FATF第4次審査の結果公表を控えた採用マーケットのいま(AML/CFT領域)

FATF第4次審査の結果公表を控えた採用マーケットのいま(AML/CFT領域)
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FATF*1審査基準をクリアしているのは5ヶ国のみ、全世界的にAML*2規制対応が急務

ご存じの通り、資金移動を事業として扱う事業者にとって、「犯罪組織の資金洗浄に加担している」とみなされないためには、組織や制度面から法令遵守の体制を整えていなければなりません。

国際的な金融コンプライアンスの遵守は非常に難易度が高いことです。FATFの審査で、「基準以上の対策がとられており、通常のフォローアップで問題ない」とのお墨付きを得ている国はイギリス、スペイン、イタリア、イスラエル、ポルトガルの5カ国しかありません。

例えばアメリカは、法制面で不備が10件、対策の有効性で不備が3件あるとの審査結果を受け、「重点フォローアップが必要な国」とされています。
金融立国のイメージが強いスイスも、法制面の不備が9件、対策の有効性の不備が4件で、「要重点フォローアップ」の評価です。

日本については、2019年に第4次対日審査が実施されました。審査結果は今年6月にFATF総会で討議、採択され、夏頃に公表される予定でしたが、新型コロナウィルスの影響で総会は10月に延期、公表は年末頃になる見込みです。

*1 FATF…Financial Action Task Force 国際的なマネーロンダリング対策に関する政府間会合

*2 AML… Anti-Money Laundering マネーロンダリング対策

日本でAML規制対応が求められる事業者は広がり、金融機関以外も対象に

日本では2008年のFATF第3次審査以降、犯罪収益移転防止法を2度にわたって改正、対策を講じてきました。
この法律では、事業者に対して取引時の本人確認を義務付けており、幅広い事業者がその対象となっています。
銀行、証券、保険、クレジットカード、ファイナンスリース等の金融機関はもちろん、金融機関以外の代表的な例としては宅地建物取引業者がございます。
そして意外なところでは電話転送サービスや電話受付代行、私設私書箱で郵便物の受取りを代行する事業者も対象となっています。

これまで金融コンプライアンスなど無関係と考えられてきた事業者も、AML規制対応に取り組まなければならなくなってきています。

コンプライアンス人材のニーズが高まっている

FATF審査結果公表により、人材ニーズが高まると予想されるコンプライアンス領域

2020年後半に予想されるFATFの審査結果公表を受け、及第点に達していなければ、さらなる法改正や規制強化が必要になる可能性があります。そうなれば、対象となる事業者は、コンプライアンス体制の強化が必要になりますので、この分野の人材ニーズが強くなると考えられます。

金融機関以外へも広がるコンプライアンス人材ニーズ

銀行のコンプライアンス部門でマネーロンダリング対応やKYC*3の知見のある人材を採用する動きは、資産運用会社やフィンテック事業者にも広がっています。

また他業界への広がりとして、実際に、マネーロンダリング対応など、法令遵守の体制づくりやルール運営の経験者の求人は、銀行や証券会社はもちろんのこと、運用会社、不動産関連、仮想通貨事業者、金融システムを扱うSIer、コンサルティングファームからも出ています。

実際の転職者の事例としては下記のようなものがございます。

50代前半 外資系銀行でのAML経験者
⇒国内大手証券のAML担当オフィサー

一般的には、転職回数が多く年齢が高めな人材は国内大手金融機関では倦厭されがちだが、AMLにおける専門性を高く評価され、国内大手証券会社への転職に成功。

30代前半 仮想通貨取引所運営会社におけるコンプラアンス業務全般の担当者
⇒Big4監査法人での金融機関向けアドバイザリー(AML/FATCA領域)

仮想通貨取引所運営会社にてジェネラルにコンプライアンス業務全般を経験する中、より業務領域を狭めて専門性を高めたいとの希望から、監査法人におけるAML/FATCA*4領域のアドバイザリーへ

40代前半 外資系保険会社におけるコンプライアンス業務全般の担当
⇒国内大手金融グループ信託銀行での内部監査(AML)

銀行での就業経験がなく転職回数が多めであったが、コンプライアンスにおける幅広い経験を評価され、 国内大手金融グループ信託銀行へ

 

*3 KYC…Know Your Customer 口座開設時にとどまらない、継続的な顧客ウォッチ。Customer Due Diligence(CDD)とも呼ばれる。

*4 FATCA… Foreign Account Tax Compliance Act 米国の税法、外国口座税務コンプライアンス法

コンプライアンス経験を活かした幅広いキャリア機会を模索するならコトラ

コトラではプロフェッショナル人材に適切で幅広い案件紹介を行うための体制として、専門領域を持ったコンサルタントを配置し、コンサルタント間での密な情報共有を行っております。
金融コンプライアンス領域においても、以下のようなコンサルタントが業界情報を日々アップデートしております。

 

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*5 CFT…Counter Financing of Terrorism テロ資金供与防止

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参考
金融活動作業部会について/財務省国際局
FATF extends its assessment and follow-up deadlines in response to COVID-19/FATF
FATF第4次対日相互審査に向けた金融庁のAML/CFTガイドラインに基づく態勢整備・高度化/EY

この記事を書いた人

KOTORA JOURNAL | FATF第4次審査の結果公表を控えた採用マーケットのいま(AML/CFT領域)

佐藤美和

お茶の水女子大学家政学部家庭経営学科卒。(株)東洋経済新報社、米国系通信社の東京支局とロンドン支局での金融ニュース取材・配信等を経て、直近13年間は三井住友信託銀行で融資営業を担当。
[ 担当業界 ]
事業会社の管理系ポジション、投資ファンド、ファンド投資先の管理系人材