建築・土木・環境分野で世界屈指の技術力とデザイン性を誇るグローバルファーム「アラップ(Arup)」。シドニー・オペラハウスやポンピドゥー・センター、北京五輪メインスタジアム(鳥の巣)など、人類の建築史に刻まれる数々のアイコニックなプロジェクトをエンジニアリング面から具現化してきた世界有数の総合コンサルティング企業です。
本記事では、日本法人である「オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド」の概要や事業領域、独自の企業カルチャー、そして転職市場で求められる人物像や選考対策のポイントを詳しく解説します。
1. オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパンの概要と歴史
アラップは1946年、構造エンジニアで哲学者のオーヴ・アラップ(Ove Arup)によってイギリス・ロンドンで設立されました。現在では世界34カ国98拠点に18,000人以上のプランナー、デザイナー、エンジニア、コンサルタントを擁し、160カ国以上でプロジェクトを展開しています。
日本法人は1989年5月に設立。35年以上にわたり、日本の洗練された建築意匠・施工技術とグローバルな知見を結びつけ、複雑で先進的な建築・社会インフラの課題解決を支援しています。
基本データ
- 社名:オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド(Arup Japan)
- 設立:1989年5月
- 日本支社代表:城所 竜太
- 所在地:東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グラン・ブルーム 8F
- 資本金:1億9,201万円(1,000,100ポンド)
- 従業員数:約120〜130名規模(少数精鋭体制)
- 主な事業:土木・建築に関する設計・監理、技術コンサルティング、プロジェクトマネジメント
2. 事業内容とサービス領域
アラップの最大の特徴は、単一の専門領域に閉じることなく、建築意匠・構造・設備・環境・デジタルを統合してソリューションを創出する「トータルデザイン(Total Design)」の思想です。
① 建築エンジニアリング・デザイン
- 構造設計(Structural Engineering):難易度の高い幾何学形状や超高層、免震・制振構造の高度な解析・設計
- ファサードエンジニアリング(Façade Engineering):建物の外皮性能、意匠性、熱効率、施工性を両立する外装設計
- 環境設備・サステナビリティ(MEP & Sustainability):ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現、空気・熱・音響環境の最適化
- ライティングデザイン(Lighting Design):建築空間や都市景観の美観・サーカディアンリズムに配慮した照明設計
② 社会インフラ・エネルギー分野のコンサルティング
- 鉄道・空港などの公共交通インフラ:駅舎設計、旅客流動シミュレーション、線路・トンネル等の土木構造計画
- 洋上風力発電(Offshore Wind):基礎構造の設計、地盤解析、海洋環境を踏まえた技術デューデリジェンス
- 気候変動・レジリエンスコンサルティング:都市やインフラの脱炭素化、自然災害に対する防災・減災戦略の策定
③ アウトバウンド支援(日本の技術を世界へ)
海外進出を図る日系デベロッパー、ゼネコン、メーカーに対し、アラップの世界各拠点と連携したマスタープランニングや技術助言(テクニカルアドバイザリー)を提供しています。
3. アラップの強みと独自性
大手設計事務所や日系建設コンサルタント、大手ゼネコン設計部と比較して、アラップには以下の明確な差別化要素があります。
- 外部株主を持たない「信託所有(Trust Ownership)」制度アラップは株式を公開しておらず、全社員を受益者とする信託ファンドによって保有されています。外部株主の短期的な利益要求に左右されないため、妥協のない技術探求、倫理観、長期的なサステナビリティへのコミットメント(We shape a better world)が組織運営の根底に根付いています。
- 国境と専門性を越えるグローバル・コラボレーション東京オフィスのメンバーは、ロンドン、香港、シンガポール、ニューヨークなどの海外エキスパートと日常的に連携します。日本国内に前例のない特殊構造や最先端の環境技術であっても、グローバルのナレッジベースから即座に知見を引き出し、プロジェクトに実装できます。
- SDGs・気候変動対策における世界的リーダーシップ全社方針として化石燃料関連事業からの撤退を進めるなど、脱炭素・循環型経済(サーキュラーエコノミー)・生物多様性回復を設計の評価軸として標準化しています。
4. 働く環境とキャリアの魅力
世界的建築家やトップクライアントと挑む難プロジェクト
アラップが関わる案件の多くは、国内外の著名建築家(SANAA、隈研吾氏、レンゾ・ピアノ氏など)との協業や、高度な技術的ブレイクスルーが求められるフラッグシップ案件です。「技術的に不可能とされる形状をいかに成り立たせるか」を追求する醍醐味があります。
フラットでオープンな組織風土
職位やバックグラウンドに関係なく、技術的な妥当性とクリエイティビティを重視するカルチャーです。国籍や文化的背景が多様なメンバーが在籍しており、オフィス内では英語・日本語が自然に飛び交うグローバルなワークプレイスが広がっています。
5. 採用動向と求められる人物像
アラップの日本法人では、即戦力となるエンジニア・コンサルタントを中心に中途採用を積極的に行っています。
主なターゲット層・歓迎されるバックグラウンド
- 組織設計事務所・アトリエ系事務所出身者(構造設計、設備設計、意匠・ファサード設計実務者)
- 大手ゼネコンの設計部・エンジニアリング部出身者(高難度構造の解析、施工性検討の実務経験)
- 建設コンサルタント・インフラエンジニア(鉄道、空港、港湾、土木構造、地盤解析の実務経験)
- エネルギー・環境系コンサルタント(洋上風力、脱炭素戦略、LCA評価、BREEAM/LEED評価実務者)
- 一級建築士、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士、技術士等の有資格者
求められるスキル・資質
- 高度な専門技術と課題解決への探求心既存の仕様規定にとどまらず、性能設計(Performance-based Design)の視点でゼロから論理を組み立てられる力。BIM/Revitやパラメトリックモデリング(Rhino/Grasshopper等)、各種解析シミュレーションソフトの運用能力。
- グローバル協働に足る英語コミュニケーション力海外オフィスとのミーティング、技術ドキュメントの作成・レビューを円滑に行えるビジネスレベルの英語力。
- 「トータルデザイン」に共鳴する協調性と柔軟性自らの専門領域に閉じず、意匠・構造・設備・施工者など多様な関係者の声に耳を傾け、統合的な最適解を導く対話力。
6. まとめ:アラップ(Arup)への転職を成功させるには
オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパンは、「高度なエンジニアリングを通じて、より良い持続可能な社会を形作りたい(We shape a better world)」という高い志を持つ技術者にとって、得がたい環境です。
選考では、ポートフォリオや職務経歴書を通じた「携わったプロジェクトにおける技術的介在価値と課題解決のプロセス」が極めて重視されます。単に図面を引いた経験ではなく、「どのような仮説を立て、どう解析し、建築家やクライアントとどう合意形成を図ったか」をロジカルに説明できるよう棚卸しを行うことが、採用内定を勝ち取る決定的なポイントとなります。









