
マネー・ローンダリング、テロ資金供与、贈収賄――。金融犯罪対策は、金融システムの信頼を支え、社会の安全にもつながる重要な役割を担っています。一方でこの仕事は、規制対応の知見だけで完結するものではありません。ビジネスへの理解、テクノロジーの活用、グローバルな連携など、幅広い視点と経験が求められる領域です。だからこそ、専門性を高めながら、自身の視野やキャリアの可能性を大きく広げていける仕事でもあります。今回は、三菱UFJ銀行のグローバル金融犯罪対策部で幅広い領域を担う五味様に、この仕事の奥行きと、そこで得られる成長機会について伺いました。
ゲスト紹介
ゲスト

株式会社三菱UFJ銀行
グローバル金融犯罪対策部
グローバル金融犯罪対策室(日本)
総括グループ
次長
五味 紘之 様
2004年に新卒として入行。法人営業や国際業務部で主にお客様の海外進出支援などフロント業務を経験。シンガポールに6年間駐在経験あり。2018年からグローバル金融犯罪対策の領域に従事し主にテクノロジーの観点からFCC(金融犯罪コンプライアンス)業務の高度化やグローバルシステムの導入を推進。2年間の金融庁への転籍を経て2024年にグローバル金融犯罪対策部に復職。現在は総括グループで、ABC(贈収賄・汚職防止)の他、FATFや当局対応、企画業務などを担当。
ビジネス・規制・テクノロジーを横断するキャリアの広がり
コトラ村松:
まずはこれまでのご経歴と、現在のご担当領域について詳しく教えていただけますでしょうか。
五味様:
私は新卒で三菱UFJ銀行に入行してから23年目になります。これまで、法人営業や国際業務部でのフロント業務をはじめ、海外進出支援などにも携わってきました。その後、シンガポールに6年間駐在し、周辺国への進出支援や現地での業務対応など、国際業務を幅広く経験しました。
グローバル金融犯罪対策部に着任したのは2018年です。以来この領域に一貫して携わり、中でも長く担当してきたのがテクノロジー関連の業務です。FCC(ファイナンシャル・クライム・コンプライアンス)の高度化・効率化に向けたシステム企画やプロジェクトマネジメントを担ってきました。
主には、AMLシステムのグローバル統一プロジェクトを推進してきました。各国の規制当局の期待や個別の規制を踏まえながら、グローバルとしての整合性と、各地域での実効性の両立を目指す取り組みであり、難しさの大きい仕事でしたが、それだけに多くの学びがありました。
また、2024年3月末までの2年間は、金融庁のマネー・ローンダリング・テロ資金供与対策企画室(現・金融犯罪対策室)に転籍し、検査官を務めました。
現在は総括グループに所属し、企画業務全般を担当しています。室内の企画業務全般に加え、FATF対日審査のフォローアップ、全国銀行協会との連携、当局窓口といった対外対応のほか、ABC(贈収賄・汚職防止)規制の導入・整備・運用、テスティングと呼ばれる事後検証、新規与信や新商品のリスク評価、社内研修まで、幅広い領域に関わっています。
金融犯罪対策というと専門特化したイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際にはビジネス理解、規制理解、システム理解のいずれも求められる領域です。その意味で、これまで積み重ねてきたさまざまな経験が、現在の業務にもつながっていると感じています。
金融犯罪対策は「終わりのない進化」の領域
コトラ村松:
システム企画から当局での検査官経験、そして現在の企画・ABCまで、金融犯罪対策領域を幅広く経験されていらっしゃるのですね。金融犯罪対策を巡る国際的な規制は非常に変化が激しい分野かと思いますが、現在の潮流をどのように捉えていらっしゃいますか?

五味様:
この領域を理解するうえで欠かせないのが、国際的なルールづくりを担うFATFの存在です。FATFにはG7を含む38カ国・地域と2つの地域機関が加盟しており、世界の金融犯罪対策の方向性に大きな影響を与えています。もともとはマネー・ローンダリング対策が中心でしたが、その後はテロ資金供与対策、さらに現在では拡散金融対策まで対象が広がっています。金融機関に求められる視野や対応力も、それにあわせて広がり続けています。
FATFの役割は、大きくいえば二つあります。一つは、各国が取り組むべき国際的な基準を示し、その整備状況や運用状況を見ていくことです。もう一つは、加盟国だけでなく、より幅広い国や地域にもその考え方を広げ、対応を促していくことです。制度が整っているかだけでなく、実際に対策が機能しているかまで見られる点が、この領域の特徴だといえます。
最近の例では、クロスボーダー送金に関する「FATF勧告16」が昨年6月に改定されました。これは、送金に関わる人や資金の流れをこれまで以上に正確に把握し、金融機関の間で必要な情報をきちんと連携していくことを求めるものです。今回の改定では、情報を通知すべき取引の範囲が広がり、求められる情報の内容もより詳しくなりました。
こうした背景には、新しい技術やプレイヤー、ビジネスモデルの登場によって、従来のルールだけでは捉えきれないリスクが増えていることがあります。また、企業や取引の背後にいる実質的な受益者をより正確に把握しようという流れも、世界的に強まっています。金融機関には、こうした変化を前提に、ルールを守るだけでなく、実態に即して柔軟に対応していくことが求められています。
コトラ村松:
リスクの対象が広がり、より柔軟な対応が求められているのですね。当局の評価基準も変化してきているのでしょうか。
五味様:
金融犯罪対策の仕事には、「ここまでできれば終わり」という明確なゴールがあるわけではありません。社会の動きや犯罪の手口が絶えず変わるため、それにあわせて対応も見直し続ける必要があるからです。金融機関には、ルールを守るだけでなく、実際にリスクを防げているかを確かめながら、よりよい方法へと改善していくことが求められます。変化を先回りして捉え、仕組みや運用を磨き続けていく点に、この仕事ならではの難しさと面白さがあると感じています。
AML・経済制裁・ABC。3つの領域を統合してリスクに向き合う
コトラ村松:
金融犯罪リスクの広がりや、FATF相互審査を踏まえた金融機関の役割については、どのようにお考えでしょうか。
五味様:
当部では、AML、経済制裁、ABC(贈収賄・汚職防止)といったテーマを扱っています。一見すると別々の分野に見えるかもしれませんが、実際の現場では密接につながっています。たとえば、不正な資金は贈収賄やサイバー犯罪などをきっかけに生まれ、その後、送金や取引を通じて見えにくくなっていきます。だからこそ、個別に見るのではなく、複数のリスクをまとめて捉え、全体として対応していくことが大切になります。
また、2028年6月には日本に対する次のFATF審査が予定されており、金融機関にとって大きな節目になります。そこで重視されるのは、ルールや体制を整えているかどうかだけではありません。実際にリスクを把握し、それに応じて運用を見直しながら、対策がきちんと機能しているかが問われます。形を整えるだけで終わらせず、現場で使える仕組みとして育てていくことが、これからますます重要になっていくと考えています。
金融業界全体で高める金融犯罪対策
五味様:
この領域は、金融庁も「協調領域」と位置づけているように、各金融機関がそれぞれに対応するだけでは十分ではなく、業界全体で水準を高めていくことが重要だと考えられています。私たちもそうした方向性を踏まえながら対応を進めています。実際に、全国銀行協会やマネロン対策共同機構などの業界団体を通じて、業界横断的な連携や知見共有が進められています。MUFGとしても、こうした取り組みにしっかり関わりながら、金融業界全体の金融犯罪対策の底上げに貢献していくことが重要な役割だと考えています。
MUFGならではの強みを支えるグローバル体制
コトラ村松:
そうした環境の中で、MUFGはどのような強みを持ち、金融犯罪対策やFATF相互審査に向き合っているとお考えでしょうか。
五味様:
MUFGの大きな強みの一つは、グローバル金融犯罪対策部の本部を米国・ニューヨークに置いていることです。金融犯罪対策の実務やルール形成では、米国が大きな影響力を持っています。そうした最前線に本部機能があることで、最新動向を踏まえた判断や意思決定につなげやすい点は、MUFGの大きな強みだと感じています。
コトラ村松:
ニューヨークに本部があることは、実際の業務にどのようにつながっているのでしょうか。
五味様:
ニューヨーク本部には、外国籍のスタッフや米国当局での勤務経験を持つ専門家が在籍しており、世界最先端の規制動向や実務知見に日常的に触れられる環境があります。各地域との調整は日本側でも担っていますが、重要な判断や意思決定はニューヨーク本部と連携して進めることで、グローバルでの一体感とスピード感のある対応につながっています。
システムと業務運用を一体で高めるテクノロジー活用
コトラ村松:
金融犯罪対策の高度化においてはシステムやテクノロジーの活用も非常に重要だと思いますが、どのような取り組みをされていらっしゃいますか。
五味様:
MUFGの特徴の一つは、金融犯罪対策の組織の中に、要件定義やシステム開発・保守を担うテクノロジー機能と、テスティング(システムや業務プロセスが適切に機能しているかを検証する機能)の双方を備えていることです。システムを導入して終わりではなく、現場でどのように使われ、どこに改善余地があるのかまで一体で見ていけるため、効率化だけでなく、対策の精度向上にも継続的につなげることができます。

この体制があるからこそ、金融犯罪対策を個別の業務として分けて見るのではなく、一連の流れとして捉えた運用改善が可能になります。たとえば、口座開設時のKYC(本人確認)、制裁対象者を確認するスクリーニング、不審な取引を検知するモニタリングは、それぞれ独立した業務ではありません。実務では、ある場面で把握したリスクを別の場面にも適切に反映させることが重要です。KYCの結果を踏まえてモニタリングを強化したり、モニタリングで気になる動きが見つかれば顧客リスクの見直しにつなげたりすることで、システムと業務運用を連動させながら対応しています。
さらに、こうした仕組みをグローバルで共通の考え方のもと運用している点も、MUFGならではの強みです。単に同じツールを導入するだけではなく、KYC・スクリーニング・モニタリングをつなげて管理し、運用ルールもグローバルでそろえることで、各地域の知見を生かしながら、グループ全体として一貫性のある金融犯罪対策を実現しています。
コトラ村松:
単なる業務効率化ではなく、高度化のためのシステムなのですね。AIなどの進化もあり、常にアップデートが求められる環境ですね。
五味様:
私自身、金融犯罪対策においては、業務を効率化することと、より精度高く不正を捉えることの両方が重要だと考えています。技術の進化が速いからこそ、システムだけでなく業務のあり方も含めて継続的に見直し、改善していく必要があります。AIを含む新しい技術も取り入れながら、実務に根差した形で仕組みを磨き続けていくことが、この領域では欠かせません。
仕事のやりがいと、この分野に求められる姿勢
コトラ村松:
犯罪の手口も巧妙化する中、終わりのない戦いですね。五味様がこのお仕事でやりがいを感じる瞬間について教えていただけますでしょうか。
五味様:
私たちの仕事は、問題が起きないこと自体が成果であるため、外からは価値が見えにくいかもしれません。それでも、日々の取引モニタリングでは多くのアラートが上がり、その一つひとつを丁寧に確認しながら、不正の兆候を見逃さないよう対応しています。もし見落としがあれば、その資金が犯罪やテロ、拡散活動などにつながる可能性もあります。表に出ることの少ない仕事ではありますが、金融システムの信頼を守り、社会の安全を支えているという実感を持てる点に、大きなやりがいがあります。
コトラ村松:
最後に、金融犯罪対策の分野に関心を持つ転職希望者の方や、三菱UFJ銀行でのキャリアを検討されている方へメッセージをお願いします。どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。
五味様:
この領域は、金融の信頼を支えるという社会的意義の大きさに加え、グローバルな視点、専門性、テクノロジー、多様な関係者との協働など、幅広い力が求められる仕事です。MUFGでは、世界40カ国以上・約1,500拠点のネットワークを生かしながら、グローバルに連携して金融犯罪対策に取り組んでいます。そのため、一つの専門性を深めたい方にとっても、より広い視野を持って新しい領域に挑戦したい方にとっても、大きな成長機会がある環境だと考えています。
求めるのは、専門知識や英語力を備えた即戦力の方だけではありません。この領域に関心を持ち、変化の大きい環境の中でも学び続けながら、粘り強く課題に向き合える方とぜひご一緒したいと考えています。たとえ現時点で経験がなくても、学ぶ意欲があり、長期的に専門性を高めていきたいという思いがあれば、十分に活躍できる可能性があります。金融犯罪対策を通じて社会的価値の創出に関わりたい方、専門性を磨きながらより大きなフィールドで挑戦したい方に、ぜひ関心を持っていただければと思います。
※文中の略語
- AML:Anti-Money Laundering(マネー・ローンダリング対策)
- CFT:Countering the Financing of Terrorism(テロ資金供与対策)
- CPF:Counter Proliferation Financing(拡散金融対策)
- ABC:Anti-Bribery and Corruption(贈収賄・汚職防止)
- FATF:Financial Action Task Force(金融活動作業部会)

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グローバルバンクでのAML(Anti-money laundering)に関する業務の求人
■業務内容
【部署概要】
当組織は、犯収法、施行規則、金融庁ガイドライン、並びに当行グローバルAML規則等に基づき、行内のAML/KYC手続きの整備・運用およびリスク管理を行う組織です。
【業務内容】
ご経験・適性に応じて、以下のいずれかに配属
1.AML Program & Advisoryチーム
・犯収法・施行規則・FSA*1ガイドライン・グローバル基準に沿ったAML関連手続きの企画・改定・管理
・国内拠点への手続きの周知、照会対応
2.KYCチーム
・本邦顧客へのKYC *2全般
3.High Risk Industries&Complex Productsチーム
・特定の高リスク業種のKYC *2 ・EDD *3 、新規性のある商品のAMLリスク精査
4.FI AML Advisory & U.S. RFI チーム
・MUFGと取引のある海外金融機関等(FI)のKYC*2・EDD *3業務
【組織構成】
・次長+4チーム体制
– AML Program & Advisoryチーム 17名
– High Risk Industries & Complex Productsチーム 7名
– KYCチーム 6名
– FI AML Advisory & U.S. RFI チーム 8名
【魅力】
・グローバル/本邦AMLプログラムの専門知見の向上
・関連する領域(銀行業務、新規事業、金融犯罪領域、システム)は多岐に渡っており、広い業務領域をカバー
・本部(NY)や他地域とも接点があり、グローバルリーチも業務・経験を積めば可能性あり
KYC(Know Your Customer):顧客の本人確認を行うプロセス
EDD(Enhanced Due Diligence):リスクの高い顧客の性質や事業についての深掘調査
RFI(Request For Information):情報提供依頼
■応募資格
【必須】
(社会人年数3-5年前後の場合)
・3年以上の業務経験(業種問わず)
・AML領域に強い関心のある方
(社会人年数5年以上の場合)
・金融機関における預為業務やAML関連領域で実務経験のある方
【推奨】
コンプライアンス、リスク管理、監査、事務管理経験
AML(Anti-money laundering)や経済制裁、贈収賄汚職防止に関する業務経験又は知識
英語での業務遂行(TOEIC730~860*点目途) *特に、4.の役割においては860点目途の英語力を推奨
■業務内容
・贈収賄・汚職防止規則のインプリ及び審査
・当行の贈収賄・汚職防止規則に関するグローバル規則を本邦内に導入するほか、贈収賄・汚職防止規則の観点から、個別取引や案件の審査を行う
■応募資格
【必須】
・コンプライアンス、リスク管理、監査、事務管理の経験がある方
・英語での業務遂行能力(TOEIC730点目途)
【推奨】
・国際業務や海外での業務経験
・AML(Anti-money laundering)や経済制裁、贈収賄汚職防止に関する業務経験又は知識
■業務内容
【部署概要】
当組織は、海外・国内のAML(Anti-Money Laundering)および経済制裁領域におけるシステム企画・要件定義・上流工程のプロジェクトマネジメント等を通じて、当グループのグローバル金融犯罪対策を技術面から支える役割を担っています。主としてシステムの企画構想及びユーザー部としてシステム開発の上流工程に携わるポジションです。
【業務内容】
以下のうち、ご経験・適性に応じた領域をいずれかまたは複数ご担当いただきます。
グローバルシステム導入における要件定義
・グローバルFCCシステム開発・導入プロジェクトにおける要件定義
・ユーザー側として、世界各国の利用部門・ポリシーメーカーの意見集約
・グローバル共通要件と各国規制要件の整理・調整
・システム部門との実装方針のすり合わせ、合意形成
【魅力】
・事業環境の変化、犯罪手口の変化、テクノロジーの変化等を捉えて望ましい業務やシステムを企画・検討していく業務のため、新しいことに挑戦したい方、業務に最適なテクノロジーを選定していくことに興味がある方にご検討いただきたいです。
・グローバルベースで関係者を取り纏めてプロジェクトを推進していく業務ですので、グローバルな仕事をしたい方、意見調整も含めたコミュニケーションに自信のある方の活躍機会が豊富です。
・マーケットで特に希少価値があり、長期的な視野で専門性を構築できる金融犯罪対策領域に魅力を感じて頂ける方との親和性が高い業務です。
・キャリア採用者も活躍しています。
■応募資格
【必須スキル】
・システム企画、またはユーザー側システム要件定義、開発初期フェーズのプロマネ・推進経験
・英語での業務遂行能力(海外との定例会議における説明や交渉等あり。)
【歓迎スキル】
・金融機関または同等の規制産業での勤務経験
・大規模(関係者多)システム導入・刷新プロジェクトの企画・初期フェーズに携わった経験
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【必須】
・コンプライアンス、リスク管理、監査、事務管理の経験
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インタビュアー紹介
インタビュアー

株式会社コトラ
エグゼクティブコンサルタント
村松 航也
広島大学教育学部卒。現在はパブリックセクター(公務員から民間への転職)、コンプライアンス、コンサルティングファームを専門として担当。








