カスタマーサクセスとは顧客の成功を支える仕事
SaaSにおけるカスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスは、顧客がSaaSを導入した後に、目的を達成できるよう能動的に支援する仕事です。操作方法を案内するだけでなく、顧客の業務課題や目標を理解し、サービスの活用を通じて成果を出せる状態を目指します。
SaaSは契約後も継続して利用されることで収益が積み上がる仕組みです。そのため、顧客が早い段階で価値を実感し、社内で使い続けられるように支援することが重要になります。
カスタマーサポート・営業との違い
カスタマーサポートは、顧客から届いた操作方法や不具合に関する問い合わせに対応する役割です。一方でカスタマーサクセスは、問い合わせを待つだけではなく、利用状況を確認しながら課題が起きる前に働きかけます。
営業は主に契約獲得を担当し、カスタマーサクセスは契約後の活用支援や継続利用を担当します。ただし、顧客の期待に沿った支援を行うには、営業が把握した導入背景や目標を引き継ぎ、連携することが欠かせません。
継続利用と解約防止につながる理由
顧客がサービスを十分に使いこなせず、導入効果を感じられない状態が続くと、解約につながる可能性があります。カスタマーサクセスは、利用状況や顧客との会話からつまずきを把握し、必要な支援を行うことで早期解約を防ぎます。
導入後に顧客が自走できる状態をつくることは、継続利用だけでなく顧客満足度の向上にもつながります。成果を実感した顧客には、利用部門の拡大や上位プランへの変更といった提案もしやすくなります。
カスタマーサクセスの1日の流れ
始業後:顧客の利用状況と対応予定を確認する
始業後は、担当顧客の利用状況や前日の問い合わせ内容、当日の打ち合わせ予定を確認します。利用回数の低下、ログインの減少、初期設定の未完了といった変化がないかを把握し、優先して対応する顧客を整理します。
あわせて、契約更新時期や導入開始時期、前回の打ち合わせで決めた対応事項も確認します。対応履歴が十分に記録されていれば、顧客との会話をスムーズに始められ、担当者が変わった場合でも支援の質を保ちやすくなります。
午前:導入支援や活用相談の打ち合わせを行う
午前中は、導入直後の顧客への初期設定支援や、利用中の顧客との定例打ち合わせを行うことがあります。顧客が何を実現したいのかを確認し、必要な設定や機能、運用方法を案内します。
打ち合わせでは、機能を一方的に説明するのではなく、顧客の業務でどのような効果が期待できるかを伝えることが重要です。顧客の理解度や社内体制に合わせ、次回までに取り組む内容を具体的に決めます。
午後:利用状況の分析と顧客への提案を進める
午後は、顧客ごとの利用データを確認し、活用が進んでいる点や停滞している点を分析します。たとえば、特定の機能が使われていない場合は、操作が難しいのか、利用する必要性が伝わっていないのかを考えます。
分析結果をもとに、活用方法の案内、勉強会への参加案内、追加機能の提案などを進めます。提案は売り込みを目的とするのではなく、顧客が目指す成果に近づくために必要かどうかを基準に判断します。
終業前:対応履歴の記録と翌日の準備を行う
終業前には、顧客との打ち合わせ内容、問い合わせへの対応、次回までの宿題を記録します。記録には、顧客の課題、合意した目標、担当者、期限を残しておくことが重要です。
翌日の打ち合わせ資料や顧客への連絡内容も準備します。日々の情報を整理しておくことで、対応の抜け漏れを防ぎ、チーム内で顧客の状況を共有しやすくなります。
顧客の状況に応じて行う主な支援
導入直後の顧客を支える初期設定と利用開始の支援
導入直後は、顧客がサービスの使い方や設定方法に戸惑いやすい時期です。カスタマーサクセスは、導入目的をあらためて確認したうえで、初期設定、利用者の登録、基本機能の使い方を案内します。
重要なのは、設定完了そのものを目的にしないことです。顧客が最初の成果を得るために必要な行動を明確にし、いつまでに何を終えるかを一緒に決めます。
利用が定着しない顧客への活用提案
利用頻度が低い顧客には、サービスが業務に組み込まれていない、担当者が使い方を理解できていない、社内への展開が進んでいないといった背景があります。利用データだけで判断せず、顧客との対話を通じて原因を確認する必要があります。
原因に応じて、個別の操作案内、活用セミナー、動画やよくある質問の案内などを組み合わせます。顧客が自分たちで使い続けられる状態をつくることが、支援の目的です。
契約更新に向けた成果の振り返り
契約更新が近づいた顧客には、これまでの利用状況や得られた成果を振り返る機会を設けます。利用件数や作業時間の変化など、顧客が価値を確認できる情報を整理します。
四半期ごとの振り返りでは、過去の結果を報告するだけでなく、次の期間に取り組む課題や目標を話し合います。顧客を主役にした対話を行い、次の行動と担当者、期限を合意することが重要です。
利用範囲を広げる追加提案
顧客がサービスを十分に活用し、さらに解決したい課題が見えてきた場合は、利用範囲を広げる提案を行います。たとえば、利用部門の追加、利用者数の拡大、関連機能の導入などが考えられます。
追加提案は、顧客の成功につながる根拠がある場合に行うことが大切です。顧客の状況を踏まえずに提案すると、単なる販売活動と受け取られ、信頼関係を損なうおそれがあります。
予定どおりに進まない日に発生する対応
操作方法や不具合に関する問い合わせへの対応
カスタマーサクセスの業務では、予定していた分析や資料作成の途中に、操作方法や不具合に関する問い合わせが入ることがあります。まずは内容を確認し、顧客の業務への影響や緊急度を判断します。
操作案内で解決できる場合は、分かりやすい手順を伝えます。不具合の可能性がある場合は、必要な情報を整理してサポートや開発部門へ共有し、顧客には対応状況と次の連絡予定を伝えます。
利用頻度の低下から解約の兆候をつかむ
ログイン頻度や主要機能の利用回数が下がっている場合、顧客の関心が低下している可能性があります。また、定例会議への参加者が減る、担当者からの返信が遅くなる、将来の計画について話されなくなるといった変化も注意すべき兆候です。
ただし、利用頻度の低下だけで解約を決めつけることはできません。業務の繁忙期や組織変更など、顧客側の事情も考えられるため、状況を確認するための連絡を行います。
緊急度を判断して顧客への連絡を優先する
突発的な対応が重なった場合は、すべてを同じ優先度で扱わないことが重要です。業務が停止している顧客、契約更新が近い顧客、解約の兆候がある顧客などを優先し、必要に応じて社内の担当者にも協力を依頼します。
優先順位を判断する際は、顧客への影響の大きさ、対応期限、代替手段の有無を確認します。対応が遅れる場合でも、顧客に現状と見通しを早めに伝えることで不安を抑えられます。
問題の原因を整理して再発防止につなげる
問い合わせやトラブルへの対応後は、個別の解決で終わらせず、なぜ起きたのかを振り返ります。同じ問い合わせが繰り返される場合は、案内方法、画面上の導線、マニュアルの分かりにくさなどに原因があるかもしれません。
原因を整理し、よくある質問の追加、操作ガイドの改善、社内の引き継ぎ内容の見直しなどにつなげます。再発防止を進めることで、顧客の負担と担当者の対応工数を減らせます。
顧客支援を進めるための社内連携
営業と連携して契約内容や顧客の期待を引き継ぐ
契約前に顧客がどのような課題を持ち、何を期待して契約したのかを理解するためには、営業からの引き継ぎが欠かせません。契約内容だけでなく、導入の背景、関係者、意思決定者、顧客が目指す成果も共有します。
引き継ぎが不十分だと、カスタマーサクセスが顧客に同じ質問を繰り返したり、契約時の期待と異なる支援を行ったりするおそれがあります。営業と定期的に情報交換し、顧客の期待値をそろえることが重要です。
カスタマーサポートと連携して問い合わせを解決する
カスタマーサポートは、日々の問い合わせを通じて顧客の困りごとを把握しています。カスタマーサクセスは、問い合わせの内容や頻度を確認し、顧客が抱える課題やサービス全体の改善点を見つけます。
問い合わせへの一次対応はサポートが担い、利用定着や業務改善の相談はカスタマーサクセスが担うなど、役割を整理すると対応がスムーズです。顧客の対応履歴を共有し、同じ説明を繰り返さない体制を整えます。
開発・プロダクト部門に顧客の声を共有する
カスタマーサクセスは、顧客から直接聞いた要望や不満、利用上のつまずきを開発・プロダクト部門へ届ける役割も担います。ただし、個別の要望をそのまま伝えるのではなく、背景にある課題、利用者の数、業務への影響を整理して共有することが必要です。
新機能が公開された後も、顧客に認知され、実際に使われて初めて価値が生まれます。カスタマーサクセスは、顧客への案内や利用状況の確認を通じて、新機能の定着にも関わります。
マーケティングと連携して活用事例を広げる
カスタマーサクセスが把握している顧客の成功事例や活用方法は、マーケティング活動に役立ちます。顧客がどのような課題を持ち、どのようにサービスを活用して成果を得たのかを共有することで、見込み顧客向けのコンテンツやセミナーの企画につなげられます。
一方で、マーケティングが持つ顧客像や反応のよいテーマは、既存顧客向けの情報提供にも活用できます。両部門が連携することで、新規顧客の獲得と既存顧客の活用促進をつなげやすくなります。
支援方法で変わるカスタマーサクセスの働き方
個別の打ち合わせを中心に支援するハイタッチ
ハイタッチは、顧客ごとに担当者がつき、個別の打ち合わせや導入支援を行う方法です。契約規模が大きい顧客や、複雑な導入支援が必要な顧客に対して、丁寧な支援を行います。
顧客の課題に合わせた提案ができる一方で、担当者の工数がかかります。そのため、顧客の重要度だけでなく、導入の難しさや成長の可能性も踏まえて対象を決めます。
多くの顧客を効率よく支援するロータッチ
ロータッチは、セミナー、勉強会、オンライン研修などを通じて、複数の顧客を同時に支援する方法です。個別支援よりも効率よく、顧客の活用を後押しできます。
同じ課題を持つ顧客に向けて、テーマ別のセミナーを開催することもあります。必要に応じて個別相談につなげることで、効率性と顧客ごとの対応を両立できます。
自動配信や利用データを活用するテックタッチ
テックタッチは、メール、動画、よくある質問、チャットボット、画面上の操作ガイドなどを活用して、多くの顧客を支援する方法です。顧客が必要なときに自分で情報を確認できるため、担当者の負担を抑えながら支援を広げられます。
利用データをもとに、初期設定が未完了の顧客へ案内を送る、特定機能を使っていない顧客へ活用方法を届けるといった対応も可能です。自動化だけに頼らず、必要な顧客には人による支援へつなぐ設計が重要です。
顧客の規模や状況に合わせて支援方法を使い分ける
ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチは、どれか一つだけを選ぶものではありません。顧客の契約規模、利用状況、導入の難しさ、社内体制などに応じて組み合わせます。
たとえば、導入直後は個別支援を行い、利用が定着した後はセミナーや自動配信を中心にする方法があります。顧客の変化に応じて支援方法を見直すことで、限られた人員でも継続的な支援を行いやすくなります。
カスタマーサクセスで求められる力と仕事のやりがい
顧客の課題を聞き出して整理する力
カスタマーサクセスには、顧客の言葉をそのまま受け取るだけでなく、背景にある業務上の課題を整理する力が求められます。顧客が「使いにくい」と感じている場合でも、操作方法、運用ルール、社内の役割分担など、原因はさまざまです。
会話を通じて事実を確認し、課題を分けて考えることで、適切な支援方法を提案できます。相手の業務を理解しようとする姿勢が、信頼関係の基盤になります。
利用状況を読み取り次の行動を考える力
カスタマーサクセスでは、顧客の声だけでなく、ログイン回数や機能の利用状況といったデータも活用します。数値の変化から、利用が進んでいるのか、つまずいているのか、解約の兆候があるのかを考えます。
ただし、データだけで顧客の状況を判断することはできません。利用データと顧客との会話を組み合わせ、次にどのような連絡や提案を行うべきかを考える力が必要です。
社内を巻き込みながら解決へ進める力
顧客の課題は、カスタマーサクセスだけで解決できるとは限りません。不具合であれば開発部門、契約内容であれば営業、問い合わせ対応であればサポートとの連携が必要になります。
関係者に状況を正確に伝え、優先度を共有し、解決までの流れをつくる力が求められます。顧客の声を社内へ届け、組織全体で顧客の成功を支える役割がカスタマーサクセスにはあります。
顧客の成果を長期的に支えられるやりがい
カスタマーサクセスのやりがいは、顧客がサービスを使えるようになるだけでなく、導入目的を達成し、業務や事業に変化が生まれる過程を支えられる点にあります。導入時には不安を感じていた顧客が、自ら活用方法を考え、成果を語れるようになることもあります。
顧客の成功が継続利用や信頼関係につながり、結果として自社の成長にもつながります。顧客と長期的に向き合い、社内外の多くの人と協力しながら価値をつくることが、カスタマーサクセスの大きな魅力です。











