企業再生、事業承継、事業再構築の現場において、「不動産担保」や「個人保証」に依存しない新しい金融手法として定着したABL(Asset-Based Lending:動産・売掛金担保融資)。この領域において日本市場を黎明期から開拓し、確固たる地位を築いているのが「株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン(Gordon Brothers Japan Co., Ltd.)」です。
米国で100年以上の歴史を誇るグローバルファーム「ゴードン・ブラザーズ」と、日本の政策金融を牽引する「株式会社日本政策投資銀行(DBJ)」の合弁として設立され、2022年12月にDBJの出資が外れてからはゴードン・ブラザーズ・グループの100%子会社として、独自のポジションを確立しています。
本記事では、ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの会社概要や事業内容、強み、働く魅力、そして転職市場で求められる人物像や選考対策のポイントを詳しく解説します。
1. ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの会社概要と設立背景
ゴードン・ブラザーズ・ジャパンは2006年7月、商業動産・機械設備・在庫の評価および売買・換価処分で世界トップの実績を持つ米国の「ゴードン・ブラザーズ・グループ(Gordon Brothers Group)」と、日本政策投資銀行(DBJ)および政投銀関連ファンドの出資によって設立されました。
日本の金融実務において長らく主流だった「不動産担保偏重」「経営者個人保証」の融資慣行から脱却し、企業が保有する「在庫(商品・原材料)」「機械・設備」といった動産(Working Capital)の経済価値を精緻に評価して流動化・資金化することで、企業の事業再生や成長支援を推進しています。
基本データ
- 社名:株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン(Gordon Brothers Japan Co., Ltd.)
- 設立:2006年7月
- 代表者:代表取締役社長 堀内 秀晃
- 株主構成:ゴードン・ブラザーズ・グループ(米国)100%(2022年12月にDBJの出資は解消)
- 所在地:東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル3階
- 主な事業領域:
- 動産(在庫・機械設備・無形資産等)の価値評価(バリュエーション)業務
- 動産の換価処分・買取・ディスポジション(売却支援)業務
- ABL(動産担保融資)およびインベントリー・ファイナンス関連業務
- 企業再生・事業再構築・M&Aに伴うアセットソリューション業務
2. 主な事業領域と独自のソリューション
一般的なコンサルティングファームやFASが「机上の評価レポート」を作成するにとどまるのに対し、ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの最大の特徴は「自ら在庫や設備を買い取る・換価処分する機能(プリンシパル機能)」を有している点です。
① インベントリー(在庫)および機械設備のバリュエーション
企業の貸借対照表(B/S)に計上された簿価ではなく、「仮に一定期間内で強制換価・処分した場合にいくらで現金化できるか(清算価値・換価価値)」を精緻に算定します。
- 対象資産:アパレル、小売・消費財、食品、金属・鉄鋼、化学品、電子部品、自動車部品などの流動在庫、および工作機械・半導体製造装置・建設機械・プラント設備など。
- 金融機関がABL融資を実行する際の担保評価基準として幅広く採用されています。
② ディスポジション(換価・現金化・在庫処分)
不採算店舗の閉鎖、事業撤退、工場の閉鎖・集約に伴う余剰在庫や遊休設備を、独自のグローバル流通ネットワークを通じて適正価格で現金化します。
- 単なる叩き売りではなく、ブランド価値を毀損しないディスポジション計画の策定。
- クライアントから資産を直接買い取る(プリンシパル買取り)、あるいは最低保証付きの委託販売スキームを提供。
③ ABL(アセットベースドレンディング)の組成支援・ファイナンス
メガバンク、地方銀行、ノンバンクと連携し、在庫や売掛金を担保としたABLスキームの組成、モニタリング業務を支援。不動産担保が不足しているものの、優良な運転資本を持つ中堅・中小企業の機動的な資金調達を支えています。
3. ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの強みと独自性
他社には真似のできない強固な競争優位性(モート)が3点あります。
- 「米国100年のディスポジション実績」に裏打ちされた評価データベース世界中で数万件におよぶ実際の売買・処分データを保有しており、単なる数理モデルではなく「実際にいくらで売れたか」という実証データに基づいた極めて精度の高いバリュエーションが可能です。
- 自社リスクを取って買い取れるプリンシパル機能(リスクテイク能力)「この価格で売れる」と提言するだけでなく、必要に応じて自社で買い取る資本力とリスクテイク姿勢を持っています。この実行力が、事業再生局面における金融機関や再生支援協議会からの絶大な信頼につながっています。
- DBJ(日本政策投資銀行)との強固なアライアンスと社会的信用力政府系金融機関であるDBJのネットワークを通じて、大企業から地域中核企業まで、事業再編や再生を必要とする優良なディール情報が日常的に持ち込まれます。
4. 組織風土とキャリアにおける魅力
① 「金融(ファイナンス)」×「モノ・商流(リアルビジネス)」の融合
財務分析やコーポレートファイナンスの知識をベースにしつつ、実際に現場の倉庫や工場に足を運び、製品の荷姿、保管状況、サプライチェーン、中古機械市場の相場を肌で体感します。机上の空論ではない「リアルな資産価値」を見抜く目利き力が身につきます。
② 少数精鋭での高い裁量とフラットなカルチャー
日系大企業のような縦割りや年功序列はなく、若手・中堅であっても案件の初期評価から経営陣・金融機関へのプレゼンテーション、売買実行まで一気通貫で主導できます。
③ 事業再生・ターンアラウンドの最前線に関与
関わる案件の多くは、企業の再建や不採算事業の整理、M&Aに伴う資産売却など、企業の命運を分けるクリティカルな局面です。「自らの評価と現金化によって企業の再生を救った」という確かな手応えが得られます。
5. 採用動向と求められる人物像
即戦力として自走できるプロフェッショナルを中心に、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍しています。
主なターゲット層・歓迎されるバックグラウンド
- 銀行・信用金庫・リース会社・ノンバンク出身者(法人営業、融資審査、ABL推進、債権回収・再生支援実務)
- 大手総合商社・専門商社出身者(機械、金属、化学品、繊維・アパレル等のトレーディング・在庫管理経験)
- 大手FAS・監査法人・コンサルティングファーム出身者(財務DD、事業計画策定、バリュエーション、企業再生コンサル)
- 中古機械・自動車・ブランド品等の流通・買取査定エキスパート
求められるスキル・資質
- 財務諸表の分析力と事業構造への理解貸借対照表(B/S)の資産の質を精査し、ビジネスモデルや運転資本サイクルをロジカルに読み解く力。
- 現場主義と行動力オフィスでのデスクワークにとどまらず、全国の倉庫や工場、店舗などの現場へ積極的に赴き、現物を確認・検証するフットワークの軽さ。
- 多様なステークホルダーとの折衝力・交渉力経営者、金融機関の担当者、倉庫管理者、買取バイヤーなど、立場の異なる関係者と円滑に信頼関係を築き、タフな条件交渉をまとめるコミュニケーション力。
- 英語力(歓迎)米国のゴードン・ブラザーズ各拠点との情報共有やグローバル市場での中古設備売買案件において、英語でのやり取りが発生します。
6. まとめ:ゴードン・ブラザーズ・ジャパンへの転職を成功させるには
ゴードン・ブラザーズ・ジャパンは、伝統的な金融の枠組みを超え、「動産の価値評価と流動化」という独自の武器で企業の事業再構築を支援できるプロフェッショナル集団です。
選考では、これまでの実務における「財務分析力」や「商流・流通に対する理解」に加え、「机上の数字だけでなく、リアルなモノや現場にどれだけ興味・リスペクトを持てるか」という適性が厳しく問われます。自身のこれまでの経験(法人融資、審査、在庫管理、再生支援など)を「動産評価や事業再生にどう接続できるか」論理的に言語化して臨むことが、転職成功への鍵となります。


