金融業界コンプライアンス領域の転職〜転職市場の動向と転職の魅力〜

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3 1 - 金融業界コンプライアンス領域の転職〜転職市場の動向と転職の魅力〜

顧客資産を預かり、高い公共性を有する金融機関には、一般企業に求められる以上に高度なコンプライアンス体制の整備と、それを支える強いコンプライアンス意識が求められます。また、金融業界では、金融商品取引法、金融商品販売法、預金者保護法、犯罪収益移転防止法、個人情報保護法など、関連する法律も多く、相次いで行われている法改正や経済情勢の変化への対応も重要な課題です。
組織の信頼性と安全性を確保するために欠かせないコンプライアンスは、重要な経営課題であり、規制強化が進む中、専門人材の需要も増えています。

金融機関におけるコンプライアンスリスク管理

金融機関では、バーゼル銀行監督委員会が公表している「コーポレート・ガバナンス諸原則」で示されている「3つの防衛線」の考え方にのっとり、第一線における自律的統制、第二線による牽制機能、独立した第三線が内部監査を実施することで、リスクガバナンスの適切性・有効性を確保しています。

第二線であるコンプライアンス部門は、組織全体のコンプライアンスリスク管理と法的リスクの最小化に貢献し、顧客の信頼を維持し、金融システムの安定性を確保する重要な役割を担っています。

【3つの防衛線の職務】

(出所)コトラ作成

コンプライアンスの業務

コンプライアンスの主な業務には、法律や規制の追跡と解釈、内部規定の策定、監査とリスク評価、従業員の教育と啓蒙、不正対策、監督機関とのコミュニケーションなどが含まれます。

コンプライアンス担当者は常に最新の法律と規制に精通し、変化するリスクに対応するためにアンテナを張り巡らせると同時に、従業員に対して適切な教育や啓蒙を行い、コンプライアンス意識を高めることが求められます。

業務カテゴリ主な業務
内部管理
企画推進
・社内コンプライアンス体制の整備
・高度化の企画推進
・各種法令対応/当局対応
・社内規程の整備
・各関連部署に対する助言
・社内啓蒙施策/研修の企画/設計/運営
・海外子会社管理
コントロールルーム・利益相反管理
・FW規制対応
・インサイダー取引規制対応
・不公正取引の監視/株式売買審査
・当局への届出業務
・社内研修/教育
AML関連業務・AML管理態勢/態勢の企画及び、推進
・口座開設時のチェック(KYC/反社会等)等
・取引モニタリングや疑わしい取引の届出業務
・AML体制に係る検査/評価
・AML/CFTに関する指導/支援
・社内研修/教育
リテール・
コンプライアンス
・顧客管理、取引管理モニタリング
・法令違反、証券事故等の対応
・苦情、トラブル等の処理
・リテール業務全般にかかる内部管理企画/管理業務
・社内研修/教育
その他内部管理業務・広告、景表法審査
・運用財産の運用に関するモニタリング
・コンプライアンスリスク管理(テスティング/モニタリング)

(出所)コトラ作成

コンプライアンス転職市場の動向

金融業界においては、専門職のキャリア採用が活発になってきている一方で、コンプライアンス部門での採用は遅れていました。しかし、ここ数年の各金融機関のガバナンス態勢の強化と、金融当局によるFATF対応の強化が進んでいることを背景にコンプライアンス部門での人材強化が、急激に進んでいます。

元々少ない人数で業務を行っている金融機関が多く、そのような状況下でキャリア採用強化による人材の流出が発生し、各社不足している人材の確保に本格的に動き出している状況です。

【求人案件数】2023年7月時点

(出所)自社データをもとに作成

金融業界全般で人員拡大傾向にあるのはAMLに係るポジションです。

FATFの第4次対日審査の結果を受けて政府は行動計画を策定しました。その対応期限が2024年3月に迫る中、各金融機関は体制整備を迫られており、企画人材、オペレーション人材ともに採用数が多くなっております。

また、暗号資産業界では2023年6月にトラベルルールが施行されたことにより、取引所の利用者が仮想通貨を送金する際に、送金元の取引所が受取側の取引所に一定の事項を通知することになりました。これにより、オペレーションが煩雑になることから、人材補強は不可欠になっています。

コンプライアンス領域の転職事例と人材流動

コンプライアンス領域の転職事例に関して、コトラでお手伝いした事例の一部をまとめてみました。

採用の傾向としては、経験者が有利であり、十分な経験があれば年齢が高めの方も採用に至るケースが多い状況です。また、証券会社・投資顧問等のコンプライアンス部門は、所属部員が高齢化していることから、若返りを図るため、ポテンシャル人材の採用が見受けられます。この場合、コンプライアンスに意識の高い、金融業界勤務経験のある若手の未経験者を採用する企業もあります。

また、2022年度以降は専門人材の確保を目的として、中途採用を強化している大手金融機関によるコンプライアンス人材の採用も目立っています。

【転職事例】

(出所)自社データをもとに作成

AML領域については、銀行・証券会社・保険間で人材流動が見られます。また、銀行・証券会社・投資顧問では、業法が異なるものの、証券会社・銀行から投資顧問への転職事例もあります。

若手に関しては、過去には証券会社の営業職からコンプライアンスのキャリアチェンジへの事例もあり、若手層のポテンシャル採用であれば、異なる職種からの転職の可能性は十分あると考えています。

コンプライアンス転職の魅力

最後に、コンプライアンス領域の転職をお手伝いしている経験から、この領域での転職の魅力をご紹介します。

コンプライアンス領域における人材はまだまだ不足しており、若返りを図る企業も多いですが、他方で人材確保が困難なため、年齢が高い方の採用も積極的に行っています。過去には70代での採用もありました。

金融業界に限ったことではありませんが、世の中全体でコンプライアンス遵守の重要性が浸透してきており、専門的な知識を持つ人材の需要はさらに高くなっています。同時に、法規制は常にアップデートしているため、業務自体も常に変化し続けており、専門家としてのステータスも高いのが特徴です。自身の知識の向上がそのままキャリアアップに繋がりやすく、結果として、好条件での転職も可能となっています。

また、会社経営に近い立場で、コンプライアンスの側面から会社の発展に寄与できるという点も魅力かと思います。

弊社では、様々なコンプライアンス領域の転職事例がございますので、長期的視点でキャリアパスを考えるお手伝いも可能です。この記事をご覧になり、少しでもご関心を持っていただけましたら、お気軽にご相談をいただければ幸いに存じます。

コンプライアンス領域の最新求人情報

この記事を書いた人

KOTORA JOURNAL | 金融業界コンプライアンス領域の転職〜転職市場の動向と転職の魅力〜

関口大輔

大手証券会社で富裕層向け、中小法人向け営業に従事。プレーヤーとして資産運用、ソリューション営業を長期に経験したほか、部長職としてマネジメントを経験し、現職。

[ 担当業界 ]
証券会社、銀行、税理士・監査法人、事業承継、M&A、アドバイザリーファーム