2024年最新!アセットマネジメント運用残高の動向と今後の展望を徹底解説

はじめに

アセットマネジメントの基本と運用残高とは

アセットマネジメントとは、投資家から預かった資産(アセット)を専門的に運用・管理する業務を指します。その主な目的は、適切なリスク管理のもとで顧客の資産価値を最大化することです。ここでいう「アセット」は株式や債券といった伝統的な金融資産だけでなく、不動産、インフラ設備、未公開株(プライベート・エクイティ)など多岐にわたります。運用残高とは、これら預かった資産の合計額であり、アセットマネジメント会社の規模や市場における影響力を示す重要な指標となります。

アセットマネジメント業界のビジネスモデルは、顧客から預かった運用残高(AUM: Assets Under Management)に対して、一定率の手数料(信託報酬)を得ることで成り立っています。このため、運用残高の推移は業界の健全性や成長性を測る上で非常に重要です。

本記事の目的と読者想定

本記事は、アセットマネジメント業界の全体像を把握し、運用残高の最新動向や今後の展望について深く理解したいと考えている方を読者として想定しています。特に、個人投資家が自身の資産運用を考える上での参考情報となることを目指します。具体的な企業名やファンド名は記載せず、業界全体の傾向や構造的な変化に焦点を当てて解説します。

転職のご相談(無料)はこちら>

アセットマネジメント運用残高の最新動向

2024年の主なトピックと数値概観

2024年、日本のアセットマネジメント業界は「貯蓄から投資へ」の流れが加速し、歴史的な拡大期を迎えています。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のレポートによると、2024年末の世界運用資産残高は過去最高となる128兆ドル(2023年比12%増)と推計されており、日本国内の運用資産残高も前年比12%増の5.9兆ドルに達し、過去最高を記録しました。

この成長の大きな要因は、2024年1月に始まった新しいNISA制度です。非課税投資枠の大幅な拡充により、個人の投資への関心が高まり、投資信託や上場投資信託(ETF)への資金流入が加速しています。年間15兆円規模の資金流入が見込まれるとの指摘もあり、運用会社の資産残高が急増している状況です。

しかし、業界全体の収益増加の約7割が市場パフォーマンスによるものであり、新規資金流入によるものは限定的であるという構造的な課題も指摘されています。これは、市場が調整局面に入った場合に収益基盤が脆弱になる可能性を示唆しています。

過去数年の推移と背景要因

過去数年間を振り返ると、アセットマネジメント業界の運用残高は着実に増加してきました。2023年末の世界運用資産残高は前年比12%増の118兆ドル、日本は17%増の5.8兆ドルでした。

この推移の背景には、各国の金融緩和政策や低金利環境が挙げられます。低金利の資金が市場に流入し、資産運用業務が注目されるようになりました。特に日本では、「貯蓄から投資へ」という政府の方針がNISA制度の拡充とともに強力な後押しとなっています。一方で、市場のパフォーマンスに収益が大きく依存する傾向も顕著であり、手数料の引き下げ圧力や運用コストの上昇も業界が直面する課題となっています。

世界と日本の比較

世界の運用資産残高と比較すると、日本市場は依然として現金・預金の比率が高く、資産運用市場としての潜在的な成長余地が大きいことがわかります。日本銀行の資金循環統計によると、日本の個人金融資産の半分以上が現金・預金で占められています。

世界の運用資産規模トップの運用会社を見ると、上位は米国の運用会社が圧倒的なシェアを占めており、トップ20社のうち15社が米国企業で、その運用資産残高の約82%を占めています。日本国内の運用会社も着実に運用残高を伸ばしていますが、グローバルな視点で見ると、まだその存在感は限定的です。しかし、日本政府が推進する「資産運用立国」構想により、今後日本の運用市場が世界の中でさらに存在感を増していくことが期待されています。

転職のご相談(無料)はこちら>

運用会社ごとの分析

上位運用会社の動向と特徴

国内の公募追加型株式投資信託(ETFを除く)の純資産総額(残高)を見ると、上位運用会社の間で競争が激化し、順位の変動が見られます。例えば、2025年7月末時点では、とある運用会社が約10兆9214億円で3位に返り咲き、別の運用会社を上回りました。この背景には、特定のインデックスファンドやテーマ型ファンドへの資金流入が大きく影響しています。

上位の運用会社は、一般的に以下のような特徴を持っています。

  • 親会社が大手金融グループに属し、グループ内の銀行や証券会社を通じた販売力が強い。
  • 多様な投資信託商品を提供し、幅広い投資家のニーズに対応している。
  • 低コストのインデックス型ファンド、特に海外株式を主要投資対象とするファンドで大きな資金流入を得ている。

運用会社別の資金流入額を見ると、毎月のように首位が変動するほど活発な動きが見られます。資金流入が多いファンドは、主に海外株式型やバランス型ファンドであり、市場のトレンドを捉えた商品が人気を集めています。

ファンド種別・サービス種別ごとの傾向

アセットマネジメント会社が提供するサービスは、主に「投資信託業務」と「投資顧問業務」の2つに大別されます。

  • 投資信託業務: 主に個人投資家向けのサービスで、多数の投資家から資金を集めて一つのファンドとして運用します。公募投信と私募投信があり、特に公募投信は新NISA制度の恩恵を大きく受けています。
  • 投資顧問業務: 年金基金や金融機関といった機関投資家向けのサービスで、顧客の固有のニーズに合わせてオーダーメイドの運用ソリューションを提供します。

運用スタイルとしては、市場平均を上回るリターンを目指す「アクティブ運用」と、市場平均に連動することを目指す「パッシブ運用」があります。近年は、手数料の低いパッシブ運用、特にインデックスファンドへの資金流入が顕著です。

法人向け・個人向けの違い

運用会社は、個人投資家と機関投資家の双方にサービスを提供していますが、それぞれ異なるアプローチを取っています。

  • 個人向け: 主に投資信託を通じてサービスを提供し、販売会社(銀行や証券会社)との連携が重要になります。新NISAの導入により、少額からの積立投資が普及し、個人投資家層へのリーチが拡大しています。
  • 法人向け: 機関投資家(年金基金、保険会社など)に対して、個別の運用目標やリスク許容度に応じた高度なコンサルティングや運用サービスを提供します。巨額の資金を扱うため、長期的な視点と専門性が特に重視されます。

一部の運用会社は、法人顧客へのサービスを強みとしており、高い信頼性を持つ運用先として評価されています。

転職のご相談(無料)はこちら>

取り扱われるアセットの多様化

株式・債券・不動産の運用残高動向

アセットマネジメントが扱う資産は多岐にわたりますが、伝統的資産である株式、債券、不動産(REIT)は依然として主要な投資対象です。

  • 株式: グローバル経済の成長や企業の収益拡大を背景に、特に海外株式型の投資信託への資金流入が活発です。成長性の高い企業や市場全体に連動するインデックスファンドが人気を集めています。
  • 債券: 比較的安定したリターンが期待できることから、リスクを抑えたい投資家に選ばれています。世界の債券市場の動向も運用残高に影響を与えます。
  • 不動産(REIT): オフィスビル、商業施設、物流施設、マンションなどの実物資産に投資し、賃料収入と売却益を狙います。近年は物流施設や集合住宅への投資人気が高い傾向にあります。不動産ファンドの運用資産残高ランキングでは、デベロッパー系や商社系の運用会社が上位を占めています。

投資信託・ETFなどの商品別の特徴

  • 投資信託: 複数の投資家から資金を集めてプロが運用するため、少額から分散投資が可能です。アクティブファンドとインデックスファンドがあり、近年は低コストのインデックスファンドが特に人気です。
  • ETF(上場投資信託): 証券取引所に上場しており、株式と同様にリアルタイムで売買できます。特定の指数に連動するものが多く、多様なアセットクラスへの投資が可能です。

新しいNISA制度では、成長投資枠とつみたて投資枠が設けられ、それぞれ幅広い商品が対象となっています。成長投資枠ではアクティブファンドやESGファンドなど、多様なラインアップが用意されており、つみたて投資枠では低コストのインデックスファンドやバランスファンドが中心です。

新興アセット(例:仮想通貨)への注目

伝統的資産に加え、近年ではオルタナティブ資産への注目も高まっています。オルタナティブ資産には、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ(PEファンド)、インフラファンド、不動産ファンドなどがあります。

さらに、デジタル資産への関心も増加しており、規制緩和が進めば仮想通貨などのデジタルアセットクラスへの投資が拡大する可能性があります。一部の調査では、今後数年間で多くの運用会社が仮想通貨のオプションを検討すると予想されており、これによりポートフォリオの多様化や新しい世代の顧客獲得が期待されています。

転職のご相談(無料)はこちら>

アセットマネジメント業界の最新課題

市場拡大要因とリスク

日本のアセットマネジメント市場は、新NISA制度を追い風に拡大していますが、その成長の多くは市場パフォーマンスに依存しているというリスクを抱えています。市場価格の変動によって運用残高が大きく左右されるため、市場が調整局面に入った場合、収益基盤が不安定になる可能性があります。

また、投資信託商品の手数料引き下げ圧力が続いており、平均手数料率は低下傾向にあります。一方で、運用コストは上昇の一途をたどっており、業界全体の利益が圧迫される構造的な問題も抱えています。

業界構造の変化と競争環境

アセットマネジメント業界は、M&Aによる大規模な再編が進行しています。これは、コスト圧力の増大、テクノロジーやオルタナティブ資産といった新たな分野の専門性獲得、そしてグローバル競争力の強化が背景にあります。

また、「製販分離」という構造的な変化も進んでいます。運用機能と販売機能が分かれることで、運用会社は純粋な運用パフォーマンスと商品の魅力で勝負することが求められます。これにより、優れた運用成績を生み出す人材や、革新的な商品を企画できる人材の重要性が高まっています。

グローバル資本移動と国内市場

世界的な低金利環境の中、利回り確保が可能な不動産などへの投資意欲は非常に強く、海外の巨大な運用会社が日本市場への投資を積極化しています。低コストの海外資金を背景に、日本の不動産投資市場では海外のプレーヤーの存在感が増しています。

日本政府も「資産運用立国実現プラン」や「金融・資産運用特区実現パッケージ」を通じて、海外のファンドやアセットマネジメント会社の日本への誘致を進めています。特に円安傾向が続いている現状は、海外の運用会社にとって日本進出の好機と捉えられています。しかし、日本の市場がグローバル競争に巻き込まれる中で、国内運用会社はより一層の競争力強化が求められています。

転職のご相談(無料)はこちら>

今後の展望と注目ポイント

デジタル化・フィンテック導入の影響

デジタル化とフィンテックの導入は、アセットマネジメント業界の未来を大きく形作る要素です。AIや生成AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの破壊的なテクノロジーは、業務効率の向上だけでなく、収益成長やプロダクト・サービスのイノベーションを推進する重要なツールとして機能しています。

  • AIの活用: ニュース記事やSNS投稿の解析による投資ヒントの発見、顧客のリスク許容度に応じた最適な商品提案(ロボアドバイザー)、バックオフィス業務の自動化、リスク管理モデルの高度化など、多岐にわたります。
  • フィンテックとの融合: デジタル技術を活用した顧客向けプラットフォームや自動資産運用サービスが登場し、サービスの提供方法そのものが変化しています。

これにより、テクノロジーを理解し活用できるIT・デジタル人材の需要が高まり、運用会社内部でも変革が加速しています。

新制度(例:NISA改正)・規制動向

2024年から始まった新しいNISA制度は、日本における「貯蓄から投資へ」の流れを加速させ、アセットマネジメント市場の拡大を強力に後押ししています。この制度の恒久化や非課税期間の無期限化、年間投資枠・生涯投資枠の大幅な拡充は、今後も長期的な資産形成を促す重要な要素となるでしょう。

また、金融庁は「資産運用業高度化プログレスレポート」などを通じて、顧客本位の業務運営や企業型DC・iDeCoの普及、資産運用業者のガバナンス強化を推進しています。こうした規制動向は、運用会社に透明性の向上や投資家保護の強化を促し、業界全体の健全な発展に寄与します。

ESG・社会的責任投資の広がり

ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資は、一時的なブームではなく、投資の主流となりつつあります。ESG要素を積極的に活用し、ポートフォリオを構築する「ESGファンド」の数は増加しており、環境や社会へのインパクト創出を目指す「SDGsファンド」や「インパクトファンド」も注目されています。

政府は「GX(グリーン・トランスフォーメーション)投資」の実現目標を掲げ、ESG資金の呼び込みを強化しています。これにより、企業の情報開示基準の整備から、投資商品のあり方まで、業界全体に大きな影響を及ぼしています。ESG評価の専門家や、信頼性の高いESG分析、投資先企業との対話を通じて企業価値向上を促せる人材への需要が高まっており、この分野は今後も大きな成長機会を提供すると考えられます。

転職のご相談(無料)はこちら>

まとめ

要点の整理と業界の今後

2024年のアセットマネジメント業界は、新NISA制度を追い風に運用残高が過去最高を更新するなど、大きな成長期を迎えています。しかし、その成長が市場パフォーマンスに大きく依存している点、手数料の引き下げ圧力、運用コストの上昇といった構造的な課題も抱えています。

今後の業界は、デジタル化とフィンテックのさらなる導入、NISA制度などの新制度への対応、そしてESG・社会的責任投資の広がりによって、その姿を大きく変えていくでしょう。特にAIの活用は、運用戦略から顧客サービス、業務効率化まであらゆる側面に影響を与え、業界の変革を加速させると予想されます。

本記事の活用方法と今後の参考情報

本記事が、アセットマネジメント業界の最新動向と今後の展望を理解するための一助となれば幸いです。個別の投資判断については、必ず各商品の目論見書などを確認し、ご自身の責任で行うようにしてください。

このダイナミックな業界の変化を継続的に把握するためには、金融庁が公表する「資産運用業高度化プログレスレポート」や、各運用会社のIR情報、および関連する金融ニュースなどに注目することをおすすめします。

この記事で触れた業界・職種に強い求人多数
コトラがあなたのキャリアを全力サポートします
20年超の実績×金融・コンサル・ITなど
専門領域に強いハイクラス転職支援

無料で登録してキャリア相談する

(※コトラに登録するメリット)

  • ・非公開専門領域の求人へのアクセス
  • ・業界出身の専門コンサルタントの個別サポート
  • ・10万人が使った20年にわたる優良企業への転職実績
  • ・職務経歴書/面接対策の徹底支援
今すぐあなたに合った
キャリアの選択肢を確認しませんか?
関連求人を探す

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。