【最新】AMLとは?マネロン対策の基本と実務

AMLの基礎知識

AMLは、Anti-Money Launderingの略称であり、犯罪によって得られた資金の出所を隠す行為を防ぐための取り組みです。日本語では「マネー・ローンダリング対策」や「資金洗浄対策」と呼ばれます。

金融機関だけでなく、決済サービス、暗号資産交換業、宅地建物取引業、貴金属販売業など、犯罪収益が利用されるおそれのある事業者にも、顧客確認や取引の確認が求められます。AMLは法令対応にとどまらず、事業の信頼性を守るための重要な管理業務です。

AMLが必要とされる背景

犯罪収益は、そのままでは犯罪との関係が疑われやすいため、複数の取引や他人名義の口座などを使って資金の流れを分かりにくくされることがあります。このような行為がマネー・ローンダリングです。

資金洗浄が行われると、詐欺、違法薬物取引、横領、汚職、テロ行為などで得られた資金が、正当な経済活動の中に入り込むおそれがあります。事業者が不正利用の受け皿にならないためにも、取引相手や資金の流れを適切に確認する必要があります。

マネーロンダリングの仕組み

マネー・ローンダリングは、一般に次のような段階を経て行われると考えられています。

  • 不正に得た資金を口座、決済サービス、店舗取引などへ入れる段階
  • 複数回の送金、換金、投資、売買などを通じて資金の経路を複雑にする段階
  • 不動産や事業、金融商品などを通じて、正当な資金であるように見せかける段階

実際には、これらの段階が明確に分かれるとは限りません。少額の入出金を繰り返す方法、他人名義の口座を使う方法、海外送金を組み合わせる方法など、手口はさまざまです。そのため、単発の取引だけでなく、顧客の取引全体を継続して確認する視点が重要です。

AMLの対象となる事業者と取引

日本では、犯罪収益移転防止法により、一定の事業者を「特定事業者」として定め、取引時確認や記録保存などを求めています。対象には、銀行などの金融機関、保険会社、クレジットカード事業者、資金移動業者、暗号資産交換業者、宅地建物取引業者、貴金属等取引事業者などが含まれます。

対象となる取引は事業の種類によって異なりますが、口座開設、一定額を超える現金取引、送金、資産の売買、継続的な契約の締結などが代表例です。自社が対象事業者に当たるか、どの取引で確認が必要となるかを、法令や監督官庁の案内に基づいて整理することが必要です。

AML違反で生じるリスク

AML対策が不十分な場合、法令違反による行政処分、業務改善命令、刑事罰の対象となるリスクがあります。確認記録や取引記録の不備、疑わしい取引の届出漏れ、管理体制の不足などが問題となる可能性があります。

また、直接的な処分がなくても、不正取引に利用された事実が判明すれば、取引先や利用者からの信頼を失いかねません。風評被害、取引停止、追加の調査対応、システム改修など、事業運営への影響も大きくなります。

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AML・CFT・KYCの違い

AMLに関連する用語として、CFT、KYC、eKYCがあります。それぞれの役割を整理すると、必要な対策や業務の範囲を理解しやすくなります。

AMLとCFTの関係

CFTは、Countering the Financing of Terrorismの略称であり、テロ資金供与対策を指します。AMLが犯罪収益を洗浄する行為への対策であるのに対し、CFTはテロ行為に使われる資金の提供や移転を防ぐ取り組みです。

テロ資金は必ずしも犯罪によって得られた資金とは限りません。正当な資金であっても、テロ活動に使われるおそれがあります。このため、事業者には、犯罪収益の流入を防ぐAMLと、テロへの資金供与を防ぐCFTを一体的に進めることが求められます。

KYCが担う本人確認の役割

KYCは、Know Your Customerの略称であり、顧客を知るための確認を意味します。一般には、口座開設や契約時に行う本人確認、事業内容の確認、取引目的の確認などを指します。

KYCの目的は、単に身分証明書を確認することではありません。顧客が誰なのか、どのような目的でサービスを利用するのか、実際に利益を得る人は誰なのかを把握し、不正利用の可能性を評価することが重要です。

法人取引では、法人名や所在地だけでなく、取引を担当する人の権限、事業内容、実質的支配者などの確認が必要になる場合があります。

eKYCによるオンライン本人確認

eKYCは、電子的な方法で行う本人確認です。オンラインでサービスを提供する事業者では、本人確認書類の画像、本人の顔画像、本人確認書類の読み取り情報などを用い、対面せずに本人確認を行う方法が活用されています。

eKYCには、申込者の利便性を高め、確認手続きを迅速化できる利点があります。一方で、他人になりすます行為、偽造書類、画像の不正利用などへの対策が欠かせません。法令上認められた確認方法を選び、撮影時の不正防止、書類の有効性確認、必要に応じた追加確認を行うことが求められます。

取引時確認と継続的な顧客管理

取引時確認は、契約や取引の開始時点で行う確認です。しかし、確認は一度行えば終わりではありません。顧客の住所、代表者、事業内容、取引目的などは変わる可能性があります。

継続的な顧客管理では、取引状況を確認し、顧客情報を必要に応じて更新します。取引内容が申告された目的と異なる場合や、以前よりリスクが高まった場合には、追加の情報収集や確認を行います。こうした継続確認が、長期間にわたる不正利用の発見につながります。

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日本におけるAML対策のルール

日本のAML対策は、犯罪収益移転防止法を中心に、各業界の規制や監督指針によって運用されています。対象事業者は、自社の業態に応じた法令上の義務と、監督官庁が示す対応方針を確認する必要があります。

犯罪収益移転防止法の概要

犯罪収益移転防止法は、犯罪収益の移転防止を目的とする法律です。特定事業者に対し、一定の取引における取引時確認、確認記録と取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出などを求めています。

取引時確認では、個人の場合は氏名、住所、生年月日など、法人の場合は名称、本店所在地、事業内容、取引を担当する人、実質的支配者などを確認します。また、取引目的や職業・事業内容の確認が必要となる場合もあります。

確認記録や取引記録は、法令で定められた期間の保存が必要です。保存対象や保存期間は取引の種類などによって確認が必要ですが、記録を後から確認できる状態で整備することが基本となります。

金融庁のマネロン・テロ資金供与対策ガイドライン

金融庁は、金融機関などに向けて、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策に関するガイドラインを示しています。このガイドラインでは、経営陣の関与、全社的なリスク管理、顧客管理、取引の監視、疑わしい取引の届出、研修、内部監査などを含む管理態勢の整備が重視されています。

金融機関には、形式的に本人確認を行うだけではなく、自社の商品、顧客、取引経路、対象国・地域などのリスクを把握し、対策の強さを調整することが求められます。

リスクベース・アプローチの考え方

リスクベース・アプローチとは、すべての顧客や取引を同じ水準で扱うのではなく、リスクの高低に応じて確認や監視の程度を変える考え方です。

たとえば、取引の目的が明確で取引内容も安定している顧客と、高額な海外送金を短期間に繰り返す顧客では、確認すべき内容や監視頻度が異なります。リスクが高いと判断される場合には、追加書類の提出、資金源の確認、取引の承認手続きの強化などを検討します。

ただし、特定の属性だけを理由に一律で取引を制限するのではなく、客観的な情報に基づいて個別に判断することが重要です。

事業者に求められる管理体制

AML対策は、現場の担当者だけに任せる業務ではありません。経営層が対応方針を定め、責任者と担当部門の役割を明確にし、必要な人員やシステムを確保することが必要です。

管理体制では、少なくとも次のような要素を整備します。

  • 自社の商品、顧客、取引、国や地域に関するリスク評価
  • 顧客確認と取引監視に関する社内規程
  • 疑わしい取引を確認し、届出を判断する手順
  • 従業員向けの教育と相談窓口
  • 独立した立場による点検や内部監査
  • 法令改正や新たな手口に対応するための定期的な見直し

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AML対策の実務フロー

AML対策は、顧客の確認から取引の継続監視、疑わしい取引の届出、記録保存まで、一連の流れとして運用します。どこか一つだけを強化しても、不正利用を防ぐことは困難です。

顧客情報の収集と本人確認

最初の段階では、取引の相手が誰であるかを確認します。個人では本人確認書類などにより氏名、住所、生年月日を確認し、法人では法人情報、取引担当者、実質的支配者などを確認します。

あわせて、取引目的、職業や事業内容、想定される取引規模などを把握します。必要な情報を収集しておくことで、後から取引内容に不自然な点が生じた際に比較しやすくなります。

顧客・取引のリスク評価

収集した情報を基に、顧客や取引のリスクを評価します。評価では、取引金額、取引頻度、取引目的、利用する商品やサービス、海外との関係、顧客の事業内容などを確認します。

リスク評価は、低・中・高などの区分に整理すると運用しやすくなります。高いリスクが見込まれる顧客や取引には、追加の本人確認、資金源の確認、管理者による承認、監視頻度の引き上げなどを行います。

取引モニタリングによる異常の検知

取引開始後は、取引内容を継続して確認します。取引モニタリングでは、事前に設定した条件や過去の取引傾向と比較し、不自然な入出金、急激な取引額の増加、通常と異なる送金先などを抽出します。

抽出した取引がすべて問題とは限りません。顧客の事業拡大、季節的な売上変動、一時的な資金需要など、合理的な理由がある場合もあります。そのため、検知後は顧客情報や取引の背景を確認し、必要に応じて追加調査を行います。

疑わしい取引の確認と届出

取引内容に合理的な説明が得られない場合や、犯罪収益に関係する疑いがある場合には、疑わしい取引として確認します。確認では、取引履歴、顧客情報、提出書類、担当者とのやり取りなどを総合的に確認します。

疑わしいと判断した場合、特定事業者は所管する行政庁に疑わしい取引の届出を行います。届出の判断では、単一の条件だけで結論を出すのではなく、取引全体の不自然さや顧客の説明内容を踏まえることが重要です。

届出の有無や検討内容は、必要な担当者に限定して取り扱う必要があります。顧客に対して届出の事実や検討状況を伝えることは、調査を妨げるおそれがあるため適切ではありません。

記録の保存と定期的な見直し

本人確認の記録、取引記録、リスク評価の根拠、疑わしい取引に関する確認内容などは、定められたルールに従って保存します。記録が不十分であると、監査や当局対応の際に、適切な確認を行ったことを説明できません。

また、社内規程や監視条件は、一度作成して終わりではありません。法令改正、新たな不正手口、取引量の変化、システム変更などに応じて、定期的に見直すことが必要です。

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疑わしい取引を見つけるための着眼点

疑わしい取引の判断では、特定の取引パターンだけに頼るのではなく、顧客属性、取引目的、資金の流れ、過去の利用状況を組み合わせて確認します。以下は、確認を深めるきっかけとなる代表的な着眼点です。

顧客属性と取引内容の不一致

顧客が申告した職業、事業内容、収入規模、取引目的などと、実際の取引内容が一致しない場合は注意が必要です。たとえば、通常想定されないほど高額な取引や、説明された事業と関係の薄い取引が続く場合には、背景を確認します。

法人の場合は、設立間もないにもかかわらず大きな資金移動がある、事業内容に比べて取引額が著しく大きいといった点も確認対象となります。

高額・頻繁・複雑な取引

高額な取引そのものが問題とは限りません。しかし、取引目的や資金源が明確でない高額取引、短期間に集中する取引、複数の口座や関係者を経由する複雑な取引には注意が必要です。

特に、経済的な合理性が見えにくい送金や売買が繰り返される場合は、資金の流れを分かりにくくする意図がないかを確認します。

短期間で繰り返される入出金

入金後すぐに同額または近い金額が送金・出金される取引や、少額の入出金を短期間に繰り返す取引は、資金を移転させるために利用されている可能性があります。

ただし、事業上の通常の資金決済である場合もあります。取引の相手方、資金の使途、過去の利用傾向、顧客の説明などを確認し、不自然さがないかを判断します。

特定の国や地域に関わる取引

マネー・ローンダリングやテロ資金供与のリスクが高いとされる国や地域に関係する取引では、通常より慎重な確認が必要となる場合があります。海外送金では、送金先、受取人、送金目的、資金源、取引の必要性などを確認します。

国や地域に関するリスクは固定的ではありません。公的機関が公表する情報や、自社の取引実態を踏まえて、定期的に評価を見直すことが重要です。

本人確認を避けようとする行動

本人確認書類の提出を繰り返し拒む、説明が不自然に変わる、取引を急がせる、第三者名義の利用を求めるなど、本人確認を避けようとする行動にも注意が必要です。

確認に協力しないことだけで直ちに不正と決めつけることはできませんが、他の不自然な事情と重なる場合には、取引の実行可否を慎重に判断し、必要に応じて追加確認を行います。

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AML対策を運用する際の課題と改善策

AML対策では、確認業務の増加や監視精度の確保など、多くの事業者が共通の課題を抱えています。業務量だけでなく、判断の品質や情報管理にも目を向けて改善を進めることが重要です。

人手による確認業務の負担

本人確認、書類確認、取引内容の調査、アラートの確認などを人手だけで行うと、取引件数の増加に伴って担当者の負担が大きくなります。確認の遅れは、顧客の利便性低下や不正取引への対応遅延にもつながります。

改善策としては、確認項目の標準化、顧客リスクに応じた確認の優先順位付け、書類の読み取りや記録作成の自動化などが有効です。ただし、自動化しても最終的な判断が必要な場面はあるため、担当者が確認すべき業務を明確にします。

誤検知と見逃しのバランス

監視条件を厳しくしすぎると、問題のない取引まで大量に検知され、担当者が本当に確認すべき取引を見落とすおそれがあります。一方で、条件を緩くしすぎれば、不正の兆候を見逃す可能性が高まります。

このバランスを取るためには、検知結果を定期的に分析し、不要なアラートが多い条件を見直すことが必要です。顧客層や取引特性に応じて条件を調整し、確認結果を次のルール改善に生かします。

部門間での情報共有

AML対策には、営業、顧客対応、審査、法務、コンプライアンス、システムなど、複数部門が関わります。部門ごとに情報が分かれていると、顧客の利用実態や懸念点を十分に把握できません。

顧客情報、取引状況、問い合わせ内容、確認の経緯などを、必要な範囲で共有できる仕組みを整えることが重要です。その際は、個人情報や機密情報を扱うため、閲覧権限や利用目的を明確にし、過剰な共有を防ぐ必要があります。

従業員教育と内部けん制

どれほど規程やシステムを整備しても、従業員が不正の兆候に気付けなければ、適切な対応はできません。特に顧客と接する担当者には、本人確認の重要性、確認を深めるべき場面、相談先、情報の取扱方法を理解してもらう必要があります。

教育は一度きりではなく、担当業務や役職に応じて継続的に実施します。また、営業目標を優先するあまり確認手続きが形骸化しないよう、現場から独立した確認部門や内部監査によるけん制を機能させることが重要です。

AI・システムを活用した監視業務の効率化

AIや監視システムは、多数の取引を横断的に分析し、通常と異なる傾向を見つけるために役立ちます。たとえば、過去の取引パターンとの違い、複数口座間の資金移動、取引相手のつながりなどを確認し、優先的に調査すべき取引を絞り込むことができます。

ただし、AIやシステムの判断をそのまま採用するのではなく、検知理由を担当者が確認できる状態にすることが必要です。利用するデータの品質、判断基準の妥当性、個人情報の管理、定期的な性能評価を行い、人による確認と組み合わせて運用することが、実効性のあるAML対策につながります。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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