コトラ（広報チーム） 
取締役の降格とは？基本的な定義と背景
取締役の役割とポジション
取締役は、会社経営の中核を担う重要な役割を果たします。取締役会の構成員として、会社の経営方針や重要事項を決定し、その実行を監督する責任があります。また、会社法に基づき登記された役職であり、その存在は法的に認められています。役職には、代表取締役や専務取締役、常務取締役など、実務的な役割に応じたポジションが設けられており、それぞれが重要な意思決定や業務遂行を担っています。
降格が発生する主な理由
取締役の降格が発生する理由にはさまざまな背景があります。一つは、業務目標の未達成や経営成績の悪化など、職務上の責任を全うできなかった場合です。もう一つの理由として、役員報酬の総額を削減するためのコスト管理の観点も挙げられます。また、取締役会の判断により会社全体の経営方針や組織改革の一環として降格が行われる場合もあります。
取締役と従業員の違いについて
取締役と従業員の違いは、その法的な地位と責任範囲にあります。取締役は会社法の規定に基づき選任され、意思決定に関与する者として法的責任を負います。一方、従業員は労働契約に基づいて業務を遂行し、使用者である会社に指揮命令権が存在します。取締役が降格することで、従業員としての立場に近づく場合もあり、その際の待遇や契約変更が問題となることも少なくありません。
法律上の取扱いと会社法の基本事項
取締役の降格に関する法律的な取扱いについては、会社法が基本となります。取締役の降格は一般的に、登記上の変更が伴う場合と伴わない場合があります。たとえば、常務取締役から平取締役への降格は登記が必要ですが、執行役員などの名称で活動する場合には登記が不要とされることもあります。また、降格による報酬の変更や役職の変更が適法であるためには、取締役会や株主総会での適切な手続きと本人の同意が必要です。これらのプロセスを怠ると、後々法的トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
取締役の降格で知っておくべき法律上のポイント
登記が必要となる場合について
取締役の降格に際しては、役職の変更が法務局への登記義務に該当するかを確認する必要があります。例えば、常務取締役から平取締役への降格の場合は、役職変更に伴う情報の更新として登記が必要です。一方、執行役員などの法的に登録義務のない役職に移行する場合、登記変更は不要です。しかし、不備がある場合、法的問題が発生する可能性もあるため、法務局や専門家への確認を行うことが重要です。
降格に伴う契約変更と同意の重要性
取締役の降格に際しては、契約内容に影響を及ぼすケースが多いため、該当取締役の同意を得ることが求められます。特に、降格が役員契約の終了や雇用契約への切り替えを伴う場合は、契約内容の変更を明文化し、双方の合意をきちんと取り交わすことが必要です。同意がないまま一方的に降格を行うと、法的紛争に発展するリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
降格による報酬減額のルール
降格に伴い報酬が減額される場合は、その適法性と適切な手続きがポイントになります。取締役の報酬は、株主総会の決議または定款の規定に基づいて決定されるため、降格による報酬変更がこれらの範囲内で行われるかを確認する必要があります。また、報酬減額が不当に過大である場合、トラブルの元となる可能性が高いため、合理的かつ客観的な基準に基づいて措置を取ることが重要です。
適法な手続きと違法性が指摘されるケース
取締役の降格を実施する際には、適法な手続きを踏まなければなりません。会社法では、取締役の選任や解任は株主総会の決議事項とされていますが、降格については役員間の決議や就業規則に基づく規定が採用される場合があります。一方、同意なき降格や降格理由が懲戒処分として適切でない場合、違法と判断される可能性があります。降格を適法な範囲で行うためには、会社規程や手続きの整備が極めて重要です。
取締役の降格における手続きの流れ
取締役会による決議と手続き
取締役が降格される際には、まず取締役会での決議が必要です。これは会社法に基づく手段であり、特に役付取締役（例: 常務取締役）を平取締役へ変更する場合に重要なステップとなります。取締役会では、降格の理由が正当であり、会社運営に必要な措置であることが説明される必要があります。その理由には、業務の未達成や役員報酬の削減といった経営上の課題が挙げられることが一般的です。この段階では、就業規則や定款の内容を確認し、手続きが適法であることを徹底することが求められます。
株主総会での対応方法
取締役の選任や解任と同様、降格が会社全体の意思決定事項として株主総会での承認を必要とする場合があります。特に、役員の変更が登記事項に該当する場合は、株主総会の決議が重要な法的手続きとなります。この場では、株主に対して降格の理由や背景を説明し、賛同を得る努力が必要です。透明性のある説明を行うことで、株主からの信頼を失わずに降格手続きを進めることが可能となります。
会社内部での周知と説明の重要性
取締役が降格される際、社内での適切なコミュニケーションが欠かせません。降格される本人だけではなく、他の役員や社員にもその背景や意図を明確に伝えることが必要です。特に、降格が組織変更や業務改善の一環である場合、その意義を全社的に理解してもらう努力が求められます。周知不足や説明の不備は、社内の混乱や降格人事に対する不信感を生み出す原因となりますので、丁寧な説明と対話が鍵となります。
関連する書類作成と届出の流れ
取締役の降格によって役付取締役から平取締役に変更される場合、法務局への登記変更が必要となります。そのためには、取締役会や株主総会での決議を基にした議事録の作成を始めとして、必要な書類を漏れなく準備することが重要です。また、執行役員への降格など登記に関わらない場合でも、社内での役職名や役員報酬の変更に関する契約書などを適切に整備しなければなりません。そして、変更内容を各所に正確に届出ることで、法的トラブルを未然に防ぐことが可能です。
降格後の対応と新たな役割の明確化
降格後のキャリアサポートとフォロー
取締役が降格された後、会社が適切なキャリアサポートを提供することは極めて重要です。降格による役割や立場の変化は、本人にとって心理的な負担にもなりかねません。そのため、降格後も引き続き活躍できる環境を整えることが必要です。具体的には、新しい役職における目標や期待値を明確にすること、さらには必要なスキルや能力を向上させるための研修や教育プログラムを提供することが挙げられます。これにより、降格された個人がモチベーションを維持しつつ、会社全体に対する貢献を続けることが期待できます。
役職変更後の業務分掌と責任範囲
降格後の業務分掌と責任範囲を明確にすることは、組織運営において不可欠です。例えば、「常務取締役」から「執行役員」や「社員兼務取締役」に降格する場合、新たな役職における具体的な業務内容を明瞭にしたうえで、本人に共有することが必要です。特に、取締役の降格に伴う責任の変化や業務の範囲を曖昧にしないように注意することで、本人の混乱を防ぐと同時に、社内での役割分担もスムーズに進むことが期待されます。このプロセスにおいては、社内の就業規則や職務記述書を基に、明確な役割を定義することがポイントです。
降格に伴うモチベーション管理のポイント
降格は被降格者のモチベーション低下につながりやすいため、慎重な対応が求められます。特に、役付取締役が降格する場合、自身の貢献が十分に評価されていないと感じることもあり得ます。このような状況を防ぐために、降格の理由や背景を明確に説明すると同時に、これまでの貢献をしっかりと評価し感謝を伝えることが重要です。また、定期的なコミュニケーションを行い、降格後の役割における達成感や充実感を感じられるような環境づくりを進める必要があります。本人の意見を積極的に取り入れる姿勢も、モチベーション管理において効果的です。
組織内での公平性と透明性の確保
取締役の降格が公正かつ透明なプロセスで行われることは、組織全体の信頼性向上につながります。特に、降格が業務未達成や報酬削減を目的とした場合、他の社員や役員から不公平と感じられないよう、客観的かつ合理的な判断基準を用いる必要があります。そのためには、降格に関する決定が取締役会または株主総会で適切な議論を経ていることを示し、就業規則や会社法に基づいた手続きを実施していることを社内に対して示すことが重要です。さらに、降格時の説明の場では、具体的な理由や今後の改善策を示すことで、透明性を確保し、組織内の一体感を維持することが望ましいです。
まとめ：降格を円滑に進めるためのポイント
適法な手続きと社員の信頼構築
取締役の降格を実施する際に最も重要なのは、法律に基づいた適正な手続きを行うことです。取締役会や株主総会での正式な決議、関連書類の作成、必要な場合は登記変更といったプロセスを丁寧に進めることで、会社としての信頼性を保つことができます。また、降格対象者への十分な説明と納得を得る努力も欠かせません。これにより、降格が必要だという背景や合理性を明確にし、社員全体の信頼を維持することが可能となります。
会社全体のために必要な施策としての捉え方
降格は対象者本人だけでなく、会社全体の業務運営や人間関係に影響を与える可能性があります。そのため、会社として降格をどう位置付けるのかが重要です。降格は単なる懲戒措置ではなく、場合によっては組織体制の見直しや経営改善を目的とした施策であることを明確にすることで、社員からの理解を得やすくなります。適切なポジションで能力を発揮してもらうための措置であると捉えさせることが組織の健全な運営に寄与します。
降格後の組織運営と長期的視野の重要性
降格後の本人や組織に対するフォローアップも長期的な視点で考えるべきです。降格した取締役が新たな役割で活躍できる環境を整えることは、会社全体のパフォーマンス向上に繋がります。また、降格の決定が公平で透明性のあるプロセスに基づいて実施されたことを周囲に示すことで、組織内の信頼関係を損なわないよう配慮する必要があります。最終的には、取締役に限らず社員全体が会社のビジョンを共有し、自らの役割を認識して働ける環境を目指すべきでしょう。
