Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較
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※本記事は、『【Big4監査法人アドバイザリービジネス 】コトラ・パートナーが解説:組織の分析と比較』の内容を記事化したものになります。

売上に占めるアドバイザリー業務の割合

コトラ 村松:
Big4監査法人と言えば、監査業務のイメージが強いですが、売上に占めるアドバイザリー業務の割合はどのくらいなのでしょうか。

03 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

コトラ 宮崎:
監査法人といえば「会計監査」という印象があると思いますが、実際は会計監査以外の業務も取り組まれています。

PwCあらた監査法人においては、監査証明業務と非監査証明業務、いわゆるアドバイザリーコンサルティング業務、この2つの割合がほぼ同じとなっています。
他の会社を見てもコンサルティング業務の割合が15%〜50%位の割合であります。

各社の違いとしては、デロイトグループはコンサルの割合が大体38%ぐらいあり、全体の売上規模でいうと、Big4の中で一番大きくなっています。
あずさ監査法人やEY新日本は、コンサルティングの割合は少し穏やかになりますが、それでもこれだけの割合、アドバイザリーコンサルティング業務をしているという状況です。

つまり監査法人は非常にコンサルティングに強い会社ということです。

コトラ 村松:
監査法人はアドバイザリーと監査業務の2軸でビジネスを行っているということですか?

コトラ 宮崎:
そうですね、まさに2軸で行ってるということになっております。
「監査法人は会計士の人しか転職できない」と思われる方が多いですが、実は会計士ではなく、コンサルティングをやりたいという方にもチャンスがあります。
現在、会計士ではない方が監査法人にコンサルタントとして入社をする事例が増えていて、我々コトラとしても非常に多くご支援させていただいております。

監査法人アドバイザリー業務の売上推移について

コトラ 村松:
Big4監査法人のアドバイザリー業務は成長していると思いますが、具体的な売上推移について教えていただけますか?

04 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

コトラ 宮崎:
売上推移ですが、非常に成長をしてきています。
CAGR(年平均成長)でどれぐらい伸びているかというと、この数年で、トーマツに関しては毎年15%近く成長してきています。
他の組織においても確実に成長してきています。
そのため、Big4監査法人のアドバイザリー業務・コンサル業務は各社において成長ビジネスとなっています。

コンサル・FASも含めたBig4コンサルティングビジネス全体の売上推移

コトラ 村松:
コンサルやFASを含めたBig4のコンサルティングビジネス全体の売上推移はどうなっているのでしょうか?

05 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

コトラ 宮崎:
Big4グループがコンサルティングビジネスを非常に強化をしていて、グループ全体としても非常に伸びてきています。
この理由として、Big4グループでの連携を活かしてサービス提供しているということが挙げられます。

監査法人のビジネスは財務的な監査を行うことが入り口になっているため、財務監査の知見を活かして財務会計のコンサルを行っています。
監査法人は、監査や規則に関わる領域でコンサルをするだけではなく、グループの中にあるコンサルティング会社、FAS、税理士法人、弁護士法人など様々な法人があり、クライアントのニーズに応じるような形で組み合わせてサービスを提供しています。
このように、監査法人はワンストップサービスという形でコンサルティングサービスを提供しています。

以上のような特徴を持ちながら、Big4のコンサルティングビジネスは成長をしています。

コトラ 村松:
グループ単位でサービスを提供して、その中で連携を図っているのですね。

コトラ 宮崎:
実際は、各エンティティがかなり似通ったようなことをやっています。
それぞれの特徴として、FASであればM&Aや組織再編が得意であり、コンサルティングはITの大型プロジェクトが得意であり、監査法人であればルールやリスク・公共の政策立案を得意とします。
そこで、各エンティティがビジネスの各フェーズ、必要とされているところに適切なフォーメーションで課題解決に応じています。

グループ内のコンサルティングビジネスの割合

コトラ 村松:
グループ内で様々な事業が行われているというお話でしたが、その中でコンサルビジネスはどれくらいの割合を占めているのでしょうか?

06 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

コトラ 宮崎:
グループのコンサル収益の割合は、各グループごとに異なりますが、大体40%弱から60%弱ぐらいのウェイトになっています。
Big4グループの中でコンサルビジネスというのが非常に重要な存在になっているということですね。

コンサルビジネス以外の業務

コトラ 村松:
コンサルビジネス以外にはどのような業務があるのでしょうか?


コトラ 宮崎:
コンサルビジネス以外に関して言うと、やはり監査法人なので会計監査が代表として挙げられます。

また、会計の監査以外の部分では、いわゆる保証業務が行われています。
保証業務というのは、例えばサステナビリティの領域で、メーカーにおいてCO2の排出に関する計算が正しく行われているかということに対してお墨付きを与えるというような業務になります。

加えて、コンサル的ではありますが、プラットフォームの提供のようなことを行っています。
例えば、国から融資を受けて研究などを行っている様々な研究機関等に対して、これらの金銭の管理や報告を合理的に行うためのプラットフォームを作って提供するサービスを行っていたりします。
コンサルティングサービスの一環ですが、そういうプラットフォーマー的なビジネスというのを展開しています。

監査法人アドバイザリーのクライアント先の傾向

コトラ 村松:
Big4それぞれの違いとしてクライアント先が挙げられると思いますが、監査法人のアドバイザーとしてのクライアント先の傾向の違いなどはあるのでしょうか?


コトラ 宮崎:
次のスライドでは各社がどのような企業に会計監査を行っているかをまとめています。

07 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

各社強みや特徴があり、例えば銀行や証券会社は、メガバンクなども含めて、トーマツ・あずさ・新日本が抑えています。
PwCあらたも金融機関に対して会計監査を行っていますが、他業界も多く取り扱っています。
しかし、PwCあらたが金融業界に強みがない訳ではありません。

独立性の問題から、会計監査をしている企業に対してコンサルティングは難しくなっています。
裏を返せば、会計監査を行っていない企業に対してコンサルティングサービスを提供することができるということです。
そのためPwCは銀行・証券に関してコンサルティングに非常に強いという特徴があります。

他の業界に関しても同様であり、会計監査を行っているかどうかで、コンサルティングサービスを提供できる先が変わってきます。

コトラ 村松:
自分が転職するとなった時に、自分の業界の強みを生かせるというのは大きなポイントだと思いますが、その中でどの会社がどこに強いのかという点もしっかり押さえていかなければならないのですね。

コトラ 宮崎:
そういったところもポイントになりますね。
強みを活かせるかどうかという点は非常に繊細なところですので、色々ご相談をいただきながらご支援をさせていただけるといいのかなと思います。

監査法人アドバイザリーが強みを持つ業界について

コトラ 村松:
監査法人アドバイザリーが強みを持つ業界や業種についてはいかがお考えですか?

08 1 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

コトラ 宮崎:
一つは会計を専門とした監査法人であるため、財務会計の領域に非常に強みを持っています。
加えて、市場の中でのリスクなど、この分野も監査とかなり近いところがあります。

現在は「事業」「リスク管理」「監査」を「1線」「2線」「3線」と表現することがあり、監査は「3線」にあたります。
その3線に行くまでにリスク管理するという点で機能強化というものが昨今図られてきています。
リスク管理は最後の監査と非常に繋がりがあり、リスクマネジメントの領域や会社の中で内部監査のアドバイザリー領域を得意としてきています。

また、最近の大きな動きはサステナビリティの領域です。
サステナビリティの領域ももとは監査に近く、例えば、CO2の排出量の計測が正しいかどうかという点は監査に非常に近いと言えます。

要は会計監査ではなくて、非財務の監査、非財務情報と言われる領域の保証業務です。
もともと監査法人はこの保証業務を行っていますが、保証のためには開示が必要であり、開示するためには実行が必要で、実行するためには戦略が必要です。
現在、監査法人はサステナビリティ領域で保証から開示・実行・戦略と上流に遡る形で一気通貫でサービス提供を行っています。

加えて、ルールが非常に重要な業界やルールをつくるような業界を得意としています。
金融業界や公共公益のような規制的な業務、ルールを守る必要がある、あるいは作っていくといった業界に強みがあると言えます。ルール作りから中長期的に関与してビジネス化していくというところを監査法人は得意にしていると言えます。

コンサル・シンクタンクとの違い

コトラ 村松:
監査法人の強みは大体見えてきたのですが、シンクタンクやコンサルティング会社とどのような違いがあるのでしょうか?


コトラ 宮崎:
次のスライドは監査法人の強みを押し出す形でまとめているため、監査法人寄りの内容となっております。その前提で見ていただければと思います

09 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

監査法人はルール作りから実行支援まで幅広く、尚且つ時間軸でもかなり中長期的に入り込んでいます。
そのため、中長期視点というのは非常に強みにしています。

様々なビジネスに初期の頃から関わるため、ビジネス領域の幅もかなり広いです。
可能性のあるビジネスや発展しそうなビジネスであれば、初期の頃から入り込んでいきます。それができる理由として、監査収入という安定的な収入があるという点が非常に大きいです。

コンサルティング会社のビジネスはプロジェクトがあり、それが収益をもたらすというフロー的なビジネスです。
一方で、監査法人のビジネスでは監査で収益を得ますが、監査先が大きく変わることはないため、ストック型のビジネス的な要素がかなり強いです。
そのため、ある程度安定した収益により、新しい領域へ投資をしていくことができるという特徴があります。
中長期視点で様々なビジネスに幅広く関与していくところが監査法人の強みと言えます。

また、ビジネスの上流のみならず政策的なことにも関与し、「政府は、今後の社会に向けてこうあるべきだ。」「こんな課題があるから、解決の方向に向かわなければならない」というように、先駆的なことに対して監査法人が政策提言をすることもあります。
このようにシンクタンクにかなり近いことも行っています。
そのため、政策立案という、ある種超上流から仕事をするという特徴も持っています。
これはシンクタンクも非常に得意にしている分野ですが、実は監査法人のアドバイザリーも大変得意にしています。

一方で、コンサルプレゼンスについてはコンサルティングファームの方がまだまだ高いです。
監査法人でのコンサルビジネスの認知度を高めていく必要があると思います。

他にも、Big4監査法人グループはワンストップサービスを特徴としています。
顧客の課題が変化する中、多様なビジネスフェーズに応じたサービス提供できることがBig4監査法人グループの強みと言えます。

あとは、グローバルネットワークという点です。Big4はグローバルなネットワークをもっているため、新しいプラクティスを持ってくることができ、海外で開発されたサービスを日本に導入するようなことも行われています。実際に、海外のファームと連携してプロジェクトに当たることもあります。

年収と労働時間については、程よいバランスを保っており、十分高い水準にあります。
コンサルファームほど収益プレッシャーが強くないため、労働時間はそこまで長くはないですが、年収はコンサルと比べればマイルドになります。

最後に採用の多様性ですが、ビジネスの幅の広さを始め、採用の多様性は非常にあります。
20代から50代、場合によっては60代まで採用検討を実際にされており、コトラからも多様で幅広いプロファイルの方にご入社いただいています。

監査法人アドバイザリーのビジネス事例

コトラ 村松:
監査法人アドバイザリーは、確立していない新規ビジネスに力を入れているとのことでしたが、具体的にはどのようなビジネスがありますか?


コトラ 宮崎:
一つの例として、サステナビリティ領域が挙げられます。
サステナビリティ領域のビジネスはこの数年で、民間ビジネスとして花開きました。
監査法人は10年以上前から先駆的にこの領域でビジネスを行っていたため、非常に強みを持っています。

直近では、Web3のビジネス開発を行っています。
また、サステナビリティ領域の気候変動のテーマに次いで、生物多様性が注目されており、先んじて動きがあります。
その他に、人的資本の領域についても、注力を強化しています。
以上のように世の中の新しい動きは必ずキャッチしていると思います。

選考プロセスの違い

コトラ 村松:
実際に転職する際、選考プロセスの違いはあるでしょうか?


コトラ 宮崎:
選考プロセスは部署ごとに異なります。
Webテストやケース面接が実施される場合やない場合もあり、会社や部署、タイミングによっても異なります。
こうした点はマーケット情報を逐次キャッチしていなければ分からない点でもあるため、コトラにご相談いただく中で適切にご支援させていただければと思います。

Big4監査法人アドバイザリーの特長

コトラ 村松:
最後にまとめとして、Big4監査法人アドバイザリーの特長について教えていただけますか?

10 - Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

コトラ 宮崎:
1点目は市場のプロ組織であり、監査証明業務のみならず、コンサルティング業務も行っている点です。

2点目はビジネス構造から様々な強みを有しているという点です。
監査業務の収益が安定的であるため、それを活かしてアドバイザリーコンサルを強化できます。
現在、コンサル業務を成長ビジネスと位置づけて組織的に強化していく段階にあります。
監査法人という大きな組織の中でも、コンサルビジネスは新規事業開発的な側面を持っているため、ベンチャー企業のようなことを経験できるチャンスも大いにあります。

また、様々なビジネスに関わっているため、ポジションも極めて豊富にあります。
そのため、様々なバックグラウンドの方にチャンスがあり、この記事をご覧いただいている皆様にもチャンスがあります。

さらに、監査収益を投資に回せるため、ビジネスとして芽が出るまで時間がかかる内容にも先駆的に取り組むことができます。未来志向の分野に積極的であると言えます。

加えて、パブリックに関するルール作りの超上流への関与も非常に得意としています。
以前はシンクタンクが政策立案に深く関わっていましたが、現在は監査法人もかなり入り込んでいます。

その他にも、市場の信頼性にかかわる部分は監査法人のミッションであるため、関連するリスクマネジメント、内部監査・内部統制、コンプライアンスなどに関連する部分は非常に得意としています。

働き方について、労働時間が少ないという訳ではないですが、フロー型で業務にあたるため、一般的なコンサルティング会社に比べると労働時間もそこそこであり、報酬も見合った形になりやすいです。

3点目はワンストップサービスという点です。
監査・保証、コンサルティング会社、FAS、税務、法務などの機能の集合体としてワンストップサービスが提供できるのはBig4だけだと思います。

4点目はグローバルネットワークです。
これを活かして海外の情報を集める情報力、海外メンバーファームとのリレーションを活かしたサービス提供、人的リソースというところで強みを持っています。

最後に

Big4監査法人アドバイザリーについて、ご説明をさせていただきました。
この領域についてもっと詳しい情報を得たいという方は、是非コトラにご相談いただければと思います。

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この記事を書いた人

KOTORA JOURNAL | Big4監査法人アドバイザリービジネス/組織の分析と比較

宮崎達哉

信州大学工学部卒、ゼネコンでの施工管理者を経験した後、三重県庁にて産業政策の企画・運営業務に従事。県庁在籍中に、経済産業省資源エネルギー庁及びNEDOにてエネルギー政策に係る新規事業立案や規制・制度の合理化に従事。デロイトトーマツグループでの地方創生及び教育分野のコンサルティング業務を経て現職。
【担当業界 】ESG/サステナビリティ領域、シンクタンク、コンサルティングファーム、監査法人、パブリックセクター、教育、経営層、管理系人材、技術者