カルビーが推進する女性活躍の背景
少子化と人手不足が企業に与えた影響
日本全体で少子化と高齢化が進む中、多くの企業では深刻な人手不足に直面しています。カルビーも例外ではなく、持続可能な成長を実現するためには新たな人材を効率的に活用することが求められていました。その中で注目されたのが、女性社員の潜在的な能力の活用です。これまで活躍の場が制限されていた女性社員に焦点を当てることで、労働力不足の解消だけでなく、多様な視点を経営に取り入れることが可能になると考えられました。
ダイバーシティ委員会発足のきっかけ
カルビーでは、2010年に松本晃会長の指示のもと、ダイバーシティ委員会が発足しました。この背景には、持続可能な事業成長を達成するために、組織として多様性を受け入れる必要性が強く意識されたことがあります。特に、女性の活躍を経営戦略に取り入れることが社会的課題の解決だけでなく、経営そのものの競争力を高める施策として位置づけられました。数値目標を設定し、進捗を可視化することで実現可能なプランを進めたことが、具体的な成果に繋がっています。
女性活躍推進を経営戦略に取り入れた理由
カルビーが女性活躍推進を経営戦略に取り入れた背景には、ダイバーシティが企業の成長に直結するという明確なビジョンがあります。女性役員や管理職の登用を進めることで、従来の組織体制に革新をもたらし、新たな価値を生み出すことを目指しました。実際に、数値目標を達成するたびに組織の活力が向上し、売上高にも良い影響が表れています。カルビーにとって、女性の意見や視点を積極的に取り入れることは、単なる社会貢献に留まらず、企業価値を高める重要な柱の一つとなっています。
女性執行役員が生まれる現場の変革
女性工場長や役員が誕生するまでの歩み
カルビー株式会社では、女性が経営に携わる道を開拓するための多様な取り組みが行われてきました。2010年に発足したダイバーシティ委員会をきっかけとして、女性の登用を企業成長の重要な柱と位置づけ、女性管理職比率を段階的に引き上げる目標が掲げられました。この背景には、少子化や人手不足の問題があり、女性の意見を組織運営に反映させることが不可欠との考えがありました。
具体的には、管理職候補者の育成を目的に「人財マップ」を活用し、各工場や事業部門ごとに女性のキャリア進捗を可視化した計画を策定しました。その結果として、2022年には生産部門で6名の女性管理職が誕生し、企業全体では女性管理職の数が20人に達しました。また、役員レベルにおいても、鎌田由美子上級執行役員をはじめとする優秀な女性が登用されています。
フレックスタイムと時短勤務の取り組み
カルビーでは、女性が現場で活躍するための環境整備にも積極的に取り組んでいます。その一例として、フレックスタイム制度や時短勤務が導入され、育児や介護と仕事の両立がしやすい体制を整えています。この制度は、業務の柔軟性を確保し、特に女性社員が家庭とキャリアを同時に充実させられる仕組みとして評価されています。
さらに、乳がんの闘病を経験しながらも管理職として業務を遂行した武田雅子執行役員のような事例もあり、この制度が多様な働き方を支える基盤となっていることが示されています。これらの取り組みは、働くすべての社員にとってのロールモデルとなり、企業全体の生産性向上にも寄与しています。
現場における啓発活動とリーダー育成
女性が管理職や執行役員として活躍するには、制度だけでなく、意識改革が重要です。カルビーでは現場レベルでの啓発活動を強化し、ダイバーシティの理解促進と価値観の共有に努めています。その具体例として、女性社員向けのメンタリングやキャリアカウンセリングが挙げられます。従業員がキャリアカウンセリングの資格を取得し、社内での相談窓口として活躍するような取り組みも進められています。
さらに、リーダーシップ能力を開発するための研修プログラムやフォーラムが定期的に実施されています。ダイバーシティフォーラムでは、女性管理職の実例を取り上げ、社内外からの関心を集めることで、企業文化の変革を後押ししています。このような草の根活動が、女性執行役員や工場長が現れる土壌を育んでいると言えます。
成果を上げたカルビーのダイバーシティ戦略
売上・利益向上と女性活躍の直接的な関係
カルビー株式会社では、女性役員や女性管理職の活躍を推進するダイバーシティ戦略が、企業成長に直結した重要な要因となっています。例えば、女性管理職比率が2011年の7.9%から2022年には30%に達するなど、目覚ましい成果を挙げています。このような女性リーダーの増加により、意思決定に女性の視点が加わり、それが商品開発やマーケティング戦略に活かされています。特に、女性顧客のニーズを反映したヒット商品の開発が売上増加につながっており、この点がダイバーシティの実現と業績向上の直接的な関係性を示しています。
ダイバーシティフォーラムが果たす役割
カルビーでは、女性活躍の推進を全社で共有するために「ダイバーシティフォーラム」を実施しています。このフォーラムは、女性役員をはじめとした従業員が一堂に会し、取り組みの成果や課題を共有する場として機能しています。また、こうした場を通じて、より多くの従業員がダイバーシティの意義を理解し、現場での具体的なアクションへと結びつけています。このフォーラムは、全社的な連携を強化し、カルビー全体で多様性を推進するための重要なイベントとなっています。
草の根活動の意義とその影響力
カルビーのダイバーシティ戦略はトップダウンだけでなく、草の根レベルの活動も重要な要素となっています。例えば、工場や事業部ごとに行われる啓発プログラムやリーダー育成計画は、現場の女性従業員のキャリアアップを支援しています。また、社員自身がダイバーシティの価値を意識し、自ら次世代のリーダーシップを考える機会を創出しています。このような活動は社員の士気を向上させ、企業文化を多様性に富んだものへと変える力を持っています。その結果、女性役員の増加や女性従業員の能力が最大限発揮される職場環境が実現しています。
未来に向けた課題とカルビーの挑戦
執行役員比率30%の裏にある課題
カルビーは女性役員の比率を2020年に30%まで引き上げるという目標を掲げ、着実に結果を形にしてきました。しかし、その成功の裏にはまだ解決すべき課題があります。一つは、特定部署や役職に女性が偏りがちな状況です。一部の部門では引き続き女性の登用が活発化していないケースがあり、これが組織全体のバランスに影響を与えています。また、管理職を目指す女性社員がキャリアを開花させるまでに必要な業務経験や研修が不足している点も課題と言えます。同時に、女性役員が増加したことで初めて見えてきた新たな課題、例えば、家庭と仕事の両立支援をさらに強化する必要性などが浮き彫りとなっています。
さらなる女性活躍のための次世代育成
今後、カルビーがより多くの女性役員を生み出すためには、次世代の育成プログラムを進化させる必要があります。同社では既に人財マップを活用し、多様な候補者の可視化を推進していますが、これをさらに深いレベルで強化していく方針です。具体的には、各部署で必要とされるスキルの明確化やキャリア形成支援の枠組みを拡充し、目標に向けて徹底的なサポートを行うとされています。また、現場でのロールモデルの存在が後進の育成に大きく寄与するため、女性役員や管理職が積極的に経験をシェアする場を作ることも重要です。こうした取り組みは、単に数値向上を目指すものではなく、女性活躍を企業文化として定着させることを目的としています。
企業文化の変革と男性社員の意識改革
カルビーがダイバーシティをさらに進化させるためには、企業文化全体の変革と男性社員の意識改革も必要不可欠です。これまでの取り組みも含め、女性活躍を支援する制度を導入するだけでなく、その価値を全社員が共有できる環境を作り上げることが求められます。具体的には、管理職となる男性社員に対するアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に関する研修や、男女問わず家事・育児と仕事を両立しやすい職場づくりに向けたプロジェクトの推進などが注目されています。また、女性活躍は組織全体の生産性向上やクリエイティビティを高める重要な要素であることを、データに基づいて啓発していくことも必要です。このような取り組みを通じて、男性社員が女性活躍に積極的に協力する風土を醸成し、真のダイバーシティ経営を実現していくことが、カルビーの次なる挑戦と言えるでしょう。