FATF審査とは?仕組み・評価項目と企業に求められる対応の基本

FATF審査とは、各国・地域がマネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融への対策を十分に整備・運用できているかを、国際基準に照らして確認する仕組みです。審査の直接の対象は国の法制度や監督体制ですが、金融機関、暗号資産交換業者、不動産業者などの民間事業者による実務運用も、国全体の評価に大きく関わります。

日本では2021年に第4次対日相互審査の結果が公表され、重点フォローアップの対象となりました。その後の制度改善を経て、2024年10月に第3回フォローアップ報告書が公表され、法令等の整備状況に関する40項目はすべて合格水準に達しました。一方で、第5次審査では制度が実際に機能しているかという実効性がより重視されます。企業には、規程を整えるだけでなく、リスクに応じた本人確認、取引管理、教育、点検を継続することが求められます。

FATF審査の基礎知識

FATFとはマネー・ローンダリング対策の国際組織です

FATFは、金融活動作業部会と呼ばれる政府間の枠組みです。1989年のアルシュ・サミットを受け、当初は薬物犯罪による収益の資金洗浄対策を国際的に進めるために設立されました。

現在は、マネー・ローンダリング対策だけでなく、テロ資金供与対策や、大量破壊兵器の拡散に関わる資金供与への対策も対象としています。財務省によると、FATFには38の国・地域と2つの地域機関が加盟しており、FATF型地域体も含めると、勧告は世界200以上の国・地域に適用されています。

FATFは国際条約のように各企業へ直接命令する組織ではありません。しかし、FATFが定める国際基準は、各国の法令、監督方針、金融機関等への要請の基礎となるため、実務上の影響は非常に大きいといえます。

FATF審査が目指す金融システムの安全性

犯罪収益やテロ活動のための資金は、国境を越えて移動します。一国だけが厳格な対策を行っても、対策が弱い国や事業者を経由して資金洗浄が行われれば、金融システム全体の安全性は保てません。

FATF審査は、こうした抜け道を減らすため、各国が一定水準の対策を講じているかを確認するものです。具体的には、犯罪収益を追跡・没収できる制度、金融機関等による本人確認、疑わしい取引の届出、制裁対象者の資産凍結、当局間の情報共有などが確認されます。

対策が不十分な国・地域と評価されると、海外の金融機関が取引時の確認を厳格化する可能性があります。その結果、送金や決済に時間がかかる、取引コストが高くなる、取引自体を控えられるといった影響につながるおそれがあります。

FATF勧告と各国の法令・ルールの関係

FATFは、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融への対策について、40の勧告を定めています。勧告には、顧客管理、取引記録の保存、疑わしい取引の届出、法人の実質的支配者の把握、金融機関等の監督、国際協力などが含まれます。

FATF勧告そのものは、企業に直接適用される国内法ではありません。各国が勧告を踏まえて法令や監督ルールを整備し、事業者はそれらの法令やルールに従う構造です。

日本では、犯罪による収益の移転防止に関する法律をはじめとする制度が整備されています。また、金融機関等には、金融庁のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインを踏まえた態勢整備が求められています。

FATF審査が企業にも関係する理由

FATF審査の対象は国・地域であり、個別企業がFATFから直接採点されるわけではありません。それでも、審査では国の制度が実際に機能しているかが確認されるため、金融機関や特定事業者の取組状況が重要な検証材料となります。

例えば、事業者が本人確認を適切に行っているか、法人顧客の実質的支配者を把握しているか、不自然な取引を検知して届出につなげているかといった実務が確認されます。制度上の義務があっても、現場で形式的にしか運用されていなければ、国全体としての有効性が低いと評価される可能性があります。

特に、金融機関、暗号資産交換業者、指定非金融業者・職業専門家には、業態や法令上の位置付けに応じた対応が求められます。指定非金融業者・職業専門家には、FATF上、カジノ、不動産業者、貴金属商、宝石商、弁護士、公証人、会計士、法人設立等を支援する事業者などが含まれます。

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FATF相互審査の仕組みと進め方

加盟国どうしで評価を行う相互審査

FATF審査は、加盟国・地域が互いに評価を行う相互審査です。英語ではMutual Evaluationと呼ばれます。審査対象国だけでなく、他国の当局者や専門家が審査に参加する点が特徴です。

審査団は、対象国の法令、政策、監督、捜査、国際協力、民間事業者の運用状況などを幅広く確認します。日本では、過去に1993年、1997年、2008年に審査が行われ、2019年に第4次対日相互審査が実施されました。

FATFに直接加盟していない国・地域でも、FATF型地域体に参加し、同様の考え方で相互審査を受ける仕組みが整えられています。

審査から報告書公表までの主な流れ

相互審査は、一般に書面による確認、現地での審査、審査結果の議論、報告書の採択、公表という流れで進みます。対象国は、自国の法令、リスク評価、監督状況、捜査実績、民間事業者への取組状況などを示す資料を提出します。

その後、審査団が現地を訪問し、関係省庁、監督当局、捜査機関、金融情報機関、民間事業者などへのヒアリングを行います。ここでは、提出資料の内容だけでなく、制度が現場でどのように使われているかも確認されます。

審査結果は相互審査報告書として整理され、FATF全体会合で採択された後に公表されます。報告書には、評価結果のほか、主な課題や改善に向けた対応が示されます。

審査後に行われるフォローアップとは

相互審査の公表後も、各国の対応は継続して確認されます。これがフォローアップです。指摘事項に対して、法令改正、監督強化、情報共有の改善、民間事業者への指導などが進められているかを確認します。

第4次審査では、評価結果に応じて通常フォローアップまたは重点フォローアップとなります。通常フォローアップ国は、報告書採択から3年後に改善状況を報告します。重点フォローアップ国は、5年以内に複数回の改善報告が求められます。

日本は第4次審査で重点フォローアップとなり、2022年、2023年、2024年にフォローアップ報告が公表されました。2024年10月の第3回報告では、6つの勧告が一部適合から概ね適合へ引き上げられました。

改善が進まない国に対する対応とリスト掲載

FATFは、重大な課題があり、改善が十分に進まない国・地域について、強化モニタリングや行動要請の対象として公表することがあります。一般に、前者はグレーリスト、後者はブラックリストと呼ばれることがあります。

リスト掲載は、直ちにすべての取引が禁止されることを意味するものではありません。ただし、他国の金融機関等は、当該国・地域に関連する取引について、より厳格な顧客管理を行うことが求められる場合があります。

企業にとっては、海外送金、貿易取引、海外子会社との取引、取引先審査などへの影響が想定されます。国・地域リスクの変化を把握し、自社の顧客管理や制裁対応に反映することが重要です。

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FATF審査で評価される2つの観点

法令や制度が整っているかを確認する技術的遵守評価

技術的遵守評価は、FATFの40の勧告に照らし、必要な法律、規制、制度、監督権限などが整備されているかを確認する評価です。英語ではTechnical Complianceと呼ばれます。

評価は、適合、概ね適合、一部適合、不適合の4段階です。適合と概ね適合が、合格水準とされています。例えば、顧客管理、取引記録の保存、疑わしい取引の届出、法人の実質的支配者に関する情報の確保といった仕組みが、勧告の要件に沿って制度化されているかが確認されます。

ただし、法令が整っているだけでは十分ではありません。実務で運用されていなければ、次に説明する有効性評価で課題を指摘される可能性があります。

制度が実際に機能しているかを確認する有効性評価

有効性評価は、制度や対策が実務で十分に機能しているかを確認するものです。第4次審査では、11の有効性評価項目が用いられました。

主な項目には、国全体でのリスク認識と連携、国際協力、金融機関等への監督、金融機関等による予防措置、法人の悪用防止、金融情報の活用、資金洗浄の捜査・訴追、犯罪収益の没収、テロ資金の凍結、拡散金融への制裁などがあります。

評価は、高い、十分、中程度、低いの4段階です。このうち、高いまたは十分が合格水準とされます。例えば、本人確認のルールがあるだけでなく、事業者が顧客リスクに応じた確認を行い、不自然な取引を見つけ、適切に届出を行っているかが問われます。

リスクに応じた対策を行うリスクベース・アプローチ

FATFの考え方の中心にあるのが、リスクベース・アプローチです。すべての顧客や取引に同一の対応を求めるのではなく、リスクが高い取引にはより丁寧な確認や継続的な管理を行い、低い取引には過度な負担をかけないという考え方です。

企業は、自社の顧客、商品・サービス、取引形態、取引地域、販売経路などを踏まえ、どこに資金洗浄やテロ資金供与等のリスクがあるかを把握します。そのうえで、リスクに見合う対策を設計・実施します。

例えば、非対面での取引、海外との資金移動、高額取引、複雑な法人構造を伴う取引などは、一般に追加の確認が必要となる場合があります。重要なのは、特定の属性だけで機械的に判断するのではなく、自社の事業実態に即して合理的に評価することです。

国や事業者に求められる情報共有と監督体制

有効な対策には、国の関係当局間、当局と民間事業者、事業者内部のそれぞれで、必要な情報が適切に共有されることが欠かせません。国レベルでは、金融監督当局、警察、金融情報機関、外為当局などが連携し、リスク情報や制度上の課題を共有します。

事業者レベルでは、営業部門、審査部門、コンプライアンス部門、システム部門、内部監査部門、経営陣が役割に応じて情報を共有する必要があります。取引モニタリングで検知された事実が、顧客管理やリスク評価の見直しにつながらなければ、対策は機能しません。

また、監督当局には、事業者のリスクに応じて監督を行い、不備があれば改善を促す役割があります。第5次審査では、金融機関・暗号資産交換業者と、指定非金融業者・職業専門家を分けて、監督と予防措置を評価する方向性が示されています。

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企業の実務に関わる主な評価項目

顧客の本人確認と取引目的の確認

顧客管理の出発点は、取引相手が誰であるかを確認することです。個人であれば本人の氏名、住所、生年月日など、法人であれば名称、所在地、事業内容、代表者などを確認します。

あわせて、取引を行う目的や予定される取引内容を把握することも重要です。口座開設や契約締結の時点で得た情報が、実際の取引内容と大きく異なる場合には、追加確認が必要になることがあります。

本人確認は、書類を取得するだけの作業ではありません。自社のサービスがどのように利用されるのか、取引内容が顧客の属性や事業内容と整合しているかを把握するための基本的な手続です。

法人の実質的支配者の把握

法人との取引では、表面的な代表者や契約担当者だけでなく、最終的にその法人を所有・支配している人を確認することが重要です。この人物は実質的支配者と呼ばれます。

法人は、複数の会社や海外法人を介した複雑な出資構造を持つことがあります。そのため、法人名義の取引であっても、実際に利益を得る人や意思決定を行う人が誰かを把握しなければ、犯罪収益の隠匿や制裁回避を見逃すおそれがあります。

日本では、第4次審査後のフォローアップを通じて、法人の実質的支配者に関する制度面の改善が進められました。第5次審査では、法人・信託の透明性や、実質的支配者情報の正確性、最新性、利用可能性がより重視される見込みです。

取引時・継続中の確認と記録の保存

顧客管理は、取引開始時だけで終わるものではありません。顧客情報や取引目的は時間とともに変化するため、取引関係が続く間は、情報の更新や取引内容の確認を継続する必要があります。

例えば、事業内容、所在地、代表者、実質的支配者、取引目的に変更がないかを定期的に確認します。また、当初想定されていなかった高額取引、海外取引、短期間で繰り返される取引などがある場合は、顧客の状況を再確認することが重要です。

確認した情報、取引記録、判断の経緯、追加確認の内容などは、法令や社内ルールに従って保存します。記録は、将来の取引確認、疑わしい取引の判断、監査、当局への説明の基礎となります。

疑わしい取引の検知と届出

疑わしい取引とは、犯罪収益やテロ資金供与などに利用されている可能性がある取引です。違法であることを事業者が確定する必要はありません。顧客属性や過去の取引内容と照らして不自然な点があり、合理的な疑いがある場合に、事実関係を確認して対応します。

不自然な取引の例としては、取引目的が説明できない高額取引、短期間に繰り返される小口取引、顧客の事業内容と合わない資金移動、複数人や複数口座を使った複雑な送金などが考えられます。ただし、単一の事情だけで判断するのではなく、複数の情報を総合的に確認することが必要です。

犯罪による収益の移転防止に関する法律の対象となる事業者は、必要に応じて疑わしい取引の届出を行います。届出の判断過程や根拠となった事実を記録し、届出後も取引状況を適切に管理することが求められます。

制裁対象者の確認と資産凍結への対応

テロリストや大量破壊兵器の拡散に関与する者などに対しては、資産凍結を含む金融制裁が課されることがあります。対象者との取引を防ぐため、顧客、実質的支配者、送金先、取引関係者などについて、制裁リストとの照合を行う必要があります。

近年は、制裁対象者本人だけでなく、第三者や関連会社を通じて制裁を回避する動きへの対応も重要になっています。単なる氏名照合だけでなく、法人の所有・支配関係、役員、株主、取引の流れなどを確認する場面があります。

日本では、拡散金融対策の強化が進められています。第5次審査では、事業者が自社のリスク評価に拡散金融リスクを反映し、リスクに応じた低減措置を行っているかが重要になると考えられます。

経営陣の関与と従業員教育

AML/CFT対策は、担当部署だけの課題ではありません。顧客獲得、営業、審査、取引処理、システム、コンプライアンス、内部監査など、複数の部門が関係します。そのため、経営陣が方針を示し、必要な人員、予算、権限を確保することが不可欠です。

従業員には、担当業務に応じた教育が必要です。営業担当者には顧客情報の確認や不自然な申出への対応、モニタリング担当者にはアラートの分析、管理職にはエスカレーションや判断の基準を理解させる必要があります。

研修は一度実施すれば終わりではありません。新たな犯罪手口、法令改正、制裁リストの更新、社内で発生した課題などを踏まえ、定期的に内容を見直すことが重要です。

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日本の第4次審査の結果と第5次審査に向けた課題

日本の第4次対日相互審査で指摘された主な課題

日本の第4次対日相互審査の結果は、2021年8月に公表されました。日本は、法令等整備状況で合格水準に達しない項目が11項目、有効性評価で合格水準に達しない項目が8項目となり、重点フォローアップの対象となりました。

主な課題として、金融機関、暗号資産交換業者、指定非金融業者・職業専門家によるリスク理解、リスクに応じた継続的顧客管理、取引モニタリング、疑わしい取引の届出、制裁対象者への資産凍結、実質的支配者情報の収集・保持などが指摘されました。

とくに、制度の対象となる事業者が、義務を理解し、適時かつ効果的に実施できているかが重要な論点となりました。大手事業者だけでなく、中小規模の金融機関や金融機関以外の事業者にも、対応の浸透が求められています。

制度整備だけでなく実効性が重視される背景

第4次審査では、法令や制度の整備状況に加え、実効性の評価が本格的に行われました。この背景には、ルールを整備しても、現場で実施されなければ犯罪資金の流入防止にはつながらないという考え方があります。

FATF加盟国等の第4次審査結果を見ると、法令等の整備はフォローアップを通じて改善が進みました。一方で、有効性評価は多くの国・地域が苦戦しており、金融機関等の監督、予防措置、法人の悪用防止が共通の課題となっています。

第5次審査では、民間事業者を含めた運用実績、検証結果、改善の取組がより重視される見込みです。規程やシステムを導入した事実だけでなく、リスクを低減する結果につながっているかを説明できることが重要です。

フォローアップを通じた改善状況の確認

日本は重点フォローアップのもとで改善を進め、2022年9月に第1回、2023年10月に第2回、2024年10月に第3回のフォローアップ報告書が公表されました。

第3回報告書では、大量破壊兵器の拡散に関与する者への金融制裁、非営利団体の悪用防止、重要な公的地位を有する者への対応、指定非金融業者・職業専門家の顧客管理と疑わしい取引の届出、法的取極の実質的支配者に関する6つの勧告が、一部適合から概ね適合に改善しました。

この結果、日本は法令等整備状況に関する40項目すべてで合格水準に到達しました。ただし、フォローアップで主に確認されたのは制度面の改善です。実務での有効性については、第5次審査に向けた継続的な対応が必要です。

第5次審査で重要となる継続的な運用と検証

日本の第5次相互審査の現地審査は、2028年8月に予定されています。書面審査では、その前の数年間における民間事業者の対応状況も確認されるとみられます。そのため、審査直前に対策を整えるだけでは十分とはいえません。

企業は、リスク評価、顧客管理、取引モニタリング、疑わしい取引の届出、制裁対応などについて、実施状況を定期的に検証する必要があります。例えば、取引モニタリングの検知条件が実際の不正取引の兆候を捉えられているか、アラートの見落としや過剰検知がないか、届出判断が適切かといった点を確認します。

検証の結果は、改善計画、会議記録、研修履歴、点検結果などとして残すことが重要です。こうした記録は、対策を継続的に運用し、改善していることを説明する根拠になります。

金融機関以外の事業者にも広がる対応の必要性

第5次審査では、金融機関・暗号資産交換業者と、指定非金融業者・職業専門家を分けて評価する枠組みが示されています。これは、金融機関以外の業態についても、リスク理解、監督、予防措置の実効性がより明確に確認されることを意味します。

不動産、貴金属・宝石、士業、法人設立支援などに関わる事業者は、自社が法令上の特定事業者に該当するか、どのような本人確認・記録保存・届出義務があるかを確認することが必要です。

法令上の義務の有無にかかわらず、海外取引、高額取引、法人顧客との継続取引、制裁対象国・地域との関係などがある企業は、取引先管理や制裁確認を含むリスク管理を強化することが望まれます。

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企業が進めるべきAML/CFT対策の基本

自社の顧客・商品・取引にあるリスクを洗い出す

まず、自社にどのようなリスクがあるかを整理します。確認する対象は、顧客の属性、商品・サービス、取引金額、取引頻度、販売経路、決済方法、取引国・地域、法人の所有構造などです。

例えば、非対面取引、海外送金、高額な現金取引、複雑な法人構造を伴う取引、仲介者を介する取引は、追加確認が必要となる可能性があります。一方で、リスクの低い取引まで過度に厳格な手続を課すと、顧客の利便性や業務効率を損なうおそれがあります。

リスクの洗い出しでは、国のリスク評価、監督当局の公表資料、業界団体の情報、社内で発生した不審事案、苦情、取引停止事例などを活用します。評価は一度作成して終わりにせず、事業内容や外部環境の変化に応じて見直します。

リスクに応じた本人確認と取引管理のルールを定める

リスク評価を踏まえ、どの顧客・取引に、どの程度の確認を行うかをルール化します。確認項目、必要書類、追加確認の条件、実質的支配者の確認方法、情報更新の頻度、取引制限や取引停止の判断手順などを定めます。

高リスクと判断される場合には、取引目的や資金源の追加確認、上位者による承認、モニタリング頻度の引上げなどを検討します。重要な公的地位を有する者との取引や、制裁対象国・地域に関連する取引についても、自社のリスクに応じた確認手順を設けることが必要です。

ルールは、現場担当者が迷わず運用できる内容にすることが重要です。判断基準が抽象的すぎると、対応にばらつきが生じます。一方で、すべてを固定的な基準にすると実態に合わない場合があるため、例外時の相談先や承認手順も明確にします。

疑わしい取引を見逃さない確認体制を整える

取引モニタリングでは、顧客の属性や過去の取引内容と比べて、不自然な取引がないかを確認します。モニタリングの方法は、事業規模、取引量、リスクに応じて設計します。システムを利用する場合も、アラートの条件や判断基準を定期的に見直すことが必要です。

検知後の対応手順も重要です。一次確認、追加情報の収集、担当部署への連携、届出の要否判断、取引継続の可否判断、記録保存までの流れを整備します。検知した情報が顧客管理やリスク評価の更新に反映される仕組みも必要です。

疑わしい取引への対応では、顧客に対して不必要な情報開示を行わないことにも注意が必要です。届出の有無や内部調査の内容を不適切に伝えると、対策の実効性を損なうおそれがあります。

担当部署・経営陣・現場の役割を明確にする

AML/CFT対策には、明確な責任分担が必要です。現場部門は顧客情報や取引目的を確認し、異常を見つけた場合には速やかに報告します。専門部署は、リスク評価、ルール策定、届出判断、当局対応、研修などを担います。

内部監査部門は、対策が社内ルールどおりに実施されているか、リスクに応じた管理となっているかを独立した立場から確認します。経営陣は、リスク許容度を定め、重要な課題や改善状況を把握し、必要な資源を配分します。

とくに、営業上の優先事項とコンプライアンス上の判断が対立する場面では、現場だけに判断を委ねない仕組みが重要です。取引開始、継続、制限、解約に関する権限とエスカレーションの基準を明確にします。

研修・点検・記録化により対策の実効性を高める

対策の実効性を高めるには、研修、点検、改善を継続する必要があります。研修では、法令や社内ルールの説明だけでなく、自社で起こり得る不自然な取引の例、報告手順、制裁対象者の確認方法など、業務に即した内容を扱います。

点検では、本人確認書類の取得漏れ、実質的支配者情報の不備、情報更新の遅れ、アラート対応の滞留、届出判断の妥当性などを確認します。問題が見つかった場合は、原因を分析し、ルール、システム、教育、人員配置の見直しにつなげます。

また、リスク評価書、規程、手順書、研修記録、点検結果、改善計画、会議記録を整理して保存します。FATF第5次審査に向けては、対策を導入した事実だけでなく、運用し、検証し、改善している過程を説明できることが重要です。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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