パートタイムMBA：平日夜間や土日に授業が行われるため、仕事を続けながら学ぶことが可能です。学費はフルタイムと同等かやや安価な傾向にあります。
- オンラインMBA：通学が不要なため、住居費や交通費、渡航費を大幅に削減できます。国内オンラインMBAは250万円〜300万円程度、海外オンラインMBAは300万円〜1,600万円程度と幅がありますが、フルタイム留学と比較して費用を抑えられる傾向にあります。
国内MBA取得にかかる費用
国内MBAは、海外MBAに比べて費用を抑えられる点が大きな魅力です。また、働きながら学べるプログラムも多く、日本のビジネス環境に即した知識を習得できるというメリットもあります。
国公立・私立大学院での学費相場
国内MBAの学費は、国公立大学院か私立大学院かによって大きく異なります。
- 国公立大学院：100万円〜150万円程度が相場です。私立大学院に比べて学費が安く設定されている傾向があります。例えば、一橋大学や京都大学、東京都立大学などが挙げられます。
- 私立大学院：300万円〜430万円程度が相場です。国公立大学院よりも学費が高い傾向にありますが、独自のカリキュラムや充実したサポート体制が魅力です。
社会人向け・ビジネススクールでの相場
社会人向けの国内MBAプログラムでは、パートタイムやオンライン形式が充実しており、働きながら学びやすい環境が整っています。
- パートタイムMBA：100万円〜340万円程度が相場です。
- オンラインMBA：100万円〜300万円程度が相場です。
予備校や受験準備にかかる費用
国内MBAの受験準備には、予備校の利用や教材購入費がかかります。
- 予備校費用：30万円前後が相場です。小論文対策、経営学講義、研究計画書作成、面接対策など、入試科目を網羅したパック講座が一般的です。独学でも可能ですが、効率的な学習のためには予備校の活用も検討すると良いでしょう。
- 受験費用：大学院によって異なりますが、一般的に数万円程度がかかります。
1年目・全課程の総額イメージ
国内MBAの学費は、入学金が含まれる1年目の方が高くなる傾向があります。
- 国公立大学院の2年間総額：約100万円〜160万円。
- 私立大学院の2年間総額：約300万円〜430万円。
これに加えて、予備校費用や教材費、交通費などの諸経費が別途発生します。
海外MBA取得にかかる費用
海外MBAは、国際的なビジネススキルやネットワークを築ける点が大きな魅力ですが、国内MBAと比較して高額な費用がかかります。
学費相場と国別の傾向
海外MBAの学費は、国やビジネススクールのランキングによって大きく異なります。
- アメリカMBA：2年間のプログラムが一般的で、学費相場は1,300万円〜2,400万円程度と高額です。トップスクールほど費用は高くなる傾向があります。
- ヨーロッパMBA：1年から1年半のプログラムが主流で、アメリカに比べて期間が短い分、総費用を抑えられる場合があります。学費相場は800万円〜1,800万円程度です。
- オンライン海外MBA：キャンパスでの留学に比べて費用を大幅に抑えることができます。学費は300万円〜1,600万円程度と幅がありますが、留学費用の総額は国内オンラインMBAよりも高くなる傾向があります。
留学準備・渡航費・現地生活費・雑費
海外MBA取得には学費以外にも多額の費用が必要です。
- 留学準備費：TOEFL iBTやGMAT/GREなどの英語試験の受験費用（複数回受験を考慮すると30万円程度）、予備校やコンサルティング費用（40万円程度）など、合計で100万円程度かかることがあります。
- 渡航費：時期や国によって異なりますが、30万円程度かかる場合があります。
- 現地生活費：家賃、食費、交通費、通信費、保険料などが含まれます。先進国の都市部では、年間200万円〜300万円以上の生活費がかかることが一般的です。特にアメリカの大都市など物価の高い地域では、さらに高額になる傾向があります。
- 教材費：年間で20万円以上かかることもあります。
アメリカを中心とした代表例と2年間の費用モデル
例えば、アメリカのトップビジネススクル（ハーバードビジネススクールなど）の場合、2年間の学費が1,200万円〜1,800万円程度、これに加えて現地生活費（年間200万円〜300万円）、留学準備費用、教材費などを合わせると、総額で2,000万円を超えることが想定されます。
費用を抑える方法
高額なMBA取得費用ですが、様々な制度や工夫によって負担を軽減することが可能です。
奨学金・給付金・教育ローンの活用法
- 奨学金：国や地方公共団体、民間団体、そして各大学院が独自に提供する奨学金があります。給付型（返済不要）と貸与型（返済必要）があり、給付型は競争率が高い傾向にあります。海外MBA向けのフルブライト奨学金やロータリー奨学金なども存在します。
- 教育ローン：日本政策金融公庫の教育ローンや、民間の金融機関が提供する教育ローンがあります。奨学金と異なり返済義務が生じますが、緊急時の資金調達として有効です。
- 専門実践教育訓練給付制度：厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合、受講費用の一部が支給される制度です。MBAプログラムも対象となる場合があり、条件を満たせば最大で112万円（2年間で2025年4月1日以降入学者は最大128万円）の給付が受けられます。
専門実践教育訓練給付制度ほか各種助成
専門実践教育訓練給付制度は、働く人のキャリア形成を支援する国の制度で、MBA取得費用の一部を補填できます。
- 支給額：受講費用の50%（年間上限40万円）が受講中に支給されます。さらに、修了後1年以内に目標資格を取得し、雇用保険の被保険者として就職した場合、追加で20%（年間上限16万円）が支給されます。2025年度入学以降は、修了後1年以内に賃金が5%以上上昇した場合、さらに10%（年間上限8万円）が追加支給されます。
- 対象講座：厚生労働大臣が指定する国内MBAプログラムが対象となります。事前にハローワークでのキャリアコンサルティングと申請が必要です。
会社補助・社費留学制度
企業によっては、社員のMBA取得や海外留学費用を補助する「社費留学制度」を設けている場合があります。
- メリット：学費だけでなく、渡航費や滞在費、さらに給与も支給されるため、経済的な負担を大幅に軽減できます。留学中のキャリアの中断も回避できます。
- 注意点：社内選抜に合格する必要があり、一定の勤続年数や帰国後の勤務義務が課せられることが多いです。事前に会社の人事部門に確認することが重要です。
分割払いやローン活用のポイント
学費を一括で支払うのが難しい場合、分割払いや教育ローンの活用も有効です。
- 分割払い：多くの大学院で学費の分割払いが可能です。
- 教育ローン：奨学金と組み合わせて利用することで、自己負担額を計画的に管理できます。金利や返済期間は金融機関によって異なるため、複数の選択肢を比較検討しましょう。
国内・海外・オンラインMBAの費用比較
MBA取得の費用は、学び方によって大きく変動します。ご自身のライフスタイルやキャリア目標に最適な選択をするために、各プログラムの費用とメリット・デメリットを理解しましょう。
総費用の比較表（国内vs海外vsオンライン）
MBAの総費用（目安）は以下の通りです。
プログラム形態学費の目安総費用の目安（学費以外含む）国内フルタイム100万円〜430万円150万円〜500万円国内パートタイム100万円〜340万円150万円〜400万円国内オンライン100万円〜300万円100万円〜350万円海外フルタイム800万円〜2,000万円1,000万円〜2,100万円海外オンライン300万円〜1,600万円300万円〜1,700万円
※上記は一般的な目安であり、選択する学校や個人の生活状況によって大きく異なります。
それぞれのメリット・デメリット
- 国内MBA（フルタイム・パートタイム）
- メリット：海外に比べて費用が安く、日本のビジネスに特化した知識を学べます。パートタイムやオンラインであれば仕事を続けながら取得可能です。
- デメリット：国際的なネットワーク構築の機会が海外に比べて少ない場合があります。
- 海外MBA（フルタイム）
- メリット：国際的なブランド力、多様な人脈、グローバルなビジネススキルと英語力の向上、卒業後の高い年収アップが期待できます。
- デメリット：費用が非常に高額で、留学のためにキャリアを中断する必要があります。高い英語力が求められます。
- オンラインMBA（国内・海外）
- メリット：場所を問わず学習でき、仕事や家庭と両立しやすいです。留学にかかる渡航費や現地生活費が不要なため、費用を抑えられます。海外オンラインMBAでは国際的な教育を比較的安価に受けられます。
- デメリット：モチベーション維持や自己管理が必要となり、講師や学生との直接的な交流から得られる人脈形成の機会が限られる場合があります。
ライフスタイルやキャリア計画との相性
- キャリア中断が難しい方：国内パートタイムMBAやオンラインMBAが適しています。
- グローバルキャリアを目指す方：海外MBA（フルタイムまたはオンライン）が適しています。特にオンラインは、費用を抑えつつ国際的な教育を受けたい場合に有効です。
- 費用を抑えたい方：国内MBA、特に国公立やオンラインプログラムを検討すると良いでしょう。
費用対効果（ROI）とMBA選択の指針
MBA取得は、単なる教育投資ではなく、将来のキャリアや年収に大きな影響を与える投資です。費用対効果（ROI）を考慮し、自身の目的に合ったプログラムを選択することが重要です。
MBA取得後のキャリア・年収アップのデータ
MBA取得後、多くの人が年収アップやキャリアチェンジを実現しています。
- 年収アップ：MBA取得者の50%以上が年収を上昇させており、500万円以上年収が上がったケースも少なくありません。特に海外MBA取得者は、国内MBA取得者よりも年収が大きく上がる傾向にあります。
- キャリアチェンジ：MBAで培った汎用的なビジネススキルは、異業種への転職や管理職・経営層への昇進に役立ちます。外資系企業やコンサルティングファームでは、MBAホルダーの採用に積極的です。
投資としてのMBA（費用対効果・回収期間など）
MBA取得にかかる費用は高額ですが、その後の年収増加を考慮すると、数年〜10年程度の期間で費用を回収できる可能性があります。
- 回収期間の計算例：仮に年収が700万円から1,400万円に増加した場合、年間700万円の増加となり、2,000万円の投資であれば約3年で回収できる計算になります。
「学費の安さ」だけで選ぶ落とし穴
学費の安さだけでMBAプログラムを選ぶのは避けるべきです。MBAで得られる知識、スキル、人脈、ブランド力は、プログラムによって大きく異なります。安価なプログラムでも、自身のキャリア目標に合致しない場合、期待する費用対効果が得られない可能性があります。
自分に合った学び方・目的重視の選択を
MBAプログラムを選ぶ際は、以下の点を重視しましょう。
- 学びたい分野やキャリア目標：どのような知識やスキルを身につけ、どのようなキャリアを目指したいのかを明確にする。
- プログラムの質とカリキュラム：国際認証の有無や、実践的なケーススタディ、専門分野の提供状況などを確認する。
- 講師陣と学生の多様性：多様なバックグラウンドを持つ学生や、経験豊富な講師から学ぶことで、より多くの気づきや人脈を得られます。
- 柔軟な学習環境：仕事との両立を考慮し、オンライン、パートタイム、フルタイムなど、自身のライフスタイルに合った形式を選ぶ。
まとめ
MBA取得にかかる費用は、国内と海外、プログラム形態によって大きく異なります。最新の相場では、国内MBAが100万円〜430万円程度、海外MBAが800万円〜2,000万円以上が目安となります。学費以外にも、受験準備費、生活費、渡航費などが加わるため、総費用はさらに高額になることを理解しておく必要があります。
最新相場を踏まえたMBA取得費用の考え方
MBAは高額な投資ですが、その後のキャリアアップや年収増加といったリターンを考慮すると、費用対効果は高いと言えます。しかし、単に費用が安いという理由でプログラムを選ぶのではなく、自身のキャリア目標や学びたい内容に合致しているかを最優先に検討することが重要です。特にオンラインMBAは、費用を抑えつつ国際的な学位取得を目指せる有効な選択肢です。
次のステップ・情報収集のポイント
MBA取得を検討する際は、以下のステップで情報収集を進めましょう。
- 目的の明確化：なぜMBAを取得したいのか、どのようなキャリアを目指すのかを具体的にする。
- プログラム比較：国内・海外、フルタイム・パートタイム・オンラインの各プログラムの費用、カリキュラム、特徴を比較検討する。
- 費用対策の検討：奨学金、給付金、教育ローン、社費留学制度など、利用可能な費用軽減策について情報収集し、早めに申請準備を進める。
- 説明会やオープンキャンパスへの参加：各大学院の説明会や体験授業に参加し、実際の学習環境や雰囲気を肌で感じ、直接質問する機会を持つことが重要です。
