マネロン対策とは?本人確認を求められる理由と私たちにできる防止策

銀行口座の開設や高額な取引の際に、本人確認書類の提示、職業や取引目的の回答を求められることがあります。これらは手続きを複雑にするためだけのものではありません。犯罪で得た資金の流れを追いにくくするマネーロンダリングや、テロなどに使われる資金の移動を防ぐための重要な仕組みです。

マネロン対策は金融機関だけの課題ではありません。不動産、暗号資産、オンライン決済など、資金が動くさまざまな場面で対策が進められています。私たち一人ひとりも、口座や本人確認書類を犯罪に利用されないよう注意する必要があります。

マネロン対策の基本

マネーロンダリング(資金洗浄)とは

マネーロンダリングとは、犯罪によって得たお金について、出所や本当の所有者を分からなくし、正当な資金であるように見せかける行為です。「資金洗浄」や「マネロン」とも呼ばれます。

犯罪者は、詐欺、違法薬物取引、横領などで得た資金をそのまま使うと、捜査機関に把握されるおそれがあります。そのため、複数の口座や取引を経由させるなどして資金の流れを複雑にし、犯罪とのつながりを隠そうとします。

犯罪で得たお金が社会に流れ込む仕組み

犯罪収益は、他人名義の口座への入金、送金の繰り返し、商品や不動産の売買などを通じて移動させられることがあります。資金の形や保有者を何度も変えることで、元の出所を追いにくくするのが目的です。

こうした資金が通常の経済活動に入り込むと、犯罪組織の活動を支えるだけでなく、公正な取引や市場への信頼を損なうおそれがあります。犯罪による収益の移転防止に関する法律は、犯罪収益の移転を防ぎ、国民生活の安全と経済活動の健全な発展に役立てることを目的としています。

マネロン対策がテロや詐欺の防止につながる理由

マネロン対策は、犯罪で得たお金を隠す行為だけでなく、テロの実行を支える資金の提供や、大量破壊兵器の拡散に関わる資金の移動を防ぐことにもつながります。資金がなければ、犯罪組織やテロ組織は人員の確保、物品の調達、活動の継続をしにくくなります。

また、特殊詐欺や投資詐欺などでだまし取られたお金は、受け取り役の口座を経由して移動される場合があります。不正な口座利用を早期に見つけて止めることは、被害の拡大を抑えるうえでも重要です。

国際社会と日本で進む対策

マネロンは国境を越えて行われるため、各国が共通の考え方で対策を進める必要があります。国際的には、金融活動作業部会であるFATFが、マネロン、テロ資金供与、拡散金融への対策に関する基準を作り、各国の取組を確認しています。

日本では、犯罪収益移転防止法により、金融機関、不動産事業者、宝石・貴金属等取扱事業者、一定の士業者などに、取引時確認、記録の保存、疑わしい取引の届出などが求められています。金融庁は金融機関に対し、2024年3月までに必要な態勢を整えるよう求め、その後も対策の実効性向上を重視しています。

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マネロンで使われる主な手口

複数の口座や送金を経由させる手口

マネロンでは、犯罪収益を一つの口座にとどめず、複数の口座や金融機関を経由させる方法が使われます。資金が何度も移動すると、最初にどこから入金されたのか、誰が本当の受取人なのかを追いにくくなるためです。

少額に分けた送金を繰り返したり、短期間に多数の口座へ送金したりする行為も、不自然な資金移動として確認の対象になることがあります。金額だけで判断するのではなく、顧客の属性、過去の取引、取引目的との整合性を確認することが重要です。

他人名義の口座やアカウントを悪用する手口

犯罪者が自分の名義ではなく、他人名義の銀行口座や決済アカウントを使うことがあります。口座を売買したり、だまし取った本人確認情報を使ってアカウントを作ったりするケースもあります。

口座やアカウントを他人に渡す行為は、自分に犯罪の意図がなくても、不正な資金の受け皿になる危険があります。自分名義の口座やアカウントは、自分だけが管理・利用することが基本です。

暗号資産やオンライン決済を使う手口

暗号資産やオンライン決済は、利便性が高い一方で、悪用される可能性にも注意が必要です。犯罪者が資金を別の資産に交換したり、複数のサービスを通じて移転したりすることで、資金の流れを分かりにくくしようとする場合があります。

そのため、暗号資産交換業者や資金移動業者なども、利用者の確認、取引の確認、不自然な取引への対応を行っています。利用者としては、見知らぬ人から指定されたアカウントやサービスを使って送金しないことが大切です。

副業やアルバイトを装って資金を動かす手口

「口座を貸すだけ」「荷物を受け取るだけ」「指定口座から出金するだけ」といった勧誘は、犯罪収益の移転に加担させる目的である可能性があります。SNSや求人サイトを通じて、簡単な仕事、高収入、即日報酬などを強調する勧誘にも注意が必要です。

他人から受け取ったお金を別の口座へ送る、現金を引き出して渡す、商品代金を代理で受け取るといった行為は、資金の流れを隠す役割を担うおそれがあります。仕事内容や報酬の根拠が不明確な場合は、引き受けないでください。

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金融機関などで本人確認を求められる理由

本人確認で防げる不正取引

本人確認は、取引する相手が実在する人物または法人か、実際に取引を行う人が本人または正当な代理人かを確かめるために行われます。これにより、なりすまし、架空名義、他人名義口座の利用といった不正を防ぎやすくなります。

犯罪収益移転防止法における取引時確認は、本人確認書類を確認するだけでは終わりません。取引の目的や職業、法人の場合は事業内容や実質的に支配している人も確認し、取引が不自然ではないかを判断する材料にします。

本人確認が必要になる主な場面

金融機関では、口座開設、貸金庫や保護預かりの利用開始、融資取引などで取引時確認が行われます。また、200万円を超える現金や持参人払式小切手の受払いを伴う取引、10万円を超える現金による振込みなどでも確認が求められる場合があります。

不動産の売買、一定の高額な宝石・貴金属等の取引などでも、取引時確認の対象となることがあります。ただし、確認が必要かどうかは、事業者の業種だけでなく、取引の種類や内容によって異なります。

確認される情報と提示を求められる書類

個人の場合、一般的に氏名、住所、生年月日が本人特定事項として確認されます。取引によっては、職業や取引目的についても回答を求められます。本人確認書類としては、運転免許証、マイナンバーカード、在留カードなどが使われることがありますが、利用できる書類や確認方法は事業者によって異なります。

法人の場合は、法人の名称、本店または主たる事務所の所在地、事業内容、取引目的などが確認されます。加えて、法人を実質的に支配している人や、実際に手続きを行う担当者についての確認が必要になる場合があります。

本人確認書類には有効期限があるものがあります。住所変更後の書類や有効期限切れの書類では手続きが進められない場合があるため、事前に確認しておくとスムーズです。

取引内容や利用目的を確認される理由

金融機関から、口座の利用目的、送金先との関係、資産や収入の状況などについて質問を受けることがあります。これは、利用者を一律に疑っているのではなく、取引が顧客の状況や申告内容と合っているかを確認し、不正利用を防ぐための対応です。

口座開設時だけでなく、すでに取引がある利用者に対しても、住所、職業、法人の事業内容、株主情報などについて再確認が行われる場合があります。犯罪の手口が変化する中で、継続的に情報を更新し、取引の変化を確認する必要があるためです。

本人確認に協力する際に注意したいこと

本人確認に協力する際は、金融機関や事業者の公式サイト、公式アプリ、店頭窓口など、正規の手続きであることを確認してください。メールやSMSに記載されたリンクから、安易に本人確認書類の画像や暗証番号を入力することは危険です。

金融機関が、電話やメールで暗証番号、インターネットバンキングのパスワード、ワンタイムパスワードを聞き出すことは通常ありません。不審に感じた場合は、届いた連絡先ではなく、公式サイトに掲載されている連絡先から確認しましょう。

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事業者が行うマネロン対策

顧客の身元と取引目的を確認する

犯罪収益移転防止法の対象となる事業者は、一定の取引を行う際に取引時確認を実施します。個人顧客については、氏名、住所、生年月日、取引目的、職業などを確認します。法人顧客については、名称、本店所在地、取引目的、事業内容などを確認します。

取引時確認は、顧客が実在するかを確認するだけでなく、誰のために、何の目的で取引が行われるのかを把握するための手続きです。確認の方法は、対面、郵送、オンラインなどで異なり、法令に定められた方法に沿って行う必要があります。

法人取引で実質的な支配者を確認する

法人名や代表者名だけでは、実際にその法人を所有・支配している人が分からないことがあります。そのため、法人との取引では、実質的に支配している人を確認することが求められます。

一般に、株式会社などでは、議決権の25%を超える議決権を直接または間接に持つ自然人などが実質的支配者に当たる場合があります。実質的支配者の確認は、法人が犯罪収益を隠すための器として使われることを防ぐために重要です。

取引内容を継続的に確認する

取引時に確認を終えた後も、事業者は取引内容を継続的に確認します。過去の取引と比べて不自然な高額送金がある、取引目的と合わない資金移動がある、顧客情報に変更が生じたと考えられる場合などは、追加の確認が必要になることがあります。

確認記録と取引記録は、原則として7年間保存することが求められています。確認記録は取引時確認をどのように行ったかを残すものであり、取引記録は取引日、取引の種類、金額、資金の移転先などを記録するものです。両者を適切に管理することで、後から取引の経緯を確認できます。

制裁対象者や犯罪に関わるおそれがある相手を確認する

事業者は、制裁の対象となっている人や組織との取引に関わらないよう、相手方の確認を行います。国内外の制裁対象者に資金や資産が渡ると、テロや大量破壊兵器の拡散に関わる活動を助長するおそれがあるためです。

確認では、名前が一致するかだけでなく、取引相手、関係会社、実質的支配者、資金の流れなどを総合的に確認することが重要です。取引のリスクに応じて対策を変える考え方は、リスクベース・アプローチと呼ばれています。

不自然な取引を見つけた場合に届け出る

事業者は、犯罪収益との関係が疑われる取引や、なりすましによる取引が疑われる場合に、疑わしい取引として届け出る義務を負うことがあります。届出情報は、資金情報を整理・分析する機関を通じて、犯罪の捜査や犯罪収益の追跡に役立てられます。

判断では、単に金額が大きいかどうかではなく、顧客の通常の取引との違い、過去の取引との比較、確認した顧客情報との整合性などを見ます。たとえば、不自然に早い売却を強く求める不動産取引や、通常と異なる送付先を指定する取引は、追加確認が必要となる場合があります。

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私たちが巻き込まれないための防止策

口座やアカウントを他人に貸さない・売らない

銀行口座、決済アカウント、暗号資産のアカウントなどを他人に貸す、譲る、売る行為は避けてください。「使っていない口座を買い取る」「登録するだけで報酬を払う」といった誘いは、不正利用を目的としている可能性があります。

自分名義の口座が犯罪に使われると、口座が凍結されるだけでなく、事情を説明するための負担が生じるおそれがあります。口座の通帳、キャッシュカード、暗証番号、ログイン情報は厳重に管理しましょう。

高収入をうたう不審な勧誘を疑う

仕事内容が曖昧なのに高額な報酬を約束する副業やアルバイトには注意が必要です。特に、「送金を代行するだけ」「現金を引き出すだけ」「荷物を受け取るだけ」といった勧誘は、犯罪の一部を担わせるものかもしれません。

応募前には、会社の実在性、連絡先、仕事内容、契約条件を確認してください。身分証の画像、銀行口座、携帯電話、SNSアカウントの提供を急かす相手は警戒が必要です。

本人確認書類や個人情報を安易に渡さない

運転免許証、マイナンバーカード、在留カードなどの画像は、なりすましや不正な契約に使われるおそれがあります。本人確認書類を提出する必要がある場合は、相手が正規の事業者か、提出先が公式のサイトやアプリかを確かめましょう。

個人番号が記載されたマイナンバーカードの裏面など、手続き上不要な情報まで提出しないことも大切です。提出を求められた情報の内容に疑問がある場合は、事業者に利用目的や提出方法を確認してください。

知らない送金依頼や代理受取を引き受けない

面識のない人から、「誤って送金したので返してほしい」「代わりに受け取って別の人へ送ってほしい」と依頼されても、安易に応じてはいけません。自分の口座を経由させることで、犯罪収益の移転に利用される可能性があります。

知らない入金があった場合も、自分の判断で送金し直すのではなく、利用している金融機関へ相談してください。相手からの指示ではなく、金融機関の案内に従って対応することが安全です。

不審な取引や被害に気付いたときの相談先

口座やアカウントの不正利用、不審な送金、詐欺と思われる勧誘に気付いた場合は、まず利用している金融機関、決済事業者、暗号資産交換業者などに連絡してください。被害の拡大を防ぐため、早めの利用停止や口座の確認が重要です。

犯罪被害や犯罪への関与を強要されているおそれがある場合は、警察相談窓口への相談も検討してください。緊急性が高い場合は、ためらわずに警察へ連絡しましょう。

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本人確認への協力で安全な取引環境を守る

本人確認は利用者と社会を守るための仕組み

本人確認や取引目的の確認は、利用者にとって手間に感じることがあるかもしれません。しかし、これらはなりすましによる口座開設、不正送金、詐欺被害、犯罪収益の移転を防ぐための仕組みです。

金融機関などが必要な確認を行うことで、犯罪者が一般の利用者に紛れてサービスを悪用することを難しくできます。本人確認への協力は、自分の預金や資産を守ることにも、社会全体の安全を守ることにもつながります。

手続きに必要な情報を事前に確認する

口座開設や重要な契約を予定している場合は、必要な本人確認書類、有効期限、住所変更の有無、取引目的に関する回答などを事前に確認しましょう。手続き先の公式サイトで必要書類を確認すると、書類不足や再提出を減らせます。

オンライン手続きでは、公式アプリや公式サイトからアクセスしているか、通信先が正しいかも確認してください。メールやSNSのリンクを経由する場合は、偽サイトへ誘導されるおそれがあるため、特に注意が必要です。

不正利用を防ぐために日頃からできること

日常的にできる対策として、口座やアカウントの利用明細を確認し、身に覚えのない入出金やログイン通知を見逃さないことが重要です。パスワードを使い回さず、多要素認証を利用し、端末やアプリを最新の状態に保つことも不正利用の防止に役立ちます。

本人確認は、一度行えば終わりではありません。住所や職業、法人情報に変更があった場合は、必要に応じて正しく届け出ることが大切です。金融機関などから正規の確認依頼を受けた際には、内容を確かめたうえで協力し、安全な取引環境を維持しましょう。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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