SSBJ開示の担当部署はどこか、上場企業が進める体制づくりの基本

SSBJ開示は、サステナビリティ部門だけで完結する業務ではありません。有価証券報告書に記載する法定開示であり、経営戦略、財務情報、リスク管理、温室効果ガス排出量などを結び付けて説明する必要があります。そのため、主担当部署を定めたうえで、経理・財務、IR、法務、事業部門、グループ会社を含む横断的な体制を整えることが重要です。

担当部署に唯一の正解はありません。自社の既存組織、TCFD対応や統合報告書の作成体制、連結決算の仕組み、海外拠点の有無などを踏まえ、責任の所在と承認の流れを明確にする必要があります。

SSBJ開示で担当部署を決める前に押さえる基礎

SSBJ基準と有価証券報告書における開示の位置付け

SSBJは、サステナビリティ基準委員会を指します。SSBJは2022年7月に財務会計基準機構内に設立され、日本の資本市場で用いるサステナビリティ開示基準を開発しています。

SSBJ基準は、国際サステナビリティ基準審議会が公表したIFRS S1号・S2号と整合するよう設計された日本の基準です。2025年3月に公表され、適用基準、一般開示基準、気候関連開示基準の3つで構成されています。

サステナビリティ情報は、有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載されます。有価証券報告書は投資家に向けた法定開示書類であるため、任意のサステナビリティレポートとは異なり、正確性、説明可能性、社内承認の仕組みが求められます。

対象企業と適用時期を確認する方法

2026年2月の開示府令改正により、プライム市場上場企業のうち平均時価総額が一定水準以上の企業には、SSBJ基準に基づく開示が段階的に求められます。

  • 平均時価総額3兆円以上の企業は、2027年3月31日以後に終了する事業年度から対象です
  • 平均時価総額1兆円以上の企業は、2028年3月31日以後に終了する事業年度から対象です
  • 平均時価総額5,000億円以上1兆円未満の企業については、2029年3月期からの適用が予定されていますが、最新の法令・制度動向を確認する必要があります
  • 時価総額5,000億円未満のプライム市場上場企業の適用時期は、引き続き検討されています

対象判定に使う平均時価総額は、対象事業年度の前事業年度末と、その前4事業年度末の合計5時点の時価総額を平均して算定します。IR部門だけで判断せず、経理・財務、法務とも確認し、算定根拠を保存しておくことが重要です。

なお、SSBJ基準の適用が義務付けられていない企業でも、取引先、投資家、金融機関から排出量やサステナビリティ方針の提示を求められる可能性があります。将来の適用に備え、早い段階から基礎的な体制を整える意義があります。

開示で求められる4つの要素

SSBJ基準は、サステナビリティ関連のリスクと機会について、4つの要素で情報を整理します。

  • ガバナンスは、取締役会や経営陣がリスクと機会をどのように監督・管理しているかを示す要素です
  • 戦略は、短期・中期・長期において、リスクと機会が事業モデル、資金計画、財務状態、業績、キャッシュフローへ与える影響を扱います
  • リスク管理は、リスクと機会を識別し、評価し、優先順位を付け、継続的に見直す仕組みを説明します
  • 指標及び目標は、温室効果ガス排出量などの指標、目標、進捗、算定方法を示す要素です

4つの要素は相互に関係します。たとえば、気候変動リスクを戦略上の重要課題とするなら、取締役会の監督、リスク評価の方法、排出量削減目標、投資計画とのつながりを一貫して説明する必要があります。

既存のサステナビリティ開示との違い

多くの企業は、すでに統合報告書、サステナビリティサイト、TCFD提言に沿った開示、CDP回答などを行っています。これらはSSBJ開示の重要な土台になりますが、そのまま有価証券報告書へ転記すれば足りるわけではありません。

SSBJ開示では、サステナビリティに関する情報が企業の見通しや財務にどう影響するのかを、投資家の意思決定に役立つ形で示すことが重視されます。また、報告範囲、報告期間、重要性の判断、数値の算定方法、前提条件、承認者を整理する必要があります。

既存の開示を活用する場合でも、有価証券報告書内の他の記載との整合性を確認することが必要です。経営方針、事業等のリスク、MD&A、コーポレート・ガバナンスの状況などとの間で、用語、数値、時間軸、見通しに矛盾がないかを点検します。

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SSBJ開示の主担当部署はどこか

サステナビリティ部門が主担当となる場合

サステナビリティ部門がある企業では、同部門が全体の事務局やプロジェクト管理を担う形が一般的です。既存のTCFD対応、温室効果ガス排出量管理、方針・目標の策定、外部評価への対応などを担っている場合、基準の理解や関係部署との接点を持っているためです。

ただし、サステナビリティ部門だけに作成責任を集中させると、財務への影響や有価証券報告書全体との整合性が弱くなるおそれがあります。主担当となる場合も、経理・財務、IR、経営企画、法務を早期から参画させることが必要です。

経理・財務部門が主担当となる場合

SSBJ開示は有価証券報告書に記載されるため、経理・財務部門が主担当または共同責任者となる体制には合理性があります。連結範囲、決算日程、数値の確認手続、開示統制、監査対応などの知見を活用できるためです。

特に、サステナビリティに関するリスクと機会を財務計画、設備投資、資金調達、減損、将来の収益性などと結び付ける場面では、CFO組織の関与が欠かせません。サステナビリティ情報を非財務情報として切り離すのではなく、企業価値に関係する情報として管理する視点が重要です。

一方、経理・財務部門だけでは、排出量、調達、製造、物流、人材などの現場情報を集めにくい場合があります。制度開示の管理は経理・財務、内容の収集と分析はサステナビリティ部門や事業部門という役割分担が有効です。

IR部門が主担当となる場合

IR部門は投資家との対話を通じて、どのような情報が企業評価に影響するかを把握しやすい部門です。有価証券報告書、決算説明資料、統合報告書などを横断して情報発信を管理している場合、開示の一貫性を保つ役割を担えます。

IR部門が主担当となる場合は、投資家向けの伝わりやすさだけでなく、数値の根拠や基準適合性を確保する必要があります。IR部門には、開示方針、記載内容の整合性、投資家からの質問の収集と社内還元を担わせ、専門的な算定やリスク評価は各担当部署と連携する形が現実的です。

法務・コンプライアンス部門が担う役割

法務・コンプライアンス部門は、SSBJ開示の主担当ではなくても重要な役割を担います。有価証券報告書は法定開示書類であり、記載内容の正確性、将来情報の表現、機密情報の取扱い、社内承認権限、訂正の要否などの確認が必要になるためです。

特に、将来の見通しやScope3排出量のように見積りを含む情報については、前提、仮定、推論の過程、社内の確認手続を残すことが重要です。法務部門は、免責表現を整えるだけではなく、開示を支える実際の手続が存在するかを確認する必要があります。

主担当を1部署に固定しない考え方

SSBJ開示では、部門ごとに強みが異なります。そのため、主担当を1部署に固定し、他部署を単なる情報提供者として扱うよりも、役割に応じて責任を分ける体制が適しています。

たとえば、サステナビリティ部門を事務局、経理・財務部門を開示統制責任者、IR部門を対外発信の責任者、法務部門を法定開示の確認責任者とする考え方があります。最終的には経営層または取締役会が承認し、各部署の責任者が内容を確認する流れを定めます。

重要なのは、誰が最終的に判断するのか、誰がデータの正確性を確認するのか、誰が開示文を作成するのかを曖昧にしないことです。

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部門横断で整えるSSBJ開示の推進体制

経営層と取締役会の関与を明確にする

SSBJ基準では、サステナビリティ関連のリスクと機会について、取締役会または責任を負う機関がどのように監督しているかを示す必要があります。そのため、開示作業を始める前に、経営会議、サステナビリティ委員会、取締役会の役割を整理することが重要です。

取締役会には、重要なリスクと機会、戦略への影響、重要な目標、進捗、主要な前提や不確実性を報告する仕組みを設けます。単に開示案を決算直前に承認するだけでなく、経営判断に必要な情報として定期的に扱うことが求められます。

実務を担う事務局を設置する

部門横断の取り組みでは、全体を管理する事務局が必要です。事務局はサステナビリティ部門、経営企画部門、経理・財務部門のいずれか、または複数部門による共同運営とします。

事務局の主な役割は、基準の確認、論点整理、スケジュール管理、情報依頼、会議体の運営、開示案の取りまとめ、証跡管理です。各部署に依頼する情報、提出期限、確認者、未解決事項を一覧で管理すると、責任の抜け漏れを防ぎやすくなります。

経理・財務・IRとの連携を設計する

経理・財務部門とは、連結範囲、報告期間、財務影響、決算日程、内部統制、保証対応について連携します。特に、サステナビリティ情報と財務情報の対象範囲や期間が異なる場合は、差異の理由を説明できるようにする必要があります。

IR部門とは、投資家への説明方針、統合報告書や決算説明資料との整合性、想定問答を共有します。有価証券報告書で示した目標や戦略と、投資家説明で示す内容が異なると、信頼性を損なうおそれがあります。

事業部門とリスク管理部門から情報を集める

サステナビリティ関連のリスクと機会は、現場に近い事業部門が把握していることが多い領域です。調達、製造、物流、営業、研究開発、人事、情報システムなどから、事業への影響、対応策、必要な投資、データの所在を収集します。

リスク管理部門とは、既存の全社的リスク管理にサステナビリティ関連のリスクをどのように組み込むかを確認します。別建ての評価を作るだけではなく、既存のリスク評価、内部監査、危機管理、事業継続計画などとの関係を明確にすることが重要です。

グループ会社や海外拠点を巻き込む

SSBJ開示は、原則として連結ベースでの情報整理が求められます。国内外の子会社、工場、販売会社、持分法適用会社などを含め、どの範囲から何の情報を集めるかを早期に決める必要があります。

海外拠点では、会計期間、利用する単位、温室効果ガス排出係数、データの保管方法、言語、法規制が異なる場合があります。親会社が一方的に情報収集を求めるだけではなく、入力ルール、締切、確認方法、問い合わせ窓口を定め、現地担当者への説明を行うことが必要です。

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開示内容ごとに定める責任者と役割分担

ガバナンスに関する情報の責任部署

ガバナンスに関する情報は、取締役会事務局、経営企画、サステナビリティ部門、法務部門が連携して管理することが一般的です。取締役会、委員会、経営会議、担当役員が何を監督し、どの頻度で報告を受け、どのような意思決定をしているかを確認します。

重要なのは、組織図を示すだけではなく、実際の運用を説明できることです。委員会の設置規程、議題、報告資料、議事録、取締役会への報告内容を確認し、開示内容との整合性を取ります。

戦略と財務への影響を整理する担当者

戦略の開示では、経営企画、事業部門、経理・財務部門、サステナビリティ部門の協働が不可欠です。リスクと機会が事業モデル、製品・サービス、設備投資、調達、販売、資金計画にどう影響するかを整理します。

財務影響の算定が難しい場合でも、何を前提にし、どの範囲で定性的または定量的に評価したかを記録します。将来情報には不確実性があるため、予測値だけでなく、対象期間、シナリオ、仮定、見直しの条件を明確にすることが重要です。

リスク管理の評価と報告を担う部署

リスク管理部門は、サステナビリティ関連リスクの識別、評価、優先順位付け、モニタリングが、全社的なリスク管理に統合されているかを整理します。気候変動、人権、サプライチェーン、自然災害、情報セキュリティなど、企業にとって重要なテーマを既存のリスク管理と結び付けます。

サステナビリティ部門はテーマ別の専門知見を提供し、リスク管理部門は評価基準や報告ルールを整える役割を担うと円滑です。両部門でリスク評価の基準が異なる場合は、どの基準を経営判断に使うかを明確にします。

指標・目標と環境データを管理する部署

温室効果ガス排出量、エネルギー使用量、再生可能エネルギー比率、廃棄物、水使用量などの環境データは、サステナビリティ部門、環境部門、設備管理部門、総務部門、製造部門などが共同で管理することが多い領域です。

指標ごとに、定義、対象範囲、単位、データの出所、算定方法、排出係数、集計責任者、確認者、保存する根拠資料を定めます。データの担当者が異動しても継続できるよう、属人的な管理を避けることが重要です。

最終承認と有価証券報告書への反映フロー

最終承認の流れは、財務情報の開示プロセスと整合させます。一般的には、各データ責任者による確認、事務局の取りまとめ、経理・財務と法務によるレビュー、経営会議または委員会での確認、取締役会等による承認という流れを設計します。

SSBJ基準では、公表承認日と承認した機関または個人に関する情報も重要です。財務諸表と同じ日に同じ機関が承認するのか、別の承認プロセスを置くのかをあらかじめ決め、規程やスケジュールに反映します。

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初年度のSSBJ対応を進める実務ロードマップ

適用時期から逆算して準備計画を作る

初年度対応は、有価証券報告書の提出日から逆算して計画します。適用開始年度だけではなく、その前年度から試行データを集め、開示案を作成し、承認手続を確認することが重要です。

特に、Scope3排出量、海外拠点データ、シナリオ分析、財務影響の整理は時間がかかります。決算後に収集を始めるのではなく、年度中から月次または四半期ごとにデータを確認できる体制を目指します。

現在の開示内容と必要項目の差を確認する

まず、直近の有価証券報告書、統合報告書、サステナビリティサイト、TCFD開示、環境データ集などを棚卸しします。そのうえで、SSBJ基準の要求事項と照らし合わせ、すでに開示している事項、不足している事項、内容はあるが根拠が弱い事項を整理します。

差分確認では、文章の有無だけでなく、根拠資料、データの対象範囲、責任者、承認記録の有無も確認します。開示文が作れていても、数値の裏付けや意思決定の記録がなければ、保証や社内レビューに対応しにくくなります。

開示方針と経過措置の利用方針を決める

SSBJ基準の初年度には、比較情報の省略、気候関連情報のみの先行開示、Scope3排出量の開示省略など、一定の経過措置があります。経過措置を使う場合には、その内容を開示する必要があります。

また、制度上認められる二段階開示を利用する場合も、後で対応すればよいわけではありません。どの情報をいつまでに追加するのか、誰が承認するのか、訂正報告書の作成・確認をどう行うのかを初年度の計画に組み込みます。

データ収集の対象・方法・期限をそろえる

データ収集では、まず対象会社、対象拠点、対象期間、対象指標を明確にします。次に、データの入手元、入力者、確認者、提出期限、根拠資料、修正ルールを定めます。

温室効果ガス排出量の場合、請求書、検針票、燃料使用量、購買データ、物流データなどが基礎資料となります。データごとに提出期限が異なるため、決算日後の限られた期間で集計できるよう、前倒しで締める仕組みを設計します。

開示案の作成から社内承認までを運用する

初年度は、実際の有価証券報告書の締切を想定した模擬運用を行うことが有効です。開示案の作成、事業部門への確認、経理・財務との整合確認、法務レビュー、経営層への報告、取締役会承認までを一度通します。

模擬運用で明らかになった課題は、翌年度の改善計画に反映します。たとえば、海外子会社からの報告が遅い、排出係数の管理が統一されていない、財務影響の説明が不足している、取締役会での議論が記録されていないといった課題を改善します。

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データの信頼性と第三者保証に備えるポイント

数値データの定義と算定方法を統一する

同じ名称の指標でも、対象範囲や算定方法が異なれば比較できません。たとえば、再生可能エネルギー比率についても、対象拠点、電力使用量の範囲、証書の扱いによって数値が変わります。

指標ごとにデータ辞書を作成し、名称、定義、対象範囲、単位、算定式、使用する係数、情報源、更新頻度、責任者を明記します。年度ごとに方法を変更した場合は、変更理由と比較情報への影響を確認します。

根拠資料と確認記録を残す

第三者保証や内部監査に備えるには、開示した数値に至るまでの根拠をたどれるようにする必要があります。元データ、集計ファイル、計算式、承認記録、修正履歴を保存します。

特に手作業での転記や修正は、誤りが起きやすい工程です。誰が、いつ、なぜ修正したのかを記録し、確認者を置くことが重要です。データを集計するシステムを導入する場合も、元データの妥当性や権限管理を確認します。

連結範囲とグループ会社の報告ルールを整える

サステナビリティ情報の報告範囲は、財務連結の範囲と関係します。買収、売却、組織再編、海外子会社の増減があった場合は、どの時点からどの範囲を含めるかを整理し、前年との比較可能性を確認します。

グループ会社には、報告マニュアルを配布し、対象データ、単位、締切、証憑、問い合わせ先を明確にします。親会社側で数値を集めるだけでなく、子会社側の確認責任者を定めることが必要です。

内部統制と確認手順を設計する

内部統制では、データの収集、集計、確認、承認、修正の各工程に担当者と確認者を置きます。一人の担当者が入力から承認までを行う状態を避け、役割を分けることが基本です。

重要な指標については、元データから開示数値までを追跡する試査を実施します。たとえば、電力使用量であれば、検針票や請求書、集計表、排出係数、排出量計算、開示表の順に確認します。こうした点検により、証跡の不足や計算上の誤りを早期に見つけられます。

第三者保証を見据えて不足事項を改善する

第三者保証は、開示義務化の翌年度から段階的に導入される方向で制度整備が進められています。当初はScope1・Scope2排出量、ガバナンス、リスク管理などを対象とした限定的保証が想定されていますが、具体的な対象や要件は最新の法令を確認する必要があります。

保証開始直前に対応するのではなく、事前に重要指標の内部点検や任意の検証を行い、データ品質と手続の課題を把握することが有効です。保証のためだけに資料を作るのではなく、日常的なデータ管理と承認の仕組みに組み込むことが重要です。

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SSBJ開示の体制づくりで起こりやすい課題と対応策

担当部署間で責任が曖昧になる課題

SSBJ対応では、多くの部署が関わるため、「誰かが対応するだろう」という状態になりやすい課題があります。特に、財務影響の評価、Scope3データの収集、開示文の最終確認は責任が重複しやすい領域です。

対応策として、開示項目ごとに責任者、作成者、確認者、承認者を明確にします。担当者名だけでなく、部署、役職、代替担当者、提出期限を一覧化し、定期的に更新します。

経営層の意思決定が遅れる課題

サステナビリティ開示では、重要性の判断、目標設定、投資計画、将来シナリオ、経過措置の利用など、経営判断が必要な論点があります。これらを決算直前に持ち込むと、承認が遅れ、開示作業全体に影響します。

重要な判断事項は、論点、選択肢、財務・事業への影響、開示上の影響、決定期限を整理して、早い段階で経営層に提示します。取締役会や委員会の年間予定に、サステナビリティ関連の議題を組み込むことも有効です。

事業部門から必要な情報が集まらない課題

事業部門や子会社にとって、サステナビリティデータの提出は追加業務になりやすく、優先順位が上がらないことがあります。依頼内容が抽象的で、何のために必要かが伝わらない場合も、情報が集まりにくくなります。

依頼時には、必要なデータ、提出形式、対象期間、根拠資料、提出期限、利用目的を明確にします。また、提出後にどのように開示へ使われたかを共有し、経営課題や事業上のリスクとの関係を伝えることが重要です。

財務情報とサステナビリティ情報がつながらない課題

サステナビリティ部門が作成する開示と、経理・財務部門が扱う事業計画や財務情報が別々に管理されると、前提の不一致が生じます。たとえば、脱炭素投資の計画と資本支出計画が一致していない、気候リスクの説明と事業等のリスクの記載が異なるといった問題です。

経営企画、経理・財務、サステナビリティ部門が共通の前提を確認する会議を設け、時間軸、対象範囲、シナリオ、投資計画、主要な仮定を共有します。完全に同じ数値を使えない場合でも、差異の理由を説明できる状態にすることが必要です。

初年度から完璧を目指しすぎない進め方

SSBJ開示は、初年度からすべてのデータを最高水準でそろえることが難しい取り組みです。特にScope3排出量や海外拠点データは、段階的な精度向上が必要になることがあります。

重要なのは、経過措置を単なる先送りにせず、将来の完全対応につながる計画を持つことです。初年度は、重要性の高いテーマ、Scope1・Scope2、ガバナンス、リスク管理などの基盤を優先し、2年目以降にScope3やデータ範囲の拡大、算定方法の高度化を進めます。

SSBJ開示の担当部署は、サステナビリティ部門、経理・財務部門、IR部門のいずれかが中心になる場合が多いものの、単独部署で完結させるべき業務ではありません。経営層の監督、部門横断の事務局、データ責任者、法定開示の確認者を明確にし、財務情報とサステナビリティ情報を一体で管理する体制を整えることが、継続的で信頼性の高い開示につながります。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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