えるぼし認定の概要と目的
えるぼし認定とは、女性が活躍できる職場環境を整えた企業へ厚生労働大臣が与える認定制度です。この認定は、女性活躍推進法に基づき、採用から継続就業、管理職登用に至るまで、企業の取り組みを総合的に評価するものです。以下では、その概要や目的、さらに認定基準の詳細やメリットについて説明します。
女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法は、2016年に施行された法律で、女性がその能力を最大限活かせる環境を整えるために策定されました。この法律では、企業に対し女性の採用や管理職への登用を推進する具体的な行動計画の策定が義務付けられています。また、女性が長期的に働きやすい環境を整備し、性別にとらわれない平等な職場環境を目指すことを目的としています。
えるぼし認定の目的と背景
えるぼし認定は、企業が女性のキャリア形成を支援する取り組みを行う中で、特に優れた成果をあげた場合に与えられるものです。その背景には、働き手としての女性の能力を引き出し、企業と社会全体の発展につなげるという目的があります。政府は、2003年から「女性管理職比率30%」を目標に掲げていますが、2020年時点での達成率は7.5%に留まっており、依然として大きな課題が存在します。
認定の3つの等級とその要件
えるぼし認定には、企業の女性活躍推進の取り組みレベルに応じて、「1段階目(1つ星)」「2段階目(2つ星)」「3段階目(3つ星)」の3つの等級が設定されています。等級は、採用や労働時間、管理職比率、多様なキャリアコースなど、5項目の基準の達成数に基づいて決定されます。基準を多く満たすほど高い段階の認定が取得可能で、特に「3つ星」の認定は女性管理職の積極的な登用など高度な取り組みを象徴しています。
認定により得られるメリット
えるぼし認定を取得することで、企業にはさまざまなメリットがあります。その一例として、「えるぼし」のロゴマークを使用できる点が挙げられます。これにより、企業ブランドの向上につながり、女性求職者からの注目を集めるほか、取引先企業との信頼性を高める効果が期待されます。また、公共調達や入札の際に加点評価を受けられることも企業にとって大きな利点です。さらに、認定取得が社内の士気向上や社員満足度の向上にも寄与するポイントとして注目されています。
女性の採用とえるぼし認定
採用基準に求められるポイント
えるぼし認定を取得するためには、採用基準において女性の雇用促進を重視した取り組みが求められます。特に、採用者全体に占める女性の割合や、選考プロセスのグenderバイアスを排除する施策が重要です。たとえば、求人情報や採用説明会で「男女平等な採用」を積極的にアピールすることは、えるぼし認定の要件を満たすための有効な手段です。また、採用時に職種やポジションの選択肢を固定化せず、女性が自らのキャリアビジョンに基づいて適切なポジションに挑戦できる仕組みを整えることも大切です。
採用における男女平等とその実現方法
男女平等な採用を実現するためには、まず企業の採用方針やプロセスにおけるアンコンシャス・バイアス(無意識的な偏見)を取り除く必要があります。そのための具体策として、採用担当者向けのトレーニングプログラムを実施したり、客観的な評価基準を明確化することが挙げられます。また、採用時に女性の多様な働き方やキャリア選択を支援する柔軟な勤務体系を提示することで、優秀な女性人材の獲得が期待できます。
えるぼし認定企業の実例と取り組み
えるぼし認定を取得している企業の多くは、採用段階から男女平等を徹底し、女性が活躍できる制度や環境を整備しています。具体的な事例としては、特定の職種や部署に偏らない採用の実施、女性社員向けのキャリアパスプラン作成支援、管理職育成プログラムへの積極的な参加機会の提供が挙げられます。こうした取り組みにより、企業のブランドイメージが向上するだけでなく、女性管理職の割合増加にもつながります。あるプラチナえるぼし認定企業では、職場全体でワークライフバランスを徹底し、結果的に両立支援策が採用からその後のキャリア発展にまで貢献しています。
継続就業を支える仕組み
長期的な働き方を見据えた職場環境の整備
女性が長期的に働き続けるためには、職場環境の整備が重要です。えるぼし認定においても継続就業は重要な要件の一つとされ、企業には柔軟かつ多様な働き方を提供することが求められています。具体的には、労働時間の短縮や適切な休暇取得の促進、健康管理支援の実施などが挙げられます。また、職務における公平性の確保が、より長く働き続けられる環境作りに繋がります。
こうした整備を進めることは、ワークライフバランスを重視した職場風土の形成に寄与します。えるぼし認定ロゴの使用を通して企業価値が向上するだけではなく、採用活動における競争力にもつながります。
育児や介護を支える柔軟な勤務体系
育児や介護といったライフステージに応じた柔軟な勤務体系を導入することは、女性がキャリアを継続する上で非常に重要です。たとえば、短時間勤務制度やテレワークの推進、時差勤務の導入などがあります。これらの取り組みによって、会社全体が柔軟な働き方を受け入れる風潮が生まれ、従業員同士の理解と協力が深まります。
えるぼし認定を受けるためには、こうした取り組みを実際に実施し、効果が現れていることが求められます。さらに、育児や介護に関わる支援制度を利用しやすい環境を整えることが、働き続ける意欲を高める鍵となります。
ロールモデルとしての女性社員の重要性
職場におけるロールモデルの存在は、女性が自身のキャリアを描く際の大きな参考となります。特に、管理職やリーダーシップを発揮する位置にいる女性社員が活躍することで、キャリア形成の可能性を実感しやすくなります。えるぼし認定の基準には「女性管理職比率」も含まれており、女性管理職の育成・登用が大きなポイントとなっています。
企業は、女性のキャリア形成を支援するための研修やメンター制度の導入、成功体験の共有を進めるべきです。また、プラチナえるぼし認定を目指す企業にとっても、女性が積極的に管理職を目指す環境を整えることが不可欠といえるでしょう。ロールモデルの存在が、次世代の女性リーダーを育てる鍵となります。
女性管理職登用の現状と課題
女性管理職比率が低い背景
女性管理職比率が低い背景には、長期的な性別役割分担意識やキャリア形成におけるアンコンシャス・バイアスが根強く存在することが挙げられます。歴史的に男性が仕事、女性が家庭という価値観が支配的だったため、昇進やリーダー職への挑戦を躊躇する女性も少なくありません。また、管理職ポジションに求められる労働時間の長さや転勤などが、育児や介護との両立を必要とする女性にとって障壁となる状況も影響しています。
2020年の統計では、日本の女性管理職比率は7.5%に留まり、2003年に政府が目標とした「30%」には遠く及びません。しかし、2016年施行の女性活躍推進法によって、企業が女性活躍推進に取り組む姿勢が求められるようになり、緩やかながら改善の兆しが見られます。
管理職を目指す女性への支援体制
管理職を目指す女性を支援するためには、企業内での包括的な取り組みが必要です。具体的には、キャリア形成に必要なスキルを習得するための研修の提供や、性別に関係なく評価される公平な昇進制度の整備が挙げられます。また、上司やメンターとなるロールモデルの存在は、大きな意義を持ちます。特に「自分も管理職を目指せる」と思わせてくれる成功例は、女性社員のモチベーション向上につながります。
さらに、えるぼし認定を目指す企業では、女性社員の視点を重視した制度や職場環境づくりを推進しています。この認定基準には、管理職比率や昇進比率が含まれるため、企業活動全体から、女性活躍が容易に見えるようになっています。
プラチナえるぼし認定との違いとさらなる高み
「プラチナえるぼし認定」は2020年6月から導入され、「えるぼし認定」のさらに上位に位置付けられる認定基準です。えるぼし認定自体も5つの基準で評価され、女性が活躍しやすい環境を整えた企業が認められるものですが、プラチナえるぼしはその中でもより厳しい基準を満たしています。
プラチナえるぼし認定企業は、例えば性別を超えた平等なキャリア形成支援や、高い女性管理職比率を実現している事例が多く見られます。2022年6月時点で2,030社がえるぼし認定を受けていますが、プラチナえるぼし認定はわずか26社と、より特化した取り組みが求められていることがわかります。
女性管理職登用のさらなる推進には、これらの先進的な認定基準を意識し、単なる達成目標に終わらず、企業風土そのものを変える努力が必要です。このような取り組みを通じて、女性が管理職に挑戦しやすい社会が形成されることが期待されています。
えるぼし認定取得へのステップ
データ収集と企業状況の分析
えるぼし認定を目指す企業にとって、まず重要なのがデータ収集と自社の状況分析です。採用比率や女性社員の継続就業率、労働時間、女性管理職の比率、多様なキャリア形成の機会など、認定基準に対応するデータを取りまとめることがスタート地点となります。この際、外部専門家や女性活躍推進アドバイザーの支援を活用すれば、課題の特定がスムーズに進むでしょう。また、女性活躍推進企業データベースや政府が提供するツールを利用することで、現状を数値化しやすくなります。
行動計画の策定と取り組み開始
データ分析後は、現状と目標を明確にしたうえで行動計画を策定します。この計画には、具体的な目標値や取り組むべき施策を設定し、実現可能なタイムラインを付けることが求められます。また、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に対する社内研修の実施や、柔軟な勤務体系の導入といった取り組みも重要です。計画を策定した後は、社員全体への共有を徹底し、取り組みを開始することで、実効性ある変革が期待できます。
申請プロセスと認定後の活用方法
行動計画を一定期間実施し、その成果を測定した後、えるぼし認定の申請を行います。申請には、事前に用意したデータと実績を基に厚生労働省への書類提出や面談が必要です。認定を取得すると、「えるぼし」ロゴマークの使用が許可され、企業のブランドイメージ向上や公共調達・入札での加点評価といった具体的なメリットが得られます。さらに、認定後は社員に対する取り組み成果の可視化や情報発信を通じて、女性活躍をさらに促進するステップに繋げていくことが重要です。
えるぼし認定企業の成功事例と今後の展望
認定による社員満足度の向上
えるぼし認定を取得した企業は、職場環境の改善や女性のキャリア形成を支援する取り組みを強化することで、社員満足度が向上している例が多く見られます。特に、働きやすい職場環境の整備や柔軟な勤務制度を導入することで、社員が仕事とプライベートの両立を図りやすくなり、結果として離職率の低下や生産性の向上に繋がっています。
例えば、育児休暇や介護休暇後の復帰率を高めるための支援制度を設けた企業では、社員の定着率が向上し、社内の文化として男女問わず働き続ける意識が広がっています。このような努力を積極的に社内外に発信することで、企業のブランド価値も高まり、長期的な採用力の強化にも繋がっています。
えるぼし認定企業がリードする新たな潮流
えるぼし認定企業は、制度の取得を通じて女性管理職の増加や多様な働き方の実現を進め、業界全体にポジティブな影響を与えています。特に、えるぼし認定を受けた企業が主導する研修プログラムや女性向けキャリア支援の取り組みは、他社の模範となるケースも少なくありません。
また、こうした企業は、男女平等を前提とした勤務条件の整備だけでなく、アスリートや起業家など社会的な女性ロールモデルとの連携企画を通じて、若手社員に向けたキャリアパスの具体例を提示しています。このような先進的な取り組みは、市場全体の意識改善を促し、女性活躍推進のさらなる拡大を後押ししています。
女性活躍社会実現に向けた今後の課題
えるぼし認定制度の利用が広がりつつある一方で、女性活躍社会の実現にはまだ課題が残されています。特に、女性管理職比率が低い現状や、職場内の意識改革に時間がかかる点が挙げられます。たとえ制度を設けたとしても、実際の運用や成果を出すには長期的な取り組みが必要です。
また、「えるぼし」取得後も継続して職場環境の改善を進め、高い水準を維持することが重要です。ここで注目されるのが「プラチナえるぼし認定」です。この認定は、より厳しい基準を満たす企業に与えられ、女性管理職の増加や多様なキャリア支援など、さらなる取り組みにインセンティブを与えます。今後は、これらの上位基準を目指す企業が増えることで、業界全体の水準が引き上げられることが期待されます。
社会の変化や多様な働き方への理解が深まる中で、えるぼし認定を活用しながら課題を一つ一つ克服し、すべての社員が力を発揮できる職場を目指す企業の取り組みが、未来の女性活躍社会の礎となるでしょう。