ケース面接対策に役立つ書籍Part1

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

バーバラ ミント (著), Barbara Minto (原著), 山崎 康司 (翻訳), グロービスマネジメントインスティテュート
出版社: ダイヤモンド社; 新版 (1999/03)

ビジネスにおいて論理的に考え、分かりやすく情報提供するための方法が網羅的に書かれた名著。国内外のコンサルティングファームで新人研修に用いられるなど、定評のある教科書である。 著者はハーバードでMBAを取得、マッキンゼー・アンド・カンパニーに従事した後、ピラミッド原則に則った文書作成や分析方法の指導者として独立した、ピラミッド原則の提唱者である。本書は4部構成で、書く技術、考える技術、問題解決の技術、表現の技術、をテーマとしている。内容の一部を紹介する。

【第1部 書く技術】
文書であれ口頭であれ、他人に情報を伝える時に守るべき形式として『ピラミッド構造』という考え方を提示している。『ピラミッド構造』とは、人が物事を理解するときに最も受け入れやすい、考えの並べ方のことである。

【第2部 考える技術】
著者が『実践的考えのプロセス』と呼ぶ技術を説明している。それは、第1に考える対象となる物事の論理的な構造を把握すること、次に考える対象における雑多な事象の中から本質的な考えを抜き出すこと、である。

こういった内容の本を初めて読む人にとっては、本書のような網羅的なものよりも、重要な部分に絞って書かれている本の方が取り組みやすい。

例えば、論理的に書く技術なら後 正武(著)「論理思考と発想の技術」や照屋 華子、岡田 恵子(著)「ロジカル・シンキング」、問題解決法なら大前 研一(著)「考える技術」、齋藤 嘉則(著)「問題解決プロフェッショナル」、分かりやすいプレゼンテーションの技術ならジーン ゼラズニー(著)「マッキンゼー流プレゼンテーションの技術」の方が効率よく要点を押さえられる。

これらの本を読んで核となる考え方を身に付けた後、本書で更なる知識を習得することが上達の近道となるだろう。

▽ ダイヤモンド社
「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」
バーバラ ミント (著), Barbara Minto (原著), 山崎 康司 (翻訳)

考える技術

大前 研一 (著)
出版社: 講談社 (2004/11/5)

著者は言わずと知れた日本における経営コンサルティングの第一人者であり、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長を経て独立し、ビジネス・ブレークスルー大学学長を務める。
本書は著者のこの時点までの数冊の著作のエッセンスが盛り込まれており、それらを読んだことのない読者にとって価値の高い内容となっている。著者自身の豊富なコンサルティング経験談を通して、経営目的を達成する結論を導くための仮説検証などの論理的思考や、それを顧客に実行させるためのプレゼンテーション技術を説明している。
論理的思考のツールとしては、MECEをベースとしたピラミッドストラクチャーを紹介している。執筆当時の時事問題を題材として応用例も示しているため実践に応用しやすい。例えば、「解決すべき問題の定義」が問題解決の第一歩であることを、道路公団や郵政三事業を例に解説している。

おもな主張としては、経営活動において前提として信じている命題を結論としてではなく仮説として扱い、フレームワークにこだわらない徹底的な分析によって絶対に正しいと言える根拠を用意してから結論として扱うべきだということである。
更に、本書の中で特に目を引く内容としては、「本書で解説している論理的思考を身につければ5年先の社会を予見することも十分可能である」という実例として論理的思考の技術を応用しながら5年先の携帯電話の機能についての予測を披露している部分である。
本書が発行された2004年から5年後の状況をピタリと当てている。

教育についても言及しており、「試験は知識ではなく思考パターンをテストすべき」と言っている。その主張に伴って、自身がマッキンゼー時代に面接試験を開発した経験から、コンサルティングファームにおけるケース面接においては最初に質問することで問題の前提を明確にしてから回答を始めると良い、というアドバイスをしている。

ビジネスにおいても日常生活においても、解決すべき問題に対する最適解を導けるようになるために日頃からできるトレーニング方法も多数提示している。

▽ ダイヤモンド社
「考える技術」
大前 研一 (著)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル

照屋 華子 (著), 岡田 恵子 (著)
出版社: 東洋経済新報社 (2001/04)

著者2名は、マッキンゼー・アンド・カンパニーにコミュニケーション・スペシャリストとして入社。同社内外で顧客企業への提案書などを対象に論理構成や表現に関するアドバイスを提供するエディティング・サービスに従事する。
本書では論理的に思考を整理する技術としてMECEとSo What?/Why so?の2つのテクニックを、そして論理的に思考を構成する技術として並列型と解説型の2パターンを紹介している(ピラミッドの下部構造が並列の関係となっているものが並列型。事実、判断基準、判断内容という解説の構造をとっているものが解説型である)。
ロジカルシンキングの技法について解説する類書(例えば、バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」)と比べて読みやすいので入門書に適している。

相手にメッセージを伝える時には「相手に答えるべきテーマ」と「相手に期待する反応」を確認する、など主に新入社員がビジネスの現場ですぐに活用できるテクニックが散りばめられている。
また、MECEのフレームワークとして3C/4C、4P、バリューチェーンの紹介もある。解答例はないものの演習問題が豊富に示されており、例題で解説された考え方を応用することにより無理なく論理思考の技術を身につけることができる。解答例がない点が気になる読者は、渡辺パコ (著)「論理力を鍛えるトレーニングブック」やバーバラ ミント (著)「考える技術・書く技術 ワークブック」などを演習に利用するのが良いだろう。

▽ 東洋経済新報社
「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル」
照屋 華子 (著), 岡田 恵子 (著)

MBAクリティカル・シンキング

グロービス・マネジメント・インスティチュート (著)
出版社: ダイヤモンド社; 新版 (2005/11/5)

社会人を対象とした経営教育を行うグロービス・グループが、その教育現場での知見をもとに「ビジネスパーソンに必要な、ビジネスの現場で本当に役立つ思考力」を提供するMBAシリーズの第8弾。課題解決のための考える手順や合理的・科学的な思考プロセスを、最低限必要な方法論とフレームワークだけ選び、ビジネスの現場で実際に使えるように解説している。

第1章から第3章は解説編、演習編、思考の落とし穴編、総合演習編から構成されており、それぞれ「論理展開(演繹法・帰納法)」、「因果関係」、「構造的アプローチ(ピラミッド構造、MECE、ロジックツリー、フレームワーク)」についてビジネスや日常生活における具体例を通して学ぶことができる。
「思考の落とし穴編」では、「隠れた前提に基づく演繹法」「偏ったサンプリングによる帰納法」「相関関係と因果関係の混同」など、誤解を招く原因となったり間違った結論を導くことになる、ありがちな状況やそれを避ける方法について解説している。
第4章では、ビジネスの一場面における物語(イタリアンレストランのオーナーの方針変更とチーフシェフの離反)を題材として、本書で学んだ論理思考と問題解決の技術を確認する。
最終的には経営コンサルタントが登場し、オーナーとの対話を通じて課題解決していく。ビジネスの現場で当事者同士がお互いの満足度を向上させるためにどのようなコミュニケーションを取るべきなのか、また、どのように問題を整理して解決策を探れるのかを考えるヒントが多数提示されている。

本書では論理思考の技術の中でも「演繹法・帰納法」「因果関係」「ピラミッド構造」「ロジックツリー」といった重要なものに絞って解説しており、読者は効率的に論理思考について学ぶことができる。また、これらの思考技術についてビジネスパーソンにとって現実的で感情移入しやすいケースに基づいて説明されているため、あまり抵抗感なく読み進めることができるだろう。

▽ ダイヤモンド社
「MBAクリティカル・シンキング」
グロービス・マネジメント・インスティチュート (著)

経営参謀が明かす論理思考と発想の技術 (知力アップ講座)

後 正武 (著)
出版社: プレジデント社 (1998/12)

ハーバードMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイン・アンド・カンパニー取締役副社長を経て独立した著者による、論理思考の指南書。論理思考と問題解決の技術としてロジックツリー、MECE、イシューツリー、更に発想法を解説している。
少し古い本であるので取り上げられる話題は時代を感じさせるものもあるが、演習を通じて著者が提唱する論理の五原則が身に付く構成になっている。
演習のための具体例は企業の海外進出や経営戦略立案などビジネス分野にとどまらず、「鳶はどうやって獲物をとらえているか」など自然科学の分野からも引き出されており、著者の幅広い教養に触れることができる。
演習の数としてはそれ程多くないので、更に演習したい人は渡辺パコ (著)「論理力を鍛えるトレーニングブック」やバーバラ ミント (著)「考える技術・書く技術 ワークブック」などで引き続きトレーニングするのが良い。

第1章の自民党総裁選や日本企業のヨーロッパ進出の例、第3章の割りばし論争の例は、私達の周囲でどれほど論理的でない言説がまかり通っているかを改めて知るための良い例となっている。そういった例を取り掛かりとして、どうしたら論理的に物事を考え、正しい結論を導くことができるかについて必要性を強く感じながら学ぶことができる。

第2章はピラミッド構造、ロジックツリーの作り方を解説する。
ピラミッド構造を組み立てるための「MECE」などの原則を「論理の五原則」として簡潔かつ明瞭に示している。枠組みによるMECEの例として挙げられている、心理学者クレッチマーによる人間の性格分類の話が興味深い。第4章はイシュー(争点)とは何か、イシューツリーとは何かの説明である。未解決の問題を論理的に分析し、解決するための枠組みについて学ぶ。

本書の特徴は、論理思考のツールの紹介だけでなく、発想の技術についても説明されている点である。
第5章において「それまでの事例や概念にとらわれない」「一次情報(現場の情報)にあたる」「集中した後、考えを発酵させる時間を持つ」など発想のコツを複数挙げているが、中でもカードを使うテクニックはあまり類書で紹介されていないテクニックだろう。

▽ プレジデント社
「経営参謀が明かす論理思考と発想の技術 (知力アップ講座)」
後 正武 (著)