コトラ（広報チーム） 
中小企業診断士試験の概要
中小企業診断士とはどんな資格か
中小企業診断士は企業経営の専門家として認められる国家資格です。この資格を取得すると、中小企業の経営課題を分析し、解決策を提案するスキルを持つプロフェッショナルとして活動できます。経営コンサルタントとしての幅広い知識はもちろん、経営者とのコミュニケーションや実践的なサポート力も求められます。そのため「経営コンサルタントの登竜門」とも呼ばれる試験です。
1次試験と2次試験の違い
中小企業診断士試験は、1次試験と2次試験の2つのステージに分かれています。1次試験は主に多肢択一形式で試験が行われますが、2次試験は事例別の記述形式や口述試験が中心となります。具体的には、1次試験では広範囲な知識を問われ、7つの科目から出題されます。一方、2次試験では実際の経営課題を想定した事例問題に基づき、課題解決能力が問われます。このように、1次試験が知識重視であるのに対し、2次試験は実務的な応用力が求められる試験と言えます。
1次試験の構成と科目
1次試験は以下の7科目から構成されています：
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
これらの科目では、経営に関する基本から応用まで幅広く問われます。各科目60点以上を獲得すれば合格となり、科目合格制度を利用することで翌年および翌々年の試験免除が可能です。この特徴を活かして計画的に学習を進めることができます。
2次試験の詳細と試験内容
2次試験では、「組織・人事」「マーケティング・流通」「生産・技術」「財務・会計」の4つの事例問題が出題されます。これらは、架空の企業の経営課題を分析し、具体的な提案をする内容になっています。さらに、記述形式で試験が行われるため、単なる知識ではなく、問題解決の思考力や論理的な文章作成力が必要です。この試験のもう一つの特徴は口述試験がある点であり、記述試験合格者のみが受験資格を得ることができます。口述試験では、面接形式で経営課題に対する応答力が評価されます。
中小企業診断士試験は年に何度実施されるのか
1次試験と2次試験の実施頻度
中小企業診断士試験は、1年に1回実施される国家試験です。1次試験は通常毎年8月上旬に行われ、2次試験はその年の10月下旬に筆記試験、12月に口述試験が行われます。このように、1次試験と2次試験はそれぞれ異なる日程で実施されますが、いずれも年に1回の頻度で開催されることが特徴です。
試験の実施スケジュールと日程の概要
試験のスケジュールは事前にしっかり把握しておくことが重要です。例えば、令和7年度の場合、1次試験は8月2日（土曜日）と8月3日（日曜日）の2日間にわたって実施されます。一方、2次筆記試験は同年10月の第4日曜日に、口述試験は12月中旬に実施されるのが通常の流れです。また、受験申込受付が毎年春頃に行われるので、受験を計画している場合は早めの準備が必要です。このように、年間を通してスケジュールが組まれているため、受験計画は長期的な視点で立てることが求められます。
年に1回の試験が持つ意味
中小企業診断士試験が年に1回しか実施されないことには特別な意味があります。この頻度ゆえに、受験者は1回1回の試験に向けて慎重かつ計画的な準備をする必要があります。仮に試験に不合格だった場合、次回の挑戦は翌年まで待たなければなりません。したがって、特に独学で目指す方は、試験日から逆算してスケジュールを立て、効率的に学習を進めることが極めて重要です。ただし、1次試験には科目合格制度があるため、不合格でも一定の得点を取れば翌年以降に免除される科目もあります。この制度を上手く活用することで、負担を軽減しながら合格に近づくことができます。
受験に向けたスケジュールの立て方
効率的な学習計画を立てるには
中小企業診断士試験の合格を目指すには、効率的な学習計画が欠かせません。まず、1次試験と2次試験の特徴や試験日程を把握し、それに基づいて逆算でスケジュールを組むことが重要です。1次試験では7科目すべてを網羅する必要があるため、得意科目と苦手科目を事前に分析し、学習時間を効率的に配分する工夫が必要です。特に、初学者の場合は全体像を理解するために過去問を活用し、出題形式や傾向に慣れることを優先しましょう。日々の学習時間を確保するために、通勤時間や休憩時間などの隙間時間を有効活用することも効果的です。
1年以内に合格するための学習法
短期間での合格を目指す場合、綿密な計画を立て、一定の学習時間を確保することが必要です。中小企業診断士の資格取得には1000～1200時間の学習時間が推奨されており、これを1年間で消化するには、1日平均3時間、週20時間程度の学習を続ける必要があります。1次試験は多肢択一形式で7科目あるため、各科目の基本的な理論や知識のインプットに初期段階で集中し、後半は過去問演習を中心にアウトプットを強化します。また、2次試験の記述式対策も並行して取り組み、特に事例問題の解答力を高めることが重要です。学習を段階的に計画し、進捗を定期的に確認することで合格への道筋をしっかりと描きましょう。
科目合格制度を活用するメリット
中小企業診断士の1次試験では、科目合格制度が設けられており、1科目でも60%以上の得点を取得した場合、その科目は翌年と翌々年の試験が免除されます。この制度を活用することは、忙しい社会人にとって大きなメリットです。全科目を一度に合格する負担を軽減できるため、自分のペースで計画的に学習を進められます。例えば、1年目は得意な科目や重点的に学習したい科目をクリアし、2年目以降に残りの科目へ集中するという方法が有効です。また、この制度を利用することで心理的な負担が軽減し、合格に向けたモチベーション維持にもつながります。
複数年計画での挑戦も選択肢に
中小企業診断士試験の特性上、1年間で全科目を学習し、合格を目指すのは多忙な方には負担が大きい場合もあります。そのため、複数年計画を立てることも合理的な方法の一つです。例えば、1年目に1次試験の数科目を集中して対策し、確実に合格することで、翌年度の負担を減らします。2年目以降には残りの科目や2次試験対策に注力することが可能です。特に、業務や家庭の事情で学習時間が限られている場合、この方法は有効と言えます。試験は年に1回のみ実施されるため、無理のない学習計画を立てることが最終的な成功につながる鍵となります。
試験合格後のステップ
合格後に必要な実務経験とは
中小企業診断士試験に合格した後、資格を取得するためには「登録実務補習」または「実務従事」を通じて一定の実務経験を積む必要があります。この実務経験は、中小企業診断士としてのスキルを実際の企業支援活動で養うために設けられたものです。
「登録実務補習」は、中小企業診断協会が主催し、指導員のもとで中小企業の実際の課題に対するコンサルティングを行います。一方、「実務従事」は、自らが所属する職場や協会が提供するプロジェクトなどで実践的な活動を行うものです。これらは、合格後も中小企業診断士としての知識を現場で活用できる力を身につける絶好の機会です。
中小企業診断士としての登録プロセス
中小企業診断士試験に合格し、必要な実務経験を満たした後は、正式な登録手続きが必要です。登録の際には、日本国内の各地域に存在する中小企業診断協会に申請書類を提出します。申請書類には、実務経験を証明する書類や試験合格証書が含まれます。
また、登録手続きには一定の登録料が必要です。登録が承認されると、中小企業診断士として正式に活動を開始できるようになります。この登録プロセスを完了することで、診断業務を名乗る資格が正式に認められることとなります。
更新手続きと必要条件について
中小企業診断士の資格は5年ごとに更新が必要であり、「専門知識補充要件」と「実務要件」を満たす必要があります。「専門知識補充要件」とは、中小企業診断士としての知識を維持・補強するための研修受講を指します。年間一定時間、協会が指定する研修や講座を受講することが求められます。
一方、「実務要件」とは、資格を保有している期間中に実務に従事した経験の証明です。この実務活動がなければ資格の更新は難しくなります。更新手続きは、中小企業診断協会を通じて行われ、期限までに必要な書類や証明を整えることが重要です。
合格後のキャリアパスと可能性
中小企業診断士として登録した後のキャリアパスは多岐にわたります。まず、企業内診断士として自社の経営課題の解決に取り組む道があります。この場合、自らが所属する企業の強みや課題を把握し、内部でのコンサルティングに貢献することが期待されます。
また、独立し中小企業診断士として活躍するケースもあります。特に中小企業の経営サポートをメインとしたコンサルティング業務を行う独立診断士は、自らの独自性や専門性を生かした活動が可能です。また、自治体や公的機関が主催するプロジェクトに参画し、地域経済の発展を支援する道もあります。
さらに、中小企業診断士の資格を基盤に、マーケティングや財務、ITコンサルタントなど他の専門分野にキャリアを広げることもできます。この資格を持つことで得られる知識や人脈は、様々なビジネスチャンスを掴むきっかけとなるでしょう。
