M&Aにおける各業務プロセスについて徹底解説!【関連求人案件有り】

この記事で得られる情報

本稿では、複雑に見えるM&Aが、実際にはどのようなステップで進んでいくのか、その一連の業務プロセスを、各段階で求められる視点と共に具体的に掘り下げます。

【この記事でわかること】

・M&Aの全体像と、近年M&Aが増加している社会的背景

・ソーシングからPMIまで、M&Aを構成する5つの主要な業務プロセス

・M&Aの成功に不可欠な視点と、この分野で求められる専門性

M&Aとは?~その目的と近年の動向~

M&Aの基本的な定義

M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略称です。具体的には、複数の企業が一つになったり(合併)、ある企業が他の企業を買い取ったり(買収)することを指します。企業の成長戦略を実現するための重要な経営手法の一つとして、広く活用されています。

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近年M&Aが増加している背景

近年、日本国内においてM&Aの件数は増加傾向にあります。その背景には、いくつかの社会・経済的な要因が存在します。

後継者不足による事業承継問題
中小企業において、経営者の高齢化と後継者不足が深刻化しており、事業の存続を目的として第三者に会社を譲渡する「事業承継型M&A」が増えています。

業界再編の加速
少子高齢化による国内市場の縮小や、グローバルな競争の激化に対応するため、同業他社との統合によって経営基盤を強化し、生き残りを図る業界再編が活発化しています。

スタートアップエコシステムの発展
大企業が、自社にない新しい技術やアイデア、優秀な人材を獲得するために、成長段階にあるスタートアップ企業を買収するケースも増えています。

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M&Aのメリットと専門家の役割

企業がM&Aを行うメリット

M&Aは、株式や事業を売却する「売り手側」と、それを取得する「買い手側」の双方に、それぞれ以下のメリットをもたらします。

売り手側のメリット
後継者問題の解決、創業者利益の確定、従業員の雇用の維持、不採算事業からの撤退などが挙げられます。

買い手側のメリット
事業拡大に要する時間の短縮、新規事業へ迅速に参入できる、新たな技術やノウハウ、人材の獲得などが主なメリットです。

M&Aを支える専門家(FA)たち

M&Aは、法務、税務、会計など高度な専門知識が求められる複雑な取引です。そのため、多くのM&Aでは、売り手や買い手の利益を最大化するために助言を行う専門家が関与します。

このような専門家はFA(ファイナンシャル・アドバイザー)と呼ばれ、投資銀行のM&Aアドバイザリー部門、FAS(Financial Advisory Service)系コンサルティングファーム、M&A専門のブティックファーム、大手銀行や証券会社などがその役割を担います。

M&Aの全体像:主要な業務プロセス

M&Aは、候補先を探す段階から、最終的に事業を統合する段階まで、いくつかの連続した業務プロセスで構成されています。ここでは、その主要なプロセスを時系列に沿って解説します。

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【案件発掘】ソーシング(Sourcing)

ソーシングは、M&Aプロセスの出発点であり、自社の経営戦略と完全に連動した活動です。「新規事業への参入」「既存事業の強化」といった目的を達成するために、どのような企業を買収または売却すべきかというターゲットのプロファイルを明確にし、候補先を探し出します。

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、独自のデータベースや業界カンファレンス、過去の取引実績など、様々な情報源を駆使して候補先をリストアップします。売り手側からの依頼で買い手を探す場合もあれば、買い手側の戦略に基づいて候補先に非公式に打診する能動的なアプローチもあります。良質な案件を発掘できるかどうかがM&Aの成否に大きく影響するため、このプロセスではFAの情報網やネットワークが重要な役割を果たします。

【初期検討】インフォメーション・メモランダム(IM)の分析と評価

ソーシングによって有望な候補先が見つかると、売り手側からインフォメーション・メモランダム(IM)と呼ばれる、企業の詳細な情報が記載された資料が提示されます。IMには通常、事業概要、市場環境、組織体制、過去数年分の財務諸表といった、意思決定に必要な情報が詳細に盛り込まれています。

買い手側は、このIMを基に、事業の将来性、シナジーの源泉、潜在的なリスクなどを多角的に分析します。また、DCF法や類似会社比較法といった手法を用いて、候補先企業の理論的な価値(バリュエーション)を算出し、買収価格のレンジを検討します。この初期検討は、多大な時間とコストを要する次工程のデュー・デリジェンスに進むか否かを判断する、重要な関門となります。

【案件実行】エグゼキューション(Execution)

初期検討の結果、有望だと判断されると、案件実行の中核であるエグゼキューションの段階に入ります。これはM&Aプロセスで最も複雑なフェーズであり、複数の重要なステップで構成されます。

デュー・デリジェンス(DD:買収監査)

デュー・デリジェンス(DD)は、買収対象企業の価値やリスクを詳細に調査する活動であり、その目的は多岐にわたります。①事業や財務・法務上のリスクの発見、②企業価値評価(バリュエーション)の精度向上、そして③M&A後の統合プロセス(PMI)の計画立案のための情報収集です。

弁護士や公認会計士といった専門家がチームを組み、財務(過去の収益性の分析や正常な収益力の算定)、税務(税務申告の妥当性や税務リスクの有無)、法務(重要な契約内容の確認や訴訟リスクの洗い出し)など、様々な側面から対象企業を分析します。

交渉と契約締結

DDの結果を踏まえ、買い手と売り手は最終的な買収価格や取引条件について交渉を行います。交渉がある程度進んだ段階で、独占交渉権などを定めた基本合意書(LOI:Letter of Intent)を締結します。

LOIは価格などの主要条件以外に法的な拘束力がないことが多いですが、その後の交渉の土台となる重要な文書です。 最終的な合意に至れば、表明保証や補償条項など、取引のあらゆる詳細を定めた法的に拘束力のある株式譲渡契約書(SPA:Stock Purchase Agreement)などの最終契約書を締結します。

【M&A成立】クロージング(Closing)

クロージングとは、最終契約書の内容を実行し、取引を完了させる手続きです。最終契約書には、クロージングの前提条件(CP:Conditions Precedent)が定められており、例えば「重要な許認可の取得が完了していること」などが条件となります。
この前提条件がすべて満たされた後、買い手から売り手への対価の送金、売り手から買い手への株券等の引き渡し、代表取締役の交代といった登記手続きなどが、クロージング日に一斉に行われます。この日をもってM&Aは法的に成立しますが、M&Aの価値を最大化するための本当の取り組みは、ここから始まります。

【統合プロセス】PMI(Post Merger Integration)

PMIは、M&A成立後に行われる、二つの異なる企業を一つに統合していくプロセスです。M&Aで期待されるシナジー効果を実現できるかどうかは、このPMIの巧拙に大きく左右されます。異なる歴史、文化、価値観を持つ組織を一つにすることは、単なる制度の統合以上に複雑なプロセスです。PMIは一般的に、以下の3つのレベルで進められます。

経営統合: 経営理念やビジョン、ガバナンス体制の統一。

業務統合: バックオフィス(経理・人事・ITシステム)や、フロント業務(営業網、生産拠点など)の整理・統合。

意識統合: 最も難しいとされる、従業員の意識や企業文化の融合。
多くのケースでは、クロージング後の最初の100日間を重要な期間と位置づけ、「100日プラン」と呼ばれる短期的な統合計画を策定・実行します。

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まとめ

M&Aは、ソーシングからPMIまで、複数の専門的なプロセスで構成されています。それぞれのプロセスは独立しているわけではなく、前の段階の結果が次の段階に密接に影響を与える、一連の活動です。

M&Aの成功は、この一連のプロセスの一つ一つが、それぞれの重要な役割を正確に果たすことによってのみ達成されます。財務や法務といった専門知識はもちろん、全体を俯瞰し、プロジェクトを完遂させる推進力が求められる理由もここにあります。この各業務の重要性を理解することこそが、M&Aという経営手法の本質を捉える鍵となります。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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