コトラ（広報チーム） 
女性管理職育成の背景と重要性
建設業界における女性参画の課題
建設業界は長らく「男性の職場」というイメージが強く、女性の参画が進みにくい業界のひとつとされています。その要因には、過酷な労働環境や長時間労働がイメージとして先行すること、女性の技術職や営業職への認知度が低いこと、そして現場での女性社員を支えるサポート体制の課題などが挙げられます。
また、建設業界全体として女性社員の数そのものが少ないことも課題として顕著です。大成建設においても女性社員の割合は17.9%にとどまり、特に女性管理職の割合は3.4%と、まだ他業界と比較しても低い水準にあります。このような背景から、いかに女性の職域を広げ、長期的にキャリアを築ける環境を提供するかが重要なテーマとなっています。
大成建設が女性管理職育成を掲げた理由
大成建設が女性管理職育成を掲げた理由の一つとして、多様性（ダイバーシティ）の重要性への認識があります。同社は「人がいきいきとする環境を創造する」という経営理念を掲げており、女性をはじめとする多様な人材が働きやすい環境づくりを目指しています。
特に管理職における女性比率が低いことは、企業全体としてのバランスや多様性の観点から大きな課題と捉えています。管理職においても女性が指導的立場で活躍することは、組織がより多様な意見を取り入れ、柔軟で強い職場になる上で不可欠だと考えられています。このため、2030年までに女性技術者比率を15%以上、女性管理職を2015年比で10倍にするという具体的な目標を掲げ、その実現に向けた長期的な計画を進めています。
社会的責任としてのダイバーシティ推進
大成建設は、女性管理職育成を進めることが自社利益の向上だけでなく、社会的責任を果たすことに直結すると考えています。建設業界全体を見渡しても、女性の参画を促進することは遅れている現状があり、この課題に取り組むことは同業界におけるロールモデルの役割を担うことでもあります。
加えて、政府主導で進められている「女性活躍推進法」や「ポジティブ・アクション」の方針と調和する形で、ダイバーシティ＆インクルージョンの推進を行っています。この取り組みは、単なる女性社員比率の向上にとどまらず、ライフイベントや健康課題にも配慮した支援体制の強化にも重点を置き、多様な価値を生み出す職場環境づくりを目指しています。
大成建設が進める女性管理職育成の具体策
女性職域拡大の取り組み
大成建設は、女性が建設業界で活躍できる環境を整えるため、職域拡大に力を入れています。建設業界は従来、男性中心の職場とされてきましたが、この固定観念を払拭し、女性技術者や女性営業職の活躍を支援しています。また、社内公募制度を活用し、女性社員の意欲や能力を公正に評価する仕組みを整えています。さらに、工事現場においては「けんせつ小町工事チーム」が主導となり、女性技術社員が働きやすい環境づくりに努めています。このような取り組みにより、多様な職種で女性が活躍できる場を広げています。
基幹職採用とその後の成長支援
大成建設は、女性社員の基幹職採用を積極的に進めるとともに、採用後の育成にも注力しています。「長期育成プログラム」を導入し、特に入社10年目前後の女性社員を対象に、リーダーシップや管理職に求められるスキル向上を目指す研修を実施しています。このポジティブ・アクションに基づく取り組みは、性別によるハンディキャップを解消し、男女平等の昇進機会を提供するものです。また、これらのプログラムを通じて、次世代を担う女性管理職の育成を進めています。
健康課題やライフイベントへの対応
大成建設では、社員一人ひとりの健康課題やライフイベントに対応できる制度・環境づくりを目指しています。育児や介護休暇制度の整備に加え、フレキシブルな働き方を可能にするテレワークの導入や勤務時間の調整を行っています。また、男性社員の育児参加を奨励することで、女性がキャリアを続けやすい環境を構築しています。これにより、結婚や出産といったライフイベントを経ても女性社員がキャリアを止めることなく成長できる体制が整えられています。
専門研修とキャリアアップ支援
女性が建設業界で専門性を高め、キャリアを積み上げていくために、大成建設は多彩な研修プログラムを提供しています。技術系社員向けの専門研修では、最新の建設技術やマネジメントスキルを学ぶ機会を提供しています。また、キャリアアップを目指す女性社員のためには、上司やメンターによる指導体制やキャリアパス相談体制を整備しています。これらの取り組みによって、女性社員が主体的にキャリアを形成し、管理職へのステップを自然に進めることが可能となっています。
現場での取り組みと成功事例
施工現場での女性活躍を支える環境整備
建設業界は従来「男性の職場」という先入観が強く、女性が施工現場で活躍することへのハードルが高い状況が続いていました。しかし大成建設では、この状況を打破するための積極的な環境整備を進めています。その一例が「けんせつ小町工事チーム」の活動です。このチームは全国各地で女性技術社員が活躍しており、働きやすい施工現場づくりを推進しています。
具体的には、安全で清潔な更衣室やトイレの設置など、女性が安心して働ける環境を整えることに注力しています。また、社内公募制度を活用して意欲のある女性社員が積極的に現場業務に挑戦できる仕組みを提供し、技術向上の機会を創出しています。これらの取り組みは、女性管理職の育成にも繋がる重要な基盤となっています。
女性管理職のロールモデル事例
大成建設では、女性管理職の成功事例を積極的に発信する取り組みを行っています。例えば、施工現場を率いる女性所長やプロジェクトマネージャーといったロールモデルの存在は、多くの女性社員に管理職となることへの希望を与えています。これにより、女性社員は明確なキャリアビジョンを描きやすくなっています。
さらに、こうしたロールモデル社員が自らの経験や成功談を共有する場を設けることで、組織全体で女性活躍への理解が深まります。このような事例紹介は、女性のみならず男性社員にとっても多様性の価値を学ぶ貴重な機会となっています。
部門間の連携で実現する職場環境の改善
大成建設では、女性が働きやすい職場環境づくりのために、部門間の連携を強化しています。例えば、人事部門と現場管理部門が協力することで、女性社員の配置やキャリア形成の支援が一体的に行われています。また、現場や営業の各部門が連携して情報共有を行い、女性社員がスムーズに業務を進められる体制を整えています。
加えて、部門間での課題共有や改善策の提案を定期的に議論することで、多様な視点を取り入れた職場環境の改善が可能となっています。こうした取り組みは、女性管理職の成長を後押しするだけでなく、働くすべての社員にとっても良好な職場の実現に寄与しています。
全社的なサポート体制の構築
経営層のリーダーシップとメッセージ
大成建設は、トップダウンでの取り組みを通じて、女性管理職の育成に積極的に取り組んでいます。経営層がリーダーシップを発揮することで、女性活躍推進を経営戦略の中核に据え、一貫したビジョンを社内外に発信しています。例えば、経営層からは「ダイバーシティなしでは企業の持続可能な成長は実現できない」というメッセージが繰り返し伝えられており、こうした宣言が全社員の意識を変える大きな原動力となっています。
男性社員との協力によるエンパワーメント
建設業界は男性中心の職場環境が伝統的に根付いている業界ですが、大成建設では男性社員と女性社員が共に協力し、女性管理職を支援するという文化を育てています。たとえば、育児や介護といったライフイベントに対応するための柔軟な勤務制度を導入し、男性社員も積極的に育児休暇を取得しやすい環境を整備しています。このような取り組みを通じて、働く男女が相互に支え合い、多様性を尊重する風土が醸成されています。
社内のDE&I（ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン）推進室
大成建設では、ダイバーシティを推進するために専任の部署が設置されています。この「DE&I推進室」では、女性社員のキャリアアップを支援するための制度や社会的課題への対応策を企画・実行しています。また、定期的に全社員を対象とした意識調査を実施し、職場環境や制度の課題を把握、それに基づき改善を進めています。このような組織的な取り組みにより、すべての社員が平等に働きやすい環境が広がっています。
全社員参加型の施策とその意義
大成建設の女性管理職育成の取り組みには、全社員が積極的に参加できる仕組みが導入されています。「けんせつ小町工事チーム」をはじめ、女性技術者が主体となるプロジェクトや、全社員で多様性について考えるワークショップが開催されています。全社員参加型の取り組みは、組織全体での意識改革を促し、長期的に持続可能な変革を実現するうえで欠かせない要素となっています。その結果、女性管理職育成を通じた企業全体の競争力向上につながっています。
さらなる発展に向けた課題と展望
女性管理職比率の目標と進捗状況
大成建設では、女性管理職者数を2015年度比で2025年までに10倍にするという目標を掲げています。この目標の達成に向けて、公正な評価やキャリアアップを重視し、研修や施策を広く実施しています。現時点での女性管理職の割合は3.4%と、まだ低い水準にありますが、2030年までにはさらなる目標として新卒採用女性比率30%、女性技術者比率15%以上を目指し、取り組みを加速させています。これらの活動を通じて、女性管理職比率を着実に引き上げる土台を築きつつあります。
技術系職種での女性活躍推進策
技術系職種での女性活躍は、大成建設が特に力を入れている分野です。建設業界では「男性の職場」という固定観念が根強い中、同社は女性技術者の職域拡大に向けてさまざまな取り組みを行っています。たとえば、「けんせつ小町工事チーム」では、女性社員が計画から施工、管理まで主体的に関与できる体制を整備しています。また、内閣府主催の「理工チャレンジ」への参画を通じて、女子学生との交流を図り、建設業界への関心を引き上げる活動も行っています。これにより、技術系職種での女性比率向上を目指すだけでなく、業界全体の女性参画意識を変革することを目指しています。
未来目指した新たな取り組みの提案
大成建設がさらなる発展を遂げるためには、現行の施策を進化させるとともに、次の段階を見据えた新しい取り組みが必要です。たとえば、女性管理職がより一層リーダーシップを発揮できる環境をつくるため、部署を超えたネットワーキングの促進やメンター制度の導入が考えられます。また、男性社員にも「ダイバーシティ経営」の意識を深めるための教育プログラムを実施し、男女ともに働きやすい職場作りを支援することも重要です。さらに、AIやDX（デジタルトランスフォーメーション）を活用した業務改善によって、新しい働き方を模索することも未来志向の取り組みのひとつです。このような多角的な施策により、女性管理職育成とその活躍の場をますます広げていく道筋が描けるでしょう。