コトラ（広報チーム） 
はじめに
本記事で解説するテーマ
本記事では、「コンサル転職は本当に簡単なのか」という疑問に対し、未経験からコンサルティング業界へ転職するための最新事情を詳しく解説します。特に、未経験者が直面する疑問や不安を解消し、成功への道筋を明確にすることを目指します。
想定読者像と「簡単」の定義
本記事の想定読者は、キャリアチェンジを考えている20代後半から30代前半のビジネスパーソン、特にコンサルティング業界に興味があるものの、未経験という点で不安を感じている方々です。「簡単」の定義としては、特別なコネクションや超人的なスキルがなくても、適切な準備と戦略によって転職の成功確率を高められる状態を指します。
なぜ今、未経験からコンサル転職が増えているのか
コンサル業界の市場動向と採用拡大
コンサルティング業界は、現在、世界的に見ても日本国内においても市場規模が拡大傾向にあります。特に日本では、2017年の9,644億円から2022年には1兆8,281億円へと成長しており、今後も市場拡大が予測されています。このような市場の成長に伴い、各コンサルティングファームでは積極的な採用活動を行っており、未経験者にも門戸を広げています。
DX需要・多様なバックグラウンドの重視
コンサルティング業界が未経験者採用を増やす背景には、企業のDX（デジタルトランスフォーメーション）推進の需要拡大や、多様なバックグラウンドを持つ人材の必要性が高まっていることが挙げられます。
- DXの加速 政府がDX推進を掲げ、多くの企業がデジタル技術の導入やビジネスモデルの変革を求めています。しかし、ITに精通した人材が不足している企業が多く、外部の専門家であるDXコンサルタントの需要が急増しています。
- 多様な業種知識の必要性 従来のコンサルタントはエリートというイメージが強かったですが、現在は小売、人事、エンジニア、経理など、さまざまな業界・職種出身者が活躍しています。これは、企業の抱える課題が高度化・多様化し、特定の業務知識や現場経験が重視されるプロジェクトが増えたためです。
- 若手・第二新卒層の採用強化 特に20代から30代前半のポテンシャルを持つ人材が、戦略系・総合系コンサルティングファームで積極的に採用されています。「未経験歓迎」の求人枠や、第二新卒向けの採用も再開されており、採用の裾野が広がっています。
未経験からコンサル転職の実態と難易度
「簡単」と言われる背景・理由
コンサル転職が「簡単」と言われる背景には、上記で述べたような市場の拡大と採用の間口の広がりがあります。特にDX案件の増加により、ITスキルや特定の業界知識を持つ人材の需要が高まり、異業種からの転職がしやすくなっているのが現状です。
未経験でも内定する人の共通点
未経験からコンサルティングファームに内定する人には、以下のような共通点があります。
- 課題解決力 複雑な問題を構造化し、根本原因を特定する能力。過去の経験から課題をどのように解決したかを論理的に説明できることが重要です。
- 仮説思考 限られた情報の中でも、まずは仮説を立てて検証する思考プロセス。効率的に問題解決を進めるために不可欠なスキルです。
- コミュニケーション力 相手の意図を正確に理解し、自身の考えを明確に伝える能力。誠実で丁寧に話す姿勢が評価されます。
- 抽象化スキル 前職での具体的な成果を、コンサルティングに応用できる汎用的なスキル（抽象化された能力）として説明できることです。例えば、「営業で売上150%達成」を「顧客課題を発見し最適な提案につなげる力がある」と表現できるなどです。
よくある失敗例・選考突破のカギ
未経験からのコンサル転職で失敗するケースとして、「思考の浅さ」「抽象的な志望動機」「成果を抽象化できない」「ケース面接の準備不足」「伝え方・論点整理の弱さ」「業界理解の浅さ」が挙げられます。
選考を突破するためには、これらの弱点を克服する「正しい準備」がカギとなります。具体的には、PREP法やロジックツリーを使った論理的な説明、志望動機を3階層で構成する、ケース面接の「型」を習得するなどの対策が有効です。
重視されるスキル・職歴・学歴とは
コンサル転職で評価されるポイント
コンサル転職で評価されるのは、特定の資格や経歴だけでなく、普遍的なビジネススキルです。
- 論理的思考力（ロジカルシンキング） 複雑な課題を整理し、構造化して考える力はコンサルタントにとって最も重要です。
- 問題解決能力 クライアントが抱える課題を特定し、最適な解決策を提案する能力が求められます。
- コミュニケーション能力 クライアントやチームメンバーと円滑に意思疎通を図り、信頼関係を構築する力が不可欠です。
- 調査・分析能力 客観的なデータに基づき、課題の根拠を見つけ出す能力も重視されます。
- プロジェクト管理能力 プロジェクトを計画・実行・監視・調整し、目標達成に導く能力も必要です。
- ドキュメンテーション・プレゼンテーションスキル 提案内容を分かりやすく資料にまとめ、説得力を持って説明する能力も重要です。
年齢・職務経歴・学歴の影響
- 年齢 コンサル転職において年齢による明確な制限はありませんが、年代によって求められるものが異なります。20代前半はポテンシャル採用が中心で、地頭力や成長意欲が重視されます。20代後半～30代前半は最も転職しやすい年齢層で、これまでの経験を活かした即戦力性が期待されます。30代後半～40代以降は、特定領域の高い専門性やマネジメント経験が求められる傾向にあります。
- 職務経歴 未経験からの転職が大多数を占めており、多様な職務経歴が評価されます。営業職は課題発見力やコミュニケーション力、経理・財務職は数字に強い分析力、エンジニアは技術理解の深さや論理的思考力、企画・マーケティング職は仮説構築力やプロジェクト推進力がそれぞれコンサルティングに活かせると評価されます。
- 学歴 学歴が転職の合否に直接影響する割合は低いとされていますが、結果的に有名大学出身者が多いのは事実です。しかし、重要なのは学歴そのものではなく、コンサルタントとして必要な「論理力」「理解力」「数的処理能力」といった地頭力や、問題解決に取り組む姿勢です。筆記試験でこれらを確認し、面接で個人の適性やマインドが重視されます。
資格や語学力はどこまで必要か
- 資格 コンサルタントになるために必須の資格はありません。しかし、特定の専門性を示す資格は、書類選考の通過率を高めたり、面接での説得力を補強したりする上で有利に働くことがあります。
- ITコンサルタント：基本情報技術者、プロジェクトマネージャ試験、ITストラテジスト
- 戦略コンサルタント：PMP®、中小企業診断士
- 人材コンサルタント：社会保険労務士、キャリアコンサルタント試験
- 財務コンサルタント：公認会計士、税理士
- その他：MBA（経営学修士）、簿記2級以上
- 語学力 外資系ファームやグローバルプロジェクトでは英語力が必要とされる場合もありますが、ほとんどのコンサルティングファームは日本語のみで対応可能です。TOEICスコアよりも、ビジネスで実際に使える英語力が重視されます。入社後に学ぶ意欲があれば、現時点で英語力がなくても転職は可能です。
戦略系／総合系／IT系などコンサルの種類別の難易度・特徴
各コンサル分野の特徴・求められる人物像
コンサルティングファームは、その専門分野によって大きくいくつかの種類に分けられます。
- 戦略系コンサルティングファーム
- 特徴：企業の経営層が抱える事業計画、戦略立案、新規事業立案、M&A戦略など、経営の最上流フェーズの課題解決に特化しています。
- 求められる人物像：高度な論理的思考力、仮説構築力、市場や業界トレンドに対する深い洞察力が必要です。少人数精鋭の組織が多く、ポテンシャル採用も行われますが、選考難易度は非常に高いです。
- 総合系コンサルティングファーム
- 特徴：広範囲の業界や組織に対して、経営戦略から業務オペレーション改善、システム構築、人材育成、ITシステムの導入まで総合的なアドバイスを提供します。大規模なファームが多く、多様なプロジェクトを手掛けます。
- 求められる人物像：幅広い業務知識と、変化への対応力、チームでのプロジェクト推進力、そして顧客の課題を多角的に捉える柔軟性が求められます。未経験者の採用ボリュームが最も多い領域です。
- IT系コンサルティングファーム
- 特徴：ITを活用して企業の課題を解決します。IT投資計画の策定、必要なツールの導入支援、システムの分析・選定など、DX推進の中核を担います。
- 求められる人物像：ITに関する専門知識はもちろん、ITや最新テクノロジーをビジネスに適用するビジネス視点が必要です。論理的思考力やプロジェクトマネジメント力も重視されます。DX需要の高まりから、エンジニア出身者など、技術理解の深い人材が特に求められています。
- 財務コンサルティングファーム（FAS）
- 特徴：M&Aや資本政策の策定支援、財務デューデリジェンスなど、企業の財務戦略に関わる専門的なアドバイスを提供します。
- 求められる人物像：財務・会計に関する高度な専門知識が必須です。公認会計士などの資格があると有利です。
- 人事コンサルティングファーム
- 特徴：人事部門の問題解決を支援し、採用活動支援、人材育成、人事制度の構築などを手掛けます。
- 求められる人物像：人事制度や組織開発に関する専門知識、従業員や管理職との円滑なコミュニケーション能力が求められます。
未経験から狙いやすい領域はどこか
未経験からコンサル転職を目指す場合、特に狙いやすいのは「総合系コンサルティングファーム」と「専門系コンサルティングファーム（特にIT/DXコンサル）」です。
- 総合系コンサルティングファーム
- 採用人数が多く、プロジェクトの幅が広いため、多様なバックグラウンドの未経験者を受け入れる体制が整っています。自身の業界経験や職務経験を活かしやすい「特化チーム」も多く存在します。
- IT/DXコンサルティングファーム
- DX需要が非常に高く、IT技術とビジネスの両方に精通した人材が求められています。ITエンジニア出身者など、特定の技術的な専門性を持つ未経験者が即戦力として評価されやすい傾向にあります。
戦略系コンサルは最難関ですが、ポテンシャル採用枠も存在するため、高い思考力と意欲があれば挑戦の余地はあります。
未経験からコンサル転職を成功させるプロセス
自己分析と職務経歴書の作成ポイント
未経験からのコンサル転職を成功させるには、まず徹底的な自己分析が不可欠です。
- 強みの棚卸し これまでの経験を単なる事実の羅列ではなく、「課題設定の経験」「困難をどう突破したか」「再現性のあるプロセス」を意識して抽象化し、コンサルティングに活かせる「再現性のあるスキル」として言語化することが重要です。
- 職務経歴書の作成 STAR（Situation／Task／Action／Result）やPREP（Point／Reason／Example／Point）のフレームワークを活用し、論理的かつ簡潔に成果と強みを記述します。定量的なデータを用いて具体性を持たせ、コンサルタントとしてのポテンシャルが伝わるように構成します。
ケース面接・フェルミ推定対策の要点
ケース面接とフェルミ推定は、コンサル転職の最大の難関の一つですが、適切な対策で突破可能です。
- ケース面接
- 「問題整理」「構造化（MECEでの分解）」「仮説構築（優先順位付け）」「深掘り」「結論」の5つのステップを順序通りに行う「型」を習得します。
- いきなり答えを出そうとせず、論理的な思考プロセスを面接官に示すことが重要です。
- フェルミ推定
- 正しい数値を出すことよりも、「分解する力」「合理的な前提を置く力」「計算を最後までやり切る力」が評価されます。
- 定番のテーマを「型通り」に解く練習を重ね、自分の置いた前提を論理的に説明できるようにします。
- 練習方法
- 「パターン学習」「他己添削」「模擬面接」「過去問演習」を組み合わせることで、短期間でのスキルアップが可能です。特に、模擬面接では本番と同じ緊張感の中で実践的な練習を積むことが有効です。
実際の成功/失敗事例に学ぶ
- 成功事例
- 元営業職が「顧客課題の発見力」「仮説検証力」「コミュニケーション力」を抽象化して総合コンサルへ転職。
- 元人事（バックオフィス）が「業務プロセス理解」「組織課題の解像度」を活かして人事特化型コンサルへ。
- 元エンジニアが「技術理解の深さ」「論理的思考力」を武器にDX/ITコンサルへ。
- 元企画・マーケティング職が「仮説思考」「事業分析」「プロジェクト推進」を活かして戦略/総合コンサルへ。
これらの事例から、未経験からでも自分の経験を「コンサルティングに活かせるスキル」として言語化し、選考対策を徹底することが成功のカギであることが分かります。
コンサル転職後に得られるものと注意点
年収・キャリア・働き方の変化
コンサル転職は、高い年収、スピーディーなキャリアアップ、多様なスキル習得といった大きなメリットがあります。
- 年収 コンサル業界は、他の職種に比べて初年度から高い年収水準であり、役職が上がるごとに給与が急上昇する特徴があります。20代〜30代で年収1000万円を超えるケースも少なくありません。
- キャリア 実力主義の文化が強く、成果と役割によって年収が決まるため、未経験でも早期に昇進・昇給が可能です。また、多様な業界やテーマのプロジェクトに携わることで、幅広い知識と経験を短期間で習得でき、将来的なキャリアパスの選択肢が広がります（ポストコンサル）。
- 働き方 プロジェクト制が一般的で、短期間で集中して業務に取り組むことが多いです。外資系ファームでは「Up or Out（昇進するか、そうでなければ退職するか）」の文化が根付いている場合もありますが、日系ファームでは比較的離職率が低い傾向にあります。近年は働き方改革の影響もあり、残業は減少傾向にあります。
入社後のギャップや苦労するポイント
華やかなイメージがある一方で、入社後のギャップや苦労する点も存在します。
- 業務の泥臭さ コンサルタントは、華々しい戦略立案だけでなく、地道な情報収集や資料作成といった泥臭い業務も多く担います。
- 高いプレッシャーと長時間労働 クライアントからの期待値が高く、常に質の高いアウトプットが求められるため、プレッシャーが大きい環境です。プロジェクトによっては長時間労働になることもあります。
- コモディティ化への対応 AIの進化により、データ分析や定型業務の一部が自動化される中で、コンサルタントはより高度な思考力や創造性、専門性を突き詰める必要があります。
長期的なキャリアパスと「ポストコンサル」
コンサルティングファームで経験を積んだ後、多くのコンサルタントは「ポストコンサル」と呼ばれる次のキャリアに進みます。
- 事業会社の経営企画・役員 コンサルタントとして培った経営視点や問題解決能力を活かし、事業会社の経営層や経営企画部門で活躍するケースが多いです。
- フリーランスコンサルタント 特定の専門分野（DX、ESG、M&Aなど）に強みを持つことで、独立してプロジェクトベースで高単価の案件を獲得する道もあります。
- 起業 コンサルタントとしての経験や人脈を活かし、自ら事業を立ち上げる人も少なくありません。
長期的な視点でキャリアパスを描き、自身の専門性や市場価値を高めることが重要です。
よくある質問（FAQ）
年代別の転職チャンス
- 20代前半（第二新卒）
- ポテンシャル採用が中心で、地頭力や論理的思考力、成長意欲が重視されます。積極採用を行うファームも多く、チャンスは十分にあります。
- 20代後半～30代前半
- 最も転職しやすいボリュームゾーンです。これまでの職務経験や業界知識が評価され、即戦力として期待されます。
- 30代後半～40代以降
- 転職難易度は上がりますが、特定の専門性やマネジメント経験、特定の業界知識がファームのニーズと合致すれば、マネージャー以上のポジションでの採用も可能です。
コンサルへの転職に向いている人のタイプ
- 好奇心旺盛で、常に新しい知識を吸収しようとする人。
- 難題を解決することに喜びを感じる、問題解決が好きな人。
- 論理的に物事を考え、仮説を立てて検証できる人。
- コミュニケーション能力が高く、多様な人々と信頼関係を築ける人。
- 肉体的・精神的にタフで、高いプレッシャーの中でも成果を出せる人。
- 自らのキャリアを戦略的に考え、自律的に行動できる人。
失敗しないための準備・心構え
- 自己分析を徹底し、自身の強みや経験を「コンサルで活かせるスキル」として言語化する。
- 志望動機を明確にし、「なぜコンサルか」「なぜそのファームか」を具体的に説明できるようにする。
- ケース面接やフェルミ推定の「型」を習得し、実践的な練習を繰り返す。
- 業界研究を深め、コンサルティングファームの種類や業務内容、トレンドを理解する。
- 入社後のギャップをなくすため、コンサルタントの仕事のリアルな側面も理解しておく。
まとめ
未経験でもチャンスはある！賢い準備で成功を手に
コンサルティング業界は、DX推進やAIの台頭といった社会の変化を背景に市場が拡大しており、未経験者にも大きなチャンスが広がっています。特に、総合系やIT系のコンサルティングファームでは、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用しています。
未経験からコンサル転職を成功させるには、「論理的思考力」「問題解決能力」「コミュニケーション能力」といった普遍的なビジネススキルを磨き、自身の経験をコンサルティングに活かせる形で言語化する「賢い準備」が不可欠です。ケース面接やフェルミ推定といった選考対策も、正しい「型」を習得し、徹底的に練習することで克服可能です。
今後のコンサル転職市場予測とアドバイス
今後もコンサルティング業界は成長が続くと予測されており、特にITやデジタルトランスフォーメーション（DX）に関連する人材の需要は高まる一方でしょう。また、戦略の策定だけでなく、実行支援までを担う「実行支援案件」が増加する傾向にあり、現場に入り込み、クライアントと伴走できる人材の価値は一層高まります。
コンサル転職を目指す方へのアドバイスとしては、自身の強みと興味のある領域を明確にし、その領域で求められるスキルや知識を戦略的に習得することが重要です。また、常に最新の業界トレンドにアンテナを張り、変化に対応できる柔軟な姿勢を持つことも成功への鍵となります。
