投資ファンド業界の現状
国内のPEファンド市場は、世界的な低金利環境や投資家からの資金流入を背景に拡大を続けてきました。近年は金利上昇や世界情勢の変化に伴い、適切な企業バリュエーション(投資価格)の見極めや、買収後の経営支援の難易度が高まっています。
しかし、バイアウトファンドの運用期間は一般に10年程度と長期的であるため、短期的な景気動向にとらわれない持続的な企業価値の引き上げが求められます。現在は、経営者の高齢化に伴う「事業承継」や、大企業からの「事業売却(カーブアウト)」といった投資機会を中心に、市場での存在感を増しています。
投資ファンドとは
「投資ファンド」とは投資家から集めた資金をファンドマネージャーがあるテーマに沿った投資先に投資し、そこから上がる配当や売却益などを投資家に分配する仕組みです。
投資ファンドの投資対象は従来、市場で公開されている株式と債券に限られてきました。しかし近年、従来の投資対象以外のもの(オルタナティブ・アセット、代替資産)に投資するファンドが急成長し、活況を呈しています。ここでは従来のファンドとオルタナティブ投資ファンドとを比較しながら、ファンド業界について紹介していきます。
従来のファンドは、市場で公開されている株式・債券に投資してきました。特徴としては、投資に当たって借り入れを行わない(レバレッジをかけない)こと、収益の大きな柱が手数料であること、空売りしない(ショートポジションを取らない)ことがあげられます。
運用手法は大きくアクティブ運用とパッシブ運用に分かれます。アクティブ運用はファンドマネージャーが独自の手法で銘柄を選択して運用するものです。アクティブ運用には、景気動向などのマクロ分析から業界、銘柄を選定するトップダウン型や、割安株に注目するボトムアップ型などのアプローチがあります。
パッシブ運用は、日経平均やTOPIXなどの株式指数をベンチマークとし、それに連動した運用をするものです。たとえば、日経平均に連動したファンドならば日経平均の算出銘柄をすべて組み入れます。
これに対して、オルタナティブ投資ファンドとは従来とは異なった投資対象・投資戦略で運用するファンドであり、近年世界的に成長を続けています。
オルタナティブ投資ファンドにはプライベートエクイティファンド、ヘッジファンド、不動産ファンドがあげられます。特徴としては、投資にあたり借り入れを行うことで利益率を高める(レバレッジをかける)こと、収益は成功報酬がメインだということ、株式・債券市場の動向に関係なくリターンをあげること (絶対リターン)を追求していることがあげられます。また、ヘッジファンドでは積極的にショートポジションを取ります。
不動産については他の項で詳しく解説するので、以下ではプライベートエクイティファンドとヘッジファンドの2つのオルタナティブ投資ファンドを順に説明していきましょう。
プライベートエクイティファンド
プライベートエクイティファンドとは市場型の運営に適応できない企業や、市場がまだ受け入れられないような企業に投資するファンドです。株式に投資する点で従来のファンドと共通していますが、投資手法などは大きく異なっています。
プライベートエクイティ(PE)は、株式の未公開会社(または事業)に関する投資すべてを含む概念であり企業のライフサイクルによっていくつかのタイプに分かれます。
1.ベンチャーキャピタル : 創業期の企業に投資
ベンチャーキャピタル(VC)は、主に創業期や成長期にある未上場企業(スタートアップ)に投資を行う投資主体です。一般的には機関投資家や企業から資金を集めてファンドを組成し、ハンズオン(手厚い経営支援)を行いながら、株式公開(IPO)や大手企業へのM&A(株式売却)を通じて投資資金の回収(エグジット)を目指します。ファンドの運用期間は標準で10年程度と長く、運用期間の前半(1〜5年目)に投資先の発掘・出資を行い、後半に経営支援と回収を進めます。VCマネージャーは日々の管理手数料と、ファンド運用益に応じた成功報酬(キャリード・インタレスト)を得る仕組みです。
また、事業会社が自社の資金を用いて直接、または子会社を通じて同様の投資活動を行う組織をコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)と呼びます。CVCは単なる財務的リターンだけでなく、自社本業とのシナジー(オープンイノベーション)を重視する点が特徴で、グローバルではインテル・キャピタルなどが世界有数のCVCとして知られています。
かつて日本のVC年間投資額は1,500億円前後(2000年代半ば)にとどまっていましたが、官民によるスタートアップ支援の強化に伴い、近年では年間8,000億円から1兆円規模へと拡大しています。しかし、年間で数十兆円規模の投資が行われる米国などと比較すると依然として規模の差は大きく、日本におけるVC市場およびスタートアップエコシステムは、今後もさらなる拡大と成長の余地を残しています。
2.バイアウトファンド : 成熟期以降の企業に投資
バイアウトファンドは成長の鈍化した成熟企業や事業会社の一部門に投資する主体です。投資家から募った資金のほかに、銀行からの借入金を用いて買収資金を組成し、収益率を向上させます。多くバイアウトファンドは投資先企業に対して積極的な経営支援を行い(ハンズオン)、3~5年をかけて企業価値を向上させた後売却により利益を得ます。バイアウトファンドが行う経営支援は事業戦略の策定、人材の確保や提携先の紹介等広範な範囲に及びます。
バイアウトの手法にはいくつかの種類があります。事業部門のトップや会社の経営陣と共同で投資を行い、投資実行後は引き続きトップマネジメントが経営に当たる方式はMBO(Managemement Buyout)と呼ばれ、子会社の独立や上場企業の非公開化に利用されています。一方、買収後に経営者を外部から送り込む方式は、 MBI(Manegement Buy-in)と呼ばれています。
3.再生ファンド:経営不振企業に投資
再生ファンドは経営不振企業で、立て直しの見通しのあるものに投資する投資ファンドです。投資に際しては、ファンドが過半数の株式(マジョリティ)をとることが一般的ですが、中には債権に投資するファンドもあります。こういったファンドは投資先企業を再建して債権の回収率を上昇させて利益を得るか、デット・エクイティ・スワップ(DES)によって債権を株式に転換し、値上がり益を狙います。
経営不振企業は安価で買収できるため、再建に成功すれば高い利回りが見込めます。再生ファンドでは10~30%のリターンが平均的です。一方、企業を再建するため、投資期間は数年と長期にわたります。企業の再生は人材を派遣しての経営指導や事業の売却・再構築などを行い、売上額や利益率の向上を図ります。
日本では、銀行の不良債権処理により企業の再建が銀行の手に余るようになった時期に、その隙間を補完するように発展しました。
4.ディストレスファンド:破綻企業に投資
ディストレスファンドは不良債権ファンドとも呼ばれ、破綻した企業の債権に投資します。銀行から破綻企業の債権を購入し、処理することで利益を上げます。処理の仕方には以下のような方法があります。
・債務者への売却
・担保となる不動産等の売却
・債権回収を狙うサービサー等への売却
・債務者(企業)の買収を狙うファンドへの売却
日本では、銀行の不良債権処理のニーズが非常に高かった時期、外資が受け皿として参入したのが始まりです。そのころは不良債権の値付けの経験もなく、安価で取引されることが多かったことから「ハゲタカファンド」と呼ばれました。その後、日本勢によるファンドの組成、サービサーの設立によって以前より妙味は薄れたといわれています。
なお、実際の投資会社はバイアウト専門、再生専門ということは少なく、バイアウトファンドと再生ファンドなど複数を手がけることの方が多くなっています。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは株式、債券のみならず商品市場や不動産等あらゆるマーケットに投資し、市場動向によらず利益を上げる(絶対リターン)ことを目的として活動する主体です。通常、金融当局の規制から逃れるためにオフショアを登記地として設定され、資金の募集は私募形式となります。
ヘッジファンドは1949年に始まったとされ、以来さまざまな投資戦略が考えられてきました。最初は割高な株式を買い、割安な株式を売る株式ロング・ショート戦略が一般的でしたが、ジョージ・ソロスは世界経済の動向を予測してあらゆる市場に機動的に投資するグローバル・マクロ戦略で一斉を風靡しました。また98年に破綻したアメリカの大手ヘッジファンドLTCMはレバレッジをかけて金利の裁定取引を行うレラティブ・バリュー戦略を積極的に行っていました。
近年、世界的にヘッジファンドへの投資額が増加しており、日本でもヘッジファンド投資を行う年金基金が増加しています。同時に、日本、アジアへのヘッジファンドの投資も増加傾向にあり、成長が期待されています。
外資系PEファンド
- アジア・オルタナティブ・マネジメント (Asia Alternative Management)(FOF)
- AIPヘルスケアジャパン(API Healthcare Japan )
- ベイン・キャピタル (Bain Capital)
- ベアリング・プライベートエクイティ・アジア (Baring Private Equity Asia)
- カーライル・グループ (Carlyle Group)
- サーベラス・キャピタル・マネジメント (Cerberus CapitalManagement)
- トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド(Trustar Capital Partners Japan Limited)
- CLSAキャピタルパートナーズ (CLSA Capital Partners)
- CVCアジア・パシフィック・ジャパン・リミテッド (CVC Capital Partners)
- KKRジャパン (Kohlberg Kravis Roberts & Co)
- ローン・スター・ジャパン・アクイジッションズ (Lone Star Funds)
- MBKパートナーズ (MBK Partners)
- オークツリー・ジャパン (Oaktree Capital Management)
- オリンパス・キャピタル・ホールディングス・アジア (Olympus Capital Holdings Asia)
- RHJインターナショナル (RHJ International)
- TPGキャピタル (Texas Pacific Group)
- ブラックストーン・グループ (The Blackstone Group)
- ロングリーチグループ (The Longreach Group Inc.)
- ウィルシャー・プライベート・マーケッツ (Willshier Private Markets)
国内独立系PEファンド
- JBFアドバイザリー
- J-STAR
- SBIキャピタル
- Wise Partners
- アドバンテッジパートナーズ
- いわかぜキャピタル
- インテグラル
- インテグラルインベストメント
- インテグリティパートナーズ
- オークキャピタル
- カレイドホールディングス
- キャスキャピタル
- クレアシオン・キャピタル
- ジャフコ
- ソリューションデザイン
- ドーガン
- トライハード・インベストメンツ
- ニューホライズンキャピタル
- ユニゾン・キャピタル
- 日本アジア投資
- 日本みらいキャピタル
- 日本産業パートナーズ
- 日本企業投資
国内商社系PEファンド
<三菱商事>
- エー・アイ・キャピタル
- 丸の内キャピタル (三菱UFJ銀行と共同出資)
- 三井物産企業投資
- アイシグマキャピタル
<三井物産系>
- 三井物産企業投資
<丸紅系>
- アイシグマキャピタル
国内銀行系PEファンド
<みずほ銀行>
- みずほキャピタル
<農林中央金庫・三井物産企業投資>
- アント・キャピタル・パートナーズ
<日本政策投資銀行(DBJ)・みずほ銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行・ジェイ・アイ・エス>
- ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ
<日本政策投資銀行(DBJ)・三菱UFJリース>
- ヘルスケアマネジメントパートナーズ
国内証券系PEファンド
<みずほ証券>
- ベーシックキャピタルマネジメント
- インダストリアル・ディシジョンズ(IDI)
- ポラリス・キャピタル・グループ
<大和証券>
- 大和企業投資
- 大和PIパートナーズ
外資証券プリンシパル投資
- ゴールドマン・サックス証券
- メリルリンチ証券
- ドイツ証券
- JPモルガン証券
- マッコーリー・キャピタル
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この記事を書いた人
コトラ(広報チーム)
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