CVCは、事業会社がスタートアップに投資し、自社事業の成長や新規事業の創出につなげる取り組みです。投資の専門性だけでなく、投資先と自社の協業を形にする事業開発力が求められるため、VC、事業会社、金融機関、コンサルティング会社など、多様な経歴が生かせます。
一方で、CVCは少人数で運営されることが多く、募集枠も限られます。転職を成功させるには、投資経験の有無だけではなく、自身の経験を「投資先を見極め、成長を支援し、自社との連携を進める力」として伝えることが重要です。
CVCとは何か|VCとの違いと企業内で果たす役割
CVCは、Corporate Venture Capitalの略で、事業会社が戦略的な目的でスタートアップへ投資する活動、またはその組織を指します。出資だけで終わらず、技術連携、販路開拓、共同開発、新規事業の立ち上げなどを通じて、中長期の企業価値向上を目指す点に特徴があります。
CVCが投資を行う目的
CVCの主な目的は、将来の事業機会をいち早く捉え、自社だけでは得にくい技術、アイデア、人材、顧客接点を取り込むことです。経済産業省も、事業会社と研究開発型スタートアップの連携は、社内外の技術や人材、ノウハウを活用してイノベーションを進める手段として重要だと位置付けています。
CVCが目指す成果は企業ごとに異なりますが、代表的には次のようなものがあります。
- 新規技術や新しい事業領域に関する情報収集
- 既存事業の競争力を高める技術・サービスの獲得
- 販路、顧客基盤、ブランドを活用した投資先支援
- 新規事業や共同事業の創出
- 将来的な業務提携やM&Aの候補探索
- 投資収益の獲得
CVCは、資金の出し手であると同時に、事業を共につくるパートナーでもあります。そのため、投資担当者にはスタートアップの成長可能性を判断する力と、自社の経営資源を動かす力の両方が必要です。
VCとCVCの投資方針・意思決定の違い
VCは、スタートアップへの投資を主な事業とする組織です。一般に、投資先の企業価値が上がり、株式売却などによって投資収益を得ることを主な目的にしています。そのため、投資判断では市場規模、成長率、経営チーム、収益性、将来の上場や売却の可能性などが重視されます。
一方、CVCは財務的な収益も意識しますが、自社との事業上の相乗効果をより強く重視します。投資先単体の成長性に加え、自社の顧客、技術、販売網、データ、ブランドなどと組み合わせた際に、どのような価値を生み出せるかを検討します。
また、CVCは親会社の経営戦略や事業部門の方針に影響を受けやすい点も特徴です。投資判断に際しては、投資部門だけでなく、事業部門、経営企画、法務、財務、経営層などの合意が必要になる場合があります。投資の速さや裁量の範囲は、企業の組織体制や投資方針によって大きく異なります。
投資収益と事業連携を両立させる難しさ
CVCでは、投資収益と事業連携の両方を追求する難しさがあります。財務的な成長が見込める企業でも、自社との連携が難しければ投資判断が進みにくいことがあります。反対に、自社との親和性が高くても、投資先としての成長性や資本政策に課題があれば、出資の合理性を慎重に検討しなければなりません。
また、投資を実行しても、協業が自然に進むわけではありません。事業部門が協業の必要性を感じていなかったり、調達や契約の手続きに時間がかかったりすると、投資後の連携が停滞することがあります。
経済産業省が整理したCVC推進上の課題には、経営層との目線合わせ、目的に応じた投資方針、迅速な意思決定、事業部門の巻き込み、人材・スキルの強化、投資候補先の発掘、協業推進が含まれます。CVC人材には、こうした課題を理解し、関係者を巻き込みながら前に進める能力が求められます。
CVCに多い投資領域と企業のタイプ
CVCの投資領域は、親会社の事業領域や中長期戦略と密接に結び付きます。たとえば、金融、製造、通信、物流、不動産、ヘルスケア、エネルギー、IT、消費財など、さまざまな業界でCVC活動が行われています。
特に、AI、データ活用、SaaS、ヘルスケア、環境・脱炭素、ロボティクス、半導体、素材、バイオなどは、既存事業の変革や新市場の創出に関わる投資テーマになりやすい領域です。技術の専門性が高い領域では、研究開発、製品開発、技術営業、事業化などの経験が強みになります。
投資先は創業初期の企業に限りません。事業の立ち上げ段階にある企業、売上拡大を目指す成長段階の企業、海外展開やM&Aを視野に入れる企業など、CVCによって対象とする成長段階は異なります。転職先を選ぶ際は、どの業界、地域、成長段階に投資しているかを確認することが重要です。
CVCの主な仕事内容と求められる役割
CVCの仕事は、投資候補先の発掘から投資判断、社内調整、投資後の支援、協業推進、ファンド運営まで幅広くあります。小規模な組織では、一人の担当者が複数の役割を担うことも少なくありません。
投資先の発掘と起業家との関係構築
投資候補先を探す業務は、ソーシングと呼ばれます。業界イベント、スタートアップ支援プログラム、既存の投資家や事業会社からの紹介、大学や研究機関との連携、直接の問い合わせなどを通じて、有望な企業を探します。
CVCでは、単に有望な企業を見つけるだけでは不十分です。自社との協業可能性を見据えながら、起業家や経営チームと信頼関係を築く必要があります。スタートアップは複数の投資家や事業会社から提案を受けることが多いため、「資金以外に何を提供できるか」を具体的に示すことが重要です。
投資先の事業性・成長性の確認
投資候補先を見つけた後は、事業内容、市場、競合、顧客、収益モデル、経営チーム、技術、財務状況、資本政策などを確認します。投資判断の前に行う調査は、一般にデューデリジェンスと呼ばれます。
CVCでは、投資先単体の事業性に加え、自社との連携可能性を検討します。たとえば、自社の販売網を使うことで投資先の売上が伸びるか、自社の顧客課題を解決できるか、共同開発によって新たな商品やサービスを生み出せるかといった観点です。
事業計画をそのまま受け取るのではなく、実現可能性を見極める力も必要です。顧客獲得の方法、価格設定、開発体制、競争優位性、法規制、市場の変化などを多角的に確認します。
投資実行に向けた社内調整と手続き
投資の実行には、投資条件の検討、企業価値の評価、契約内容の確認、社内稟議、投資委員会への説明などが伴います。CVCでは、親会社の事業部門や管理部門との調整も重要です。
投資担当者は、スタートアップの魅力を社内に伝えるだけでなく、投資リスクと期待できる事業効果を整理し、意思決定者に分かりやすく説明する役割を担います。経営層や事業責任者に対して、なぜ今投資する必要があるのか、投資後に何を実現するのかを具体的に示すことが求められます。
契約面では、出資比率、株式の種類、情報提供の範囲、優先交渉権、共同開発に関する条件などを確認します。投資と協業では利害関係が複雑になるため、法務、知的財産、コンプライアンスへの理解も必要です。
投資先への支援と自社事業との連携
投資後は、投資先の事業成長を支援するとともに、自社との連携を進めます。支援内容は企業によって異なりますが、顧客紹介、事業提携先の紹介、採用支援、経営課題の相談、海外展開支援、資金調達支援などが挙げられます。
CVCの価値は、出資後にどれだけ投資先と自社の間で具体的な成果を生み出せるかにあります。投資先の経営者と自社事業部門の間に立ち、互いの事情や意思決定の進め方を理解したうえで、協業テーマを設計する役割が求められます。
協業を進める際は、最初から大規模な契約を目指すよりも、小規模な検証や実証実験から始める方法が有効な場合があります。事業成果を積み上げることで、社内の理解や協力を得やすくなります。
ファンド運営・投資方針の企画
CVCによっては、投資案件の担当だけでなく、ファンドの設計や運営にも関わります。投資方針の策定、投資テーマの見直し、投資予算の管理、投資先の状況管理、親会社への報告、外部出資者への対応などが主な業務です。
CVCは、本体から直接出資する形、子会社などを通じてファンドを運営する形、外部のVCと共同でファンドを運営する形、外部ファンドに出資する形など、さまざまな運営方法があります。どの方式を採るかによって、投資担当者に求められる実務や裁量は変わります。
立ち上げ段階のCVCでは、投資戦略、意思決定の仕組み、評価指標、社内連携の方法、投資後支援の体制を整える仕事も重要です。投資実務だけでなく、仕組みづくりや組織づくりの経験も評価されます。
CVC転職で評価される経験とスキル
CVCでは、投資の経験がある人材だけでなく、事業開発、新規事業、経営企画、M&A、法人営業、研究開発などの経験者も採用対象になります。重要なのは、経験の名称ではなく、投資・事業連携・成長支援にどうつながるかです。
投資経験者が評価されやすい実績
VC、CVC、投資会社、事業会社の投資部門などで働いた経験がある人は、投資案件を一連で担当した実績が評価されやすいです。特に、投資先の発掘、調査、投資条件の検討、契約、投資後支援までを担った経験は強みになります。
評価されやすい実績には、次のようなものがあります。
- 自ら発掘した投資案件を投資実行まで進めた経験
- 市場調査や競合分析をもとに投資仮説を立てた経験
- 事業性、財務、技術、法務などの調査を主導した経験
- 投資委員会や経営層向けの提案資料を作成した経験
- 投資先の資金調達、採用、営業、海外展開を支援した経験
- 投資先との協業や事業提携を実現した経験
CVCでは、財務的な投資成果だけでなく、投資後にどのような事業連携を生み出したかも重要です。投資件数や投資金額だけではなく、自身が果たした役割を具体的に整理しておく必要があります。
新規事業・事業開発経験者が生かせる強み
新規事業や事業開発の経験者は、CVCにおいて高く評価される可能性があります。特に、不確実性が高い状況で仮説を立て、顧客やパートナー企業と交渉し、社内外を巻き込みながら事業を進めた経験は、投資先支援や協業推進に直結します。
事業開発経験者の強みは、事業計画の数字だけでは見えにくい実行上の課題を理解している点です。投資先の計画に対して、顧客獲得の現実性、営業体制、開発体制、価格設定、提携先との調整など、現場に近い観点から質問や支援ができます。
また、大企業で新規事業を進めた経験は、CVCの協業推進で特に生きます。スタートアップに対して大企業の意思決定や調達、契約、社内承認の流れを説明し、自社側にはスタートアップのスピードや事情を伝える橋渡し役になれるためです。
経営企画・M&A・法人営業経験の活用方法
経営企画の経験者は、中長期戦略の立案、市場分析、事業計画の策定、経営会議向け資料の作成、部門横断の調整といった能力を生かせます。CVCでは、投資を経営戦略と結び付ける必要があるため、経営視点を持つ人材は貴重です。
M&A経験者は、企業価値の考え方、財務分析、契約交渉、調査、社内稟議などの知識を生かせます。ただし、CVC投資は買収とは異なり、少数株主としてスタートアップの成長を支援する場面が多い点を理解する必要があります。投資後の協業や資本政策への理解を補うことが重要です。
法人営業経験者は、顧客課題の把握、関係構築、提案、交渉、社内調整の力を生かせます。特に、経営層や事業責任者との折衝経験、複数部門を巻き込む大型案件の推進経験、スタートアップとの協業経験があれば、ソーシングや投資後支援で強みになります。
特定業界の知識と事業会社での人脈
CVCは自社の事業領域と関係する投資を行うことが多いため、特定業界の深い知識は大きな価値になります。金融、製造、ヘルスケア、エネルギー、物流、不動産、通信、ITなどで培った知見は、投資候補先の技術や事業モデルを理解するうえで役立ちます。
とくに、ディープテック、バイオ、医療、半導体、素材、ロボティクスなどでは、技術の内容を理解し、研究者や開発者と対話できる素養が重要です。理系の専門性や研究開発経験が、投資未経験を補う強みになることもあります。
また、業界内の顧客、販売代理店、研究機関、専門家、事業会社などとの人脈も価値があります。ただし、人脈の数をアピールするだけでは不十分です。どのような課題を持つ企業と接点があり、投資先の販路や協業先の開拓にどう生かせるかを説明することが重要です。
数字の分析力と事業を見極める力
CVCでは、財務諸表を読み、事業計画の前提を確認し、市場規模や収益性を考える力が必要です。高度な財務モデルの作成が必須ではないポジションもありますが、少なくとも売上、利益、資金繰り、顧客獲得コスト、継続率、成長率などを理解し、事業の健全性を確認できることが望まれます。
重要なのは、数字を分析すること自体ではなく、数字と事業の実態を結び付けて考えることです。たとえば、売上が伸びていても一部顧客への依存が高い、顧客獲得コストが上昇している、開発体制が成長計画に追い付いていないといった課題を見抜く必要があります。
CVCでは、投資先の将来性と自社との協業可能性を同時に判断します。そのため、財務、事業、技術、市場、組織を分けて見るのではなく、全体として成長する仕組みを捉える力が求められます。
経験別に見るCVCへの転職方法
CVCへの転職ルートは一つではありません。自身の経験を生かせる投資領域や役割を見極め、足りない経験を補いながら準備することが重要です。
VC・投資会社からCVCへ転職する場合
VCや投資会社からCVCへ転職する場合、投資実務の経験は大きな強みです。案件の発掘、投資判断、契約、投資後支援、ファンド運営などの経験を持つ人は、即戦力として評価されやすい傾向があります。
ただし、VCとCVCでは、投資の目的や求められる成果が異なります。CVCの選考では、投資収益だけではなく、自社の事業戦略を理解し、協業を実現できるかが問われます。投資実績を説明する際には、投資先の成長だけでなく、事業会社との連携をどう設計・推進できるかを示す必要があります。
応募先の親会社が持つ顧客基盤、技術、販売網、海外拠点などを調べ、自身の投資経験をどのように生かせるかを具体的に整理しましょう。
事業会社の新規事業・事業開発から目指す場合
事業会社の新規事業や事業開発からCVCを目指す場合は、事業をつくった経験を投資・協業の文脈に置き換えて伝えることが重要です。たとえば、新規サービスの立ち上げ、外部企業との提携、実証実験、顧客開拓、社内稟議、予算獲得などの経験は、CVC業務と親和性があります。
特に評価されやすいのは、外部のスタートアップや技術企業と協業した経験です。相手企業の選定から契約、プロジェクト推進、成果検証までを担当した場合は、CVCの投資後支援や協業推進に近い経験としてアピールできます。
投資実務が未経験の場合は、財務諸表、企業価値、資本政策、スタートアップの資金調達に関する基礎知識を身に付ける必要があります。事業経験だけに依存せず、投資判断に必要な知識を学んでいる姿勢を示すことが大切です。
コンサルタント・金融機関から目指す場合
コンサルタントは、市場調査、競合分析、成長戦略、事業計画、経営層への提案などの経験を生かせます。特に、特定業界の戦略案件、新規事業支援、M&A関連、投資先支援などに携わった経験はCVCと相性があります。
一方で、コンサルタントには、提案だけでなく事業を実行し切る視点が求められます。面接では、戦略を描く力だけではなく、投資先や社内の関係者と長期にわたって伴走する姿勢を伝えることが重要です。
金融機関出身者は、法人営業、企業分析、融資審査、M&A、資本市場、投資商品、ファンド運営などの経験を生かせます。法人営業の経験者は、経営者との関係構築力や企業の実態を理解する力が強みになります。M&Aや投資銀行業務の経験者は、財務分析、企業価値評価、契約、交渉といった専門性を生かせます。
未経験からCVCを目指すための準備
投資や事業開発の経験が少ない場合でも、CVCへの転職が不可能とは限りません。ただし、いきなり投資判断を担うポジションを目指すよりも、投資先支援、リサーチ、協業推進、ファンド運営、スタートアップ支援など、隣接する役割から経験を積む方法が現実的です。
未経験者が準備すべきことは、次の通りです。
- スタートアップの資金調達や株式の仕組みを学ぶ
- 財務諸表と事業計画を読めるようにする
- 注目する業界の市場構造や課題を整理する
- スタートアップイベントや勉強会に参加し、情報収集を続ける
- 自社で新規事業、協業、投資、アクセラレーションに関わる機会を探す
- 興味を持つ企業や市場について投資仮説を言語化する
選考では、「未経験だから学ばせてほしい」という姿勢だけでは評価されにくいです。自分がどの領域で価値を出せるか、どのような企業を支援したいかを具体的に考えておく必要があります。
希望する投資領域に合わせて経験を積む方法
CVCへの転職では、希望する投資領域とこれまでの経験をつなげることが重要です。たとえば、ヘルスケア領域を目指すなら医療、製薬、健康サービス、医療機器、研究開発などの経験が強みになります。製造業向けのCVCを目指すなら、工場、サプライチェーン、品質管理、研究開発、技術営業などの経験が役立ちます。
希望領域で直接の経験がない場合でも、関連する顧客課題や技術トレンドを学び、具体的な投資テーマを持つことで補えます。重要なのは、流行しているから興味があるというだけでなく、その領域でどのような変化が起きており、どの企業に成長機会があると考えるかを説明できることです。
CVCの選考で見られるポイントと対策
CVCの選考では、職務経歴、投資・事業開発の知識、志望動機、関係構築力、論理性、業界への関心などが総合的に見られます。投資経験者であっても、応募先の事業や投資方針への理解が浅いと評価されにくくなります。
志望動機で伝えるべき投資と事業連携への理解
CVCの志望動機では、「投資に興味がある」だけでは不十分です。なぜVCではなくCVCなのか、なぜその企業なのか、投資と事業連携のどちらにどう関わりたいのかを明確にする必要があります。
志望動機では、次の観点を整理すると効果的です。
- 応募先企業の中長期戦略や注力事業
- CVCが投資を通じて実現しようとしていること
- 自身の経験が投資、協業、投資先支援のどこで生きるか
- 自身が注目する市場や技術テーマ
- 入社後に検討したい協業や投資の方向性
投資収益だけを追うのではなく、スタートアップと親会社の双方に価値を生むことへの関心を示すことが重要です。
職務経歴書で実績をCVC向けに伝える方法
職務経歴書では、担当業務を並べるだけではなく、CVCで再現できる能力として実績を伝えます。成果はできるだけ具体的に記載し、自身の役割、課題、行動、結果を分けて整理すると分かりやすくなります。
たとえば、新規事業経験者は、事業の立ち上げだけではなく、顧客課題の検証、外部パートナーとの交渉、社内承認、予算獲得、実証実験、販売開始までの流れを記載します。M&A経験者は、案件の規模だけでなく、どのような分析、交渉、調整、資料作成を担ったかを説明します。
また、応募先の投資領域に近い経験は、職務経歴書の前半で強調することが重要です。CVCでは、業界知識や事業理解が採用判断に影響するためです。
面接で問われやすい投資先の評価方法
CVCの面接では、「投資したいスタートアップはあるか」「どの市場に注目しているか」「投資先をどう評価するか」といった質問が想定されます。特定の企業名を挙げる場合は、公開情報に基づき、事業内容、市場、競争優位性、リスク、自社との連携可能性を説明できるように準備します。
評価の観点としては、次の要素を押さえるとよいでしょう。
- 顧客が抱える課題と、その課題の大きさ
- 提供する商品・サービスの独自性
- 市場規模と今後の成長性
- 競合との差別化要因
- 経営チームの実行力
- 収益モデルと成長の再現性
- 資金調達の必要性と使途
- 自社との協業可能性
- 想定されるリスクと対策
CVCでは、「伸びそうだから投資したい」ではなく、「自社のどの事業や顧客に、どのような価値を提供できるのか」まで踏み込んで説明することが重要です。
自社との連携案を具体的に示す準備
CVCの選考では、投資先候補に対する協業案を考える力が評価されます。協業案は壮大である必要はありませんが、実現可能性が重要です。
たとえば、親会社が持つ顧客基盤を活用した販売支援、社内データを用いた検証、既存サービスへの技術導入、共同での実証実験、特定業界への共同提案など、具体的な行動に落とし込みます。
協業案を考える際は、親会社の公開情報を調べ、主力事業、顧客、強み、課題、投資実績、既存の連携事例を理解することが必要です。そのうえで、投資先、事業部門、顧客のそれぞれにどのような利益があるかを整理します。
スタートアップへの関心と長期的に伴走する姿勢
CVCでは、投資実行までよりも投資後のほうが長い関係になります。スタートアップは計画通りに成長するとは限らず、資金調達、採用、営業、開発、組織づくりなどで課題に直面します。
そのため、面接では起業家への敬意や、困難な局面でも伴走する姿勢が見られます。投資家の立場から一方的に助言するのではなく、投資先の経営者が意思決定しやすい環境を整え、必要に応じて社内外の資源をつなぐ姿勢が求められます。
自らが主役になるよりも、起業家や事業部門が成果を出すための支援役として価値を出すことにやりがいを感じられるかを、あらためて考えることが重要です。
CVC転職の難易度・年収・入社後のキャリア
CVCは魅力的なキャリアである一方、少人数組織が多く、採用枠が限られる傾向があります。年収や働き方、キャリアの広がりも企業によって異なるため、転職前に十分な確認が必要です。
CVC転職の難易度を左右する要素
CVC転職の難易度は、募集ポジション、投資領域、求められる経験、組織の成熟度によって変わります。投資実績を求める即戦力採用では難易度が高くなりやすい一方、立ち上げ期の組織や特定領域に強みを持つ人材を求める求人では、投資未経験者にも可能性があります。
難易度を左右する主な要素は次の通りです。
- VC、CVC、M&A、事業投資などの実務経験
- 新規事業、事業開発、アライアンスの実績
- 応募先の投資領域に関する専門知識
- 財務、企業価値、契約に関する基礎知識
- 起業家や経営者との関係構築力
- 英語力や海外事業の経験
- 投資先支援や社内協業を進めた経験
- 少人数組織で自律的に動ける力
CVCは募集が公開されないまま進むこともあります。短期的な求人の有無だけで判断せず、自身の経験を磨きながら中長期で機会を探す姿勢が必要です。
CVCの年収水準と報酬の考え方
CVCの年収は、親会社の給与制度、職位、投資経験、担当領域、英語力、組織内での役割によって異なります。独立系VCのように投資成果に応じた成功報酬の比重が大きい組織もありますが、事業会社の給与体系に準じるCVCもあります。
公開されている投資・VC関連求人では、アソシエイトクラスで年収600万円から1,000万円程度、シニアアソシエイトで800万円から1,200万円程度、管理職層で1,200万円以上とする例があります。ただし、これはあくまで求人上の目安であり、CVCの年収を一律に示すものではありません。
報酬を確認する際は、基本給だけでなく、賞与、業績連動報酬、投資成果に関する報酬、親会社の株式制度、退職金制度なども確認しましょう。CVCでは投資の成果が出るまでに時間がかかるため、短期的な年収だけではなく、中長期のキャリア価値も踏まえて判断することが重要です。
年齢・経験別に見た転職のポイント
若手層では、分析力、学習意欲、スタートアップへの関心、特定業界への知識、英語力などが評価されやすい傾向があります。投資未経験でも、経営企画、新規事業、コンサルティング、金融、研究開発などでの基礎的な経験があれば、ジュニアポジションを目指せる場合があります。
中堅層では、投資案件、事業開発、提携、M&A、チームマネジメントなどの実績が求められやすくなります。自ら案件を発掘し、社内外の関係者を巻き込んで成果を出した経験が重要です。
管理職層では、投資戦略の策定、投資委員会の運営、チームづくり、親会社の経営層との調整、投資先の経営支援など、より広い役割が期待されます。投資の経験に加え、事業会社の組織を動かす力が問われます。
年齢よりも重要なのは、応募するポジションに対してどのような価値を出せるかです。自身の経験を過不足なく整理し、経験に見合った役割を選ぶことが転職成功につながります。
CVCで得られるキャリアとその後の選択肢
CVCでは、投資、事業開発、経営企画、スタートアップ支援、ファンド運営を横断する経験を積めます。投資判断と事業推進の両方に関われる点は、CVCならではの特徴です。
CVCでの経験を生かした主なキャリアには、次のような選択肢があります。
- 他のCVCやVCへの転職
- 事業会社の経営企画、M&A、投資部門への異動・転職
- 新規事業責任者や事業開発責任者への転身
- 投資先スタートアップの経営企画、事業開発、CFO候補などへの参画
- アクセラレーターやスタートアップ支援組織での活動
- 自らの起業
ただし、CVCの経験内容によって、その後の選択肢は変わります。投資実行まで関わったのか、協業推進を担ったのか、ファンド運営を担当したのかを意識し、将来につながる経験を積むことが重要です。
転職前に確認したい投資方針・組織体制・評価制度
CVCは企業ごとに役割や働き方が大きく異なります。転職前には、投資対象、投資目的、意思決定の流れ、投資後支援、社内連携の実態を確認しましょう。
特に確認したい項目は次の通りです。
- 投資の目的が財務収益中心か、事業連携中心か
- 主な投資領域、地域、企業の成長段階
- 直接投資、ファンド運営、外部ファンド出資のどれが中心か
- 投資判断に必要な承認プロセスと裁量の範囲
- 投資先の発掘から投資後支援までの担当範囲
- 事業部門との連携体制と協業の実績
- チームの人数、役割分担、育成体制
- 投資実績と投資後の成果の評価方法
- 個人評価における投資件数、協業成果、財務成果の比重
- 将来の組織拡大やキャリアパスの見通し
CVCへの転職では、投資に関われるかだけでなく、どのような事業連携を実現できる組織かを見極めることが重要です。自身の経験と希望する役割を整理したうえで、投資方針や組織体制に納得できるCVCを選ぶことが、中長期で活躍するための基盤になります。














