はじめに:なぜ、コンサルティングファームの種類は増えているのか?
コンサルティング業界に関心を持つと、まず「戦略」「総合」「IT」といった、多種多様な『〇〇コンサル』という言葉に直面します。そして、それぞれの違いを正確に理解するには難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
なぜ、これほどまでに多様なコンサルティングファームが存在するのでしょうか。その答えは、企業が抱える経営課題そのものが、極めて多岐にわたるからです。
この記事では、複雑に見えるコンサルティング業界の全体像を紐解きながら、各ファームがどのような役割を担い、どのようなビジネスモデルで成り立っているのか、その違いと特徴を解説します。
コンサルティング業界の全体像 ~経営課題のレイヤーで理解する~
多様なコンサルティングファームを理解するために、まず企業が抱える経営課題を、以下の3つの「階層(レイヤー)」で整理します。例えば、「売上が減少している」という一つの事象も、この階層で分解して考えることが可能です。
経営層の課題(全社戦略レイヤー)
「そもそも、当社の製品ポートフォリオや事業展開エリアは正しいのか?」といった、企業の将来を決定づける最上流の意思決定に関わる課題です。
事業部門の課題(業務・機能戦略レイヤー)
「営業のやり方やマーケティング手法に問題はないか?」「競合に比べて価格競争力はあるか?」といった、戦略を具体的な業務に落とし込むための課題です。
特定の専門領域の課題(専門機能レイヤー)
「顧客管理システム(CRM)が古く、効率的な営業活動ができていないのではないか?」「M&Aによる販路拡大は可能か?」といった、IT、財務、人事など、特定の専門知識が不可欠な課題です。
そして、この経営課題の各レイヤーに、それぞれ専門性を持つコンサルティングファームが対応しているのです。次章では、これらに対応するファームの具体的な種類と役割を解説します。
【種類別】各コンサルティングファームの役割と業務内容
次に、業界の地図を代表的なファームの類型別に解説します。ただし、後述するように近年はこの分類の垣根が曖昧になりつつある点も、現代のコンサルティング業界を理解する上で重要です。
戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームは、前述の「全社戦略レイヤー」の課題解決を専門としています。
ミッション: 経営層の意思決定を支援し、企業の進むべき未来の方向性を示すことです。
主なクライアント: CEO、CFO、取締役会といった企業の経営トップが多くなっています。
主なテーマ: 全社成長戦略の策定、新規事業立案、M&A戦略の策定、事業ポートフォリオの再構築、組織構造の再設計など、企業の根幹に関わるテーマを扱います。最終的な成果物は、経営会議で提示される報告書と、それを裏付ける詳細なデータ分析です。
働き方の特徴: 数名から十数名の少数精鋭チームを組み、数週間から数ヶ月という比較的短期間で、徹底的な分析と仮説検証を通じて結論を導き出すプロジェクトが多いのが特徴です。若手でも経営層と直接対話する機会が多く、短期間で経営視点を養う環境となっています。
総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングファームは、その名の通り、「全社戦略レイヤー」から「業務・機能戦略レイヤー」まで、企業の課題を包括的に支援します。
ミッション: 戦略の策定からその実行支援、業務改革、システム導入の管理まで、企業の変革を支援することです。その最大の提供価値は、大規模な変革プロジェクトを最後まで遂行するプロジェクトマネジメント能力にあります。
主なクライアント: 経営層から事業部長、現場の担当者まで、関わるカウンターパートは非常に幅広くなっています。
主なテーマ: 業務プロセス改革(BPR)では、現状業務(As-Is)の可視化から、理想的な業務フロー(To-Be)の設計、そして新プロセスの現場への定着化支援までを手掛けます。その他、サプライチェーン・マネジメント(SCM)改革、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進、人事制度改革など、テーマは多岐にわたります。
働き方の特徴: 数十名から百名を超えることもある大規模なチームを編成し、中長期にわたるプロジェクトとしてクライアント企業に深く入り込むことが多いのが特徴です。多様な業界・テーマのプロジェクトを経験することで幅広い知見を得られる環境です。
IT系コンサルティングファーム
IT系コンサルティングファームは、「専門機能レイヤー」の中でも特にIT領域に強みを持ちます。
ミッション: テクノロジーの知見を活かし、企業のIT戦略策定から、システムの設計・導入・定着までを一貫して支援することです。
主なクライアント: CIO(最高情報責任者)や、情報システム部門長が主なカウンターパートです。
主なテーマ: ITグランドデザイン策定、基幹システム(ERP)導入、クラウド移行支援、サイバーセキュリティ戦略など、ITに関わるあらゆるテーマを扱います。企業の会計、人事、生産、販売といった基幹業務を統合管理するERPシステムの導入は、数年にわたる大規模プロジェクトとなることも少なくありません。
働き方の特徴: 総合系と同様に、大規模・長期間のシステム導入プロジェクトが中心です。
専門特化型コンサルティングファーム
特定の領域において、極めて高度な専門性で課題解決を行うプロフェッショナル集団です。
ミッション: 特定の業界や業務機能に特化し、他社にはない深い知見で課題を解決します。
主なテーマ例:
FAS(Financial Advisory Service):
M&Aにおける財務デューデリジェンスや企業価値評価(バリュエーション)、事業再生支援など、財務・会計領域に特化しています。財務DDは買収価格の算定に、企業価値評価は交渉の根拠に直接的な影響を与える、極めて重要な役割を担います。
人事・組織コンサルティング:
人事制度の設計・導入、リーダーシップ開発、組織風土の改革など、「ヒト」に関わる課題を専門とします。
この他にも、医療、製造、金融といった特定の「業界」に特化したファームも存在します。
最新トレンド:垣根が溶け合うコンサルティング業界
これまで見てきた各ファームの専門領域ですが、近年はそれぞれの境界が曖昧になり、サービス領域が相互に重複する傾向が見られます。これは「コンバージェンス(収束)」とも呼ばれる、現代のコンサルティング業界を象徴する大きなトレンドです。
この背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。まず、クライアント企業側のニーズが、単なる戦略の提言(「設計図」)に留まらず、変革がもたらす具体的な成果(インパクト)までを一貫して支援するパートナーを求めるようになりました。
加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展は、AIやクラウドといったテクノロジーを経営戦略と不可分なものとし、戦略とITの垣根を事実上取り払いました。
こうした需要の変化に対応し、厳しい競争環境を勝ち抜くために、コンサルティングファーム側もサービスの提供範囲を拡大し、他社との差別化を図る経営戦略をとっています。その結果として、各ファームは具体的なアクションを起こしています。
例えば、戦略系ファームはデジタル専門の子会社を設立したり、IT関連企業を買収したりすることで実行支援体制を強化しています。
一方で、総合系やIT系のファームは、M&Aを通じて戦略系ブティックファームを傘下に収めたり、戦略領域の専門家を積極的に採用したりすることで、経営層への提案機能を高めています。
まとめ:あなたにとっての最適なファームとは?
本記事で解説したように、コンサルティング業界は今、大きな変革期にあります。戦略、総合、ITといったサービス形態となり、各ファームはクライアントの課題をより包括的に解決するため、サービスの領域を拡大し続けています。
この変化は、コンサルタントとして働く個人のキャリアにも大きな影響を与えています。かつてのように「戦略」か「実行」かという二者択一ではなく、戦略的な思考力と、DXや業務改革を推進する実行力の両方を兼ね備えた「ハイブリッドな人材」の価値がますます高まっています。
このような環境でコンサルティング業界への転職を考える上で、原点となる問いは変わりません。それは「自分は企業のどのような課題を、どのレベルで解決したいのか?」ということにあります。
自身の志向性を明確にし、本記事で示した「業界地図」と照らし合わせ、どのファームが自身のキャリアビジョンに最も合致するかを見極めること。それが、コンサルティング業界で成功するための、最も重要で戦略的な第一歩となります。
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