アセットマネジメントISO(ISO 55001)とは?最新規格と導入のポイント徹底解説

はじめに

本記事の目的とターゲット

本記事は、アセットマネジメントの国際規格であるISO 55001シリーズに関心を持つ、あらゆる業種・組織の担当者や経営層を対象としています。特に、資産管理の効率化、コスト最適化、リスク低減、そして事業継続性の確保といった課題を解決したいと考えている方々に、ISO 55001の基本的な知識から最新情報、導入の具体的なポイントまでを分かりやすく解説することを目的としています。

どの業種・組織にも役立つISO 55001の意義

ISO 55001は、道路、橋梁、トンネル、上下水道施設といった社会インフラから、学校、病院、プラントなどの施設、さらには情報資産や無形資産に至るまで、あらゆる種類の資産(アセット)に適用可能です。組織が保有するアセットから最大の価値を生み出すことを目指すこの規格は、先進国における社会インフラの老朽化や維持管理の課題に対応するため、また、PFI事業やインフラの海外輸出促進においてもその重要性が高まっています。組織の規模や特性に関わらず、長期的な視点でアセットを効果的かつ効率的に管理し、持続可能な事業運営を実現するための強力なツールとなります。

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アセットマネジメントの基礎知識

アセットマネジメントとは何か

アセットマネジメントとは、組織が保有する資産(アセット)から最大の価値を引き出すために、コスト、リスク、パフォーマンスのバランスを考慮しながら、そのライフサイクル全体を計画的かつ戦略的に管理する活動を指します。これは単なるメンテナンスを超え、資産の企画段階から廃棄に至るまで、継続的な価値創造を目指す積極的な取り組みです。

アセットとアセットマネジメント、アセットマネジメントシステムの用語解説

  • アセット(Asset): 組織にとって潜在的または実際に価値を持つあらゆる項目、物、または実体を指します。有形資産(設備、建物、インフラなど)だけでなく、情報、ブランド、知的財産などの無形資産も含まれます。その価値は、組織の目標やステークホルダーのニーズによって異なります。
  • アセットマネジメント(Asset Management): アセットから価値を実現するための組織の調整された活動全般を指します。これには、コスト、リスク、機会、パフォーマンスのバランスを取りながら、アセットのライフサイクル全体を管理する意思決定や計画、実施が含まれます。
  • アセットマネジメントシステム(Asset Management System, AMS): アセットマネジメントの方針や目標を確立し、それらの目標を達成するためのプロセスを定める、組織内の一連の要素(仕組み)です。ISO 55001はこのシステムの要求事項を定めており、組織がアセットマネジメントを体系的に、かつ継続的に改善していくためのフレームワークを提供します。

アセットマネジメントの重要性と現代的課題

現代においてアセットマネジメントの重要性は増しています。特に日本では、高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化が進行しており、維持・更新の需要が増大しています。しかし、少子高齢化に伴う税収の減少や社会保障費の増加により、社会インフラ整備への投資は制約されつつあります。このような状況下で、限られた資源の中でアセットを効率的に維持管理し、長期的な価値を最大化することが不可欠です。

アセットマネジメントシステムの導入は、技術部門と財務部門が共通の目標に向かって計画的な活動と効率的な予算配分を行うことを可能にします。また、多様な利害関係者の期待に応え、理解を得るためには、「コスト」「リスク」「パフォーマンス」の最適なバランスを実現する共通基盤の構築が重要であり、これによりアカウンタビリティの向上も期待されます。

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ISO 55001の規格とその概要

ISO 55001シリーズ(JIS Q 55000含む)の構成と規格策定の経緯

ISO 55001は、アセットマネジメントに関する国際規格ISO 55000シリーズの中核をなす規格です。このシリーズは以下の3つの主要な規格で構成されています。

  • ISO 55000(JIS Q 55000): アセットマネジメントの概要、原則、および用語を定めています。アセットマネジメントとは何か、その目的、期待される便益、基本的な考え方について解説しています。
  • ISO 55001(JIS Q 55001): アセットマネジメントシステムの要求事項を具体的に規定しています。組織がアセットマネジメントシステムを確立、実施、維持、改善するために満たすべき基準を示しており、認証の対象となるのはこの規格です。
  • ISO 55002(JIS Q 55002): ISO 55001の適用に関するガイドラインを提供しており、組織がシステムを設計し運用する際の具体的な指針となります。

これらの規格は、英国規格協会(BSI)からの提案を受け、ISOのプロジェクト委員会PC251での審議を経て、2014年1月に初版が発行されました。その後、PC251は常設の専門委員会TC251へと移行し、規格の維持管理、新たな規格の整備、およびアセットマネジメントの普及・発展に貢献しています。JIS Q 55000、JIS Q 55001、JIS Q 55002は、それぞれISO 55000、ISO 55001、ISO 55002を日本の国家規格として同等に採用したものです。

ISO 55001:2024最新版のポイント

ISO 55001は2024年7月3日に第2版が発行され、以前の2014年版からいくつかの重要な変更が加えられました。この改訂は、50カ国以上からの10年間にわたるフィードバックと経験に基づいています。主なポイントは以下の通りです。

  • 意思決定、アセットからの価値の実現に関する明確化: アセットから得られる価値を最大化するための意思決定プロセスに関する要求事項がより具体的になりました。
  • アセットマネジメント計画の強化: アセットマネジメント計画の策定と実施に関する要求が強化され、より戦略的な計画立案が求められます。
  • リスクと機会への対処方法の具体化: アセットマネジメントにおけるリスクと機会の特定、評価、対処方法について、より詳細なガイダンスが盛り込まれました。
  • データと知識の管理の重視: デジタル化の進展に伴い、データアセットおよびアセットデータマネジメントに関する要求が追加され、情報に基づく意思決定の重要性が強調されています。
  • ライフサイクル運用に関する要求の明確化: アセットのライフサイクル全体にわたる運用管理に関する要求がより明確になりました。
  • 理解しやすさの向上: 全体的に内容が簡素化され、アセットマネジメントシステムの要件が理解しやすくなっています。

また、ISO 55000:2024も同時に更新され、アセットマネジメント活動の成果に焦点を当てるなど、この分野の進化を反映しています。さらに、以下の3つの新しい関連規格も発表されました。

  • ISO 55011: 資産管理を可能にする公共政策の策定に関するガイダンス
  • ISO 55012: 人々の関与と力量のガイダンス
  • ISO 55013: アセットマネジメントのためのデータのガイダンス

主要な要求事項(組織状況、リーダーシップ、計画、支援、運用、評価、改善)

ISO 55001の要求事項は、他のマネジメントシステム規格と同様に、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルに基づいた全10章で構成されています。アセットマネジメントシステム(AMS)の構築と運用は、このPDCAサイクルを通じて継続的な改善を追求します。

  • 4. 組織の状況(Plan): 組織の内外の状況を理解し、ステークホルダーのニーズと期待を明確にした上で、AMSの適用範囲を決定します。
  • 5. リーダーシップ(Plan): トップマネジメントがAMSに対するリーダーシップとコミットメントを示し、アセットマネジメント方針を策定し、組織の役割、責任、権限を明確にします。
  • 6. 計画(Plan): AMSに関連するリスクと機会を特定し、これらに取り組むための計画を立てます。アセットマネジメントの目標を設定し、それを達成するための計画を策定します。これには戦略的アセットマネジメント計画(SAMP)の策定も含まれます。
  • 7. 支援(Plan): AMSの運用に必要な資源(人、設備、情報など)を確保し、担当者の力量、認識、コミュニケーション、文書化した情報の管理に関する要求事項を満たします。
  • 8. 運用(Do): 計画に基づいてAMSを実際に運用します。運用の計画策定と管理、変更のマネジメント、外部委託された活動の管理などが含まれます。
  • 9. パフォーマンス評価(Check): AMSのパフォーマンスと有効性を監視、測定、分析、評価します。内部監査とマネジメントレビューを実施し、AMSが計画通りに機能しているか、目標が達成されているかを確認します。
  • 10. 改善(Act): 評価の結果に基づいて、不適合の是正処置や、さらなる改善の機会を特定し、継続的な改善活動を実施します。予測対応処置もこのフェーズに含まれます。

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アセットマネジメントシステム導入の実際

導入フローと戦略的計画(SAMP)の策定

ISO 55001の導入は、以下の段階を経て進められます。

  1. 導入決定と推進体制の確立: 経営層がISO 55001導入の目的を明確にし、キックオフ宣言を行い、推進責任者(ISO事務局)と担当者を任命します。
  2. 適用範囲の決定: 組織全体、特定の部門、事業所、またはアセットの種類など、AMSを適用する範囲を明確にします。
  3. 現状業務の洗い出しとギャップ分析: 現在行っているアセット管理業務を詳細に洗い出し、ISO 55001の要求事項との間のギャップを特定します。
  4. 戦略的アセットマネジメント計画(SAMP)の策定: 組織の目標からアセットマネジメントの目標を導き出し、これらの目標を達成するためのアプローチ、およびAMSの役割を規定する文書を策定します。SAMPは長期的な視点でのアセットマネジメントの方向性を示します。
  5. ルール作りと文書化: ギャップ分析の結果に基づき、不足している業務ルールや手順を文書化します。品質方針、品質目標、マニュアル、手順書、帳票などを整備します。この際、既存の業務に過度な負担をかけないよう、できるだけシンプルで実用的なルール作りを心がけます。
  6. 従業員への教育と啓発: 策定したルールや手順について従業員への周知・教育を行い、AMSへの理解と協力を促します。

PDCAサイクルによる継続的な改善

ISO 55001の導入においては、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)の継続的な運用が不可欠です。

  • Plan(計画): 組織の状況を理解し、アセットマネジメント方針、目標、SAMP、および具体的なアセットマネジメント計画を策定します。必要な資源や力量の確保もこの段階で行います。
  • Do(実行): 計画されたアセットマネジメント活動を実際に実行します。運用の記録を正確に作成し、計画通りに進められているかを確認します。
  • Check(評価): 実行された活動の結果を監視、測定、分析、評価します。具体的には、内部監査を実施してAMSが規格要求事項に適合しているか、ルール通り運用されているか(適合性)を確認します。また、マネジメントレビューを通じて経営層がAMS全体のパフォーマンスと有効性を評価し、改善の機会を特定します。
  • Act(改善): 評価の結果、特定された不適合や改善点に対して、是正処置や予防処置を実施します。時代の変化や新たなリスクに対応するため、AMSを継続的にアップデートし、より良い状態を目指します。

PDCAサイクルを効果的に回すためには、具体的な数値を目標設定や評価に用いること、課題や失敗を徹底的に分析し、根本原因を特定することが重要です。

導入効果・メリットと留意すべき課題

ISO 55001導入によって期待される効果・メリットは多岐にわたります。

  • アセットマネジメントの改善、効率化、高度化: 体系的な管理により、アセット管理プロセスが最適化され、無駄が削減されます。
  • 財務パフォーマンスの改善: ライフサイクルコストの低減や投資回収率の改善により、財務状況が向上します。
  • リスクの管理と低減: リスクの大きいアセットを特定し、定量化することで、事故や障害のリスクを低減します。
  • サービスおよびアウトプットの改善: アセットのパフォーマンスが向上することで、顧客やステークホルダーへの提供サービス品質が向上します。
  • 法令遵守の実証と社会的責任の向上: 法令、規則、規制上の要求事項への適合を透明性をもって実証し、組織の評判と社会的信用を高めます。
  • 組織文化の改善: 部門横断的なチームワークが促進され、目的共有や責任意識の醸成につながります。
  • インフラの包括委託管理やPFI事業への参画への有利性: 公共事業の入札条件としてISO 55001認証が求められる場合があり、競争力向上に貢献します。

一方で、導入にはいくつかの課題も伴います。

  • 初期コストと労力: AMSの構築には、時間と人員、教育研修などのコストがかかります。
  • 組織文化の変革: 従来の慣行から脱却し、新たな管理システムを組織全体に浸透させるには、経営層の強いコミットメントと全従業員の協力が必要です。
  • 形骸化のリスク: 認証取得がゴールとなり、PDCAサイクルが適切に回らない場合、システムが形骸化し、期待される効果が得られない可能性があります。

これらの課題を乗り越え、実効性のあるAMSを構築・運用するためには、計画段階から継続的な改善を見据えた戦略的なアプローチが重要です。

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取得プロセスと審査・維持管理

ISO 55001認証取得の流れ

ISO 55001の認証取得は、以下の主要なステップで進められます。

  1. マネジメントシステムの構築・運用:
  • アセットマネジメント方針、目標の策定。
  • マニュアルや手順書などの文書構築と帳票整備。
  • 構築したシステムに基づいた運用と運用記録の作成。運用は3ヶ月から半年程度の期間が推奨されます。
  1. 内部監査の実施: 組織内部の独立した監査員が、構築・運用されたAMSが規格要求事項に適合し、有効に機能しているかを評価します。
  2. マネジメントレビューの実施: 経営層が内部監査結果やAMSのパフォーマンスを評価し、改善の方向性を決定します。
  3. 是正処置: 内部監査やマネジメントレビューで特定された不適合に対して、原因を除去し再発防止のための是正処置を実施します。
  4. 審査機関への申請: マネジメントシステムの運用実績が積まれ、内部監査とマネジメントレビューが完了したら、適切な審査機関を選定し、認証審査を申請します。
  5. 初回認証審査(二段階審査):
  • 第一段階審査(文書審査): 主にAMSの文書類(マニュアル、手順書など)がISO 55001の要求事項を満たしているかを確認します。
  • 第二段階審査(現地審査): 組織の施設を訪問し、文書化されたシステムが現場で適切に運用されているか、担当者へのインタビューや記録の確認を通じて評価します。
  1. 認証決定と認証書発行: 審査の結果、AMSがISO 55001の要求事項に適合していると判断されれば、認証が決定され、認証書が発行されます。不適合があった場合は、是正処置を完了させる必要があります。

ISO認証取得には、一般的に半年から1年程度の期間を要します。

審査・登録の範囲と必要書類

  • 審査・登録の範囲: ISO 55001は、組織の全ての業務・部署・事業所を対象とすることも、一部分を対象とすることも可能です。認証取得の目的や組織の特性に応じて、最適な適用範囲を決定する必要があります。審査日数は、この認証範囲の規模(業務内容、拠点数、従業員数など)によって変動します。
  • 必要書類: 主な必要書類には、アセットマネジメント方針、アセットマネジメント目標、戦略的アセットマネジメント計画(SAMP)、アセットマネジメント計画、各種手順書、作業指示書、記録様式、内部監査報告書、マネジメントレビュー議事録、是正処置記録、資産台帳などが挙げられます。これらの文書は、AMSの計画、運用、評価、改善の各プロセスを裏付けるものです。

認証維持とアップデートへの対応

ISO 55001認証は一度取得すれば終わりではなく、継続的な運用と改善が求められます。

  • 維持審査(サーベイランス審査): 認証取得後、毎年1回(または年2回)実施されます。AMSが継続的に維持され、改善されているかを確認するための審査です。
  • 更新審査(再認証審査): 認証の有効期間(通常3年)が満了する前に行われます。過去3年間のAMSの運用状況全体が審査の対象となり、適切に運用されていれば認証が更新されます。
  • 新規格(ISO 55001:2024)への対応: 2024年に改訂されたISO 55001:2024への移行期間が設けられるため、既存の認証組織は、その期間内に新規格の要求事項に適合するようAMSを更新し、移行審査を受ける必要があります。新規格では、意思決定、データ管理、ESG基準の統合などが強化されているため、これらの変更点に留意したアップデートが重要です。

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他マネジメントシステムとの関係と比較

ISO 9001等他規格との共通点と違い

ISO 55001(アセットマネジメントシステム)は、ISO 9001(品質マネジメントシステム)やISO 14001(環境マネジメントシステム)など、他のISOマネジメントシステム規格と多くの共通点を持ちつつ、固有の特徴も有しています。

  • 共通点:
  • PDCAサイクルの適用: すべてのマネジメントシステム規格は、PDCAサイクル(計画-実行-評価-改善)に基づいた継続的改善の仕組みを求めています。
  • 共通構造(附属書SL): 最新のISOマネジメントシステム規格は、共通のハイレベル構造(附属書SL)を採用しており、各規格の要求事項が10章構成で共通化されています。これにより、複数のマネジメントシステムを統合して運用しやすくなっています。
  • トップマネジメントの関与: 経営層のリーダーシップとコミットメントが、システムの有効な運用と改善に不可欠であるとされています。
  • リスクベース思考: リスクと機会を特定し、それらに対応することで、目標達成の不確実性を管理するアプローチが共通して求められます。
  • 違い:
  • 焦点:
    • ISO 55001: アセット(資産)そのものに焦点を当て、そのライフサイクル全体を通じて最大の価値を生み出すことを目的とします。コスト、リスク、パフォーマンスの最適なバランスを重視します。
    • ISO 9001: 製品やサービスの品質、および顧客満足度の向上に焦点を当てます。顧客要求事項を満たし、一貫した品質を提供するためのプロセス管理を重視します。
    • ISO 14001: 環境への影響を最小限に抑え、環境パフォーマンスを向上させることに焦点を当てます。
  • 導入の動機:
    • ISO 55001: 組織のマネジメント高度化、社会インフラの老朽化対策、事業継続性の確保など、能動的な経営判断から導入される傾向があります。
    • ISO 9001: 取引先からの要求、公共工事の入札条件、顧客からの信頼獲得など、受動的な動機で導入されるケースも多いです。

組織におけるマネジメントシステムの選択ポイント

組織がどのマネジメントシステムを導入すべきかを検討する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 組織の戦略的目標: 最も優先すべき経営課題や目標(例:品質向上、環境負荷低減、資産価値最大化、情報セキュリティ強化など)は何かを明確にします。
  • 業界の特性と規制: 所属する業界で求められる特定の規制や顧客からの要求事項(例:建設業におけるISO 9001/55001、食品業界におけるISO 22000など)を確認します。
  • 既存のマネジメントシステム: 既に他のISO規格を導入している場合、共通構造を活用して統合的なマネジメントシステムを構築することで、導入・運用コストを削減できる可能性があります。
  • リスクと機会の特定: 組織が直面する主要なリスク(例:アセットの老朽化、情報漏洩、品質問題など)と、それらを機会に変えるためのアプローチを検討します。
  • リソース(人員、予算、時間): 導入・運用に必要なリソースを評価し、自社取得かコンサルタントの活用かを含め、最適な方法を検討します。

ISO 55001は、特に社会インフラや大規模な設備を保有する組織にとって、長期的な視点での価値創造とリスク管理を実現するための強力な基盤となります。他のマネジメントシステムと連携させることで、組織全体のガバナンスとパフォーマンスを一層強化することができます。

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導入事例・国内外の最新トレンド

さまざまな業界での活用事例

ISO 55001は、その汎用性の高さから多岐にわたる業界で活用されています。

  • 公共インフラ: 道路、橋梁、上下水道、鉄道などの維持管理において、老朽化対策とライフサイクルコストの最適化を図るために導入されています。例えば、ある水力発電事業者は、ISO 55001認証を活用して物理資産を効率的に管理し、顧客サービスのレベルを向上させた事例があります。
  • 製造業・プラント産業: 生産設備やプラント施設のアセット管理において、稼働率向上、ダウンタイム削減、保全コスト最適化に貢献しています。天然ガスプラントにおける遠心圧縮機の管理では、IoTセンサーを活用したリアルタイム監視とリスクベースの意思決定により、機器の可用性を98%以上に高め、予期せぬ停止を削減した事例があります。
  • ユーティリティ産業(電力・ガスなど): エネルギー供給網の安定稼働と効率的な運用を目的として導入が進んでいます。
  • 施設管理: 学校、病院、商業施設などの建物管理において、資産の長寿命化とファシリティマネジメントの最適化に役立てられています。
  • 運輸(鉄道輸送、水上輸送、自動車輸送): 輸送インフラや車両の維持管理において、安全性向上と運航の安定性を確保するために活用されています。

これらの事例では、ISO 55001の導入が、単なる規制遵守だけでなく、運用コストの削減、リスク低減、事業継続性の確保、そして組織全体の信頼性向上に寄与していることが示されています。

日本国内の普及状況と海外との比較

日本国内では、特に社会インフラの老朽化問題が深刻化する中で、ISO 55001への注目が高まっています。地方公共団体やインフラ資産の維持管理・運営を請け負う民間企業、およびコンサルタント企業などでの導入が進んでいます。認証件数は増加傾向にあり、公共事業の入札条件やPFI事業への参画において有利に働くことから、今後も普及が期待されます。

海外、特に欧米諸国では、インフラ資産管理の歴史が長く、ISO 55001のようなマネジメントシステムに対する意識が日本よりも先行している側面があります。しかし、日本の企業も、海外からの包括委託案件の獲得やインフラ輸出の促進を目指す上で、国際規格への適合が不可欠であると認識し、導入を加速させています。

新規格(ISO 55001:2024)への対応の現状

2024年7月に発行されたISO 55001:2024は、意思決定、アセットからの価値実現、データと知識の管理、ESG基準の統合など、現代のビジネス環境に合わせた要求事項の明確化と追加が行われています。既存の認証組織は、設定された移行期間内に新規格への適合を進める必要があります。

  • 移行監査: 新規格への移行を確実にするため、既存の認証組織は移行監査を受ける必要があります。これは通常の維持審査や更新審査と併せて実施される場合と、単独で実施される場合があります。
  • データとデジタル化の活用: 新規格ではリアルタイムデータ(IoTセンサー、デジタルツインなど)の集中的な利用が強調されており、これに対応するための情報システムや分析能力の強化が求められます。
  • ESG基準の統合: 環境・社会・ガバナンス(ESG)基準の明示的な組み込みは、企業の持続可能性へのコミットメントを示す上で重要となります。

新規格への対応は、組織のアセットマネジメントをさらに高度化し、変化する外部環境に柔軟に対応するための機会と捉えられています。

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まとめと今後の展望

アセットマネジメントシステムの成長可能性

ISO 55001に基づくアセットマネジメントシステムは、社会インフラの老朽化、コスト最適化、リスク低減、そして持続可能な開発目標(SDGs)への貢献など、現代社会が直面する複合的な課題に対応するための不可欠なツールです。今後、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やESG投資の拡大に伴い、アセットマネジメントの重要性はさらに高まり、その適用範囲も拡大していくことが予想されます。

特に、IoTやAIといった先端技術を活用したデータドリブンなアセットマネジメントは、アセットの健全性監視、劣化予測、メンテナンス最適化などを実現し、これまでにない価値創造の可能性を秘めています。ISO 55001:2024の新版がデータと知識の管理を重視していることは、この方向性を示しています。

継続的改善に向けてのアドバイス

アセットマネジメントシステムの効果を最大限に引き出すためには、以下の点を意識した継続的な改善が重要です。

  • 経営層の強いコミットメント: 認証取得はゴールではなく、継続的な改善のスタートラインです。経営層は、AMSの重要性を理解し、必要なリソースを確保し、積極的に関与し続ける必要があります。
  • 全従業員の参加意識の醸成: アセット管理は一部の担当者だけでなく、組織全体で取り組むべき課題です。従業員一人ひとりが自身の役割と責任を理解し、主体的に改善活動に参加できる文化を育むことが重要です。
  • PDCAサイクルの徹底: 計画の見直し、実行状況の確認、パフォーマンス評価、改善策の実施というPDCAサイクルを確実に回し続けることで、AMSは常に最適な状態に保たれます。この際、具体的な数値目標を設定し、客観的なデータに基づいて評価を行うことが効果的です。
  • 技術革新への対応: デジタル化の進展や新たな技術の登場に目を向け、それらをAMSに統合することで、より高度で効率的なアセット管理を目指しましょう。
  • 外部の専門知識の活用: ISO 55001の導入や運用、新規格への移行に際しては、専門知識を持つコンサルタントや審査機関と連携することで、スムーズかつ効果的なプロセスを確立できます。

ISO 55001は、組織が長期的に持続可能な成長を遂げるための強力な経営ツールとなり得ます。本記事が、皆様の組織におけるアセットマネジメントの強化と、その先の企業価値向上の一助となれば幸いです。

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コトラ(広報チーム)

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