金融機関での市場フロント業務

金融機関での市場フロント業務
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「金融機関の市場フロント業務」と聞いても、馴染みが薄い方が多いと思います。
本記事では、市場フロント業務が行われるディーリングルーム内の雰囲気や業務について、具体例を上げて説明させていただきます。
記事を通して、市場フロント業務の雰囲気や魅力を感じて頂けると幸いです。

本記事のポイント

1.金融機関での市場フロント業務とは

2.ディーリングルーム内の業務の概要

3.実際の取引の流れ

4.ディーラーやセールスに求められる役割と素養

5.最後に

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1.金融機関での市場フロント業務とは

金融機関の市場フロント業務とは、為替や株式、債券、コモディティ等の市場性商品を顧客と取引をするセールスやインターバンクのマーケットで売買するディーラー等の業務をさします。
そしてこれらは、ディーリングルームと言われる特殊な空間の中で行われることになります。

市場性商品の代表格として、外国為替が挙げられます。
ディーリングルーム内でのやり取りを見ていく下準備として、外国為替市場について簡単に説明をさせていただきます。

●円やドルなどの異なる通貨を交換することを、外国為替と言います。

800 × 600 px - 金融機関での市場フロント業務

●これらが行われる場を、外国為替市場と言います。

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外国為替市場には、上図のように金融機関同士がやり取りをするインターバンク市場と、それ以外の市場(金融機関が顧客とやり取りをする対顧客市場や企業とやり取りをする対企業市場)に分けられます。

証券会社や銀行などで、自社の資金や顧客と株式、債券、外国為替などの売買取引を行うことをディーリングと言い、ディーリングを行う部屋をディーリングルームと言います。

2.ディーリングルーム内の業務の概要

ディーリングルームは、「モニターが多い」、「騒がしい」といった特徴が挙げられます。
その理由は以下の通りになります。

モニターが多い

一人あたり4、5台のモニターを見て、情報を入手しています。

情報が入ってくることによってマーケットは時々刻々と動いています。

そのため、ディーラーやセールスにとって情報は命であり、情報入手や分析を行うため、モニターの数が多くなります。

モニター、PC端末は熱を発生させるため、特に液晶パネルのなかった時代は、モニター周辺の気温が上がりやすく、ディーリングルーム内は文字通り熱気を帯びていました。

騒がしい

ボイスブローカーが外国為替やデリバティブのプライスを読み上げる声や、セールスがプライスを求める声が飛び交っています。

価格も常に動いているため、即時性が求められ、会話でのコミュニケーションが多くなります。

ボイスブローカー

外国為替取引などにおいて、ブローカーと呼ばれる仲介業者が金融機関等の取引を専用電話回線を使って声で受け、付き合わせる取引形態のことをボイスブローキングと言い、これを行う人のことを指します。


現在はこれらの業務の一部が電子化されており、プライスを求める、読み上げるといった肉声でのやり取りが減りつつあります。
(チャットルームや電子端末を通じたコミュニケーション方法が増えてきているため)

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3.実際の取引の流れ

顧客から電話が掛かってくると、担当のセールスが電話を取り、ディーラーに対してプライスを求めるという流れになります。

値段(プライス)の提示の仕方、売買の伝え方には、以下のようなものがあります。

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マイン:買うこと
ユアーズ:売ること

2wayプライス

為替取引で提示されるレートにはBidAskの2つのレートがあります。
また、この2つの為替レートを、同時に提示することを2wayプライスと言います。
この2つのレートの差を、スプレッドと言います。

プライス求められた際

Bidプライス

売却を希望する人に対して、プライスを提示する業者が示す買値

 

Ask(Offer)プライス

買い取りを希望する人に対して、プライスを提示する業者が示す売値

市場参加者が市場に提示する、Bidの中で最も高い価格をBest Bid
市場参加者が市場に提示する、Offerの中で最も安い価格をBest Offerと言います。
➡この状況において、市場で即時に“買い”を実行したい市場参加者はBest Offerを、
即時に“売り”を実行したい市場参加者はBest Bidをたたきます。

※提示されているBidやOfferで取引に応じることを、「たたく」と言います。

上記のような行為が市場では常に繰り返され、再び新たなBid、Offerが入ってくることで、価格が刻々と移り変わっていきます。

以下、輸出企業からセールスにUSDJPYのプライスを求める電話が掛かってきて、
最終的に輸出企業がUSDJPYを売った場合のやり取りを例に取引の流れを見ていきましょう。

輸出企業の財務担当者 ➡ セールス

「USDJPY10本プライス下さい。」

 

USDJPY10本のプライス売り買いサイドを示さず、2wayプライスを求めています。

※百万ドルを1本と言い、USDJPY10本とは10百万ドルをさします。

 

セールス ➡ ディーラー

「USDJPY10本、プライス下さい。」

 

USDJPY10本の2wayプライスを求めています。

 

ディーラー ➡ セールス

「03−04」

 

150.03bid、150.04offerの2wayプライスを示しています。
150円の大台は、参加者にとって周知の事実であるため、何銭の部分だけで建値されます。

 

セールス ➡ 輸出企業の財務担当者

「02ー04」

 

ディーラーからの03-04のプライスを受けて、顧客に02-04のプライスを示しています。

輸出企業なので売りの可能性が高い、またUSDJPY10本のプライスとして2銭ワイドまでは許容できると判断して、Bidを1銭だけ下げて建値しています。

 

輸出企業の財務担当者 ➡ セールス

「ユアーズ」

 

“提示された02のBidをたたいて売りますよ”と伝えています。

 

セールス ➡ ディーラー

「ユアーズ」

 

“03のBidをたたいてUSDJPY10本を売ります”と伝えています。

その後、セールスと輸出企業の財務担当者による、約定の確認(この場合、「USDJPY10本150.02円でお売りいただきました」となります)に移っていくのが通常の流れです。

この間、10秒くらいでやり取りが行われます。
周囲にも聞こえている中でのやり取りで、金額が大きくなってくるとディーリングルーム内も緊張感につつまれます。

4.ディーラーやセールスに求められる役割と素養

ディーラー

顧客に直接働きかけることは少ないですが、顧客との取引に関して強く関わっている立場になります。
顧客から受けた売買の注文を、相場の値動きの中で上手く捌いていくことが必要になるため、様々なニュースに対して相場がどう動くのか常に考えていかなければなりません。

➡世の中の人がどう反応し、その結果プライスがどう動いたのかという結果のみが残るため、その判断に明確な正解、不正解はありません。
一つの結果にとらわれている間に、相場も顧客も動いていくため、常に前を向いて進んでいく必要があります。
マーケットが間違った反応をした場合、その後に揺り戻しが起こる可能性もあり、そこに収益チャンスや損失のリスクが発生します。
そのため様々な情報に対する、その時々のマーケットの反応を、自分の頭の中に落とし込んで解釈する姿勢が必要となります。

セールス

ディーラーと同じように情報を常に見て、重要な情報が入った際に、それをタイムリーに情報提供したり、相場観をアドバイスしたりして、売買をする顧客への便宜を図り、取引の増大を目指していきます。

5.最後に

これらの業務に向いている方

■ニュースなどの、入ってきた情報を自分なりに検証することに抵抗がない方

■ライブ感が好きな方

これらの業務は、理屈では割り切れない部分もあります。
自分の理屈が適切か、そうでないかと考えている間にも、市場は動いていきます。
そのため、その環境に順応できる方、行動しながら学んでいける方が向いています。

また、「共通言語に対して瞬発的に、適切に反応する能力が求められる」という印象があるかもしれませんが、慣れの部分が大きく、経験を積めばこなせようになるものです。

特に若い層の転職希望者さまにおいて、ディーラーやファンドマネージャーを志望される方は多くいらっしゃいますが、候補者様の抱いている業務イメージと、実際の仕事内容がマッチしていない場合も少なくありません。

本記事からうかがえる市場フロント業務のイメージが、業務のイメージを掴む一助になっていただれば幸いです。

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この記事を書いた人

KOTORA JOURNAL | 金融機関での市場フロント業務

コトラ(広報チーム)