超高齢社会の進展に伴い、脳卒中(脳梗塞・脳出血)は年間約110万人以上が罹患する国民病であり、運動麻痺などの後遺症は患者や家族のQOL(生活の質)に極めて深刻な影響を及ぼしています。特に発症から長期間が経過した「慢性期の重度運動麻痺」は、従来の物理的リハビリテーションでは機能回復が極めて困難とされてきました。
この医療の常識を覆すべく、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI:Brain-Machine Interface)技術を駆使して脳卒中片麻痺のリハビリテーション機器を開発・社会実装している慶應義塾大学発のディープテック・メディカルスタートアップが「株式会社LIFESCAPES(ライフスケープス)」です。
2018年5月の設立以来、脳科学とAI、ロボティクスを融合させ、「患者が動かそうと意図した瞬間の脳波」をAIで高精度に検知してロボットハンドが指の運動をアシストする医療機器・プログラムを開発。慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、Beyond Next Ventures、三井住友海上キャピタルなど国内トップクラスのベンチャーキャピタルから多額の資金調達を実施し、医療機器承認の取得と全国の大学病院・リハビリ病院・自費リハビリ施設への導入を加速させています。
本記事では、コトラジャーナルの視点から、株式会社LIFESCAPESの会社概要、3大特徴と競争優位性、中核テクノロジー、組織風土、中途採用における注目ポイントを徹底解説します。
1. 株式会社LIFESCAPESの会社概要
世界最高峰の神経科学知見とAI・ロボティクス技術を結集し、障害を負った人々の「諦めていたあの生活を、もう一度。」の実現を目指しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社LIFESCAPES(LIFESCAPES Inc.) |
| 設立 | 2018年5月30日 |
| 代表者 | 代表取締役社長 林 正彬 取締役会長(創業者・開発者) 牛場 潤一(慶應義塾大学教授) |
| 資本金 | 1億円(資本準備金等含まず) |
| 本社所在地 | 東京都港区南麻布五丁目2番37号 |
| 主要株主・VC | 慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、Beyond Next Ventures、三井住友海上キャピタル、その他事業会社等 |
| 事業内容 | ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を応用したニューロリハビリテーション機器・ソフトウェアの開発・製造・販売、臨床研究推進 |
2. LIFESCAPESの3大特徴と競争優位性
① 慶應義塾大学・牛場研究室の「10年超に及ぶ世界的BMI研究基盤」
創業者の牛場潤一教授は、神経科学、生体信号処理、臨床神経生理学分野で100編以上の査読付き原著論文を発表し、国内外のBMI・BCIアワードを受賞してきた世界的権威です。単なる学術研究にとどまらず、10年以上にわたって脳卒中患者への臨床介入データを蓄積してきたバックボーンがあり、理論と臨床の双方が極めて高い次元で確立されています。このアカデミア直結の知的財産と臨床エビデンスは、他社が容易に追随できない参入障壁となっています。
② 「脳の可塑性」を引き出すクローズドループ・ニューロフィードバック
同社のBMIシステムは、患者が「麻痺した手を開こう」と意図したときに頭皮から発生する微弱な脳波(事象関連脱同期:ERD)を頭皮上電極で捉え、AIアルゴリズムがリアルタイムにデコード(解読)。意図を検知した瞬間、装着した電動ロボット装具が指を伸展させるよう連動します。
- 「動かそうと脳が指令を出す」
- 「ロボットが実際に動かす」
- 「手が開いたという感覚情報が脳へフィードバックされる」
この「脳の意図」と「身体の運動」をミリ秒単位で完全に一致させるクローズドループ(閉ループ)刺激により、脳神経回路の再構築(神経可塑性)を強力に促進。発症後数年が経過した慢性期の完全麻痺患者であっても、運動機能の回復が実証されています。
③ 病院保険診療から「自費リハビリ・在宅・グローバル」への拡張性
保険適用のリハビリテーションには日数制限(180日ルール等)があり、退院後の機能回復機会が失われやすいという社会課題が存在します。同社は大学病院や回復期リハビリテーション病院への医療機器導入に加え、近年急拡大する「自費リハビリ施設」や「再生医療クリニック」との連携を強化。さらに将来的には在宅リハビリや、欧米・アジアをはじめとするグローバル市場への進出(東京都の海外ハンズオン支援プログラム等にも採択)を視野に入れたスケーラブルな事業展開を推進しています。
3. 主要プロジェクト領域と職種展開
研究開発(R&D)、医療機器薬事・規制対応、事業開発・臨床営業が密接に連携しています。
- BMI・AIアルゴリズム開発(ソフトウェア / データサイエンス)
- 微弱かつノイズの多い脳波(EEG)から運動意図を高速・高精度に分離・推定する機械学習モデルの開発
- 生体信号処理パイプラインのリアルタイム組み込み設計(C++、Python等)
- ハードウェア・メカトロニクス設計(ロボティクス)
- 医療現場で理学療法士・作業療法士が数分で装着可能なヘッドセットおよびロボットハンド装具の機構設計
- 医療機器安全規格(IEC 60601等)に準拠した電子回路設計・ファームウェア開発
- 薬事・品質保証(RA / QA)
- 医薬品医療機器等法(薬機法)に基づくクラスⅡ・クラスⅢ医療機器の承認申請・治験推進
- QMS(製造管理及び品質管理の基準)体制の構築・運用
- 事業開発(BizDev) & メディカルセールス
- 全国の大規模リハビリ病院、大学病院、自費リハビリセンターへの導入提案
- リハビリテーション科医師、作業療法士(OT)、経営層に対するクリニカルエビデンスの啓発と導入支援
- 再生医療ベンチャーや製薬企業との統合プロトコル(細胞治療×BMIリハビリ)の共同開発
4. 想定年収レンジと待遇体系
ディープテック・医療機器ベンチャーとして、専門性の高いシニアタレントを惹きつける競争力のある報酬テーブルが用意されています。
- 中途採用の想定年収レンジ:約600万〜1,500万円前後(職種・役割・前職実績による)
- 職種別の年収目安:
- AIエンジニア / 組み込みソフトウェア開発:年収 700万〜1,200万円
- ロボティクス・機構・エレキ設計エンジニア:年収 650万〜1,100万円
- 薬事承認(RA) / 品質保証(QA)責任者クラス:年収 850万〜1,400万円
- 事業開発(BizDev) / メディカルマーケティング:年収 700万〜1,300万円
- CxO・統括レイヤー:1,200万〜1,800万円超 + ストックオプション
- アップサイドの魅力:今後の事業成長や株式上場(IPO)を見据えたストックオプション制度が導入されており、医療の変革と資本的リターンの双方が期待できる環境です。
5. 組織カルチャーと働く魅力
アカデミアの知とビジネス実務の融合
社内には、慶應義塾大学出身の神経科学研究者、パナソニック等大手電機メーカー出身のAI・生体信号エキスパート、医療機器メーカーで嚥下障害機器等を全国普及させたビジネスリーダー、DeNA等ITメガベンチャー出身の事業開発者など、極めて多様なプロフェッショナルが在籍しています。知的好奇心に溢れ、互いの専門性をリスペクトしながら社会実装に挑むアカデミックかつ情熱的な風土です。
「患者の人生を変える」手触り感のある社会貢献
開発者やセールス担当者が臨床現場に立ち会い、長年指が動かなかった患者がBMIを通じて自分の意思で手を動かし、涙を流して喜ぶ瞬間に直接立ち会えることが、社員の最大のモチベーションとなっています。
6. 中途採用の傾向と求める人物像
製品上市・医療機器保険適用拡大・グローバル展開を見据え、多面的な職種で採用を活発化させています。
歓迎されるバックグラウンド
- 生体信号処理・AI・アルゴリズム開発者:脳波、筋電、心電などの解析経験、リアルタイム組み込みAIモデルの実装経験
- 医療機器・精密機械メーカーのメカ・エレキ設計者:ロボットアーム、福祉機器、生体センシング機器の設計・量産化実務経験
- 医療機器の薬事・臨床開発・QA出身者:クラスⅡ以上の医療機器承認申請、治験プロトコル策定、PMDA対応の実務経験者
- 製薬・医療機器・リハビリ業界の営業 / マーケティング経験者:脳神経内科、脳神経外科、リハビリテーション科の医師・セラピストに対するソリューション営業経験者
- ヘルスケア×IT領域の事業開発者(BizDev):新たな医療保険外サービスやクリニックチェーンとのアライアンス構築経験者
求めるマインドセット
- 医療の未踏領域に対し、「不可能を可能にする技術を世の中に届けたい」という強い使命感
- 研究者、医師、療法士、エンジニアなど、専門用語や前提が異なるステークホルダーと対話し共通言語を創れる越境力
- スタートアップ特有の不確実性や変化を楽しみ、自らボールを拾ってプロジェクトを前進させる推進力
7. まとめ
株式会社LIFESCAPESは、「世界トップレベルのBMI技術」を基盤に、「脳卒中リハビリテーションの新たなパラダイム」を切り拓く日本のディープテック・メディカルを代表する企業です。
神経科学とエンジニアリングを融合させ、医療現場に真のイノベーションをもたらし、人々の失われた身体機能を取り戻す挑戦は、医療機器・ヘルスケアビジネスに携わるプロフェッショナルにとって、生涯の誇りとなるキャリアをもたらしてくれるでしょう。


