(後編)「虎の祭典2022」SESSION.1『大手金融機関の人的資本経営元年を振り返って』

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こちらの記事は、2022年12月13日開催の「虎の祭典2022」イベント内容を記事化したものです。

■「虎の祭典2022 〜 優秀人材たち、今こそ金融業界に集結せよ。〜」とは

金融業界やコンサルティングファームのトップリーダーの方々をお迎えし、
新しいビジネス戦略を前に進める人材採用戦略、人材活用戦略、プロフェッショナルのキャリア戦略について、

コトラ代表の大西 利佳子がファシリテーターとなり、本音の議論を交わすイベントです。

>「虎の祭典2022」見逃し配信 公開中!

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金融業は、発展する社会のスピードを加速する「知的総合格闘技」である。

登壇者様のご経歴

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三井住友信託銀行株式会社
取締役専務執行役員
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
執行役専務

井谷 太 様

[ 経歴 ]
三井住友信託銀行で法人営業・不動産・企画部門等を経て、現在人事統括役員。人生100年・脱炭素等、社会課題解決に向けた資金・資産・資本の好循環を生み出す金融機関の役割は益々大きくなります。信託ビジネスの醍醐味をお伝えできればと思います。
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東京海上ホールディングス株式会社
常務執行役員/Group Chief Digital Officer

生田目 雅史 様

[ 経歴 ]
日本長期信用銀行、ドイツ証券、モルガン・スタンレー証券、Visa、BlackRockの後、2018年東京海上HD入社。2021年より現職。金融の2大潮流であるグローバル化とデジタル化を極め、日本の金融機関が世界に貢献する領域を広げて行きたいと考えています。

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マネックスグループ株式会社
常務執行役員/戦略企画室

清水 哲朗 様

[ 経歴 ]
銀行や大手ネット企業を経て、直近では銀行グループの個人ビジネスユニット全般を総括。現在、マネックスグループ戦略企画室で新規事業、アライアンス戦略を担当。各社で新規事業、M&A、改革、オペレーションにも関わってきました。今回は、変革の時代における人材能力の発揮のポイントについて、ディスカッションをしていきたいです。

ファシリテーター

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株式会社コトラ
代表取締役社長

大西 利佳子

[ 経歴 ]
証券会社にてマーケット業務、大手銀行にて法人営業と企画業務に従事後、コトラを設立して20年になります。金融危機でひとが変わり企業が変わり、組織はひとだと実感しています。トップリーダーの皆様との熱い議論を通じて金融業界を盛り上げて参りたいと存じます。

【テーマ2:ビジネスモデル変革に必要な人材とは】

大西:
ビジネスの変革の鍵のお話を伺えたところで、人材の話に移りたいと思います。
皆様のように金融機関のリーダーになっていく人材が、これから数多く出てくると思いますが、どんな人材が今後の金融業界で必要になってくると思いますか。

自前主義からの決別。多彩な人材を招くことで価値を生み出す

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井谷様:
従来の金融業界は、護送船団方式で守られてきて、会社や規制の中でやることがきっちり決まっているという時代が長く続きました。その時代は、色々なことを自前主義でやっていくという考え方で対応することができました。

しかし、それぞれが創意工夫をする必要のある今の時代では自前主義ではなかなか価値を出せなくなってきました。ビジネスを生み出すとかサービスを作るとか、店舗だとかお客様にコンタクトするポイントだとか、こういうものが自前主義ではなくなってきています。特に人材領域で、こうした観点が強くなっていると感じます。

ちなみに当社では、私が入行した30年強前から、キャリア入社の方がいました。同業からというよりは、マスコミ、メーカー、商社から人が入ってきて、そういう方が、15年以上前に、当社の役員になっています。

足元で言うと、サステナビリティ推進のビジネスの中に、テクノロジーベースドファイナンスチームというのを2年前に立ち上げているのですが、ここは、メーカーのR&D部門出身者、水素とか蓄電池とか、農業等に関する博士号を持っている方をお招きして、10人以上のチームになっています。彼らが何をやっているかというと、産業構造の変革に伴い生み出されるインパクトを、専門的な見地から評価しています。

あとはESGの領域でも、世銀や米州開銀でキャリアを積まれた方や、政府系の団体に所属されていた方に来ていただいて、そのチームはESGの梁山泊だと書かれたことがあります。

これらの事例から感じているのは、人が人を呼ぶ、人が仕事を呼ぶ、という循環はすごい、ということです。実際に当社ではすでに20%の人が他社を経験している人材です。

自前主義から決別して、多彩な人材を招くことで価値を生み出せる土壌が、どんどんできてきていると感じます。

非連続な価値創造のために前例を打破する

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大西:
御社は外から見ていても、本当に多彩な方が採用されていると思います。生田目さんが今いらっしゃる組織は、長い間キャリア採用をされなかったけれども昨今、加速度的にキャリア採用をしているとうかがいました。

そんな中で生田目さんが東京海上に入られた印象はいかがですか。

生田目様:
キャリア採用をしていなかったわけではないと思いますが、比較的慎重だったかもしれません。ただこの5〜6年は、毎月2名から3名、キャリア採用ということで経験を持った方に、様々な業種からご参画をいただいています。自動車メーカーや楽天、ヤフー、GAFA企業のご経験を持った方もいらっしゃいます。マーケティングの方、デザイナーの方、あるいはデータサイエンティストの方と、色々な方々にご参画いただいていて、人材の多様性のシンボルになっていると実感しています。

なぜそんなに色々な人材が活躍する余地があるのか、ということですが、金融がデジタル化している。デジタル化した金融で、どんな価値が創造されるか。digitという言葉は、「桁」という意味です。桁違いの色々な可能性にチャレンジできるということが、デジタル化された金融の姿なのです。そうであるとすると、色々な角度の可能性を試す必要がある。実現する必要がある。挑戦する必要がある。その可能性が多ければ多いほど、その金融機関、あるいは事業体は強くなっていく。あらゆる可能性を模索できる、多彩な感性を持った人材を、どんどん活用していかないと、お客様によりよいサービスを提供できませんし、従って競争上の優位も失われていくと考えています。

もう一つは、デジタルということで、非連続な価値創造を実現しようと思ったときには、前例が邪魔をします。何ら疑っていなかったことがブレーキになってしまって、そこを飛び抜けた新しいアイデアを作ることができなくなってしまう。心理的ハードルになってしまう。そういうことをブレークするためにも、多様性ある人材の活用が、大組織ほど必要になっているのではないかと思っています。

そういう意味で、多様性ある組織、人材を作っていこうと思っていますし、外部から参画した人間として、それを全力で体現したいと思っています。

先日、当社の外国人株主の方10名くらいとお会いしたとき、当社の会長の永野が私を紹介して、「生田目は、多様性を体現するリーダー」という、大変光栄なご紹介をいただきました。それを受けて、「私は60近くで、男性で、しかも日本人であるのに、なお多様性のリーダーと紹介いただける永野のgenerousなコメントに感謝します」と言ったところ、外国人の方々が大爆笑していました。

多様性は、特定の区分で実現できるものではなくて、皆様お一人お一人が多様性の要素を持っているのではないかと思います。その中で何が大事かと言うと、何が好きか、何をやりたいか、そういうことをしっかり、仕事の中で組み合わせることを考えていただければと思います。

私自身が若い頃、M&Aをやった時のことですが、オーディオの会社でした。オーディオの会社を、別のオーディオの会社が買収するという案件に携わりました。その案件ができたのは、私が学生時代からオーディオに若干の興味を持っていたので、対象となる企業の価値を、誰よりも早く分かったということです。

皆様がお持ちになっている、皆様ご自身の多様性の要素を、ぜひ金融機関の中で発揮いただきたいと思います。

難しいスキルはいらない。前例を疑う、クエスチョンを持つ。

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清水様:
今日は、企業の方もいらっしゃるのでしょうが、学生の方もお聞きかと思います。難しいスキルが必要だとか、専門性が必要だというわけではありません。

前例を疑う、クエスチョンを持つ、なぜこうなっているんだ、という疑問を持つということが、一番大事だと思います。それをどれだけ持てるかで、考える癖がついていき、結果的に答えを出す力がついていく訓練ができます。それが積み重なっていくことによって、個人の力がついていく。逆に会社側からしてみれば、若い人の声をつぶさないということが、絶対的に大事なのだと思います。

人的資本経営と言いますが、個々の人たちがどうやって幸せになっていくかを考えたり、会社がそこからどうやってパワーをつけていくか考えたとき、個人の考えをつぶさない、育てていく、それを認めていくということを会社側ができれば、その会社は伸びていくと思います。逆に上が強くて何も言えません、という会社だと、結果的には衰退していくのではないかと思います。

ご参加されている学生さん、「そんなことも知らないの」と言われても構わないので、企業に色々質問していけばいいと思います。

【テーマ3:金融業界の今後はどう変わっていくか】

様々な経験を積む個人が組織を強くする

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大西:
清水さんは、副業も大賛成のお考えですね。

清水様:
副業もやっていくべきだと思いますし、会社としても認めていくべきだと思います。結局は個人の幅が広がっていくということが、会社の強みになっていくのだと思いますので。

副業は、収入を得るためだという目的で行う人もいると思いますが、個人が多様な経験を得ることは会社にとってもメリットがある。会社として、その人が副業をすることが正しいと思うのであれば、どんどん推奨していけばいいと思いますし、そこにブレーキをかけていくと、人に力がついていかないですね。

生田目様:
私も副業には大賛成です。私自身も転職を繰り返してきて、複数の業務をやったことで、タフになったと思います。人間は、他流試合をするとタフになるという部分もあるし、金融が総合格闘技だと思ったときに、新しい技を身につけるということが、金融機関の中で能力を発揮するのに非常に大事なことなので、日本社会が副業とか兼業を自由にできるようになっていけばいいと思っています。

私自身も東京海上に来た時に、いきなり初日に、「メルカリの社外取締役になってくれと言われているのだけれど、許可してもらえるか」とお伺いを立てました。私の気持ちも理解していただき、「ぜひやってくれ」というお返事をいただき、やらせていただきました。その分私も、兼業をしているのなら、尚の事、本業である東京海上ホールディングスの仕事に迷惑をかけないようにやっていこう、少ない時間でもアウトプットを最大限出していこうということでやっています。

副業・兼業が、人によってはモチベーションをものすごく高める要素にもなるのかなと思っています。

東京海上では現在、非常に自由に、そういった取組みができるようになっていて、副業・兼業がどんどん進んでおりますので、チャレンジを増やしていきたいと思っています。

大西:
井谷様も人事のトップとして、様々な施策をやっていらっしゃると思います。

井谷様:
社外兼業は、検討中です。ただ、お二人が仰っていることは、私自身も体感しています。

当社では、会社の中に色々な事業がありまして、社内副業というものをやっています。この社内副業は1年くらい前からやっているのですが、副業をする本人の目線とか意欲が高まっているということと、社内副業を受け入れる側の組織活性化力がとても高まっている実感がありますね。次のステップとして、社外での副業というのも、検討する時期に入っています。

大西:
必ずしも社外である必要はなく、社内でも色んな体験を積める環境は素晴らしいですね。

清水様:
クエスチョンを持つというのは、違う文化にいるから初めて、そこで起きていることがおかしいという感覚になると思います。ずっとそこの文化で育っていくと、それが当たり前だということになります。それを、無理矢理にでも、外を知ることによって、「普通じゃない」という感覚を持ち、それが会社として受け入れられることが大事だと思います。

大西:
そうですね。皆様のお話をうかがっていると、ますます金融業界が変わっていく兆しを感じます。

だいぶお時間も迫ってまいりました。
最後に皆様、金融業界の今後に関心を持っている方々に対して、一言お願いします。

自由と挑戦・価値創造・インテグリティ、いまが一番エキサイティングな金融業界

清水様:
金融業界は、堅いとか古臭いとか、最近ですと人気業種ではない、みたいな印象を持たれているように言われていますが、そんなことは全くないと思います。とても自由にできると思いますし、むしろそういった風土を、我々世代が頑張って作っていかなければと思っています。ぜひ若い方、色々なことをやってみたいと思う方は、金融業界の扉を叩いていただければと思います。

生田目様:
金融業というのは価値創造産業であることを信じて疑わない、ということを、改めて申し上げたいと思います。その中で、これから金融業を志す方へのメッセージですが、大きな社会変革を実現する中に組み込まれて仕事をすることができる、そういう産業だと思っておりますし、金融業はこれからもスピードを加速していくのだと思います。

非常にダイナミックで、エキサイティングで、しかも鍛えられる業界であることは間違いないと思っておりますので、ぜひ積極的に門を叩いていただければと思います。

井谷様:
金融界に入って35年、いまが一番エキサイティングで、やりがいを感じています。バブルが崩壊したあと、失われた30年ということで、色々なものが諸外国に比べてキャッチアップできていなかったというふうに思っています。そのあたりの責任は、ここに座っている世代にあると思います。

今日のお話でご理解いただいたと思いますが、色々な取組みが進んできたり、金融機関の体質も変わってきたということで言うと、金融機関が本来果たすべき役割を、いよいよ発揮できる局面が来ているなということを強く実感しています。

生田目様が仰った、「知的総合格闘技」という言葉は非常にいいなと思います。知性、体力、気力をすべて求められるわけですけど、ぜひ今日お聞きの皆様と一緒に付加価値を出していければと思います。

もう一つ、私自身が金融業界に身をおいて、自分自身も意識しているところで言うと、フィデューシャリーという概念とか、インテグリティというところが、どんな産業より強く求められるのではないかと思っていて、金融に長く身を置くものの矜持としても、自負としても、そういう人材の集団でありたいと、強く思っています。

大西:
みなさまのエキサイティングな話を聞くことができました。いかに金融業界のトップリーダーたちが柔軟で、面白く仕事をしているかということが、本日聞いていただいた皆様に伝わっていればいいなと思います。

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金融業は、発展する社会のスピードを加速する「知的総合格闘技」である。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)